新型転換炉「ふげん」の廃止措置において、トリチウム除去の成功は極めて大きな意味を持ちます。
なぜなら、この作業によって現場の安全性が劇的に向上し、スムーズな解体が可能になったからです。実際に、日本原子力研究開発機構(JAEA)が開発した技術により、2018年度末までに目標を達成しました。現在は特別な防護装備なしで作業ができるレベルにまで達しています。本記事では、世界が注目するこの除去技術の全容を分かりやすく解説します。
新型転換炉「ふげん」廃止措置とトリチウム除去の重要性
「ふげん」の解体を安全に進めるには、系統内に残るトリチウムを確実に取り除く必要があります。
最大の理由は、作業員の「被ばく低減」を徹底するためです。ふげんは「重水」を減速材として使う特殊な「原子炉」でした。この重水にはトリチウムが含まれており、そのまま放置すると解体作業の大きな障壁となります。
- 重水:中性子の速度を落とすために使われる、普通の水より少し重い水。
- 圧力管型:燃料を入れる管が独立している、ふげん独自の構造。
- 被ばく低減:放射線を受ける量を最小限に抑えること。
これらの課題をクリアするため、大規模な「廃止措置」の第一歩として徹底した除去が選ばれたのです。
トリチウム除去の基幹技術「通気乾燥法」とは
JAEAが「技術開発」の末に確立したのが、空気の力を利用した「通気乾燥法」です。
この手法が採用されたのは、環境への負荷を抑えつつ、効率よく「回収」ができるからです。具体的には、配管内に乾燥したガスを循環させ、残った水分を蒸気として吸い出します。
用語解説:ヘリウム系
熱を運んだり、水分を飛ばしたりするために使われるヘリウムガスの循環システム。
選定の決め手となったポイントは以下の通りです。
- 実証試験で証明された高い信頼性。
- 新たな放射性廃棄物をほとんど出さないクリーンさ。
- 複雑な配管の隅々まで乾燥させられる網羅性。
この確かな技術が、「ふげん」の安全な解体を支える屋台骨となりました。
トリチウム除去作業の成果と完了までのスケジュール
「ふげん」における除去作業は、極めて高い「作業効率」で計画通りに完了しました。
徹底した事前準備により、2018年度末には「カランドリアタンク」を含む主要系統の処理が終わっています。これにより、当初の予定通り「安全」に次の解体フェーズへと移行できました。
| 工程 | 実施時期 | 達成した成果 |
| 技術の確立 | 2008年〜 | 除去装置の製作と試験完了 |
| 本格的な除去 | 2012年〜 | 系統内のトリチウムを大幅削減 |
| 作業完了 | 2018年度末 | 防護服なしでの作業が可能に |
この「成果」は、日本の原子力技術が世界トップレベルであることを証明しています。
福島第一原発への技術転用と今後の展望
「ふげん」で磨かれた技術は、今や「福島第一」原子力発電所の廃炉を支える希望となっています。
ふげんの経験は、国内の廃炉作業における貴重な「ひな型」としての役割を果たしているからです。例えば、人が入れない場所での「遠隔切断」技術などは、福島での燃料デブリ取り出しに直結します。
- ひな型:お手本やモデルケースのこと。
- 遠隔切断:ロボットなどを使い、離れた場所から構造物を切り離す技術。
「ふげん」の成功は、決して一箇所に留まるものではありません。日本の廃炉技術を底上げし、より安全な社会を作るための大きな原動力となっているのです。
まとめ:安全な廃炉を支えるトリチウム除去技術
「ふげん」でのトリチウム除去は、日本の廃炉史に刻まれるべき大きな一歩です。通気乾燥法という革新的な技術により、安全かつ効率的な作業環境が実現しました。今後は、除去後の資材を再利用する「クリアランス」制度の活用も期待されています。
この高度な技術と実績は、未来のエネルギー環境を守るための大切な財産です。日本の廃炉技術の最前線について、これからも関心を持って見守っていきましょう。
もし、より詳しい廃炉の進捗や具体的な再利用の事例に興味があれば、ぜひJAEAの公式サイトを確認してみてください。
