2026年2月、楽天グループの2025年度決算が発表されました。「7期連続の赤字」「1778億円の最終損失」という衝撃的な見出しが踊る一方で、三木谷会長は「楽天モバイルのEBITDA黒字化」と「1000万回線突破」を強くアピールしています。これだけ見ると、結局のところ経営状態は改善しているのか、それとも危険水域なのか判断に迷う方も多いでしょう。
結論から言えば、モバイル事業は「稼ぐ力」を身につけましたが、過去の巨額投資の支払いがグループ全体の足を引っ張っている状態です。本記事では、複雑な2025年決算の数値をわかりやすく解剖し、投資家が恐れる「無配」の背景や、ユーザーが気になる「倒産確率」「今後の料金への影響」について徹底解説します。
【速報】楽天グループ2025年度決算は1778億円の赤字
まずは今回の決算発表で公開された主要な数値を整理してみましょう。売上などの規模は拡大しているものの、最終的な利益は依然として厳しい状況が続いています。以下の表は、前年度(2024年)と今回の2025年度決算の比較です。
| 項目 | 2024年度(前期) | 2025年度(今期) | 前年比 |
| 売上収益 | 2兆円台 | 増収 | 拡大傾向 |
| 営業損益 | 赤字 | 赤字 | 改善傾向 |
| 最終損益 | ▲3394億円(赤字) | ▲1778億円(赤字) | 赤字幅は縮小したが継続 |
| モバイル契約数 | 約600万回線 | 1000万回線突破 | 大幅増 |
※数値は2026年2月発表時点の概算および報道ベースです。
楽天グループ全体としては7期連続の赤字となりました。2025年度決算の最終損益は1778億円の赤字となり、依然として巨額の損失を計上しています。ただし、これは単に経営が悪化したということだけではありません。
前年度に計上されていた投資先企業の株価評価益が今回はなくなったことや、為替の影響などが複雑に絡み合っています。ニュースの見出しにある「赤字」という言葉だけで過度に不安になる必要はありませんが、グループ全体で利益を出せる体質にはまだ戻りきっていないのが現実です。
なぜ赤字?楽天モバイル「EBITDA黒字化」とのギャップ
ニュースで「楽天モバイルが黒字化した」と聞いたのに、なぜグループ全体では大きな赤字なのでしょうか。ここで重要になるのが、「EBITDA(イービットディーエー)」という指標と、実際の「最終損益」の違いです。この2つのギャップが、現在の楽天の複雑な状況を生んでいます。
EBITDAとは、ざっくり言えば「金利や税金、設備の目減り分(減価償却)を引く前の、純粋に事業で稼いだ現金の額」のことです。楽天モバイルはこの数値がついに通期で黒字化しました。つまり、日々の通信サービス運営においては、手元に現金が残る状態になったことを意味します。
しかし、会計上の最終損益は別物です。楽天はこれまで基地局整備に兆単位の設備投資を行ってきました。この設備の価値が年々目減りしていく費用(減価償却費)や、借金に対する利払いが、稼いだ現金を上回って計上されているため、帳簿上は「営業損失」や最終赤字となってしまうのです。
この状況は、借金をして大きな工場を建てた直後の会社に似ています。工場はフル稼働して製品は売れている(EBITDA黒字)けれど、工場の建設費の支払いやローンの利息が重く、通帳の残高はまだ増えていかない(最終赤字)という財務体質にあるといえます。
楽天モバイル単体は「1000万回線」突破で好調か
楽天モバイルにとって悲願であった契約数1000万回線が、2025年末についに達成されました。サービス開始当初の「繋がらない」というイメージを払拭し、プラチナバンドの導入や通信品質の向上を進めた結果、多くのユーザーに選ばれるキャリアへと成長しました。
契約数の増加に伴い、ARPU(1ユーザーあたりの平均売上高)も上昇傾向にあります。多くのユーザーがデータ利用量の多いプランを選んだり、楽天経済圏のサービスを併用したりすることで、一人当たりの単価が上がっているのは良い兆候です。
しかし、手放しで喜べる状況とも言えません。1000万回線という数字は達成しましたが、楽天カードや楽天市場との相乗効果を狙う「エコシステム」の利用率拡大には一部で陰りも見え始めています。また、シンプルさが売りだった料金プランも、U-NEXTなど他社サービスとの連携強化により複雑化しており、ユーザーの選択肢が増えた反面、わかりにくくなったという声もあります。
さらに、競合他社も黙ってはいません。大手キャリアのサブブランドも低価格攻勢を強めており、ここからさらに契約数を伸ばしていくには、単なる価格競争以上の価値提案が求められます。1000万回線はあくまで通過点であり、ここから真の収益の柱になれるかが試されています。
【投資家向け】配当見送り(無配)と株価への影響
株主や投資家にとって最も関心が高いのは、やはり配当金の行方ではないでしょうか。残念ながら、2025年度決算においても「配当見送り(無配)」という厳しい決定が下されました。モバイル事業の単月黒字化を背景に復配(配当の再開)を期待する声もありましたが、会社側は財務基盤の強化を最優先した形です。
この発表を受け、直近の株価はネガティブな反応を示しています。配当というインカムゲインが得られない以上、投資家の失望売りが出るのは避けられない動きと言えるでしょう。特に、楽天証券などを通じて応援の意味も込めて保有していた個人投資家にとっては、忍耐の時期がさらに続くことになります。
しかし、この判断は企業の生存戦略としては理にかなっている側面もあります。手元の現金を配当として流出させるよりも、巨額の社債償還や次の成長投資に回すことで、将来的な株価上昇(キャピタルゲイン)を狙うという経営判断だからです。2026年の業績見通しが非開示であることからも、今はまだ予断を許さない状況が続いていることが読み取れます。
楽天の「倒産確率」は?2026年の社債償還問題を検証
SNSや一部メディアで度々話題になる「楽天の倒産確率」ですが、実際のところはどうなのでしょうか。ここでの最大の懸念材料は、莫大な額にのぼる社債償還(借金の返済期限)です。特に2026年後半から2027年にかけては、過去に発行した社債の償還期限が集中する「山場」を迎えます。
| 時期 | 概要 | 対策状況 |
| 2025年まで | 劣後特約付社債などの償還 | 期限前償還などで一部対応済み |
| 2026年後半 | 数千億円規模の償還が集中 | ここが正念場(借換・資産売却等) |
「返済できなければ倒産」というのは事実ですが、即座にその可能性が高いわけではありません。実は、楽天グループは高い金利を提示することで、海外投資家からの資金調達(ドル建て社債の発行)に成功しています。「リスクはあるが、楽天は潰れない」と判断して資金を投じているプロの投資家が世界中にいるという事実は、ひとつの安心材料と言えるでしょう。
また、楽天銀行や楽天カードといった優良資産の一部を切り売りして現金化する手段も残されています。綱渡りである資金繰りには変わりありませんが、あらゆる金融手段を駆使してこの山場を乗り越えようとしているのが現状です。煽り記事にあるような「明日にも倒産」という状況とは少し距離があることを理解しておきましょう。
2026年以降の楽天はどうなる?設備投資再開の狙い
赤字脱却を急ぐ一方で、楽天グループは2026年に再び「2000億円規模」の設備投資を行う計画を立てています。「借金返済が大変な時期になぜ?」と思うかもしれませんが、これには明確な理由があります。それは、獲得した1000万回線のユーザーを繋ぎ止め、さらなる収益を生むための「通信品質向上」です。
具体的には、繋がりやすさに直結する「プラチナバンド」の基地局展開や、AI導入によるネットワーク運用の効率化が挙げられます。これまでは投資を抑えてきましたが、ここぞという場面で品質にお金をかけなければ、せっかく増えたユーザーが他社へ流出してしまうリスクがあるからです。
この積極的な投資が吉と出るか凶と出るか、それが2026年の大きな見どころです。単に安売りをする段階は終わり、通信キャリアとしての「質」で勝負できる体制が整えば、グループ全体の黒字化も現実味を帯びてくるでしょう。
まとめ
2025年度決算は、楽天モバイルが「稼ぐ力」を確実につけたことを証明する内容でした。しかし同時に、過去の巨額投資による借金返済と赤字が、依然としてグループ全体の重荷になっている厳しい現実も浮き彫りになりました。
- モバイル事業: 1000万回線突破とEBITDA黒字化で順調。
- 財務状況: 7期連続赤字で無配。2026年の社債償還が最大の山場。
- 今後: 設備投資を再開し、通信品質向上で完全復活を狙う。
「倒産リスク」は叫ばれるほど高くはありませんが、投資家にとってもユーザーにとっても、2026年は楽天が真の復活を遂げられるかの正念場となります。
今後、楽天モバイルの料金プランやポイント還元率に変更があるかもしれません。今のうちに自分に合ったプランや経済圏の活用方法を見直しておくことをおすすめします。
