不法残留者8.5%減・6万8,488人――高市政権の外国人共生策が示す現在地

高市首相の外国人共生策とは、2026年1月に高市政権が取りまとめた「総合的な外国人政策」を指します。合法的な在留外国人との共生推進と、不法残留・ルール逸脱への厳正対処を両輪とする方針が特徴です。2026年3月27日、出入国在留管理庁が令和8年1月1日時点の不法残留者数を発表。前年比8.5%減の6万8,488人となり、2年連続の減少が確認されました。数字は政権の成果を示す一方で、現場では依然として構造的課題が残っています。
【結論】2年連続減少の数値と、残された課題
不法残留者数は2年連続で減少し、直近ピーク時(2013年前後の約6万人台前半からの上昇局面)との比較でも管理体制の強化が実績として表れています。
一方で、現場の専門家は「統計上の改善が、構造的問題の解消を意味するわけではない」と指摘します。在留期限管理の甘さ、技能実習制度の出口設計の欠如、言語・情報格差という3つの要因は依然として現役の課題です。政権の方針評価と現場課題の両方を正確に把握することが、今後の政策議論の前提となります。
何が起きたか:2026年1月1日時点の最新統計
全体数と前年比の内訳
出入国在留管理庁(以下、入管庁)は2026年3月27日、令和8年1月1日時点における不法残留者数の最新統計を公表しました。総数は6万8,488人。前年同期(7万4,863人)から6,375人(8.5%)の減少となり、2年連続での減少傾向が確認されました。
在留資格別では「短期滞在」(観光・商用等)での不法残留が4万1,607人と最多で、全体の約60%を占めます。ただし前年比では約4,000人の減少となっており、この区分での対策効果が数値に反映されています。
国籍別トップ10:ベトナム最多、スリランカのみ増加
国籍別で最多はベトナム国籍の1万1,601人(前年比▲2,695人、約19%減)。次いでタイ1万907人(同▲430人)、韓国1万20人(同▲580人)と続きます。台湾籍は2,601人と前年比12.8%の大幅減となりました。
注目すべきは、上位10カ国・地域のうちスリランカ国籍のみが唯一増加(+48人)している点です。母国の政治経済情勢の不安定さや、日本国内での就労ニーズの変化など、複合的な要因が背景にあると見られます。この「例外的増加」は、特定送り出し国との二国間課題として個別対応が必要な事案を示しています。
経緯・背景:高市政権「総合的な外国人政策」とは
2026年1月の政策取りまとめと予算措置
高市政権は2026年1月、「総合的な外国人政策」を取りまとめ、自由民主党公式サイトでその方針を公表しました。核心は「外国人の違法行為とルール逸脱に厳正対処する」という一文に集約されます。合法的な受け入れ促進と不法残留・犯罪への対処強化を明確に切り分けた点が特徴です。
予算面では、2026年度の入管庁関連経費が987億円(過去最高)に達し、そのうち不法滞在者対策費として132億円が重点配分されました。この数字は、政策方針を予算に直結させた高市政権の具体的なコミットメントとして評価されています。
技能実習廃止・育成就労制度移行との関係
2024年の入管法改正により、長年にわたって問題視されてきた技能実習制度が廃止され、新たに育成就労制度が創設されました。技能実習制度は転籍制限が厳しく、劣悪な労働環境から逃れた実習生が不法残留に転じるケースが構造的に発生していました。育成就労制度では転籍要件が緩和されており、中長期的には不法残留者数への好影響が期待されます。
ただし、新制度への完全移行はまだ過渡期にあります。直近の不法残留者数減少が新制度の効果によるものか、入管庁の摘発強化によるものかは、今後数年の統計推移を見なければ判断できません(※制度寄与度は確認中)。
日本への影響:短期成果と中長期の構造課題
短期滞在ビザ残留が依然として全体の60%超
最も数が多い「短期滞在」での不法残留は、観光や商用目的で入国後に在留期限を超過するケースです。短期滞在ビザは申請要件が比較的緩いため、就労目的で入国し残留するという経路が繰り返し問題になってきました。
今回の統計では前年比約4,000人の減少となりましたが、絶対数として4万1,607人が残っています。摘発強化の効果が出始めている一方で、根本的な解決には「就労目的での入国」を入口段階で防ぐ水際管理の高度化が不可欠です。
特定技能拡大と不法残留対策の両立問題
高市政権は労働力不足対策として特定技能制度の拡大も進めており、合法的な外国人労働者の受け入れは継続して増加しています。政策設計上は「合法ルートの整備→不法残留の誘引低減」という論理が働きますが、受け入れ国数・対象職種の拡大に伴い、新たな在留管理課題が生じるリスクも排除できません。
(編集部分析):「厳正対処」と「共生推進」の二軸は表面上矛盾しないように見えますが、現場の受け入れ企業・自治体の対応能力が追いつくかどうかが、中長期的な制度安定性を左右する最大の変数です。
専門家見解と世論:数字の先にある現場課題
行政書士が指摘する3つの構造的要因
外国人のビザ申請・在留資格取得を専門とするニセコビザ申請サポートセンターの行政書士は、不法残留が継続的に発生する構造的要因として以下の3点を指摘しています。
第1に在留期限管理の甘さです。企業側での在留カード確認が属人的・断片的なケースが多く、更新期限が近づいても外国人社員本人に伝達されない状況が起きやすい。第2に技能実習制度の出口設計の欠如(育成就労制度への移行でこれは改善方向)。第3に言語・情報の壁です。在留期限や更新手続きに関する多言語情報が不足しており、意図せず在留期限を超過するケースが現場では一定数確認されているとしています。
この分析は、摘発強化という「入口・出口」対策だけでなく、企業・支援機関によるインフラ整備という「中間対策」の重要性を示しています。
X(旧Twitter)での反応傾向
X上では「8.5%減」という数値が保守層を中心に政権評価の根拠として頻繁に引用されています。一方で「スリランカだけ増加している理由は何か」「特定技能を増やしながら不法残留を減らすのは矛盾では」といった、政策の整合性を問う声も一定数見られます。単純な賛否を超えて、制度設計の質への関心が高まっている傾向が読み取れます。
また、ジャーナリストの西村カリン氏は「外国人は危険という前提に基づいた政策運用」への懸念を表明しており、受け入れと管理の両立という観点での議論の必要性を訴えています。受け入れ促進と厳格管理の二軸をどう整合させるかは、政策議論における継続的論点です。
今後の展望:帰化要件・手数料改定と管理体制の行方
高市政権の「総合的な外国人政策」には、帰化要件の厳格化(居住年数の長期化等)の方向性も含まれています。ただし、2026年4月時点で具体的な施行スケジュールは公表されておらず、立法化の見通しは流動的です(※確認中)。
在留手数料の引き上げについては、合法的な更新・変更申請のコスト上昇が懸念されます。特に低所得層の在留外国人が期限更新を敬遠するリスクがあり、専門家の間では多言語での適切な情報提供体制の構築を求める声が上がっています(※具体的な手数料額は確認中)。
国籍別で見ると、スリランカ籍の増加が今後の注目点です。他国籍が全体的に減少する中での「例外的増加」は、特定地域との送り出し管理の問題を示しており、二国間での対応強化が求められます。また、育成就労制度が本格稼働した後の2027年以降の統計で、制度移行効果を検証することが政策評価の重要な分岐点となります。
よくある質問
Q. 不法残留者8.5%減は、具体的にどんな対策の成果ですか?
入管庁予算の重点配分(987億円、不法滞在対策費132億円)による摘発・送還体制の強化が主因と見られます。加えて、2024年の育成就労制度創設による在留管理の制度整備も中期的に寄与していると考えられますが、詳細な寄与度は今後の統計推移で検証が必要です(※確認中)。
Q. 不法残留者が最も多い国籍はどこですか?
ベトナム国籍が1万1,601人で最多(前年比▲2,695人)です。次いでタイ1万907人、韓国1万20人の順。唯一増加したのはスリランカ(+48人)で、母国の政治経済情勢との関連が指摘されています。
Q. 短期滞在ビザでの不法残留が多い理由は何ですか?
短期滞在(観光・商用等)はビザ取得要件が比較的緩いため、入国後に就労目的で残留するケースが発生しやすい構造があります。全体の60%超にあたる4万1,607人が該当しますが、前年比で約4,000人減少しています。
Q. 特定技能制度の拡大と不法残留対策は矛盾しませんか?
政策設計上は「合法ルートの整備が不法残留の誘引を下げる」という論理が働きます。ただし、受け入れ規模の拡大に伴い新たな在留管理課題が生まれる可能性もあり、制度移行後の統計推移が重要な検証指標となります。
Q. 帰化要件の厳格化(居住年数10年以上等)はいつから適用されますか?
2026年4月時点では具体的な施行スケジュールは公表されていません(※確認中)。高市政権の「総合的な外国人政策」の中で方向性は示されていますが、立法化のスケジュールは流動的です。
Q. 企業が外国人を雇用する際に注意すべき点は何ですか?
在留カードの定期確認・在留期限のシステム管理が最低限の義務です。不法残留者と知りながら雇用した場合、企業側も不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象となります。定期的な在留確認体制の構築が不可欠です。
Q. 2026年4月の在留手数料引き上げの影響は何ですか?
合法的な更新・変更申請のコスト上昇につながる可能性があります。低所得層の在留外国人が期限更新を敬遠するリスクが懸念されており、多言語での情報提供体制の整備が求められています(※具体的な手数料額は確認中)。
参考情報
- 出入国在留管理庁「令和8年1月1日現在における不法残留者数について」(2026年3月27日)
- 自由民主党「外国人の違法行為とルール逸脱に厳正対処 高市政権が外国人政策を取りまとめ」(2026年1月31日) https://www.jimin.jp/news/information/212341.html
- ニセコビザ申請サポートセンター「不法残留者6万8千人時代の在留資格管理」(2026年) https://nisekovisa.com/https-nisekovisa-com-2026-overstay-statistics-jp/
- 時事通信「2026年度予算案 入管庁関連経費」(2025年12月26日)





