スマートフォンや電気自動車に欠かせないレアメタルは、私たちの生活を支える極めて重要な資源です。2026年現在、世界の資源を巡る地図はこれまでにない大きな転換点を迎えています。
なぜなら、生産の大部分を占める中国が輸出規制を強める一方で、中国国内では在庫が余り始めるという皮肉な事態が起きているからです。例えば、日本でも供給不安が懸念されましたが、現在は南鳥島での直接的な資源確保が動き出しています。本記事では、最新のランキングと共に、激動する資源情勢の裏側を詳しく紐解いていきます。
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【2026年最新】レアメタル・レアアース産出国・埋蔵量ランキング
ハイテク産業の命綱とも言えるレアメタルやレアアースの供給体制は、特定の国に大きく依存しているのが現状です。アメリカ地質調査所(USGS)が2025年に発表した最新データによると、依然として特定の国々が市場を牽引していることがわかります。
今後の経済安全保障を考える上でも、どの国がどれだけの資源を握っているのかを知ることは欠かせません。まずは、最新の生産量と埋蔵量のデータを整理して、世界の勢力図を確認してみましょう。
生産量1位は中国。2位以下にベトナム、豪州、米国が続く現状
世界のレアアース生産量は、長らく中国が圧倒的なシェアを占めてきました。かつては全体の9割近くを独占していた時期もありましたが、近年はその勢力図にわずかな変化が生じています。
主要な産出国の生産シェアは以下の通りです。
| 順位 | 国名 | 生産シェア(概算) |
| 1位 | 中国 | 約62.9% |
| 2位 | ベトナム | 約15.0% |
| 3位 | オーストラリア | 約10.0% |
| 4位 | アメリカ | 約8.0% |
| 5位 | その他 | 約4.1% |
表を見るとわかるように、中国のシェアは以前の約90パーセントから、2026年現在は6割強まで低下しています。しかし、依然として世界1位であることに変わりはなく、特に重希土類と呼ばれる希少な成分については高い支配力を維持しています。
埋蔵量から見る将来の資源供給ポテンシャル(ブラジル、ベトナムの重要性)
一方で、将来的にどれだけ採掘できるかを示す埋蔵量のランキングに目を向けると、また違った景色が見えてきます。現在の生産量こそ少ないものの、実はブラジルやベトナムには膨大な資源が眠っていることが判明しているのです。
ブラジルの埋蔵量は世界全体の約23パーセントに達しており、中国に次ぐ規模を誇ります。これにベトナムが続く形となっており、これらの国々が安定して採掘を行えるようになれば、特定の国に依存しない供給網が作れるかもしれません。
現在はまだ開発の途上ですが、将来的にはこれらの国々が世界の資源供給の柱になる可能性を秘めています。各国の探査技術が進むにつれて、ランキングの順位は今後さらに変動していくことが予想されます。
中国の対日輸出規制とその「副作用」:積み上がる国内在庫
2026年に入り、資源を巡る国際的な緊張はさらに高まりを見せています。特に中国が打ち出した新しい輸出管理の方針は、日本の産業界にも大きな衝撃を与えました。
この動きは単なる資源の囲い込みではなく、政治的な意図も含んだ戦略的なものと見られています。しかし、この規制は中国自身にとっても、思わぬ誤算をもたらしているようです。
2026年1月発動、中国による「軍民両用品目」の対日輸出禁止措置
2026年1月、中国政府は軍事転用が可能な「軍民両用品目」として、特定のレアメタルや化学物質の日本向け輸出を厳格に制限し始めました。これには半導体製造に使われるジクロロシランなどの重要な原材料も含まれています。
この措置の背景には、日本の防衛政策や半導体輸出規制に対する牽制があると考えられます。日本企業にとっては、これまで当たり前に手に入っていた材料が突然止まってしまうリスクに直面した形です。
こうした経済安全保障上の脅威に対して、日本政府や企業は早急な対策を迫られています。他国からの調達や代替素材の開発など、脱中国依存への動きがこれまで以上に加速するきっかけとなりました。
規制のブーメラン?輸出制限で中国国内に資源が滞留するリスク
ところが、輸出を無理に絞ったことで、皮肉にも中国国内では新たな問題が発生しています。行き場を失ったレアアースなどの資源が国内市場に溢れ出し、在庫が山積みになるという事態が起きているのです。
本来であれば高値で輸出できるはずの資源が国内に滞留した結果、取引価格の下落を招いています。これは中国の採掘業者や精錬業者にとって大きな減収となり、産業全体への重い負担になりつつあります。
このように、資源を武器として使う戦略は、自国の経済にもダメージを与える諸刃の剣と言えるでしょう。この在庫問題が深刻化すれば、中国も規制の手を緩めざるを得なくなるという見方も出ています。
世界が進める「脱中国依存(デリスキング)」の最新動向
特定の国に資源を依存しすぎることは、産業の持続可能性を揺るがす大きなリスクとなります。そのため、現在はアメリカや欧州を中心に、サプライチェーンから中国への過度な依存を排除するデリスキングの動きが急ピッチで進んでいます。
単に産出国を変えるだけでなく、資源を加工して製品化するまでの全工程を見直すことが、真の経済安全保障につながります。ここでは、世界が直面している課題と、それを解決するための国際的な協力体制について解説します。
精錬工程シェア91%。採掘以上に深刻な「中間加工」の支配
レアアースの供給問題において、実は採掘量以上に深刻なのが、精錬や中間加工と呼ばれる工程の独占状態です。中国は世界の精錬シェアの約91パーセントを握っており、どこで掘り出された資源であっても、結局は中国の工場を経由しなければならない構造になっています。
この工程を独占されている理由は、精錬には高度な分離技術と、環境負荷への対策に多大なコストがかかるためです。他国がこの分野に参入するには、技術的なハードルと厳しい環境基準をクリアしなければならず、長年中国の一強状態が続いてきました。
しかし、2026年現在は、この中間加工の工程を自国内や友好国で完結させようとする試みが本格化しています。採掘地だけを分散させるのではなく、加工プロセスそのものを多角化することが、資源リスクを回避するための鍵となっています。
フレンドショアリング:米国・豪州・ベトナムによる資源包囲網
信頼できる同盟国間で供給網を完結させるフレンドショアリングという考え方が、世界的な潮流となっています。これは、価値観を共有する国同士で資源の採掘から加工までを支え合い、中国の輸出規制などの影響を受けにくい体制を築く取り組みです。
具体的な動きとして、オーストラリアのライナス社に対して日本が出資を行い、安定した供給枠を確保する事例などが挙げられます。また、アメリカもベトナムなどの東南アジア諸国と連携を深め、レアアースの新たな生産拠点としての開発を強力に後押ししています。
こうした多国間の連携により、かつては不可能と思われていた脱中国依存が少しずつ現実味を帯びてきました。2026年は、これらの新しい供給網が実際に機能し始める歴史的な転換点になると期待されています。
日本の反撃:南鳥島レアアース泥開発と2026年試験掘削
他国への依存から脱却するための切り札として、日本が今もっとも注力しているのが、自国の排他的経済水域(EEZ)内に眠る資源の開発です。これまで「資源小国」と呼ばれてきた日本ですが、足元の海域には世界を変えるほどのポテンシャルが秘められています。
長年の研究を経て、いよいよ2026年からは深海から資源を引き上げる実証試験が始まります。このプロジェクトが成功すれば、日本の経済安全保障は劇的な進歩を遂げることになるでしょう。
165兆円の「眠れる国富」。国内需要の数百年分が南鳥島に
南鳥島周辺の海底には、推定で1,600万トンを超える膨大なレアアースが眠っていることが分かっています。その価値は試算によると165兆円にも上り、まさに日本にとっての眠れる国富と言える存在です。
特に注目すべきは、EVのモーターなどに不可欠なジスプロシウムやテルビウムといった重希土類が極めて豊富に含まれている点です。これらは現在、中国からの輸入に強く依存していますが、南鳥島の資源が活用できれば、国内需要の数百年分を賄える可能性があります。
これほどの規模の資源を自国で管理できるようになれば、国際的な価格交渉においても日本の立場は一気に強まります。次世代産業の基盤を支えるための、文字通り命綱とも言えるプロジェクトなのです。
探査船「ちきゅう」が挑む、水深6,000mからの世界初・揚泥試験
2026年1月、地球深部探査船として知られる「ちきゅう」が、南鳥島沖で世界初となる大規模な揚泥試験を開始しました。水深6,000メートルという極限の環境下で、海底に堆積したレアアース泥を効率よく吸い上げる技術に挑戦しています。
この試験には、日本の高い海洋技術が集結しており、三井海洋開発などの企業が揚泥システムの開発を担っています。深海からの引き上げは技術的な難易度が非常に高いものの、今回の試験で商業化への道筋を立てることが最大の目標です。
2028年以降の本格的な商用化を目指しており、これが実現すれば日本は世界有数の資源保有国へと変貌を遂げます。日本の技術力が、世界のエネルギー地図を塗り替える瞬間がすぐそこまで来ています。
都市鉱山と代替技術:国内で完結する資源循環モデル
海底資源の開発と並行して進められているのが、今ある資源を最大限に活用するためのリサイクル技術と、代替素材の開発です。日本には「都市鉱山」と呼ばれる、使用済みの製品の中に眠る貴重な資源が大量に存在しています。
これらを効率よく回収し、再利用する仕組みを整えることは、海外からの輸入に頼らない自立した供給体制を作る上で欠かせません。最新の技術によって、これまで捨てられていたゴミが宝の山へと変わろうとしています。
日本の「都市鉱山」は世界有数。家電・EVからの回収最前線
日本国内に蓄積された都市鉱山の規模は、金や銀、そして一部のレアメタルにおいて世界トップクラスの埋蔵量を誇ります。スマートフォンやパソコン、ハイブリッド車のバッテリーなどから、高純度で資源を取り出す技術の開発が日々進んでいます。
例えば、三菱マテリアルやDOWAホールディングスといった企業は、廃基板や中古家電から効率的に金属を抽出するプロセスを確立しています。
三菱マテリアル(総合リサイクル事業)
DOWAホールディングス(金属リサイクル)
こうしたリサイクルによる資源確保は、採掘による環境負荷を抑えるだけでなく、経済的な安定性も高めてくれます。国内で資源が循環するモデルを構築することが、将来の不足リスクに対する強力な防波堤となります。
重希土類フリー磁石と代替材料開発(大同特殊鋼などの事例)
資源の確保と同時に、そもそもレアメタルを必要としない、あるいは使用量を大幅に減らすための技術開発も飛躍的に進歩しています。特に需要が高い強力な磁石の分野において、新しい素材への切り替えが始まっています。
大同特殊鋼などのメーカーは、ネオジム磁石に欠かせなかったジスプロシウムなどの重希土類を一切使用しない、重希土類フリー磁石の開発に成功しました。これにより、資源価格の高騰や供給の途絶に左右されない製品づくりが可能になっています。
重希土類フリー高耐熱ネオジム磁石
このように、材料工学の力で資源問題を解決するアプローチは、日本の製造業の強みを活かした独自の戦略と言えます。持たないことを強みに変える技術が、これからの産業を支えていくでしょう。
2026年に注目すべきレアメタル・資源関連銘柄
世界の資源情勢が激変する中で、日本の投資市場においても資源関連の企業への注目度が一段と高まっています。海洋開発の進展やリサイクル需要の拡大により、新たなビジネスチャンスを掴む企業が増えています。
投資の観点からも、これらの企業がどのような技術を持ち、今後の成長戦略を描いているのかを知ることは非常に有益です。2026年のトレンドを象徴する主要なプレイヤーをご紹介します。
海洋開発・精錬・リサイクルの主要プレイヤー(三井海洋開発、DOWA等)
南鳥島での試験掘削において中心的な役割を果たすのが、海洋石油・ガス生産設備の設計・建造で世界的な実績を持つ三井海洋開発です。深海からの揚泥システムという未知の領域に挑む同社の技術力には、国内外から大きな期待が寄せられています。
また、前述したDOWAホールディングスは、リサイクル事業だけでなく、特定のレアメタルの精錬においても世界トップレベルのシェアを持っています。資源の回収から再製品化までを一貫して担える強みは、デリスキングが進む中でさらに価値が高まるでしょう。
三井海洋開発(海洋資源開発システム)
これらの企業は、単なる素材メーカーではなく、日本の経済安全保障を技術で支えるインフラ企業としての側面も持っています。2026年の動向は、今後の日本の産業競争力を占う上で極めて重要な意味を持つことになるはずです。
まとめ
2026年のレアメタル情勢は、中国の輸出規制という逆風をきっかけに、世界が自立へと大きく舵を切った一年として記憶されるでしょう。中国国内での在庫積み上がりという皮肉な現象は、資源を武器にすることの限界を示唆しています。
一方で、日本は南鳥島での歴史的な試験掘削を開始し、自ら資源を確保する道を着実に歩んでいます。都市鉱山の活用や代替技術の開発も加わり、もはや他国の顔色を伺うだけの時代は終わりを告げようとしています。
この大きな変化の流れを理解することは、ビジネスや投資において次の一手を打つための重要なヒントになります。新しい資源大国へと歩み出した日本の未来に、ぜひ注目し続けてください。
