ニトリの中国経営は失敗?リスクの正体と円安対策、ASEANシフトの全貌

ニトリ成長ストップの真実!ユニクロとの決定的な差を解説

家具業界の王者として知られるニトリですが、近年は中国での大量閉店や減益といったニュースが続き、その行方を案じている方も多いのではないでしょうか。実はこの苦境の背景には、長年の成功モデルであった中国依存のサプライチェーンと、急激な円安という構造的な課題が深く関係しています。

36期連続増収増益という偉大な記録が途絶えた今、一部では経営の失敗を指摘する厳しい声も聞かれます。そこで本記事では、似鳥昭雄会長の反省の弁や、同じ製造小売業であるファーストリテイリングとの比較分析を通じて、ニトリが直面しているリスクの正体と今後の展望をわかりやすく解説します。

目次

ニトリの中国進出は経営失敗か?大量閉店の真相

「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで消費者の心を掴んできたニトリですが、成長エンジンとして期待していた中国市場で大きな壁に直面しています。これまで順調に見えた海外展開の裏で、一体何が起きていたのでしょうか。

報道されている大量閉店のニュースは、単なる店舗の統廃合というレベルを超え、中国事業の根本的な戦略見直しを迫られていることを示唆しています。ここでは、トップの言葉と市場環境の両面からその真相に迫ります。

似鳥昭雄会長が語る「大型店舗戦略」の誤算と不況の影響

ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は、決算会見の場で自身の経営判断について率直な反省を口にしました。特に印象的だったのは、「大型店を出したいという願望が間違っていた」という趣旨の発言です。これまでニトリは、日本国内と同様に広大な売り場を持つ大型店舗を中国でも展開し、豊富な品揃えで集客を図る戦略をとってきました。

しかし、中国経済は不動産不況の深刻化により、消費者の財布の紐がかつてないほど固くなっています。ショッピングモールなどの商業施設自体から客足が遠のいており、広い店舗を維持するための固定費が経営を圧迫する結果となりました。

本来であればテナント料の低下は出店の好機となるはずですが、それ以上に既存店の客数減少と収益性の悪化が深刻だったのです。経営のプロである似鳥会長でさえ読み違えるほど、中国市場の冷え込みと変化のスピードは凄まじいものがありました。

中国特有の「家具付き賃貸」文化という見えない壁

ニトリが中国で苦戦したもう一つの大きな要因に、日本とは全く異なる住宅文化の違いがあります。日本では進学や就職、転勤のタイミングで「何もない部屋」を借り、カーテンやベッド、収納用品を一から買い揃えるのが一般的です。ニトリはこの「新生活需要」を丸ごと取り込むことで成長してきました。

ところが、中国の賃貸住宅市場では事情が異なります。現地では「家具・家電付き」で物件を貸し借りするのが主流であり、入居者が自分で大型家具を購入する必要性が日本に比べて極端に低いのです。IKEAや無印良品も同様の課題に直面していますが、特に「実用的な家具」を主力とするニトリにとって、この文化の壁は厚いものでした。

日中の住宅文化には、具体的に以下のような違いがあります。

  • 日本の賃貸事情
    • 部屋は「空箱」の状態で借りるのが基本。
    • 照明、カーテン、ベッドなどは入居者が自分で購入して持ち込む。
    • 退去時にはすべて撤去して原状回復する必要がある。
  • 中国の賃貸事情
    • 内装工事済みで、基本的な家具や家電が備え付けられている物件が多い。
    • 入居者はスーツケース一つで生活を始められる手軽さを好む。
    • 自分好みのインテリアに改装する文化は、持ち家層以外ではまだ限定的。

このように、そもそも「家具を買う」という動機が生まれにくい市場環境の中で、日本と同じような売り方をしてしまったことが、客数が伸び悩む構造的な要因となっていたのです。

円安が直撃したサプライチェーンの脆弱性と「自業自得」の声

中国事業の不振に加え、ニトリをさらに追い詰めたのが歴史的な「円安」です。為替の影響は多くの企業に及びますが、ニトリの場合はそのビジネスモデル自体が、円安に対して極めて弱い構造になっていました。

一部で「自業自得」とまで言われてしまうのは、ニトリの強みであったはずのサプライチェーンが、環境変化によって最大のリスク要因へと変貌してしまったからです。ここでは、そのメカニズムを紐解いていきます。

海外生産・国内販売モデルが抱える為替リスクの正体

ニトリの商品は、その約9割が海外で生産されています。これまでは中国や東南アジアなどの安価な労働力を活用して商品を製造し、それを日本へ輸入して販売することで、高い利益率を確保してきました。これが、製造から販売までを自社で一貫して行うSPA(製造小売業)としてのニトリの勝ちパターンでした。

しかし、この「海外で作って日本で売る」というモデルは、円安になると仕入れコスト(原価)が直接的に跳ね上がるという致命的な弱点を持っています。1ドル100円の時と150円の時では、同じ商品を作るためのコストが単純計算で1.5倍になってしまうからです。

急激なコスト増を価格転嫁できれば良いのですが、ニトリのブランドイメージは「お、ねだん以上。」という安さと品質のバランスにあります。値上げは客離れを招く恐れがあるため簡単には踏み切れず、結果として利益を削るしかありませんでした。このサプライチェーンの脆弱性が、36期連続増収増益ストップの決定打となったのです。

ファーストリテイリング(ユニクロ)との明暗を分けた「海外売上比率」

同じSPAモデルを採用し、海外生産を行っている企業に「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがあります。しかし、ニトリが円安で苦しむ一方で、ファーストリテイリングは円安を追い風にして最高益を更新しています。なぜ、これほどまでに明暗が分かれたのでしょうか。

その答えは「海外売上比率」の差にあります。両社の財務構造を比較すると、リスクに対する耐性の違いが浮き彫りになります。

比較項目ニトリホールディングスファーストリテイリング(ユニクロ等)
主な生産拠点海外(アジア中心)海外(アジア中心)
主な販売市場日本国内が中心海外市場が過半数
海外売上比率約4〜5%程度50%以上
円安の影響輸入コスト増が利益を直撃
(マイナス要因)
海外事業の利益が円換算で膨らむ
(プラス要因)

ユニクロは早くからグローバル化を進め、海外で稼ぐ力を身につけていました。そのため、円安で仕入れコストが上がっても、海外店舗で得た外貨収入を円に換算した際の利益が大きく膨らみ、コスト増を相殺どころかプラスに転じることができたのです。

対してニトリは、依然として売上の大部分を日本国内に依存しています。海外で稼ぐ力がまだ十分に育っていない段階で円安の直撃を受けたことが、両社の業績に決定的な差を生む結果となりました。

中国リスクを越えるための「ASEANシフト」と最新戦略

円安と中国市場の停滞というダブルパンチに見舞われたニトリですが、ただ手をこまねいているわけではありません。似鳥昭雄会長は、この逆境をバネに、これまでの中国一辺倒だった体制からの脱却、いわゆる「ASEANシフト」を猛烈なスピードで進めています。

ここからは、リスク分散と新たな成長機会を求めて動き出した、ニトリの最新グローバル戦略について解説します。

中国プラスワンから「多元的ネットワーク」への転換

これまで多くの日本企業が採用してきた「チャイナ・プラスワン(中国+もう1国)」という考え方ですが、ニトリはさらに一歩進んだ「多元的ネットワーク」の構築へと舵を切りました。これは、単に生産拠点を移すだけでなく、調達から販売までのルートを最適化する戦略です。

具体的には、中国の工場で作ったものは中国国内の店舗で販売し、日本や他の国で売る商品はASEAN(東南アジア)等の工場から供給するという、「地産地消」に近い形への切り替えです。これにより、為替リスクの影響を最小限に抑えつつ、各国のニーズに合わせた柔軟な商品展開が可能になります。

従来の「一極集中型」から「分散型」へ、ニトリのサプライチェーンは今、大きな変革期を迎えているのです。

  • 従来の構造
    • 中国で集中生産 → 日本へ輸出 → 円安直撃で利益減
  • これからの構造(多元化)
    • 中国生産分 → 中国市場で販売(人民元で完結)
    • ASEAN生産分 → 日本・世界へ輸出(リスク分散)

ベトナム・タイ・インドへの急速な出店と物流網の再構築

生産拠点の見直しと同時に進められているのが、ASEAN市場そのものを「消費地」として捉えた積極的な出店攻勢です。これまで生産拠点としての役割が強かったベトナムタイですが、経済成長に伴い購買力が高まっていることから、ニトリはこれらの国々を次なる主力市場と定めています。

特に注目すべきは、巨大な人口を抱えるインドへの進出計画です。中間層の爆発的な増加が見込まれるインド市場を早期に開拓することで、中国に代わる新たな収益の柱を育てようとしています。2023年度以降、東南アジア地域での出店ペースは加速しており、その勢いは止まりません。

また、これらの国々に店舗網を広げることは、物流の効率化にも繋がります。ベトナムなどをハブ拠点とすることで、日本への輸送だけでなく、世界中の店舗へ効率よく商品を届ける新たな物流網の構築が急ピッチで進められています。

まとめ:ニトリは中国リスクを乗り越え再成長できるのか

ここまで、ニトリが直面した中国事業の誤算と円安の打撃、そして起死回生を図るASEANシフトについて解説してきました。

「36期連続増収増益」という記録が途絶えたことは、確かに一つの時代の終わりを意味するかもしれません。しかし、似鳥昭雄会長が過去に幾度となく経営危機を乗り越えてきたように、今回の「失敗」もまた、ニトリがより強靭なグローバル企業へと進化するための痛みであるとも捉えられます。

家具付き賃貸が主流の文化圏でどう戦うか、為替に左右されない利益構造をどう作るか。ASEANへのシフトや、現場でのIT活用による効率化など、打つべき手はすでに打たれ始めています。

かつて「お、ねだん以上。」で日本の暮らしを変えたニトリが、世界の舞台で再びその強さを証明できるのか。本当の勝負は、ここから始まると言えるでしょう。


【次に注目すべきポイント】

ニトリの復活劇は、私たちビジネスパーソンにとっても「環境変化への適応」という点で大きな学びがあります。今後、ニトリの店舗を見かけた際やニュースに触れた際は、以下の点に注目してみてください。

  • 「原産国」の変化: 商品タグを見て、生産国が中国以外(ベトナム等)にどう変化しているか確認してみましょう。
  • 海外店舗数の推移: 特に東南アジアでの出店スピードが、計画通りに進んでいるかが復活のバロメーターになります。
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