2040年に日本全体の人手不足が解消されるという予測が話題を呼んでいますが、実は手放しで安心できる状況ではありません。
なぜなら、国全体の働き手の数は足りていても、職種によって極端な偏りが生まれてしまうからです。
たとえば、人工知能の発展によりデスクワークなどの仕事が大きく減る一方で、私たちの生活に欠かせない現場の仕事は深刻な働き手不足に陥ると予想されています。
本記事では、この予測の裏側にある本当の危機と、これからの時代を生き抜くために私たちが知っておくべき厳しい現実についてわかりやすく解説していきます。
経産省推計「2040年人手不足なし」の衝撃的な中身とは
ニュースやSNSで大きな話題となったこの予測は、経産省が発表した就業構造推計というデータに基づいています。少子高齢化が進む日本において、働き手が足りなくなるというこれまでの常識を覆す内容に驚かれた方も多いのではないでしょうか。
この推計によると、2040年の日本の働く人の数は約6300万人になると予想されています。人口が減っているのになぜ人手が足りるのか不思議に思われるかもしれませんが、その鍵を握るのがテクノロジーの進化です。
具体的には、AI活用や高性能なロボットを仕事に導入することで、人間がやらなくてもよい作業を大幅に減らす省力化が進むと考えられています。国全体という大きな視点で見れば、機械が人間の仕事を約200万人分も肩代わりしてくれるため、働く人の数と仕事の量のバランスが取れるという計算なのです。
「移民不要論」は暴論か現実か?高市政権の外国人政策
全体として人手が足りるというデータが出たことで、インターネット上ではもう海外からの働き手を受け入れる必要はないといった極端な意見も飛び交っています。しかし、こうした考えは少し現実離れしていると言わざるを得ません。
なぜなら、すべての仕事が機械に置き換わるわけではないからです。特に介護や建設といった人と人が直接関わったり体を動かしたりする現場人材は、2040年になっても約260万人も不足すると予測されています。社会を根底から支える仕事においては、引き続き深刻な人手不足が続くことになります。
こうした状況を受け、高市早苗首相を中心とした現在の政権でも、外国人労働者を完全に排除するような政策は取っていません。ただ無制限に受け入れるのではなく、本当に人手が足りない分野に絞ってルールを厳格化しながら共生を目指すという、現実的な移民政策の舵取りが行われているのが実態です。
【残酷な未来】事務職440万人が余剰、現場・専門職は枯渇
ここからが、私たちが最も直視しなければならない厳しい現実のお話になります。国全体での人数が足りていても、自分が就きたい仕事の枠があるとは限りません。
それを如実に表しているのが、求められる能力と働く人の持っている能力が食い違ってしまうスキルミスマッチという問題です。以下の表は、2040年における職種別の過不足予測をわかりやすくまとめたものです。
| 職種 | 2040年の過不足予測 |
| 事務職 | 約437万人の余剰(人が余る) |
| 専門職 | 約181万人の不足(人が足りない) |
| 現場職 | 約260万人の不足(人が足りない) |
このデータが示す通り、パソコン入力や書類作成といった一般的な事務職は、AIに仕事を奪われて440万人近くも余剰となってしまいます。一方で、高度な知識を持つ専門職や、先ほど触れた現場の仕事は圧倒的に人が足りません。
さらに、この問題は住んでいる地域によっても差が出ます。オフィスが多い東京圏ではデスクワークを希望する人が溢れてしまい、反対に地方では生活に欠かせないサービスを担う人がいなくなってしまうという、非常に偏った社会になる危険性をはらんでいるのです。
AI・ロボット活用だけでは埋まらない「スキルミスマッチ」の壁
人手不足を解消するには、単に人の数だけでなく、一人ひとりが持つスキルを未来の需要に合わせる必要があります。 なぜなら、AI活用やロボット導入を進めるためには、それを設計し運用できる人材が絶対に欠かせないからです。
現状のままでは、そうした高度なITスキルを持つ理系人材が300万人以上も不足すると言われています。これまで書類整理などをしていた方が、明日から突然AIのプログラムを組むことはできません。
ここで重要になるのが、新しいスキルを学び直すリスキリングという取り組みです。企業も国も、働く人への教育投資を急がなければ、深刻なスキルミスマッチによって事業が立ち行かなくなるリスクを抱えています。
だからこそ、テクノロジーの恩恵を受けるためには、私たち自身が新しい技術を使いこなす側へと成長しなくてはなりません。能力のズレを埋めていく不断の努力が、これからの社会では必須の条件となります。
人手不足解消のカギは「実質雇用者報酬」と「生産性向上」
本当の意味で人材の偏りをなくすためには、働く人が受け取るお給料、つまり実質雇用者報酬を引き上げることが最も重要です。どんなに現場人材が不足していると叫ばれても、その仕事の待遇が悪ければ誰も働きたがらないからです。
給料が安いから人が来ないという悪循環を断ち切るには、一人ひとりの作業効率を高める生産性向上が欠かせません。実際に、デジタルツールを導入して利益率を改善し、従業員への大幅な賃上げを実現した企業には優秀な人材が集まっています。
一方で、どうしても待遇改善ができない企業は、国内での採用を諦めて海外のオフショア開発などに頼らざるを得ないケースも増えてきました。人が足りない分野へ自然と人が移動するためには、仕事の価値に見合った十分な報酬が支払われる社会構造を作ることが不可欠なのです。
まとめ:2040年を生き残るために個人がすべきこと
経産省の推計が示す「人手不足なし」という言葉に安心せず、私たち一人ひとりがこれからの働き方を見直す時期に来ています。国全体での数字の帳尻が合っていても、事務職が440万人も仕事を失うかもしれないという個人の危機はすぐそこに迫っているからです。
インターネット上の安易な移民不要論に流されることなく、自分自身の市場価値を客観的に見つめ直す必要があります。具体的には、今の仕事にどうすればAIを組み込めるかを考えたり、人手が足りない地方の成長産業へ目を向けたりする柔軟な行動が求められます。
絶対に安泰な職業が存在しないこれからの時代、変化を恐れずに新しいスキルを身につける準備を始めましょう。まずは、ご自身の今の仕事が10年後にどう変わるのか、そのために国や企業のリスキリング制度をどう活用できるか、今日からぜひ調べてみてください。
