2025年12月、JリーグはFC町田ゼルビアの黒田剛監督に対し「けん責処分」を下しました。
天皇杯優勝という快挙の裏で、指導者としての振る舞いが厳しく問われています。今回の処分は、監督個人だけでなくクラブの組織運営にも深く関わる問題です。
本記事では、不適切発言の真相や「パワハラ」と認定されなかった法的根拠、そして続投が決まった新体制の今後を解説します。公式資料に基づき、町田ゼルビアが直面する課題を紐解いていきましょう。
Jリーグが認定した黒田剛監督の不適切発言と「けん責処分」の内容
Jリーグは、黒田監督の言動がリーグの掲げる社会的規範に反すると判断しました。科された「けん責処分」とは、始末書を提出させて厳重に注意し、将来を戒める最も軽い懲罰です。しかし、クラブの顔である指導者が公式に処分を受ける事態は極めて重いといえます。
今回の規律違反として認定された主な内容は、選手やスタッフへの心理的圧迫です。特に、意見を異にする者を切り捨てるような発言が、強い言葉で繰り返されていました。
不適切行為の具体例
- 「造反者」という言葉の使用:自身の考えに同調しない選手を「造反者」と呼び、心理的に孤立させた。
- スタッフへの暴言:チーム運営に関わるコーチやスタッフに対し、威圧的な態度で怒鳴る行為。
- 懇親会での不適切発言:リラックスした場であるはずの懇親会で、特定の人物を排除するような発言。
なぜ「パワハラ」ではないのか?Jリーグの判断根拠と3要素
多くのファンが疑問に感じたのは、「これほどの言動がありながら、なぜパワハラではないのか」という点です。Jリーグおよび特別調査委員会は、パワーハラスメントの定義に照らして慎重に判断しました。
結論として、言動自体は不適切であるものの、職務上の指導の範囲を完全に逸脱したとまでは断定できないとされました。これは、**日本サッカー協会(JFA)**や厚生労働省が定める「パワハラ3要素」に基づいています。
パワハラ認定の3要素と今回の判断
| 認定要素 | 内容 | 今回のケースの判断 |
| ① 優越的な関係 | 監督と選手・スタッフという立場 | 該当する(監督の強い権限) |
| ② 業務上の必要性 | 指導として許容される範囲か | グレー(指導の一環とも取れる) |
| ③ 尊厳・環境の悪化 | 相手が苦痛を感じ、環境が害されたか | 認定に至らず(法的証拠の不足) |
FC町田ゼルビアのガバナンス欠如と「内部統制」の不備
今回の問題でJリーグが最も厳しく指摘したのは、クラブの管理監督体制の甘さです。黒田監督個人の問題以上に、組織としてのガバナンスが機能していなかった点が重視されました。
具体的には、不適切な言動に関する内部通報があったにもかかわらず、クラブ側がこれを軽視。適切な調査や是正を行わなかったことが、事態の長期化を招いたと分析されています。
Jリーグが指摘した「調査対応の不備」5項目
- 内部通報の放置:被害の訴えがあった初期段階で適切な対応をとらなかった。
- 客観性の欠如:調査過程において、クラブ関係者や顧問弁護士が強く介入した。
- 通報者への配慮不足:通報した人物が不利益を被るような環境を放置した。
- 内部統制の機能不全:現場の暴走を止めるべき経営陣のチェック機能が働かなかった。
- 事実の隠蔽懸念:調査委員会に対し、情報の開示が不十分であった。
【実績と信頼】天皇杯制覇と2027年までの契約更新の意義
不祥事に揺れる一方で、黒田監督がピッチ上で残した実績は圧倒的です。J1昇格初年度での上位進出、そしてクラブ史上初の主要タイトルとなる天皇杯優勝を成し遂げました。
この功績を評価し、藤田社長をはじめとする経営陣は、2026-27シーズンまでの契約更新を決定しました。青森山田高校時代から築き上げた勝負強さは、町田のブランド価値を大きく高めたといえます。今後は「勝てば何をしてもいい」という風潮を払拭し、高い倫理観を伴った勝利が求められます。
黒田監督就任以降の年度別成績
| 年度 | 所属 | 主な成績 | 備考 |
| 2023 | J2 | 優勝(J1昇格) | 黒田体制スタート |
| 2024 | J1 | 3位 | アジア(ACL)進出権獲得 |
| 2025 | J1 | 5位 / 天皇杯優勝 | クラブ初の主要タイトル獲得 |
まとめ:信頼回復に向けた町田ゼルビアの今後の歩み
今回の騒動は、急成長を遂げるクラブが避けて通れない「組織の歪み」が露呈した結果といえます。FC町田ゼルビアは現在、外部専門家を含めたコンプライアンス委員会の設置など、再発防止策を急いでいます。
真の信頼回復のためには、ピッチでの勝利だけでなく、透明性の高い内部統制の確立が不可欠です。黒田監督が新しい契約期間でどのような変革を見せるのか、ファンは期待と厳しい目の両方で注目しています。
新しく生まれ変わる町田ゼルビアの取り組みを、あなたも一緒に見届けていきましょう。公式サイトでの続報や、次シーズンの戦いから目が離せません。
クラブの最新の改革方針や試合スケジュールについては、FC町田ゼルビア公式サイトで詳細を確認してみてください。
