2025年12月、元参議院議員で外務副大臣も務めた宇都隆史氏が自民党を離党し、参政党への入党を発表しました。
このニュースは、保守層を中心に大きな波紋を呼んでいます。「なぜ長年所属した自民党を離れたのか」「なぜ新天地に参政党を選んだのか」。その背景には、外交・防衛の専門家としての強い信念がありました。本記事では、宇都氏の離党理由や入党の経緯、そして同時に動いた中川俊直氏との関係について、事実に基づき詳しく解説します。
宇都隆史氏が自民党を離党し参政党へ入党した理由
宇都隆史氏が長年所属した自民党を離れ、新興勢力である参政党への入党を決断した背景には、自身の専門分野で貢献したいという強い意志がありました。ここでは、その理由と具体的な経緯について掘り下げます。
外交・防衛の専門性を活かすための決断
今回の移籍における最大の理由は、宇都氏が持つ外交および防衛分野での高度な知見を、政策立案の現場で直接活かすためです。
宇都氏は記者会見において、「外交と防衛でお手伝いができれば意義がある」と語りました。これは、自身の専門性が参政党の掲げる「国益を守る」という理念と合致し、かつその知識を必要とされたことが大きな要因です。
- 自民党時代: 巨大組織ゆえに、個人の専門政策が直ちに反映されにくい側面がある。
- 参政党での役割: 成長途上の組織であり、専門家の知見がダイレクトに政策形成へ繋がりやすい。
元自衛官であり保守政治家としてのキャリアを持つ彼にとって、党の規模よりも「自らの知見で国を護る政策を作れるか」という実利的な環境が重要だったと言えます。
自民党離党から参政党入党までの経緯
今回の動きは、2025年12月のわずか1週間の間に電撃的に進められました。
神谷宗幣代表率いる参政党への合流プロセスは以下の通りです。
- 12月18日: 自民党に離党届を提出(その後受理)。
- 12月23日: 参政党に入党。
- 12月25日: 記者会見にて、中川俊直氏と共に政調会長補佐への就任を発表。
このスピード感からは、両者の間で事前に綿密な政策協定や意思疎通があったことがうかがえます。宇都氏は次期選挙への出馬ではなく、まずは党の政策ブレーンである「政調会長補佐」として、実務面での党勢拡大を支える道を選びました。
宇都隆史氏の経歴と自民党時代の実績
宇都氏の言葉に重みがあるのは、彼が歩んできた「現場」と「国政」の双方における確かなキャリアがあるからです。ここでは、航空自衛隊出身という異色の経歴と、政権与党での実績を振り返ります。
航空自衛官から政治家への転身
宇都隆史氏は、日本の安全保障の最前線を知る実務家出身の政治家です。
防衛大学校(理工学専攻)を卒業後、航空自衛隊に入隊。現場の指揮官クラスである1等空尉まで務め上げました。エリート自衛官としての道を歩んでいましたが、「現場の努力だけでは解決できない国の課題」を痛感し、政治への転身を決意します。
その後、数多くの政治リーダーを輩出してきた松下政経塾に入塾。ここで国家観と政治哲学を磨き上げました。
- 現場経験: 自衛隊での実務経験によるリアルな安保観。
- 政治理論: 松下政経塾で培った広い視野。
この二つの土台が、彼のブレない保守政治家としてのアイデンティティを形成しています。
外務副大臣など政府・党での要職を歴任
政界入りしてからは、参議院議員として2期12年の実績を積み重ねました。
自民党内では茂木派(平成研究会)に所属し、その実務能力の高さから外務副大臣や参議院外交防衛委員長といった要職を歴任。外交・安保のスペシャリストとして党内でも一目置かれる存在でした。
しかし、2022年の参院選(比例区)で惜しくも落選。その後は浪人中でしたが、政治活動は継続していました。
- 主な実績: 平和安全法制の成立尽力、自衛隊の処遇改善など。
- 政治スタンス: 夫婦別姓反対、靖国神社参拝、憲法改正の推進など、明確な保守路線。
落選後もその政策立案能力は錆びついておらず、今回の参政党入りは、即戦力の「政策のプロ」が新たな活動の場を得たことを意味しています。
参政党での役職と今後の政治活動
自民党を離れた宇都隆史氏は、新天地でどのような役割を担うのでしょうか。神谷宗幣代表は、彼を単なる広告塔ではなく、党の頭脳部門である政調会長補佐という実務の要職に据えました。ここでは、具体的な活動内容と次期選挙へのスタンスについて解説します。
政調会長補佐としての役割
宇都氏に求められているのは、政策立案能力の強化、特に外交・防衛分野での具体策の提示です。
参政党は急成長した政党である一方、政権与党経験者が不在で「現実的な政策運用」のノウハウが課題とされてきました。そこに、元外務副大臣であり、実務経験豊富な宇都氏が政調会長補佐として加わることで、党の政策に「厚み」と「現実味」が加わります。
- 期待される役割: 安全保障政策の具体化、対外的な交渉力の強化。
- 神谷代表の狙い: 保守層に響く、実現可能な政策ラインの確立。
まさに「即戦力の参謀」として、党の屋台骨を支える活動が始まります。
次期選挙への出馬意向はあるか?
支持者が最も気にするのは「次の選挙に出るのか」という点ですが、現時点で宇都氏は「国政選挙への出馬意向はない」と明言しています。
2022年の参院選比例区での落選以降、充電期間を経ての入党ですが、まずは自身のバッジ(議席)よりも、党の基盤強化を優先する姿勢です。ただし、政治の世界は流動的です。彼の強固な政治信条と党の方向性が合致し、支持基盤が整えば、状況が変わる可能性もゼロではありません。
参考として、宇都氏の主な政治スタンスを整理しました。これらは参政党の理念と非常に高い親和性を持っています。
| 分野 | 主張・立場 | 備考 |
| 外交・安保 | 防衛力強化、靖国神社参拝に賛成 | 航空自衛隊出身としての核心政策 |
| 家族観 | 選択的夫婦別姓に反対 | 伝統的な家族のあり方を重視 |
| 憲法 | 自主憲法改正に積極的 | 「日本の尊厳と国益を護る会」等で活動 |
中川俊直氏との同時入党とその違い
今回の発表で驚きを持って迎えられたのが、同じく元自民党衆議院議員である中川俊直氏との同時入党です。二人の元自民議員が並んで会見を行いましたが、その背景には明確な違いがあります。
元自民党議員2名の合流が持つ意味
宇都氏と中川氏、二人の経験者が同時に入党したことは、参政党が「受け皿」として機能を拡大していることを示しています。
両名とも政調会長補佐に就任しましたが、これは党が「自民党に不満を持つ保守層」に対し、明確なメッセージを送ったと言えます。「今の自民党では実現できない保守政策を、ここでやる」という意思表示です。
- 共通点: 自民党出身、保守的な政治信条。
- 効果: 党の信頼性向上と、他議員への呼び水効果。
かつての巨大与党から人材が流れてくる現象は、政界の勢力図が変化し始めている証拠とも言えるでしょう。
不祥事による離党だった中川氏との比較
同じ役職での入党ですが、両者の「離党理由」と「党内での立ち位置」は対照的です。
宇都氏は政策実現のための前向きな移籍ですが、中川氏は過去に自身の女性問題などの不祥事で自民党を離党し、落選を経験しています。中川氏は「父(故・中川秀直氏)に勘当同然で反対された」とも語っており、再起をかけた「背水の陣」としての挑戦です。
- 宇都隆史: 政策重視の実務型。クリーンなイメージで党の知見を補強。
- 中川俊直: 知名度と発信力。過去の失敗からの再生ストーリー。
この「実務の宇都、発信の中川」という役割分担が、今後の党運営にどう作用するか注目が集まります。
まとめ:宇都隆史氏の離党と参政党入りの意味
宇都隆史氏の自民党離党と参政党への入党は、単なる一議員の移籍にとどまらない大きな意味を持っています。
- 政策力の強化: 外交・防衛のプロ加入により、党の政策がより現実的かつ具体的になる。
- 保守の再編: 自民党一強だった保守層の受け皿として、参政党の存在感が増す。
- 覚悟の現れ: 国政選挙への出馬を否定してまで、政策立案に注力する姿勢。
「大型艦船(自民党)から、機動力のある新鋭艦(参政党)への乗り換え」とも言えるこの決断。宇都氏が操舵室に入ることで、参政党という船が今後どのような航路を描くのか、日本の保守政治にとって重要な転換点となるでしょう。
