栂池リフト事故はなぜ心肺停止に?宙吊りの原因とスキー場の安全対策

スキーリフト宙吊り事故の真実!見えない危険と命を守る対策

楽しいはずの冬のレジャーで発生した痛ましい事故に、ニュースを見て心を痛めている方も多いのではないでしょうか。2026年1月30日、長野県小谷村の栂池マウンテンリゾートにて、リフト利用客が宙吊りとなり心肺停止の状態で見つかるという事故が起きました。

「リフトから落ちたわけではないのに、なぜ命に関わる事態になったのか」と疑問に思うかもしれませんが、その主な原因は落下ではなく、衣服が絡まることによる窒息にあると考えられています。本記事では、今回の事故の経緯と医学的なメカニズム、そして私たちが明日から実践できる具体的な安全対策について詳しく解説していきます。

目次

長野県・栂池マウンテンリゾートのリフト事故概要

事故の経緯と被害状況(20代女性・心肺停止)

今回の事故は、多くのスキーヤーやスノーボーダーで賑わう長野県小谷村の栂池マウンテンリゾートで発生しました。報道によると、被害に遭ったのは外国籍とみられる20代の女性で、スノーボードを楽しんでいた最中の出来事だったようです。女性はリフトの終点で降りることができず、そのまま折り返し地点へと進んでしまいました。

その後、何らかの原因でリフトの椅子(搬器)から体がずり落ちて宙吊りの状態となり、駆けつけたパトロール隊員によって救助されましたが、搬送時には心肺停止の状態だったと報じられています。警察は現在、当時の詳しい状況や原因について慎重に捜査を進めています。現場は一時騒然とし、楽しむための場所で起きた予期せぬ事態に、居合わせた人々にも大きな衝撃が走りました。

現場となった「つが第2ペアリフト」の特徴

事故が発生したのは、同スキー場内にある「つが第2ペアリフト」と呼ばれる2人乗りのリフトです。これはスキー場で一般的に見られる循環式リフトというタイプで、ワイヤーロープが山麓と山頂の間を絶えず周回し、そこに椅子が固定されている構造をしています。

このタイプのリフトは、終点の降り場でお客さんが降りた後、椅子が大きな滑車を回ってUターンし、再び下り線として戻っていく仕組みになっています。通常であればスムーズに折り返す場所ですが、乗客が乗ったままこの折り返しエリアに入ってしまうと、遠心力や予期せぬ揺れが発生しやすくなります。今回のように降り損ねてしまった場合、パトロールや係員が緊急停止措置を行いますが、発見までのわずかなタイムラグが重大なリスクにつながることがあります。

なぜ「宙吊り」が「心肺停止」につながったのか?

リフトの折り返し構造と「降り損ね」のリスク

多くの人が疑問に感じるのは、「リフトから降りられなかっただけで、なぜ宙吊りになるのか」という点ではないでしょうか。循環式リフトの構造上、降り場で降り損ねると椅子はそのままガイドレールに沿って回転し、下り方向へと向きを変えます。このとき、スノーボードを履いたままだとボードの重みや長さが邪魔になり、バランスを崩しやすいのです。

もしここで体勢を崩して座面から滑り落ちてしまうと、完全に落下する手前で、着ているウェアや装備品がリフトの一部に引っかかってしまうことがあります。特にスノーボーダーの場合、足が固定されているため身動きが取りづらく、一度宙吊りになってしまうと自力で体勢を立て直すことは極めて困難です。単なる「降り損ね」であっても、運悪く衣服が絡まることで、身体が空中で拘束される恐ろしい状況を生んでしまいます。

衣服の絡まりによる「絞扼性窒息」の危険性

宙吊り状態が心肺停止という最悪の結果を招いてしまう最大の要因は、医学的に「絞扼性(こうやくせい)窒息」と呼ばれる状態に陥るリスクがあるためです。これは、首周りの衣服や紐などが何かに引っかかり、体重がかかることで気道や血管が強く圧迫される現象を指します。

例えば、ウェアのフードやネックウォーマー、あるいはリュックの紐などがリフトの背もたれや手すりに絡まった状態で体が落下すると、その一点に全体重がかかり、首が絞め上げられます。この状態では、呼吸ができなくなるだけでなく、脳への血流が遮断されるため、わずか数分、早ければ数十秒で意識を失うと言われています。見た目には単にぶら下がっているように見えても、本人は声を出すこともできず、静かに命の危険が迫っているのです。

【米国事例】過去に起きた類似の窒息事故

このような悲劇は、残念ながら今回が初めてのケースではありません。過去にはアメリカのコロラド州ベイルにあるスキー場でも、同様の死亡事故が発生しています。その事例では、リフトの座面が跳ね上がった際に利用者の衣服が隙間に挟まり、そのまま宙吊りとなって窒息に至りました。

この海外の事例からも分かる通り、リフト事故における「窒息」は、国や場所を問わず起こり得る構造的なリスクです。決して稀な偶然だけで片付けられるものではなく、ウェアの選び方や万が一の時の対処法を知らなければ、誰にでも起こり得る可能性があることを私たちは認識する必要があります。単なる不注意と片付けず、メカニズムを正しく理解することが、自分自身を守る第一歩となります。

リフト事故を防ぐために利用者が気をつけるべきこと

ここまでは事故の背景や原因についてお話ししてきましたが、ここからは「どうすれば事故を防げるのか」という具体的な対策について解説します。楽しい一日を安全に終えるために、私たち利用者側でコントロールできるリスクは徹底的に排除しておきましょう。

【服装編】フード・紐・リフト券ホルダーの注意点

まず見直したいのが、ゲレンデに出る際の服装です。今回の事故のように衣服の絡まりが重大な事故につながるケースでは、ウェアから垂れ下がった「紐」や「フード」が凶器になりかねません。特に最近のファッション性の高いウェアや、首元の防寒具には注意が必要です。

例えば、調整用のドローコード(ゴム紐)が長く垂れ下がっていたり、マフラーの端が風になびいていたりしませんか? これらがリフトの座面や手すりの隙間に入り込むと、降りる際に引っかかって抜けなくなる恐れがあります。また、腰からぶら下げるタイプのリフト券ホルダーや、リュックのストラップも同様のリスクがあります。

出発前には、以下のチェックリストを使って、自分や家族の服装を今一度確認してみてください。

チェック項目確認ポイント対策
フード・首元紐が長く垂れていないか?結んで短くするか、ウェアの内側にしまう。
マフラー長いマフラーを使っていないか?ネックウォーマー(筒状)を推奨。マフラーならウェア内へ。
裾(すそ)ウェアの裾紐が出ていないか?調整コードは必ず固定具で留める。
持ち物リュックの紐、パスケースは?ブラブラさせず体に密着させる。紐はまとめる。
髪の毛長い髪がなびいていないか?結んでウェアや帽子の中に入れ込む。

【行動編】リフトを降り損ねた時の正しい対処法

次に重要なのが、万が一「降り損ねた」時の行動です。多くの人は降りるタイミングを逃すと、「早く降りなきゃ!」と焦って無理に飛び降りようとしてしまいます。しかし、これこそが最も危険な行動です。リフトは機械ですから、人間が無理に動こうとすればバランスを崩し、転倒や宙吊りの原因になります。

もし降り場でタイミングを逃してしまったら、絶対に無理に降りようとせず、そのまま座り続けてください。 椅子に乗ったまま折り返し地点を回り、係員に向かって大きな声で「降ります!」「止めてください!」と叫びましょう。係員が気づけばすぐに緊急停止ボタンを押し、安全に誘導してくれます。

「戻ってしまうのが恥ずかしい」「迷惑をかけたくない」と思うかもしれませんが、怪我をするよりはずっとマシです。パニックにならず、「降り損ねたらそのまま乗っているのが正解」と覚えておくだけで、冷静に対処できるはずです。

スノーボーダー特有の注意点とセーフティーバーの活用

特にスノーボーダーの方は、片足だけボードに固定された状態でリフトに乗るため、スキーヤーよりもリスクが高くなりがちです。ボードの重みで足が引っ張られたり、エッジがリフトの支柱や足置き場に引っかかったりしやすい構造だからです。

乗車中は、必ず**セーフティーバー(安全バー)**を下ろしてください。面倒がって下ろさない人も見かけますが、これは命綱と同じです。バーがあれば、万が一衣服が絡まったりバランスを崩したりしても、体が前に投げ出されるのを防いでくれます。また、降り場が近づいたら早めにバーを上げすぎず、指定の位置まで我慢することも大切です。

降りる際は、固定していない方の足をデッキパッド(滑り止め)にしっかり乗せ、まっすぐに滑り降りるイメージを持ちましょう。もし転んでしまっても、後続のリフトが迫ってくる恐怖があるかもしれませんが、頭を低くして係員の指示を待つのが賢明です。

スキー場の安全管理体制と私たちが守るべきルール

索道安全報告書に見るスキー場の取り組み

ここまで利用者の注意点をお伝えしましたが、もちろんスキー場側も安全対策を怠っているわけではありません。鉄道やバスと同じように、リフト(索道事業)も法律に基づき、毎年「索道安全報告書」というレポートを作成・公表することが義務付けられています。

この報告書には、日々の点検内容や、万が一の事故を想定した救助訓練の実施状況、過去のヒヤリハット事例などが細かく記載されています。多くのスキー場では、毎朝の運行前に試運転を行い、センサーの作動確認や搬器(椅子)の点検を徹底しています。

ニュースで事故を見ると「スキー場の管理はずさんなのでは?」と不安になるかもしれませんが、現場ではスタッフやパトロール隊が、利用者の安全を守るために日々厳しい基準で業務にあたっています。私たちが安心して滑れるのは、こうした裏側の努力があるからこそなのです。

事故を避けるための「お客様へのお願い」

しかし、どれだけ設備が整っていても、最終的に事故を防ぐには「利用者とスキー場の協力」が不可欠です。リフト乗り場には必ず「乗車時のご注意」や「お客様へのお願い」といった掲示板があります。これらは単なる形式的なルールではなく、過去の事故教訓から作られた重要なメッセージです。

「搬器を揺らさない」「飛び降りない」「係員の指示に従う」。これらは当たり前のことに思えますが、徹底することで悲惨な事故のほとんどは防ぐことができます。安全は、施設側が提供するだけでなく、私たち利用者がルールを守ることで初めて完成するものです。お互いが役割を果たすことで、スキー場はもっと安全で楽しい場所になるはずです。

まとめ

今回の栂池マウンテンリゾートでの事故は、私たちに「リフトは乗り物であり、正しい乗り方を知らなければリスクがある」という事実を突きつけました。宙吊り事故の原因の多くは落下そのものではなく、衣服の絡まりによる窒息などの二次的な要因です。

  • 紐やフードの管理を徹底する(服装チェック)
  • 降り損ねたら無理に降りず、そのまま乗って助けを呼ぶ
  • セーフティーバーを必ず使用し、ルールを守る

この3つを意識するだけで、事故に遭う確率はぐっと下がります。ニュースを見て恐怖を感じたその気持ちを、ぜひ「正しい安全対策」を知るきっかけに変えてください。

今度スキー場に行く際は、出発前にウェアの紐を確認し、一緒に行く家族や友人とも「降りられなかったら、そのまま乗ってようね」と声を掛け合ってみてはいかがでしょうか。その一言が、大切な人の命を守ることにつながります。

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