【2026年8月27日】豊田章男会長の「EV一本化は早すぎる」は当たったのか|米国でトヨタがGMに9万7934台差、ハイブリッド14.1%の実力

米国の新車販売で、95年近く首位を守ってきたゼネラル・モーターズ(GM)にトヨタが迫っています。2026年上半期の販売台数はGMが134万1325台、北米トヨタが124万3391台。その差は9万7934台です。前年同期比ではトヨタが0.5%増、GMは6.8%減でした。分かれ目になったのは、ハイブリッド車をどう位置づけたかという経営判断です。
ここでは、プレジデントオンラインが2026年8月27日に報じた内容と、CNBC・トヨタ自動車北米の公表値をもとに、何が起きているのかを数字で整理します。
この記事でわかること
- 2026年上半期の米国新車販売で、トヨタとGMの差がどこまで縮まったか
- ハイブリッドの設定車種数が20車種超と1車種でどう差がついたか
- 米国でEVが失速した理由(税額控除の打ち切りと25%関税)
- GMがEV路線で計上した費用の実額とレイオフの規模
- 豊田章男会長が実際に主張していた内容と、それが「反EV」ではない理由
- この流れが日本のクルマ選びに与える影響
米国新車販売でトヨタとGMの差はどこまで縮まったのか
2026年上半期時点で、差は9万7934台です。GMが134万1325台、北米トヨタが124万3391台でした。
10万台を切ったのは、コロナ禍の2021年を除けば過去に例がありません。
GMと北米トヨタの発表をもとにした報道によると、前年同期はGMが143万9951台、トヨタが123万6600台でした。1年でトヨタが0.5%増やす一方、GMは6.8%減らしています。伸びと減りが同時に起きたため、差が急速に詰まりました。
| 項目 | GM | 北米トヨタ |
|---|---|---|
| 2026年上半期の販売台数 | 134万1325台 | 124万3391台 |
| 前年同期 | 143万9951台 | 123万6600台 |
| 前年同期比 | 6.8%減 | 0.5%増 |
| 両社の差 | 9万7934台 | |
| ハイブリッドの設定車種 | コルベット1車種 | 20車種以上 |
この表の最終行が、上の3行を説明する材料になります。順に見ていきます。
GMが首位を明け渡したのは95年で一度だけ
GMは1931年以降、米国の新車販売でほぼ首位を保ってきました。例外は2021年の一度きりです。
2021年はコロナ禍で半導体などの供給網が寸断され、クルマを作れなくなった末の陥落でした。米自動車ニュースサイトのオートブログは、その年を除けば両社の差がこれほど縮まった例はなかったと指摘しています。つまり今回は、生産できなかったからではなく、売れる商品を持っていたかどうかで差がついた点が過去と違います。
コックス・オートモーティブの上級エコノミスト、チャーリー・チェスブロー氏は報道陣向けのイベントで、このペースなら年末にGMは背後を気にすることになるかもしれない、トヨタが最量販メーカーとして追い抜く可能性がある、との見方を示しています。
販売台数の数字は集計元によって少しずれる
GMの上半期台数は、集計元によって134万1325台と133万8976台という2つの数字が出ています。
前者はプレジデントオンラインがGM発表として報じた値、後者は米国の販売集計サイトGoodCarBadCarが6月までの累計として示した値です。差は2000台強で、四捨五入や集計対象(小型商用車を含むかどうか)の違いとみられます。本記事では報道の数字をそのまま使いますが、「10万台を切った」という結論はどちらの数字でも変わりません。
明暗を分けたハイブリッドの品ぞろえは20車種超と1車種
差の正体は、ハイブリッドをどれだけ用意していたかです。トヨタは米国で20車種以上、GMはコルベット1車種にとどまります。
GMはエンジンとモーターを併用するハイブリッドを「つなぎの技術」と位置づけ、それ以外はEVへ一気に舵を切りました。一方のトヨタは、ハイブリッドを軸に据えたうえで、外部から充電できるPHEVもEVも並行して展開しています。2026年の市場ではハイブリッドが伸び、EVが失速したため、この読みの違いがそのまま台数差になりました。
トヨタの販売はすでに半分以上が電動車
北米トヨタの第2四半期(4〜6月)の販売は67万3971台で、うち電動車は38万3091台。全体の56.8%を占めます。
電動車は19.5%増で、販売全体の伸び(1.1%増)を大きく上回りました。ここでいう電動車とは、ハイブリッド・PHEV・EV・燃料電池車をまとめた総称です。米国で減速したのはそのうちEVという1カテゴリーだけで、電動化そのものの勢いは落ちていません。
電動車の9割強は「充電しないハイブリッド」
上期累計の電動車67万367台のうち、EVは約2万6000台、PHEVは約3万3000台にとどまります。
割合にするとEVが約4%、PHEVが約5%です。残る9割強を占めるのが、外部充電を必要としない通常のハイブリッドでした。「トヨタの電動化が進んでいる」という表現の中身は、EVが売れているという意味ではなく、ハイブリッドが売れているという意味になります。
| 区分(2026年上期・北米トヨタ) | 台数 | 電動車に占める割合 |
|---|---|---|
| 電動車 合計 | 67万367台 | 100% |
| EV(bZ・レクサスRZなど) | 約2万6000台 | 約4% |
| PHEV | 約3万3000台 | 約5% |
| ハイブリッド(充電不要) | 残る9割強 | 約91% |
この構成比が、次に見るEV失速の影響を、トヨタが受けにくかった理由でもあります。
米国でEVが失速した理由は税額控除の終了と25%関税
EV販売は3四半期連続で前年を下回りました。原因は7500ドルの連邦税額控除の打ち切りと、25%の輸入関税です。
コックス・オートモーティブによると、米国のEV販売は2025年第4四半期に前年同期比36%超減、2026年第1四半期は27.3%減、第2四半期は20.5%減でした。欧州のテクノロジーメディア、ネクスト・ウェブは、EV購入者向けの7500ドル(約119万円)の連邦税額控除が2025年9月末で打ち切られ、そこに25%の輸入関税が加わったと説明しています。多くのEVで、買う動機が薄れた形です。
米国EV販売の前年同期比(3四半期連続の前年割れ)
2025年 第4四半期
前年同期比 36%超減
9月末に税額控除が終了
2026年 第1四半期
前年同期比 27.3%減
25%の輸入関税が重なる
2026年 第2四半期
前年同期比 20.5%減
ハイブリッドへ需要が移動
減少幅は縮まってきていますが、3期続けて前年割れという事実は変わりません。そしてこの穴を埋めたのがハイブリッドでした。
ガソリン高が燃費重視の買い方を後押しした
ガソリン価格の全米平均は6月24日時点で1ガロン3.92ドル、1リットルあたり約165円です。1年前より約20円/L高い水準です。
米経済誌フォーブスが全米自動車協会の集計をもとに報じた数字です。コックス・オートモーティブが5月に実施した新車購入検討者への調査では、56%が「ガソリン価格の上昇によりハイブリッド車やPHEVの購入を検討する可能性が高まる」と答えています。燃費で不利な大型車こそGMとフォードの最も得意な分野であり、逆風が直撃した形です。
ハイブリッドのシェアは過去最高の14.1%に達した
2026年第1四半期に、米国市場のハイブリッド販売シェアは14.1%となり過去最高を記録しました。
フォーブスがコックス・オートモーティブのデータとして伝えたところでは、ハイブリッドは2023年以降で販売台数が83%増え、パワートレイン別で最も伸びています。設定車種も12ブランド49モデルへ拡大し、2023年比でモデルが7つ増え、2ブランドが新規参入しました。中古市場にも波及しており、カー・グルズのデータでは中古ハイブリッドの販売数が年初来34%増、平均掲載価格は6月中旬に3万8800ドル(約617万円)と過去最高を更新しています。
GMがEV路線で払った代償はいくらだったのか
GMは2025年第4四半期に、EV関連などで合計71億ドル(約1兆1300億円)を計上しました。
これは2025年通期の純利益27億ドルの2.6倍にあたる額です。
内訳は、EV関連の特別費用が60億ドル(約9540億円)で、その大半が北米分です。さらにEV製造設備の評価減など18億ドル、電池をはじめとする調達契約の解消費用など42億ドル、加えて中国の合弁会社である上汽通用汽車の再編に伴う11億ドル(約1750億円)が乗ります。
| 項目 | GM | フォード |
|---|---|---|
| EV関連の損失・費用 | 2025年第4四半期に71億ドル(約1兆1300億円) | EV部門「モデルe」が4年で160億ドル超(約2兆5400億円) |
| 今後の見通し | ハイブリッド・PHEV戦略は検討中、生産時期は未定 | 今年も40億〜45億ドルの赤字見込み、黒字化は2029年ごろ |
| 雇用・生産の対応 | EV工場・電池工場で約3400人をレイオフ、オライオン工場はガソリン車生産へ転換 | ハイブリッドはマーベリック、F-150、リンカーン・ノーチラスが中心 |
数字の桁だけを見ると、経営判断のずれがそのまま損失として表に出たことが分かります。
EV工場をガソリン車工場に戻す動きが始まっている
GMはミシガン州オライオンの組立工場で、EV生産をやめてガソリン車の生産に切り替えると決めました。
作るのはフルサイズSUVとピックアップです。
あわせてEV工場と電池工場で、およそ3400人に無期限・一時のレイオフを実施しています。EV専用に整備されたデトロイトのファクトリー・ゼロなどが対象で、大半は今年1月5日付です。ただし、切り替えた先の大型車もガソリン高の逆風とは無縁ではありません。EVの生産能力を絞る一方で、すぐにハイブリッドを開発・投入することはできず、燃費で不利な商品構成に頼る状態が当面続きます。
豊田章男会長は何を主張していたのか
豊田章男会長の主張は「EVをやらない」ではなく、「EV一本に絞るには早すぎる」でした。
内燃機関から燃料電池まで選択肢を残すべきだ、という立場です。
業界全体がEV一色に染まるなかで、この主張は時流に逆らっているように見えていました。根拠は、顧客のニーズも充電ステーションの整備状況も地域ごとに違う、という現実認識です。反EVだったのではなく、EVに全てを賭けるには市場環境が整っていないと判断していた、というのが報道の整理です。
結果として「数十億ドルを節約した」と評価されている
カナダの自動車ニュースサイト、カー・バズは「豊田会長はEVの大量生産を先送りすることで、数十億ドルを節約した」と分析しています。
EVの大量生産に前のめりにならなかったぶん、EV販売が停滞した局面で巨額の損失処理を迫られずに済んだ、という評価です。前の章で見たGMの71億ドル、フォードの160億ドル超という数字の裏返しにあたります。
トヨタもEV拡大そのものは否定していない
トヨタは2021年に、2030年までにBEV30車種、世界年間販売350万台を目指す方針を示しており、これを取り下げていません。
実際にEVでも存在感は増しています。コックス・オートモーティブによると、トヨタは第2四半期にEV販売台数を前年比で倍増させ、米国のEV販売上位5社に食い込みました。コックスのストリーティ氏は「長期的には、未来はEVです。ただ、非常に長い期間、ハイブリッドが消費者の現状に寄り添う形で、その隙間を埋めていくでしょう」と述べています。今回の結果は「EVが不要だった」という話ではなく、移行の速度の読み違いが表に出たものと見るのが実態に近いといえます。
GMがEVを急いだ動機は投資家対策だったとの見方
コックス・オートモーティブのストリーティ氏は「EVについては、ウォール街を喜ばせることが目的でした」と語っています。
業界分析を統括する立場での、ブルームバーグの取材に対する発言です。
テスラのような企業価値評価を得たかった、という趣旨です。ブルームバーグは、GMが大胆なEV投資に踏み切ったのは、テスラの販売と株価が急騰し、各国の規制当局が排ガス規制を強化していた時期だったと指摘しています。目の前の顧客の需要ではなく投資家の目を優先した、という見立てです。ただしこれは関係者の見解であり、GM自身が公式に認めたものではありません。
この流れは日本のクルマ選びに何を意味するのか
すでに影響は商品側に出ています。トヨタはRAV4からガソリン専用モデルを外し、ハイブリッドとPHEVだけのラインアップにしました。
RAV4は1996年の発売以来、累計640万台超を売り、2025年には米国のSUV販売で47万9288台の年間首位に立った主力車です。その主力からガソリン専用を外したという事実は、メーカーが需要の中心をどこに置いているかを示しています。
ハイブリッド専用化で一時的に台数が落ちることもある
RAV4の2026年上半期の米国販売は15万3955台で、前年同期比35.7%減でした。理由は販売不振ではなく生産の遅れです。
ハイブリッド専用化に伴うカナダ・日本工場の改修で生産が追いつきませんでした。内訳を見るとハイブリッドは23%増、PHEVは30%増で、減少分はほぼガソリンモデルです。台数の落ち込みだけを見て「売れなくなった」と読むと実態を取り違えます。
中古のハイブリッドは値上がりしている
米国の中古ハイブリッドは、平均掲載価格が6月中旬に3万8800ドル(約617万円)と過去最高を更新しました。
車種によっては販売数が3倍を超えています。
カー・グルズのデータでは、トヨタ・カムリが306%増、ホンダCR-Vハイブリッドが78%増、ジープ・ラングラー4xeが68%増、トヨタRAV4ハイブリッドが27%増でした。新車価格が高騰するなかで、燃費が良く故障が少ないと評価される日本車の中古に需要が集まっている構図です。日本国内でも人気ハイブリッドの中古相場は下がりにくい傾向があり、乗り替えのタイミングを計るうえでは、新車の納期と中古相場の両方を見ておく必要があります。
よくある質問
Q. トヨタは米国でGMを本当に抜くのですか。
A. 2026年上半期時点では抜いていません。差は9万7934台です。コックス・オートモーティブのチェスブロー氏は「このペースなら年末にはGMは背後を気にすることになるかもしれない」と述べていますが、これは可能性についての見方であって、確定した予測ではありません。下半期の販売次第です。
Q. GMはハイブリッドを今後も出さないのですか。
A. 出す方向で動いています。バーラCEOは1月時点でハイブリッドとPHEVの戦略を検討中だと述べています。ただし生産時期は未定です。開発と生産準備には時間がかかるため、当面はコルベット1車種という状態が続く見通しです。
Q. 米国のEV販売はこのまま縮小し続けるのですか。
A. 減少幅は縮まっています。2025年第4四半期の36%超減から、2026年第1四半期27.3%減、第2四半期20.5%減と推移しました。コックス・オートモーティブのストリーティ氏は「長期的には、未来はEVです」との見方を示しており、需要が消えたのではなく移行が後ろ倒しになったという整理が一般的です。
Q. トヨタの「電動車56.8%」にはEVがどれくらい含まれますか。
A. ごくわずかです。上期累計の電動車67万367台のうち、EVは約2万6000台で約4%、PHEVは約3万3000台で約5%。残る9割強が外部充電のいらないハイブリッドです。
Q. 米国のガソリン価格はどのくらい上がっているのですか。
A. 全米平均で6月24日時点1ガロン3.92ドル、1リットルあたり約165円です。1年前と比べて50セント(約20円/L)高い水準だと、フォーブスが全米自動車協会の集計をもとに報じています。
まとめ
2026年上半期の米国新車販売で、GMと北米トヨタの差は9万7934台まで縮まりました。
トヨタが0.5%増、GMが6.8%減という結果を生んだのは、ハイブリッドを20車種以上そろえたか、コルベット1車種にとどめたかという品ぞろえの差です。連邦税額控除の打ち切りと25%関税でEVが3四半期連続の前年割れとなるなか、ハイブリッドのシェアは過去最高の14.1%に達しました。
GMは2025年第4四半期に71億ドル(約1兆1300億円)を計上し、約3400人のレイオフとEV工場のガソリン車転換に踏み切っています。豊田章男会長の主張は「EVをやらない」ではなく「EV一本に絞るには早すぎる」というものでした。トヨタ自身は2030年にBEV30車種・世界350万台という方針を維持しており、今回の結果はEVの否定ではなく、移行速度の読みの差が表に出たものと見るのが妥当です。
参考:プレジデントオンライン「やっぱり豊田章男会長の予測は正しかった…アメリカでハイブリッド車が好調、トヨタに追われる首位GMの誤算」(2026年8月27日) / CNBC「Toyota gains on GM in U.S. sales as hybrids grow, EVs stall」 / Toyota USA Newsroom「June, Second Quarter 2026 U.S. Sales Results」





