2026年の衆院選に合わせて行われる「最高裁判所裁判官国民審査」。投票所に行く前に「今回の対象者はどんな判決を出した人?」や「×をつけるべき人は誰?」とスマホで調べてみたものの、具体的な情報が出てこなくて困っていませんか?
実は、今回の審査対象となっている裁判官たちは就任から日が浅く、最高裁判所としての判決実績がほとんどないのが実情です。これでは判断しようがないと諦めてしまう前に、別の視点から彼らをチェックしてみましょう。
本記事では、実績が見えにくい高須順一氏、沖野眞已氏、阿多博文氏について、過去に関わった法律や就任会見の言葉から「どんな考えを持つ裁判官か」を徹底解剖します。判決文がない中でのプロの判断ポイントと、大切な一票を無駄にしないためのルールを分かりやすく解説していきます。
【2026年】最高裁国民審査の対象者一覧と「実績不足」の理由
まずは、今回の国民審査で信任・不信任を問われる対象者を整理しましょう。2026年の審査対象は、以下の3名(および選挙直前に任命された裁判官)となる見込みです。弁護士出身者と学者出身者が中心となっており、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが揃っています。
| 氏名 | 出身分野(枠) | 特徴・キーワード |
| 高須 順一 | 弁護士・学者 | 法曹実務と理論の「二刀流」。民法のスペシャリスト。 |
| 沖野 眞已 | 学者(法教員) | 女性判事として史上最多の4人目。消費者契約法に関与。 |
| 阿多 博文 | 弁護士 | 大阪弁護士会出身。就任直後のため情報は未知数。 |
リストを見て「あれ?有名な事件の判決がない」と感じた方も多いはずです。それもそのはず、彼らは全員が2025年から2026年にかけて直近で任命されたばかりだからです。
通常、最高裁の裁判官は就任からある程度の期間を経て審査を受けますが、今回はタイミングにより「最高裁での重要事件」に関与する時間が物理的にありませんでした。そのため、ネットや新聞で検索しても「〇〇事件で××という判決を下した」という分かりやすい判断材料が出てこないのです。
しかし、情報がないからといってチェックを放棄するのは早計です。彼らが過去にどのような専門分野を歩んできたか、あるいは就任会見でどのような司法観を語ったかを知ることで、今後の判決の傾向を予測することは十分に可能です。ここからは一人ひとり、その横顔を深掘りしていきましょう。
【対象者①】高須順一 裁判官:法曹と学者の「二刀流」
一人目は、高須順一(たかす じゅんいち)裁判官です。彼は法政大学出身で、長年弁護士として活動してきた実績を持ちながら、法科大学院の教授も務めた経歴を持っています。
いわゆる「弁護士枠」での採用ですが、実務家としての経験と、学者としての理論的な深みを併せ持つ「二刀流」が最大の特徴と言えるでしょう。専門分野は民法であり、私たちの生活に密着した法律問題に精通しています。
一般的に最高裁の「弁護士枠」は、企業法務寄りか、それとも人権擁護活動に熱心な「人権派」かによってスタンスが分かれます。高須氏の場合、学者としての側面も強いため、特定のイデオロギーに偏るというよりは、法理論に基づいた緻密でバランスの取れた判断が期待されています。
実績としての判決文はまだありませんが、彼のような経歴の裁判官は、社会の実情と法律の整合性をどう取るかという点で手腕を発揮することが多いです。実務の現場を知っているからこそ、机上の空論ではない、血の通った判断をしてくれるかどうかが注目のポイントになります。
【対象者②】沖野眞已 裁判官:女性判事が見据える「石を積む」司法
二人目は、東京大学大学院教授から就任した沖野眞已(おきの まさみ)裁判官です。女性の最高裁判事としては史上最多となる4人目の就任であり、ジェンダーバランスの観点からも注目を集めています。
彼女のキャリアで特筆すべきは、私たちの生活に直結する消費者契約法の改正や信託法の制定に深く関わってきたという点です。悪質な商法から消費者を守るためのルール作りをしてきた「法律のプロ」であることは、私たち国民にとって大きな安心材料と言えるでしょう。
就任会見では「研究は山に小さな石を一つ積むこと」と語りました。これは、既存の法律や先例を無視していきなり大きな岩を動かすのではなく、一つひとつの事実を丁寧に積み上げて解決を目指すという、彼女の誠実な人柄と慎重な姿勢を表しています。
また、恩師から「知的くず(intellectual rubbish)を出してはならないと戒められた」というエピソードも披露しており、質の高い議論を重んじる姿勢がうかがえます。民法の学者として多様な見解を整理してきた経験は、複雑な事件においてバランスの取れた判断を下す助けになるはずです。
【対象者③】阿多博文 裁判官:未知数の「弁護士枠」
三人目は、2026年2月という審査直前のタイミングで就任した阿多博文(あた ひろふみ)裁判官です。同志社大学出身で大阪弁護士会に所属していた彼は、長い弁護士経験を買われての抜擢となります。
正直なところ、彼に関しては就任から国民審査までの期間があまりにも短く、判断材料がほぼ「白紙」の状態です。過去に関わった有名な訴訟や、具体的な思想信条を示す公的なデータは現時点ではほとんど見当たりません。
このように「判断不能」な対象者がいる場合、私たちはどう投票すればよいのでしょうか。情報がないからといって適当に決めるのではなく、次章で紹介する「実績以外で判断するテクニック」を使って、あなたなりの答えを出してみてください。
判決実績がない場合の「判断テクニック」3選
具体的な判決文がない今回のようなケースでは、以下の3つの視点を持つことで、裁判官のスタンスをある程度推測することができます。
一つ目は「出身分野(枠)」を見ることです。裁判官、弁護士、検察官、学者、行政官のどこ出身かによって、法の解釈に傾向が出ることがあります。例えば弁護士枠なら人権感覚、学者枠なら理論的整合性を重視するといった具合です。
二つ目は、大手メディアが実施する「アンケート」の回答をチェックすることです。憲法観や夫婦別姓などの社会問題について、彼らがどう考えているかを知る貴重な手がかりになります。就任会見だけでなく、こうしたアンケート回答はプロフィール欄よりも雄弁にその人の考えを語ります。
三つ目は、将来的な「補足意見」への期待です。今回の審査には間に合いませんが、最高裁の判決には裁判官個人の意見である補足意見が付されることがあります。これを書く意欲があるか、独自の視点を持っているかどうかも、学者や弁護士としての過去の論文等からある程度読み取れる場合があります。
【図解】無効票に注意!正しい「×」の書き方とルール
いざ投票所に行っても、用紙への書き方を間違えてしまっては元も子もありません。最高裁裁判官国民審査の投票用紙は、衆院選の候補者名を書く用紙とはルールが全く異なるため注意が必要です。
最も重要なルールは、「辞めさせたい人の名前の上に×を書く」ことです。逆に、辞めさせなくていい(信任する)人には、何も書かず「空欄」のままにしてください。これが意思表示の正しい方法です。
ここで絶対にやってはいけないのが、信任したい人の欄に「○」や「信任」などの文字を書いてしまうことです。何かを書いてしまうと、その票全体が無効票となってしまうリスクがあります。「良いと思ったら何も書かない」というのが、この審査特有の少し変わったルールなのです。
もし投票日当日に用事がある場合は、審査期日の7日前(2月1日)から期日前投票が可能です。落ち着いて判断するためにも、事前にスケジュールを確認しておきましょう。
データで見る国民審査:罷免率とSNSの影響
「どうせ×を書いても誰も辞めさせられないんでしょ?」と思うかもしれません。確かに過去、国民審査で罷免された(クビになった)裁判官は一人もおらず、罷免率も最高で15%程度にとどまっています。
しかし、近年はこの傾向に変化が見られます。2021年や2024年の審査では、SNSを通じて特定のトピック(夫婦別姓や性犯罪規定など)へのスタンスが拡散され、特定の裁判官の×の割合が急上昇する現象が起きました。
たとえ罷免に必要な過半数に届かなくても、×の数が多いという事実は裁判官にとって大きなプレッシャーとなります。読売新聞などの分析でも、裁判官は「自分の感覚が世間の常識とズレていないか」を非常に気にしているとされています。あなたの一票は、司法に対して「私たちは見ているぞ」というメッセージを送る確かな手段なのです。
まとめ
2026年の国民審査は、高須氏、沖野氏、阿多氏ら就任直後の裁判官が対象となるため、過去の判決実績という分かりやすい判断材料が不足しています。
しかし、彼らが歩んできたキャリアや専門分野、そして「消費者契約法に関わった」といった実績を見ることで、どのような裁判官かを見極めることは可能です。もし判断に迷う場合は「空欄」で提出するのが無難ですが、少しでもその資質に疑問を感じたなら、迷わず「×」を書いて意思表示をしましょう。
投票所に向かう前に、ぜひこの記事のポイントをスクリーンショットに撮って、判断の参考にしてください。あなたの納得のいく一票が、これからの司法をより良いものに変えていくはずです。
