2026年2月13日、中央社会保険医療協議会(中医協)は2026年度診療報酬改定の答申を行いました。今回の改定では、医療従事者の賃上げや物価高騰への対応を目的として、本体改定率がプラス3.09パーセントという非常に高い水準で決定しています。
特に新設された物価対応料は、初診や再診のたびに加算される画期的な仕組みであり、多くの医療機関にとって大きな経営の支えとなるはずです。本記事では、この歴史的な改定内容のポイントや具体的な点数の内訳について、速報として分かりやすくお伝えします。
【速報】2026年度診療報酬改定の答申ポイント(本体+3.09%)
厚生労働省から発表された2026年度の診療報酬改定は、過去30年で最大規模のプラス改定となりました。診療報酬本体の改定率は3.09パーセントとなり、長引く物価高や深刻な人件費の高騰に直面する医療現場を支える姿勢が鮮明になっています。
一方で薬価改定についてはマイナス0.87パーセントとされましたが、全体としては医療機関の経営を強力にバックアップする内容です。これほど大幅な引き上げが行われた背景には、医療現場で働く方々の生活を守り、質の高い医療を維持し続けるという国の強い意志が込められています。
今回の答申は、単なる点数の調整にとどまらず、日本の医療提供体制を維持するための大きな転換点といえるでしょう。2025年や2027年を見据えた長期的な視点での議論が反映されており、医療機関はこれまでにない規模の変化に対応していく必要があります。
新設された「物価対応料」とは?初診・再診で20円上乗せ
今回の改定で最も注目されているのが、新しく導入された物価対応料という仕組みです。これは近年の光熱費高騰や消耗品の値上がりによる病院経営の圧迫を解消するために設計されました。
具体的な点数としては、外来診療における初診料と再診料のそれぞれに一律で20円分(2点)が上乗せされます。少額に感じるかもしれませんが、受診のたびに算定できるため、積み重なることで安定的な収益につながる仕組みです。入院についても、病院の種類やケアの厚さに応じて幅広い加算が認められました。
また、この物価対応料は一度決まって終わりではなく、2027年度に向けてさらに増額される段階的な引き上げも予定されています。以下の表に、現時点で判明している主要な点数をまとめました。
| 区分 | 2026年度(6月施行) | 2027年度(予定) |
| 外来(初診・再診) | 20円(2点)上乗せ | さらなる増額を検討 |
| 入院(1日につき) | 130円 〜 840円 | 段階的な引き上げを予定 |
これらの点数を算定するためには、適切な施設基準の届け出や管理が欠かせません。物価高騰の影響を正確に把握し、自院がどの区分に該当するのかを早めに確認しておくことが経営安定の鍵となります。
賃上げ対応「ベースアップ評価料」の大幅拡充
医療従事者の待遇改善を目指すベースアップ評価料も、今回の答申で大幅に拡充されることが決まりました。人件費の引き上げは病院経営における最優先課題となっており、今回の改定はその原資を確保するための重要な足がかりとなります。
具体的な算定額は、すでに評価料を算定している施設とこれから新規で届け出る施設で異なりますが、外来では最大で230円まで引き上げられるケースもあります。この評価料を活用することで、定期昇給に加えてベースアップを実施し、他業界に負けない魅力ある職場環境を作ることが期待されています。
働き方改革を推進する上でも、このベアの実現は避けては通れない道です。看護師やセラピスト、事務職員など、チーム医療を支えるすべての職種のモチベーションを維持するために、この新しい点数制度を戦略的に活用していきましょう。
救急・周産期・小児医療および入院医療の評価見直し
今回の改定では、地域医療の要となる救急や周産期、小児医療への重点的な配分も大きな柱となっています。特に救急患者を積極的に受け入れる病院への評価が手厚くなり、年間の受け入れ実績に応じた救急医療管理料の加算が新設されました。
この見直しの背景には、過酷な現場で働く医療従事者の負担を軽減し、働き方改革を推進する狙いがあります。たとえば年間2000件以上の救急搬送を受け入れるような高度な医療機関では、これまで以上に高い点数が設定されることになりました。
また移植医療への支援として手術料が大幅に引き上げられるなど、高度専門医療の維持に向けた配慮も随所に見られます。各自治体における救急体制を維持するためには、自院がどの施設基準に該当するのかを改めて精査し、適切な人員配置を行うことが求められます。
OTC類似薬・長期収載品の給付見直し(選定療養)
患者さんの窓口負担に関わる部分では、薬の処方に関するルールが大きく変わります。市販薬としても購入できる薬であるOTC類似薬や、長年使われている先発医薬品の長期収載品の給付が見直されることになりました。
厚生労働省は、医療費の効率化を図るために選定療養という仕組みを拡大しています。これは、ジェネリック医薬品があるにもかかわらず患者さんが先発品を希望した場合に、その差額の一部を患者さん自身が負担するという制度です。
具体的には77成分にのぼる薬がこの対象となり、家計への影響を懸念する声も上がっています。薬価改定による引き下げが行われる一方で、窓口での支払い額が増えるケースがあるため、現場のスタッフは患者さんへ丁寧な説明を行う準備をしておきましょう。
改定の施行時期に注意(薬価4月・本体6月)
2026年度の改定で実務上最も注意しなければならないのが、施行時期のズレです。以前は一律で4月施行でしたが、今回は薬価改定が4月、診療報酬本体の改定は6月施行という変則的なスケジュールになっています。
この2ヶ月間のズレは、医療事務やシステム担当者にとって大きな負担となる可能性があります。4月に薬価のマスタ更新を行い、そのわずか2ヶ月後の6月施行に合わせて、本体改定に伴うレセコンの改修や複雑な計算設定を行わなければなりません。
さらに医療DXの推進に伴い、オンライン資格確認や電子処方箋の運用管理も並行して進める必要があります。施行直前に慌てないよう、ベンダーとの打ち合わせや内部のオペレーション確認を、今から計画的に進めておくことが大切です。
まとめ:物価・賃金増に対応した戦略的な施設基準管理を
2026年度の診療報酬改定は、物価対応料の導入や過去最大級の本体改定率など、病院経営にとって追い風となる要素が多く含まれています。しかし、その恩恵を十分に受けるためには、賃上げ計画の策定や施設基準の緻密な管理が欠かせません。
特に2027年度に控える2段階目の点数引き上げを見据えると、今回の改定は2年がかりの長期プロジェクトと捉えるべきでしょう。一般病床と療養病床を併せ持つケアミックス病院などは、自院の機能をどう特化させるかという戦略的な判断も必要になります。
