大和ハウス子会社が地盤調査データ816件を偽装|13年見つからなかった理由と「安全性に問題なし」の中身、施主が確認すべきこと【2026年7月】

大和ハウス子会社が地盤調査データ816件を偽装

大和ハウス工業は2026年7月24日、子会社の大和ランテック(大阪市)が作成した地盤調査報告書816件に、試験データの書き換えや他現場データの流用といった不適切な処理があったと公表した。期間は2012年10月から2025年3月までの12年余りにおよぶ。

発端は不正の告発ではなく、施工中の現場で外構の路盤が沈下したことだった。会社側は「地盤の再調査が必要な19件を除き安全性に問題はない」と説明しているが、その「確認」が何をどう検証したものなのかは、報道の見出しだけでは読み取りにくい。この記事では公表された事実を整理したうえで、13年間発覚しなかった理由と、対象地域で家を建てた人が実際に取れる行動までを解説する。

この記事でわかること

  • 816件でどんな不正が行われたのか(データ加工と他現場からの流用という2つの手口)
  • 対象は北海道から茨城までの8道県で、宮城344件が最多という地域の偏り
  • 「安全性に問題なし」が意味するのは現地の掘り直しではなく保管データでの構造計算の再実施であること
  • 他営業所の調査対象が約1年3か月分にとどまるという、報道であまり触れられていない論点
  • 2019年の型式適合認定不適合、2021年の営業停止処分と共通する「発覚の仕方」
  • 対象地域で大和ハウスの住宅を建てた人が今すべきこと
目次

大和ハウス子会社・地盤データ偽装の全体像

まず、公表された事実関係を押さえておきたい。舞台となったのは大和ハウス工業の子会社である大和ランテックで、住宅を建てる前に地盤の強さを測り、必要なら地盤補強を設計するための調査を担っている会社だ。建物本体を施工する会社ではなく、その前段にあたる「地面を調べる工程」で不適切な処理が起きた。

試験データの書き換えと他現場からの流用──2つの不正手法

報道と会社発表を突き合わせると、不適切な処理は大きく2種類に分かれる。ひとつは実際に取得した試験データを加工・書き換えたもの、もうひとつは調査していない項目について別の現場のデータを転用したものだ。

具体的には、住宅の地盤調査で最も一般的に使われるスクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)のデータ改ざん、ボーリング柱状図の加工、そして力学試験・粒度試験・透水試験における別現場データの流用が確認されている。要するに「調べていないのに調べたことにした」「都合の悪い数値を書き換えた」という2つの型である。

関与したのは少なくとも4人の担当者で、そのうち1人は「業務量が多く、追加調査の手間を避けたかった」という趣旨の説明をしている。悪意ある偽装というより、現場の処理能力を超えた業務量を前にした手抜きが常態化した、という構図が浮かぶ。

対象は8道県816件、発覚の端緒は「外構路盤の沈下」だった

問題が表に出たきっかけは、内部通報でも監査でもない。大和ランテックが受託し、2024年9月と2025年3月に委託者へ提出した報告書に基づいて施工していた現場で、外構の路盤が沈下したことだった。想定した地盤と実際の地盤が食い違っていたため、報告書をさかのぼって調べたところ複数の案件で不適切な処理が見つかった、という流れである。

公表された事案の骨格を整理すると次のようになる。

項目 内容
公表日 2026年7月24日(大和ハウス工業)
当事者 子会社・大和ランテック(大阪市)の北日本営業所
不適切な報告書 816件
期間 2012年10月〜2025年3月(12年余り)
母数 同営業所が2012年10月〜2025年6月に受託した4681件
関与 少なくとも4人の担当者
手口 試験データの加工・書き換え/他現場データの流用
発覚の端緒 施工中の現場で外構路盤が沈下
再調査が必要 19件(2026年7月21日時点)
今後 弁護士・地盤工学専門家による外部調査委員会が2026年12月に調査完了予定

件数の多さもさることながら、13年という期間の長さが際立つ。次に、その816件がどこに集中しているのかを見ておきたい。

対象は北日本営業所が担当する北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城の8道県で、公表資料に基づく内訳では宮城県が最も多い。

道県 件数 位置づけ
宮城県 344件 最多。全体の約4割
福島県 170件 2番目
岩手県 139件 3番目
北海道・青森・秋田・山形・茨城 上記以外 対象8道県に含まれる

上位3県で全体の8割前後を占める偏りがあり、担当者単位で処理が固定化していた可能性をうかがわせる。組織ぐるみだったのか、特定の担当者の判断だったのかは、外部調査委員会の結論を待つ必要がある。

疑問:なぜ他営業所の調査は「約1年3か月分」だけなのか

会社側は、北日本営業所以外についても調査を行い、不適切な行為は確認されなかったとしている。ただしここには前提がある。他営業所で調べたのは2024年4月から2025年6月までに受託した業務、つまり約1年3か月分にとどまるという点だ。

北日本営業所では13年間にわたって不適切な処理が続いていた。それと同じ物差しで他営業所を見たわけではない以上、「他は問題なし」という結論をそのまま全期間に広げて読むことはできない。SNS上でも不動産証券化に携わる立場から「対象期間が1年分だけでよいのかは率直に疑問」といった指摘が出ており、調査範囲の妥当性は外部調査委員会が向き合うべき論点のひとつになるとみられる。

「安全性に問題なし」は何を確認したのか

今回の発表でもっとも誤解されやすいのが、安全性に関する説明だ。「問題なし」という言葉だけが独り歩きすると、現地で地盤を掘り直して確認した結果だと受け取られかねないが、実際に行われたのはそれとは異なる。

保管データによる構造計算の再実施と、再調査19件の境界線

816件のうち、大和ハウスグループが設計・建設した物件は581件。これらについては、当時保管されていた調査データをもとに構造計算をやり直し、第三者機関による検証も進めるという方法で安全性を確かめている。その結果、地盤の再調査が必要と判断されたのが19件(2026年7月21日時点)で、それ以外は安全性に問題はないと確認された、という説明だ。

つまり「全棟で地盤を測り直した」のではなく、「残っていたデータで計算し直し、それでも成り立たないものを再調査に回した」という順序になる。この違いは押さえておきたい。

816件がどう仕分けられたのかを図で整理すると次のようになる。

図解:816件はどう仕分けられたか

不適切な地盤調査報告書 816件

大和ハウスグループが設計・建設 581件

保管データで構造計算を再実施+第三者機関の検証

グループ外から受託 110件

委託者側で検証が進行中

安全性に問題なしと確認

581件のうち19件を除く分

地盤の再調査が必要 19件

2026年7月21日時点

図の右側にあるとおり、グループ外から受託した分は大和ハウスの手を離れており、確認の進み方が別系統になっている点が見落とされやすい。

グループ外受託110件は委託者側で検証中

816件のうち110件は、大和ハウスグループ以外の事業者から受託した調査だ。この分は委託者側で検証が進められている段階で、報道によれば約半数はまだ安全性の確認に至っていないとされる。

この110件について注意したいのは、住まい手からすると「大和ハウスの家ではないのに、地盤調査だけ大和ランテックだった」というケースがありうることだ。ハウスメーカー名だけで自分に関係あるかどうかを判断できるとは限らない。

Q. 「安全性に問題なし」と発表されたなら、対象物件でも心配はいらないのですか。

A. 現時点で会社が確認したのは、あくまで大和ハウスグループ施工の581件のうち19件を除く分についてです。確認の方法も現地での掘り直しではなく、保管されていた当時のデータを使った構造計算の再実施と第三者機関の検証です。グループ外受託の110件は委託者側で検証中であり、全体の最終的な評価は2026年12月予定の外部調査委員会の報告を待つ段階にあります。

安全性の説明が「どこまでを、どの方法で確かめたものか」を押さえたところで、次はより根本的な疑問に移りたい。なぜ13年も続いたのか、である。

なぜ13年間も発覚しなかったのか──「手間を避けたかった」を生んだ現場の構造

816件という数字は、1年あたりに直すと60件を超える。特定の月に集中したのではなく、長期にわたって繰り返されてきたことを意味する。

4人の担当者が語った業務量と追加調査の手間

関与したとされる担当者は少なくとも4人。うち1人は、業務量が多く追加調査の手間を避けたかったという趣旨の説明をしている。地盤調査で想定外の数値が出れば、通常は追加の試験や再測定が必要になり、そのぶん納期も費用も膨らむ。その負荷を回避する最短ルートが、数値の書き換えや他現場データの流用だった、という構図だ。

これは個人の資質だけでは説明しきれない。同じ動機が13年間、複数の担当者にまたがって成立し続けたという事実そのものが、業務量の割り当てとチェック体制の設計に問題があったことを示している。

地盤調査が「見えにくい工程」になる理由

地盤調査は、建物が完成してしまえば外から検証できない工程だ。基礎を打ち、その上に家が建ってしまえば、報告書に書かれた数値が実測なのか流用なのかを住まい手が知る術はほとんどない。不動産の評価に携わる立場からも「周辺の地盤は一応調べるが、データを改ざんされていればわからない」との声が出ている(編集部注:SNS上の投稿で、公式の見解ではない)。

加えて、住宅の地盤調査で主流のスクリューウエイト貫入試験は、機材も工程も比較的簡便で、1日に複数現場を回れる。処理の速さが求められる一方で成果物が数値の紙一枚に集約されるため、書き換えの誘因と発見の難しさが同居しやすい。今回、告発でも監査でもなく「現場が沈んだ」ことでしか露見しなかったのは、この工程の性質を象徴している。

外部調査委員会が12月に出す結論の見どころ

大和ハウス工業は弁護士と地盤工学の専門家による外部調査委員会を設置し、2026年12月の調査完了を予定している。国土交通省と各地の特定行政庁にも報告済みだ。

見どころは3つある。第1に、4人の担当者の判断にとどまるのか組織的な関与があったのか。第2に、他営業所について約1年3か月分という調査範囲が妥当だったのか、必要なら期間をさかのぼるのか。第3に、13年間チェックが働かなかった内部統制の構造をどう説明するかである。

Q. 外部調査委員会の報告は12月とのことですが、それまで何もわからないのですか。

A. 最終的な原因分析と再発防止策は12月予定ですが、対象物件の特定と安全性の確認、再調査が必要と判断された物件への対応はそれと並行して進められています。会社は対象となる顧客へ個別に連絡するとしており、12月まで何の情報も出ないという性質のものではありません。

そしてこの「発覚の仕方」は、大和ハウスにとって初めてではない。

繰り返される不祥事──型式適合認定・資格不正との共通点

大和ハウス工業では、この10年ほどの間に建築や資格をめぐる問題が複数明らかになっている。今回の地盤調査データ問題を単独の事故として読むと見えないものが、並べると浮かび上がる。

2019年・2021年に何があったか

過去の主な事案を時系列で整理する。

時期 内容 発覚の端緒
2019年4月 戸建て・共同住宅で型式適合認定と異なる仕様の基礎1878棟、防火基準に不適合のおそれがある共同住宅73棟など計約2078棟が判明 2016年12月の内部通報
2021年12月 実務経験が足りない社員が施工管理技士の技術検定を受験・取得していた問題で、建設業法に基づき12月2日から22日間の営業停止処分(電気工事業20都道府県・管工事業5県の民間工事が対象) 2019年12月の内部通報
2026年7月 子会社・大和ランテックの地盤調査報告書816件で、データ加工と他現場データの流用 施工中の現場で外構路盤が沈下

3つを並べると、内容は基礎・資格・地盤とばらばらだが、共通する要素がひとつある。

端緒はいつも自浄作用ではなく、内部通報か現場の異変

2019年の型式適合認定不適合は2016年12月の内部通報が起点で、公表まで2年以上かかった。2021年の営業停止処分につながった資格不正も、端緒は2019年12月の内部通報だった。そして今回は通報ですらなく、実際に路盤が沈むという物理的な異変で表面化している。

いずれも定期的な監査や自主点検で先回りして見つけたものではない。ここが問題の核心で、外部調査委員会が向き合うべきは「816件をどう補償するか」だけでなく、「なぜ内部のチェックが3度とも先に働かなかったのか」という点になる。

SNS上では「また大和ハウス」「偽装体質ではないか」といった過去とつなげた批判も出ている(編集部注:これらは個人の投稿であり、会社の見解や確定した評価ではない)。裏を返せば、12月の報告で組織風土の問題にどこまで踏み込めるかが、信頼回復の分かれ目になる。

対象地域で家を建てた人が確認すべきこと

ここまでの整理を踏まえ、実際に北海道から茨城までの8道県で住宅を建てた人が取れる行動をまとめる。

通知を待つか、公式窓口に確認するか

大和ハウス工業は、対象となる顧客へ順次個別に連絡するとしている。まず基本になるのは、この通知を受け取れる状態にしておくことだ。引っ越しや連絡先の変更があると届かない可能性があるため、心当たりがある場合は自分から確認したほうが早い。

問い合わせ先については、SNS上で電話番号が出回っているが、本記事では一次情報として確認が取れていないため掲載しない。大和ハウス工業および大和ランテックの公式サイトに掲載されたお知らせと、そこに記載された窓口を必ず参照してほしい。番号をSNSの転載で知って掛けるのは、番号の取り違えという意味でも避けたほうがよい。

なお、確認の際に手元にあると話が早いのは、建築時の地盤調査報告書、地盤改良工事の有無がわかる書類、引き渡し年月と施工店名である。前述のとおり大和ハウス以外の住宅でも地盤調査だけ大和ランテックというケースがありうるため、「うちは違うメーカーだから」で切り捨てないほうがよい。

不同沈下が疑われる家屋のサイン

あわせて、住まいの状態を自分で見ておくこともできる。地盤が原因で建物が不均等に沈む「不同沈下」は、進行すると生活のなかで気づける変化が出ることがある。以下は住宅診断で一般に挙げられる着眼点で、これに当てはまるからといって直ちに地盤の問題があると決まるわけではない点は押さえておきたい。

図解:不同沈下が疑われるときの一般的な着眼点

建物の外まわり

基礎に斜めのひび割れ/外壁の目地のずれ/建物と土間コンクリートのすき間

室内

建具が閉まりにくい/床の傾き/サッシと枠のすき間

外構・敷地

駐車場やアプローチの沈み/雨水ますまわりの段差/排水の流れの変化

いずれも経年変化や施工上の別要因でも起こりうる。判断は専門家に委ねる。

今回の発覚の端緒が外構路盤の沈下だったことを思い出したい。外構は建物本体より先に変化が出やすく、日常的に目に入る場所でもある。

第三者機関に個別相談するという選択肢

会社からの通知や説明に納得できない場合、住宅の性能や瑕疵をめぐる相談は、住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)のような公的な相談窓口を利用する道もある。売却や住み替えを検討している場合は、対象物件かどうかの確認状況を書面で残しておくと、後の説明がしやすくなる。

大和ハウス地盤調査データ問題のよくある質問

ここまでの内容を踏まえ、読者から多く出そうな疑問を整理しておく。

Q. 大和ハウス施工の住宅ではないのですが、対象になる可能性はありますか。

A. あります。816件のうち110件はグループ外の事業者から受託した調査で、この分は委託者側で検証が進められています。ハウスメーカーが大和ハウスでなくても、地盤調査を大和ランテックが担当していれば関係する可能性があるため、8道県で2012年10月以降に建てた住宅は、地盤調査報告書の作成者名を確認しておくとよいでしょう。

Q. 再調査が必要とされた19件は、これからどうなるのですか。

A. 現時点で公表されているのは「地盤の再調査が必要」という判断までで、具体的にどのような対応になるかは個別の調査結果次第です。一般論として、地盤の再調査で当初の想定と異なる結果が出た場合は補強工事などの検討に進みますが、今回の19件について工事内容が公表された事実はありません。会社からの個別説明を待つ段階です。

Q. 売却を考えています。資産価値への影響はありますか。

A. 影響の有無は個別事情によるため一律には言えません。ただ、安全性が確認された物件であっても、対象案件であること自体が買い手にとって説明を要する事項になる可能性はあります。会社から安全性確認の結果について書面を受け取れるのであれば、保管しておくのが実務的です。

Q. 連絡が来なければ、うちは対象外と考えてよいですか。

A. 対象顧客への個別連絡は順次行うとされているため、時点によってはまだ届いていないだけという可能性があります。また転居などで連絡が届かないことも考えられます。心配な場合は待つのではなく、公式サイトのお知らせに記載された窓口へ自分から確認するのが確実です。

Q. 8道県以外でも不正があった可能性はないのですか。

A. 会社は北日本営業所以外でも調査を行い、不適切な行為は確認されなかったとしています。ただしその調査対象は2024年4月〜2025年6月に受託した業務、つまり約1年3か月分です。北日本営業所で13年続いていた事案であることを踏まえると、この調査範囲が十分だったかは外部調査委員会の判断を待つ必要があります。

Q. 今回の問題で建物が倒壊する危険はありますか。

A. 不適切な処理があったのは子会社が作成した地盤調査報告書であり、建物本体の施工不良が公表されたわけではありません。大和ハウスグループ施工の581件については、再調査が必要な19件を除き安全性に問題はないと確認されたとしています。倒壊の危険を前提にした説明は現時点の公表内容とは異なります。

疑問の多くは、最終的に外部調査委員会の報告と個別の確認結果に集約されていく。

まとめ

大和ハウス工業が2026年7月24日に公表した子会社・大和ランテックの地盤調査データ問題は、816件・13年という規模もさることながら、発覚の仕方に本質がある。内部の点検ではなく、現場の路盤が沈んだという物理的な異変でしか表に出てこなかった。

安全性については、グループ施工581件のうち19件を除いて問題なしと確認されたが、その確認は保管データによる構造計算の再実施であり、現地の掘り直しではない。グループ外受託の110件は委託者側で検証中で、他営業所の調査も約1年3か月分にとどまる。「問題なし」の範囲を正確に読むことが、いま必要な態度だ。

対象は北海道から茨城までの8道県。心当たりのある人は、通知を待つだけでなく公式サイトの窓口を確認し、建築時の地盤調査報告書を手元に用意しておきたい。外部調査委員会の報告は2026年12月の予定で、組織的な関与の有無と、3度目となる「内部で見つけられなかった」構造にどう答えるかが焦点になる。

参考情報

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