ハウスメーカー倒産が前年比9割増【2026年上半期】施主を守る完成保証制度と3つの防衛策

ハウスメーカー倒産が前年比9割増【2026年上半期】施主を守る完成保証制度と3つの防衛策

2026年上半期(1〜6月)、注文住宅を手がけるハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増しました。東京商工リサーチの集計では倒産は118件で、前年同期から約9割(87.3%)増と、ほぼ2倍のペースです。旺盛だった住宅需要を支えてきた業界で何が起きているのか。本記事は、TSR・帝国データバンクなどの公表データで倒産の実態と背景を整理したうえで、「もし自分の家を建築中に施工会社が倒れたら」というリスクと、施主(発注者)が契約前にできる防衛策までをまとめます。

この記事の位置づけ

数値は各調査機関の公表値に基づく上半期集計で、今後の通期発表などで更新される可能性があります。個別企業の経営状況や制度の適用条件は、公式発表・契約書面をご確認ください。SNS上でも「自分が建てている家は大丈夫か」という施主の警戒感が強まっていますが、本記事は特定企業の危険性を断定するものではありません。

この記事でわかること

  • 2026年上半期にハウスメーカー倒産が前年比9割増(118件)となった実態
  • 象徴的な事例となったアエラホームの民事再生の要点
  • 資材高・金利上昇・着工減という「3つの構造要因」
  • 建築中に施工会社が倒産すると施主が被る2つの被害
  • 施主を守る「住宅完成保証制度」の仕組みと、契約前にできる3つの防衛策
目次

2026年上半期の倒産データ:118件・前年比87.3%増の実態

東京商工リサーチ(TSR)によると、2026年上半期の木造建築工事業(いわゆるハウスメーカー・工務店)の倒産は118件で、前年同期比87.3%増と大きく跳ね上がりました。上半期で100件を超えたのは2013年(106件)以来13年ぶりで、住宅業界の変調がはっきりと数字に表れています。

上半期(1〜6月) 木造建築工事業の倒産件数 メモ
2004年 198件 1989年以降の上半期で過去最多
2013年 106件 上半期で100件超え
2025年 約63件 前年同期(118件÷1.873の水準)
2026年 118件 前年同期比+87.3%(13年ぶりの100件超)

直接的な倒産原因の9割弱が「販売不振」と「赤字累積」

TSRの集計では、118件の原因別内訳は販売不振が85件(構成比72.0%)、赤字累積の既往のシワ寄せが20件(同16.9%)で、この2つだけで約9割を占めます。つまり表面的な引き金の大半は「売れない・稼げない」という業績不振であり、突発的な事故ではありません。その背景にある構造的な要因は、後半の「3つの構造要因」で詳しく見ていきます。

建設業全体でも「撤退」は5,937件でリーマン超え

苦境はハウスメーカーだけではありません。帝国データバンク(TDB)によると、2026年上半期の建設業の倒産は1,043件(前年同期比+5.8%)。これに休廃業・解散4,894件(同+27.8%)を加えた「撤退(倒産+休廃業・解散の合計)」は5,937件にのぼり、リーマン・ショック直後の2009年(5,811件)を超えて過去最多となりました。とりわけ木造建築工事は947件と業種別で最多で、上半期に900件を超えたのは9年ぶりです。倒産だけでなく、体力のあるうちに事業をたたむ「静かな撤退」も広がっている点が今回の特徴です。

象徴例:アエラホームの民事再生(負債61.6億円)

今回の局面を象徴する事例が、中堅ハウスメーカーのアエラホーム(東京)です。同社は2026年7月16日、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。負債総額は約61億6,100万円、債権者は約564社にのぼります。1963年創業で、売上高はピークの2013年3月期に約210億円ありましたが、引き渡し棟数の減少などで2025年5月期は約85.6億円まで縮小し、4期連続の赤字を計上していました。まさに「販売不振+赤字累積」という今回の倒産原因の典型です。

契約中の家はどうなる? ロゴスHDが承継し完工予定(※例外的な幸運のケース)

アエラホームのケースでは、東証グロース上場のロゴスホールディングスのグループがスポンサーとなり、100%子会社のLHD-1が吸収分割で注文住宅事業を承継する予定(効力発生は2026年10月1日予定)で、契約中の新築請負は継続・完工される見通しと報じられています。ただし、これはスポンサー企業が名乗り出た比較的幸運なケースであることに注意が必要です。一般には、施工会社が倒産すると工事はそのままストップし、施主が大きな損害を被る事例が少なくありません。次章では、その「一般的な被害」を具体的に見ていきます。

(アエラホームの民事再生の詳細は、アエラホーム倒産はなぜ?民事再生で建築中の施主への影響とロゴスHD承継もあわせてご覧ください。)

なぜ今ハウスメーカーが倒れるのか:3つの構造要因

直接の引き金は「販売不振」ですが、その裏には複数の逆風が同時に吹く構造的な要因があります。TDB・TSRの分析をもとに、大きく3つに整理します。

① 資材・土地の高騰

建築資材や土地の価格が上がり、1棟あたりの単価が上昇。ナフサ由来の建材の不足・高騰も中小の資金繰りを圧迫する。

② 住宅ローン金利の上昇

長期金利は約29年ぶりの水準(2.8%程度)まで上昇。住宅ローン金利も上向き、購入検討層の購買意欲が冷え込む。

③ 新築着工の減少

単価高と金利高で受注が細り、着工数が減少。売上が立ってもコスト増で利益が残らず、体力の弱い会社から脱落する。

資材・土地の高騰で1棟あたり単価が上昇

建材・土地の値上がりは販売価格に転嫁されますが、上げすぎれば売れず、抑えれば利益が消えるというジレンマを生みます。大規模な建売では、プロジェクト検討時と販売開始時でコストや購買層の想定に開きが生じ、採算が崩れやすくなっています。

住宅ローン金利の上昇(長期金利は約29年ぶり水準)で購買意欲が低下

住宅ローン金利の上昇は、そのまま毎月の返済額に響きます。物価高で実質賃金が伸び悩むなか、金利上昇が重なれば購入のハードルは一段と上がります。実際、家計の悪化は個人破産の増加にも表れており、2025年の個人(自然人)破産は約8万3,100件(速報値)と、2012年以来13年ぶりの高水準となりました。これは住宅ローン破綻に限った数字ではなく個人破産全体の件数ですが、物価高と金利上昇で家計が締め付けられている状況を映しています。

新築着工の減少で「売上が立っても利益が出ない」構造に

単価高・金利高で受注が細り、マンションやリノベーション物件との競合も激化。工期の延長で入金が遅れれば手元資金が枯渇し、受注があっても資金繰りが回らないという事態に陥りやすくなります。この3つが同時に効くことで、中小・中堅ハウスメーカーの倒産が加速しました。

建築中に倒産したら? 施主が直面する2つの甚大な被害

施主にとって最も怖いのは、家を建てている最中に施工会社が倒産することです。アエラホームのようにスポンサーがつかなければ、一般には次の2つの被害に直面します。ここが「完成保証制度」を知っておくべき理由です。

被害① 前払金が戻ってこない

注文住宅は着手金・中間金など工事の進行に合わせて先払いするのが一般的。倒産すると、まだ工事が終わっていない分に対して払ったお金が回収できなくなる恐れがある。

被害② 引き継ぎの「割増コスト」

別の建築会社に工事を引き継いでもらう際、現場調査ややり直しで追加費用が発生しやすい。前払金の損失と合わせ、二重の負担になりかねない。

つまり「支払ったお金が消える」「完成までに余計なお金がかかる」という二重のダメージが起こりうるのです。この損害を和らげる仕組みが、次に紹介する住宅完成保証制度です。

施主を守る「住宅完成保証制度」とは

住宅完成保証制度は、注文住宅の建築中に請負者(施工会社)が倒産した場合に、施主が支払った工事費や、工事を引き継ぐ会社への追加費用を保証し、住宅の完成までをサポートする制度です。万一のときの「命綱」といえます。

タイプ 仕組み ねらい
保険タイプ 倒産などで工事が続けられなくなった際、保証会社が損失分を補填する 前払金の損失・引き継ぎ費用をカバー
エスクロータイプ 請負代金を保証会社に預け、工事の出来高に応じて職人・協力会社へ支払う お金が施工会社を素通りせず出来高に紐づく

保証の対象と限度額(請負金額の20〜30%が目安)

保証されるのは、倒産した会社に前払いしていた契約金・中間金など未完成分に対する費用の一部と、工事を引き継ぐ際の追加費用です。一般的な保証限度額の目安は工事請負金額の20〜30%程度で、請負金額が2,000万円なら400万〜600万円程度が上限のイメージです。全額が戻るわけではない点は理解しておきましょう。

加入は「経営健全性」の客観的な証拠になる

この制度は、施工会社が保証会社の厳しい経営審査を通らないと利用できません。裏を返せば、完成保証制度を使えること自体が、その会社の財務が一定の基準を満たしている客観的な証拠になります。契約前に「完成保証制度に加入しているか」を確認することは、会社選びのふるいとしても有効です。

契約前にできる3つの防衛策

倒産の波は個人の力では止められませんが、被害に遭う確率は事前の確認で下げられます。契約前にできる3つの防衛策を、チェックリストにまとめました。

防衛策 確認すること
① 完成保証制度への加入 その会社が住宅完成保証制度に加入しているか。加入していれば審査を通った健全性の目安にもなる
② 段階払いの割合 着手時・上棟時・引渡時などの支払い比率。工事の進み具合に対して過度な前払いを求められていないか
③ 財務・受注の健全性 赤字が続いていないか、施工実績や受注動向。知名度や売上の大きさだけで判断しない

① 完成保証制度への加入を必ず確認する

前章のとおり、完成保証は万一のときの命綱です。「加入しているか」「保険タイプかエスクロータイプか」「限度額はいくらか」を契約前に必ず確認しましょう。加入していない会社の場合は、その理由も含めて説明を求めると安心です。

② 段階払い(着手金・中間金)の割合をチェックする

注文住宅は工事の進行に応じて分割で支払うのが一般的です。着手時に大きな割合を先払いさせる契約ほど、倒産時に回収できないお金が増えます。「工事の出来高に対して支払いが先行しすぎていないか」を目安にし、極端な前払いを求められた場合は危険サインと考え、条件の見直しや他社比較を検討しましょう。

③ 財務健全性(赤字継続・受注動向)を見る

今回の倒産原因が「販売不振・赤字累積」だったように、業績の悪化は倒産の前兆になり得ます。知名度や売上高の大きさだけで安心せず、赤字が続いていないか、施工実績や直近の受注状況はどうか、といった財務・事業の健全性にも目を向けることが大切です。

よくある質問(FAQ)

契約したハウスメーカーが倒産したら、家はもう建たないのですか?

必ずしもそうとは限りません。アエラホームのようにスポンサー企業が事業を承継すれば工事が継続されるケースや、住宅完成保証制度に加入していれば別の会社が引き継いで完成まで進められるケースがあります。ただしスポンサーがつかず保証もない場合は、工事がストップし施主が損害を被る恐れがあるため、契約前の備えが重要です。

完成保証制度に入っていれば、払ったお金は全額戻りますか?

全額が戻るわけではありません。一般的な保証限度額の目安は工事請負金額の20〜30%程度で、請負金額2,000万円なら400万〜600万円程度が上限のイメージです。前払金の損失や引き継ぎの追加費用の「一部」をカバーする仕組みと理解しておきましょう。

大手ハウスメーカーなら倒産の心配はいらない?

知名度や売上高の大きさだけで安心はできません。今回倒産したアエラホームも売上ピーク時は約210億円の中堅でした。大切なのは会社の規模より財務の健全性で、赤字が続いていないか、完成保証制度に加入しているか、受注や施工の実績はどうか、といった点を確認することです。

今後もハウスメーカーの倒産は増えますか?

断定はできませんが、資材・土地の高騰、住宅ローン金利の上昇、新築着工の減少という逆風はすぐには解消しにくく、業界では警戒感が続いています。これから家を建てる方は、本記事の3つの防衛策を踏まえて会社選びと契約条件を慎重に確認することをおすすめします。

まとめ

2026年上半期、ハウスメーカーの倒産は前年比約9割増の118件と急増し、建設業全体でも「撤退」は過去最多を更新しました。背景にあるのは、資材・土地の高騰、住宅ローン金利の上昇、新築着工の減少という3つの逆風です。アエラホームのようにスポンサーがつく幸運なケースばかりではなく、建築中の倒産は「前払金の損失」「引き継ぎの割増コスト」という二重の被害を招きかねません。だからこそ、施主は住宅完成保証制度の有無を確認し、段階払いの割合や会社の財務健全性をチェックする——この3つの防衛策が、大切な家づくりを守る現実的な備えになります。

※本記事は2026年7月時点の東京商工リサーチ・帝国データバンク等の公表データおよび各社報道に基づく整理です。倒産件数や個別企業の状況は今後の発表で更新される可能性があります。制度の適用条件・保証内容は保証会社や契約により異なるため、実際の判断は公式発表・契約書面・専門家への相談のうえで行ってください。

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