コバルトとレアメタルの現状|日本の資源戦略と2026年の市場予測

コバルトとレアメタルの現状|日本の資源戦略と2026年の市場予測

脱炭素社会の実現に向けて電気自動車(EV)への移行が加速する中、心臓部であるバッテリーの材料となるコバルトの重要性が急速に高まっています。その理由は、現在のリチウムイオン電池の性能を支えるために、このレアメタルが欠かせない役割を担っているからです。

一方で、供給の大部分を特定の国に依存しているため、地政学的なリスクや価格の高騰が世界的な懸念材料となっています。本記事では、2026年に予測される市場の大きな変化や、日本が自給自足を目指して進める海底資源開発の最前線について詳しく解説します。

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目次

コバルトはなぜ「重要なレアメタル」なのか?EV普及との関係

リチウムイオン電池におけるコバルトの役割

私たちの生活に欠かせないスマートフォンや電気自動車には、リチウムイオン電池という高性能な蓄電池が使われています。この電池のプラス極(正極材)において、安定性を保ちながら高いエネルギー密度を実現するために、コバルトというレアメタルが極めて重要な役割を果たしています。

コバルトを適切に配合することで、電池の寿命が延びるだけでなく、発熱を抑えて安全性を高めることが可能になります。現在の技術では、航続距離を重視する高品質なバッテリーを作る上で、代わりの効かない貴重な資源として扱われています。

世界的なEVシフトによる需要予測と供給不足のリスク

世界各国が脱炭素の目標を掲げる中で、EVの需要予測は右肩上がりの状況が続いています。ある調査では、関連するバッテリー市場は年平均で約20パーセントもの急成長を遂げると見られており、それに伴って原料の確保が至上命題となっています。

しかし、この急速な需要拡大に対して、鉱山での採掘や精錬といった供給側の体制が追いつかないという構造的なリスクが指摘されています。一度供給網が停滞すれば、需給バランスが崩れて価格が跳ね上がる恐れがあり、自動車産業全体に深刻な影響を及ぼしかねません。

コバルトの市場価格と2026年の動向予測

コバルト先物価格の推移とボラティリティ

投資判断の指標となるコバルトの先物価格は、過去のデータを見ても非常に大きな変動を繰り返してきました。ロンドン金属取引所などの市場では、供給国の情勢不安や在庫状況によって、わずか数ヶ月の間に価格が倍増することも珍しくありません。

最近の価格推移を分析すると、一時期の落ち着きを見せつつも、安値圏での底打ち感が強まっている様子が伺えます。市場参加者は、需要が爆発的に増える前の静けさと捉えており、今後のボラティリティの拡大に神経を尖らせています。

2026年に予測される「レアメタル狂乱」とは?

専門家の間では、2026年が資源市場における大きな転換点になると予測されています。これまで進められてきた世界的なEVシフトがピークを迎え、蓄電池産業戦略に基づく各国の囲い込みが激化することで、資源高騰が避けられない状況になると見られているからです。

特に2026年は、既存の鉱山からの供給能力が限界に達する一方で、新しい採掘プロジェクトがまだ十分に稼働していない時期に当たります。この時期には「お金を出しても買いたくても買えない」という供給ショックが発生する可能性が高く、これを業界ではレアメタル狂乱と呼んで警戒しています。

日本におけるコバルト供給戦略と南鳥島プロジェクト

中国依存からの脱却を目指す経済安全保障

日本が直面している最大の課題は、コバルトの精錬やサプライチェーンの約6割を中国に依存しているという現状です。特定の国への過度な依存は、外交関係の変化によって供給が途絶えるリスクを孕んでおり、国の経済安全保障を脅かす要因となります。

このリスクを回避するために、政府や民間企業は供給源の多角化を急いでいます。海外の鉱山権益を確保する動きと並行して、国内で完結する資源循環システムの構築が、将来の日本の産業を守るための防波堤となるのです。

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南鳥島EEZでの世界初・水深6,000mからの採鉱試験

こうした中で、大きな期待を集めているのが日本の排他的経済水域(EEZ)内にある南鳥島周辺の海底資源です。ここには、超高濃度レアアース泥やコバルトリッチクラストといった、世界最大級の海底鉱物資源が眠っていることが判明しています。

2026年1月には、国立研究開発法人のJAMSTEC(海洋研究開発機構)を中心としたチームが、水深6,000メートルという極限環境からの採鉱システム試験を予定しています。この世界初とも言える挑戦が成功すれば、日本は資源輸入国から事実上の資源大国へと変貌を遂げる可能性を秘めています。

2028年度の商業生産開始に向けたスケジュール

南鳥島でのプロジェクトは、単なる試験にとどまらず、着実なロードマップが描かれています。2026年の試掘を経て、2027年にはより大規模な実証試験を行い、2028年度にはいよいよ商業生産を開始するという計画です。

  • 2024年〜2025年:揚泥技術の確立と環境影響評価
  • 2026年1月:大規模な採鉱・揚泥試験の実施
  • 2027年:商業化に向けた最終システム実証
  • 2028年度:民間企業による商業生産の開始

このスケジュール通りに資源開発が進めば、2020年代の後半には、日本製のコバルトが国内のバッテリー工場へと供給され始めるでしょう。それは日本の製造業にとって、エネルギーと資源の両面で自立を果たすための歴史的な一歩となります。

持続可能なサプライチェーンを築く「バッテリーリサイクル」

現状のリサイクル率5%の壁と技術的課題

EVの普及が急速に進む一方で、使い終わったバッテリーからコバルトなどの資源を取り出すリサイクルは、まだ道半ばの状態にあります。現在の世界的な回収率はわずか5パーセント程度にとどまっており、多くの貴重な資源がそのまま廃棄されているのが現状です。

これは、バッテリーの複雑な構造を解体したり、中に含まれる不純物をきれいに取り除いたりするために、多大なコストと手間がかかることが主な原因と言えるでしょう。特に、リチウムやニッケルと混ざり合った状態で微量のコバルトを抽出するには、極めて高度な専門技術が求められます。

安定的なサプライチェーンを構築するためには、このリサイクルの壁を乗り越えて、資源を国内で循環させる仕組みを整えることが不可欠です。

湿式冶金・乾式冶金プロセスの進化とAIの活用

リサイクル技術を向上させるために、現在は主に二つの手法が進化を続けています。一つは熱で溶かして抽出する乾式冶金、もう一つは薬品に溶かして分離する湿式冶金です。

最近では、AIを活用してバッテリーの種類を自動で選別するシステムも導入され始めており、作業の効率化と回収率の向上が期待されています。それぞれの技術には以下のような特徴があり、用途に応じた使い分けが進んでいます。

プロセス名概要とメリットデメリット・課題
乾式冶金高温の炉で溶かして金属を取り出す。処理スピードが速い。設備が大規模になり、二酸化炭素の排出量も多い。
湿式冶金化学薬品を使って金属を溶かし出す。純度の高い回収が可能。廃液処理のコストがかかり、処理に時間がかかる。
AI選別技術カメラとAIで型番や素材を瞬時に判別。前処理を自動化する。導入コストが高いが、人為的なミスを大幅に減らせる。

このように最新のテクノロジーを駆使することで、これまで捨てられていたレアメタルを再びバッテリーの原料として蘇らせる取り組みが加速しています。

コバルトフリー・次世代電池への転換と将来展望

全固体電池とナトリウムイオン電池の開発状況

資源の制約を克服するためのもう一つのアプローチとして、コバルトを全く使わない、あるいは使用量を極限まで減らした次世代電池の開発が活発化しています。

トヨタやパナソニックといった国内メーカーが力を入れている全固体電池は、エネルギー密度が高く、将来の脱炭素社会の主役として期待されている技術です。また、安価な塩の成分を利用するナトリウムイオン電池も、コバルト依存を脱却するための有力な選択肢として浮上しています。

電池の種類コバルトの使用特徴とメリット実用化の目安
全固体電池削減または不使用充電が非常に速く、安全性も高い。2020年代後半
ナイトリウムイオン電池なし原料が安価で豊富。低温でも性能が落ちにくい。2026年頃から本格普及
酸化物系・硫化物系電池種類による用途に合わせた性能の調整が可能。研究開発中

脱レアアース技術による中国依存リスクの低減

次世代電池の実用化が進むことで、コバルトの精錬工程を独占している中国への依存リスクを大幅に下げることが可能になります。特定の国に頼りすぎない柔軟な供給体制を築くことは、日本の製造業が国際的な競争力を維持するための鍵となります。

2026年以降、こうした新しい技術が次々と市場に投入されることで、資源不足による価格高騰の影響を受けにくい産業構造へと変化していくでしょう。

自国での資源開発と、リサイクル技術の向上、そして革新的な電池開発という三つの柱が揃うことで、日本の資源戦略は新しい局面を迎えることになります。


まとめ

コバルトは現代のデジタル社会と脱炭素化を支える極めて重要なレアメタルです。しかし、その需給バランスは危うい均衡の上に成り立っており、特に2026年には世界的な供給ショックが訪れる可能性も否定できません。

日本はこうした危機に備え、南鳥島での海底資源開発や、最先端のAIリサイクル技術、さらには全固体電池をはじめとする新技術の開発に総力を挙げて取り組んでいます。これらが高いレベルで融合したとき、日本は資源の制約から解き放たれ、持続可能な未来を自らの手で切り拓くことができるはずです。

世界の市場価格や最新の技術動向に今後も注目し、私たちが手にする製品の裏側にある「資源の物語」に関心を持ち続けていきましょう。まずは身近なスマートフォンのリサイクルから、小さな一歩を始めてみてはいかがでしょうか。

この記事の内容についてさらに詳しく知りたい方は、経済産業省が発表している「蓄電池産業戦略」の最新資料を確認してみることをおすすめします。

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