2026年、日本の農政が再び大きく揺れ動いています。石破前政権が掲げた「コメ増産路線」から一転、高市早苗政権下で鈴木憲和農水相は「需要に応じた生産」、事実上の「減反(生産調整)」へと大きく舵を切りました。
「令和の米騒動」の記憶も新しい中、なぜ政府は減産へと逆戻りするのか。その背景には、JAや農林族との政治的な駆け引きが見え隠れします。
本記事では、高市政権による2026年の農政転換の全貌と、それが私たちの食卓や食料安全保障に及ぼす影響をわかりやすく解説します。
2026年高市政権の農政転換:石破路線の「増産」から「減反」へ
2026年の年明けとともに発表された新しい農業方針は、多くの国民にとって耳を疑うものでした。石破茂前総理が進めていた「もっとコメを作って海外へ売ろう」という増産路線が、完全に白紙に戻されたからです。
高市早苗政権が新たに打ち出したのは、「需要に応じた生産」というスローガンです。これは非常に聞こえの良い言葉ですが、平たく言えば「国内で食べる分だけ作ればいい」という考え方であり、実質的な減反政策の復活を意味しています。
石破前政権下では、小泉進次郎氏らが主導し、市場原理を取り入れた農業改革が進められていました。コメをあえて余らせるくらい作り、価格を下げてでも輸出競争力をつけることで、日本の農業を成長産業にしようとしていたのです。
しかし、2026年産の方針はその真逆を行くことになります。鈴木憲和農林水産省大臣は、供給過多による価格下落を防ぐことを最優先事項としました。つまり、作る量を意図的に絞ることで、コメの価格を高く維持しようとしているのです。
私たち消費者からすれば、「またお米が高くなるの?」と不安にならざるを得ません。この180度の方針転換がどのような違いをもたらすのか、以下の表に整理しました。
| 項目 | 石破・小泉路線(前政権) | 高市・鈴木路線(2026年現在) |
| 基本方針 | コメ増産・輸出拡大 | 需要に応じた生産(減反回帰) |
| 価格へのスタンス | 市場原理に任せる(安くなる可能性あり) | 需給調整で維持する(高値安定) |
| 主なターゲット | 海外市場・消費者利益 | 国内農家・JA(農協) |
| キーワード | 攻めの農業・構造改革 | 守りの農業・生産調整 |
このように、2026年の農政は「攻め」から「守り」へと完全にシフトしました。次章では、なぜこれほど急激な方針転換が行われたのか、その政治的な裏事情について掘り下げていきます。
なぜ鈴木憲和農水相は生産調整へ舵を切ったのか?JAと既得権益
なぜ、せっかく始まった増産路線を止めてまで、再び生産調整を行う必要があるのでしょうか。その大きな理由の一つとして、鈴木憲和農水相自身のバックグラウンドと、自民党を支える支持基盤の問題が挙げられます。
鈴木大臣は農林水産省の出身であり、いわゆる「農林族」と呼ばれる議員のひとりです。彼らにとって最も避けたい事態は、コメを作りすぎて価格が暴落し、農家の収入が減ってしまうことだと言われています。
もし市場原理に任せてコメ価格が下がれば、小規模な兼業農家は経営が成り立たなくなります。そうなれば、長年自民党を支えてきた地方の農家やJA(農協)といった巨大な組織票が離れてしまう懸念があるのです。
表向きには「現場第一主義」や「農家の生活を守る」という言葉が使われますが、その本音の部分には、選挙対策という政治的意図が見え隠れします。既得権益を守るためには、多少の批判があっても価格を維持する政策のほうが都合が良いという判断が働いたと考えられます。
また、石破氏への政治的な対抗措置という側面も否定できません。前政権が進めた改革を否定し、従来のJA寄りの政策に戻すことで、党内での求心力を高めようとする狙いもあるのでしょう。
しかし、この「農家を守るための高値維持」は、私たち消費者の家計への負担と引き換えに成り立っています。政治的な都合で生産量がコントロールされる現状は、本当に国民全体のためになっていると言えるのでしょうか。
「令和の米騒動」再燃?2026年のコメ価格と「おこめ券」の真実
「今年もお米が高いままなの?」という不安の声が、あちこちから聞こえてきます。残念ながら、2026年産のコメ価格は高止まりする可能性が極めて高いのが現実です。
政府が掲げた「需要に応じた生産」により、2026年は全国で約5%の減産が計画されています。供給量を意図的に絞るのですから、市場原理として価格が下がることは期待できません。
スーパーの棚からお米が消えた、あの「令和の米騒動」のようなパニックこそ起きないかもしれません。しかし、家計をじわじわと苦しめる高値は続くでしょう。
そこで政府が批判をかわすために打ち出したのが、「おこめ券」の配布です。低所得世帯や子育て世帯を対象に、お米と引き換えられるクーポンを配るという政策です。
一見するとありがたい支援策に見えますが、これには「マッチポンプだ」という批判も少なくありません。
- 政府: 減産政策でコメ価格を高く維持する(家計への打撃)
- 政府: 高すぎて買えない人におこめ券を配る(救済措置)
自分で火をつけておいて、自分で消火活動をしているようなものです。おこめ券の原資は私たちの税金ですから、消費者負担という点では根本的な解決にはなっていません。
食料安全保障のリスク:専門家が警告する「農政復古」の代償
目先の価格や支援策だけでなく、もう少し先の未来に目を向けてみましょう。今回の「減反回帰」とも言える農政転換は、日本の食料安全保障にとって大きなリスクをはらんでいます。
多くの専門家が警鐘を鳴らしているのは、「いざという時に食べるものがない」という事態です。
農地というのは、一度耕作をやめてしまうと、すぐに元の畑には戻りません。減産のために農地を減らしてしまうと、災害や海外の紛争で輸入が止まった際、急に増産しようとしても手遅れになるのです。
また、国内のコメ価格が高止まりすれば、外食産業や加工食品メーカーは、安い輸入米へと流れていくでしょう。
- 国内農家の衰退: 国産米が売れ残り、結局は農家の首を絞める
- 輸入依存の加速: 海外の安いお米に頼らざるを得なくなる
- 自給率の低下: 構造改革が進まず、強い農業が育たない
守りの農政は、短期的には農家を保護するように見えます。しかし長期的には、日本の農業そのものを弱体化させ、私たちの食卓を危険にさらす「農政復古」の代償を払うことになるかもしれません。
差別化提案:2026年以降、日本のコメ農業はどうあるべきか
では、私たちはただ指をくわえて見ているしかないのでしょうか。批判するだけでなく、これからの農業はどうあるべきか、建設的な視点を持つことが大切です。
欧米の先進国では、価格を無理に操作するのではなく、「直接支払い」という制度が一般的です。
これは、農作物の価格は市場に任せて安くしつつ、農家が生活できるように国が直接お金(所得補償)を渡す仕組みです。これなら消費者は安くお米を買えますし、農家も安心して農業を続けられます。
また、過剰な在庫を「備蓄米」として国が買い上げ、貧困支援や海外援助に回すという方法もあります。減らすことばかり考えるのではなく、作ったものをどう活かすかという発想の転換が必要です。
私たち消費者にできることは、スーパーで価格を見るだけでなく、その背景にある「政策」に関心を持つことです。「なぜ高いのか」「税金がどう使われているのか」を知ることが、より良い農政への第一歩となります。
まとめ
2026年、高市政権下で進む農政転換は、石破前政権の増産路線から一転、事実上の減反政策へと回帰しました。
農家保護や組織票への配慮という政治的な背景がある一方で、私たち消費者には「コメ価格の高止まり」というツケが回ってきます。おこめ券という一時的な支援策に惑わされず、その裏にある食料安全保障のリスクや、構造的な問題に目を向ける必要があります。
私たちの食卓と未来を守るために、今こそ農業政策の行方を厳しくチェックしていきましょう。
