【2026年8月】ホンダ新型「ZOOMER e:」全スペック|約14万円・免許不要の正体と、日本で乗れない2つの理由

ホンダと中国・広州汽車集団の合弁会社である五羊ホンダ(Wuyang-Honda)が、2026年7月に「ZOOMER e:(ズーマー イー)」の2026年モデルを中国で発表しました。剥き出しのスチールパイプフレームに丸目2灯のヘッドライト、BOX型のフロントまわりという、2017年に生産を終えた初代ズーマーの姿をそのまま電動に置き換えたようなスタイルです。
話題になっているのは見た目だけではありません。標準版で5999元、日本円にしておよそ14万円。しかも中国では免許が要らない。初代ズーマーの新車価格が24万3000円だったことを思えば、安いうえに免許まで不要という、かなり強い数字が並んでいます。
ただし、この「免許なしで乗れる」は中国の制度の話です。そして仕様表をよく見ると、54.5kg・400W・25km/hという数値は、いずれも中国の規格が定めた上限値ぴったりに置かれています。ここでは確定しているスペックと4種類の価格を整理したうえで、なぜこの数字になったのか、そして日本に持ち込めるのかどうかまでを順に見ていきます。
この記事でわかること
- ZOOMER e: 2026年モデルの発表主体・発表時期と、初代ズーマーとの関係
- 車体寸法・重量・モーター出力・最高速度など確定スペックの全数値
- 標準版/高配版/特別色を含む4種類の価格と、航続距離の差
- 「免許なしで乗れる」の中身=中国の新国標(GB 17761-2024)との対応関係
- 54.5kg・400W・25km/hが規格の上限値そのものである理由
- 日本の特定小型原付の枠に入らない2つのポイント(最高速度と全幅)
- 初代ズーマー・EM1 e: と並べたときの立ち位置の違い
- TCS・クルーズコントロール・押し歩きアシストなど装備の中身
ZOOMER e: とは何か|五羊ホンダが中国で発表した2026年モデル
まず事実関係を押さえます。発表したのはホンダ本体ではなく、中国の合弁会社である五羊ホンダです。時期は2026年7月、市場は中国国内で、日本での発売については現時点で何も発表されていません。
発表主体は五羊ホンダ|ホンダと広州汽車集団の合弁
五羊ホンダは、ホンダと広州汽車集団による中国での二輪合弁会社です。中国市場向けの製品を独自に企画・投入しており、今回のZOOMER e: もその1台にあたります。つまり、日本のホンダが日本市場を見て作ったモデルではありません。ここを取り違えると、後段の「日本で乗れるのか」という話が最初からずれます。
初代ズーマーのどこを継いだのか
初代ズーマーは2001年6月発売。スクーターの中核だった「収納」をあえて切り捨て、フレームを剥き出しにしたネイキッドスタイルで登場した49ccの原付一種でした。ホンダ社内の若手研究者チーム「Nプロジェクト」の2作目にあたり、1作目はエイプです。2007年10月に排出ガス規制対応でキャブレターからインジェクションへ変更しましたが、2016年7月施行の平成28年排出ガス規制をクリアできず、2017年8月31日をもって生産を終えました。
ZOOMER e: が継いだのは、この初代の外観要素です。BOX型のフロントまわり、丸目2灯のヘッドライト、剥き出しのスチールパイプフレーム、ブロックパターンのタイヤ、セパレートタイプのハンドル。一方で中身は49ccのガソリンエンジンではなく、400Wの電動モーターに置き換わっています。見た目は継承、中身は別物、という整理になります。
全スペックと4種類の価格|標準版と高配版で航続が25km違う
報じられている確定スペックを一覧にします。数値は五羊ホンダの発表に基づくもので、日本円は2026年8月上旬のレートによる換算値です。
| 項目 | 標準版(48V/24Ah) | 高配版(48V/30Ah) |
|---|---|---|
| 航続距離(WMTC) | 約80km | 約105km |
| 希望小売価格 | 5999元(約14万円) | 6699元(約15万6000円) |
| 特別色・溶岩レッド | 6199元(約14万5000円) | 6899元(約16万円) |
| モーター最大出力 | 400W | |
| 最高速度 | 25km/h | |
| 車両重量 | 54.5kg | |
| 全長×全幅×全高 | 1700×765×1030mm | |
| シート高 | 728mm | |
| フットスペース | 300mm | |
| 登坂能力 | 8度 | |
| ブレーキ | 前後ディスク | |
グレード間の違いは、実質的にバッテリー容量と航続距離だけです。24Ahと30Ahで航続が約80kmと約105km、差は約25km。価格差は700元(約1万6000円)で、1kmあたりおよそ640円と考えれば判断しやすくなります。毎日の移動距離が片道20kmを超えるかどうかが、ひとつの分かれ目になります。
特別色の溶岩レッドは、標準版・高配版のどちらにも設定があり、追加分はいずれも200元(約4000円)です。色だけで選べる差額なので、ここは好みの問題として切り離して考えて構いません。
「免許なしで乗れる」の正体|中国の新国標が仕様を書いている
ZOOMER e: が免許不要なのは、ホンダが特別な認可を得たからではありません。中国の「電動自行車(電動アシスト自転車を含む二輪車)」という区分に収まるように作られているからです。この区分の技術要件を定めているのが、GB 17761-2024、通称「新国標」です。
54.5kg・400W・25km/hは規格の上限値そのもの
新国標が定める主な上限は、最高設計速度25km/h以下、バッテリーを含む総重量55kg以下、モーター定格出力400W以下です。ここでZOOMER e: の数値を並べてみます。
新国標(GB 17761-2024)の上限
最高設計速度 25km/h 以下
総重量(電池込み) 55kg 以下
モーター定格出力 400W 以下
ZOOMER e: 2026年モデル
最高速度 25km/h(上限ぴったり)
車両重量 54.5kg(上限まで0.5kg)
モーター最大出力 400W(上限ぴったり)
3項目とも上限に張り付いています。とくに車両重量54.5kgは、上限55kgに対して残り0.5kg。剥き出しのパイプフレームが「軽量化と高い拡張性を実現した」と説明されているのは、デザイン上の狙いであると同時に、この0.5kgを確保するための設計判断でもあったと読めます。カバー類で覆えば、そのぶん重量は増えます。
つまり、この車のスペック表は半分がホンダの意思で、もう半分は規格が書いています。「なぜ25km/hしか出ないのか」という問いへの答えは、性能ではなく制度の側にあります。
2026年7月から全面実施された新しい規格
GB 17761-2024は2026年7月1日から全面実施されました。速度超過を検知するとモーター側で出力を遮断する仕組みが求められており、25km/hを超えると電力供給が切れます。基準を超える車両(速度25km/h超・総重量55kg超・出力400W超)は経過措置の終了とともに淘汰対象となり、3C認証のない製品は販売できません。
ZOOMER e: の2026年モデルは、この新しい規格が全面実施された直後に発表されています。規格に合わせて作り直された世代の1台、という位置づけになります。
日本では乗れない|特定小型原付の枠に二重で入らない
ここが読者の関心が最も集まる部分です。日本にも免許不要で乗れる区分はあります。2023年7月1日の道路交通法改正で新設された「特定小型原動機付自転車」です。16歳以上であれば免許なしで運転できます。
ただし要件はすべて満たす必要があり、ZOOMER e: は2つの項目で外れます。
日本・特定小型原付の要件
最高速度 20km/h 以下
全長 1.9m 以下
全幅 0.6m 以下
モーター定格出力 0.60kW 以下
ZOOMER e: を当てはめると
最高速度25km/h → 5km/h 超過
全長1700mm → 適合
全幅765mm → 165mm 超過
最大出力400W → 範囲内
最高速度25km/hは20km/h上限を超える
1つめは速度です。日本の特定小型原付は最高速度20km/h以下と定められており、中国の上限である25km/hはこれを5km/h超えます。中国では規格に合わせて25km/hに設定されている以上、日本の枠に入れるには制御を作り直す必要があります。
全幅765mmは60cm以下の枠に入らない
2つめは車体寸法で、こちらのほうが根が深い問題です。特定小型原付は全幅0.6m以下。ZOOMER e: の全幅は765mmで、165mmもはみ出します。速度はソフトウェアで抑えられますが、車幅は車体設計そのものです。ハンドルまわりを絞れば済む話ではなく、フットスペース300mmを含めた骨格に手を入れることになります。
整理すると、ZOOMER e: をそのまま日本へ持ち込んだ場合、免許不要の特定小型原付にはならず、原動機付自転車として免許・ナンバー・保安基準への対応が必要な車両になります。「約14万円で免許なし」という組み合わせは、中国の制度の上でだけ成立している数字です。日本導入について五羊ホンダ・ホンダのいずれからも発表はなく、現時点では未定として扱うのが正確です。
初代ズーマー・EM1 e: と並べるとどこに座る車か
ZOOMER e: の立ち位置は、日本で売られてきた2台と並べると分かりやすくなります。
| 項目 | 初代ズーマー(日本・2017年終売) | EM1 e:(日本・2023年発売) | ZOOMER e:(中国・2026年) |
|---|---|---|---|
| 区分 | 原付一種(49cc) | 原付一種(電動) | 電動自行車(新国標) |
| 免許 | 必要 | 必要 | 中国では不要 |
| 最高出力 | ガソリンエンジン | 1.7kW(2.3ps) | 400W |
| 航続・燃費 | ガソリン給油 | 53km(30km/h定地) | 約80km/約105km(WMTC) |
| 価格 | 24万3000円 | 29万9200円 | 約14万円〜約16万円 |
出力で見ると、EM1 e: の1.7kWに対してZOOMER e: は400W。4分の1以下です。速度域も25km/hまでで、日本の原付一種(30km/h)より低い。性能で比べれば明確に下のクラスの乗り物です。
一方、航続距離は逆転します。EM1 e: が30km/h定地走行テスト値で53kmなのに対し、ZOOMER e: は高配版で約105km。速度を落とし車重を55kg以下に抑えたぶん、電池をそれほど積まずに距離を稼げている、という関係になります。走行条件の測定方法が異なるため単純比較はできませんが、方向性の違いははっきり出ています。
価格差も同じ理屈で説明できます。EM1 e: の29万9200円は、車体15万6200円・バッテリー8万8000円・充電器5万5000円の合計です。約14万円のZOOMER e: は、この「車体だけ」の値段に近い水準ということになります。
装備は原付並み|TCSとクルーズコントロールを積んでいる
電動自転車の区分に収まる車両としては、装備がかなり厚いのも特徴です。主なものを挙げます。
| 装備 | 内容 |
|---|---|
| TCS(トラクションコントロール) | 後輪の空転を抑制 |
| クルーズコントロール | 一定速度の維持 |
| 押し歩きアシスト | 降車して押すときの補助。54.5kgの車重を扱いやすくする |
| サイドスタンドセンサー | スタンド出しのままの発進を防ぐ二重保護 |
| リアサスペンション | 5段階のプリロード調整 |
| キーレス「Wi LINK」 | 専用アプリ・Bluetooth・SMKによる解錠 |
| USB充電ポート | 標準装備 |
TCSとクルーズコントロールが25km/hの乗り物に載っているのは、率直に言って過剰にも見えます。ただ、剥き出しのブロックタイヤと8度の登坂能力という組み合わせを考えると、舗装が荒れた路面や坂の多い市街地を想定した装備と読むほうが自然です。押し歩きアシストも、54.5kgという実際に押すと重い車重への手当てとして筋が通っています。
サイドスタンドセンサーとパーキングギアの二重保護も、免許不要で誰でも乗れる区分の製品として意味があります。免許講習を前提にできない乗り手を想定すると、車両側で防ぐ設計に寄せる理由が出てきます。
よくある質問
Q. ZOOMER e: は日本で買えますか。
A. 2026年8月時点で、日本での発売は発表されていません。発表したのは中国の合弁会社である五羊ホンダで、対象市場は中国国内です。日本導入の予定について公式なアナウンスはないため、未定として扱ってください。
Q. 日本に個人輸入すれば免許なしで乗れますか。
A. 乗れません。日本で免許不要となる特定小型原動機付自転車の要件は最高速度20km/h以下・全幅0.6m以下などで、ZOOMER e: は最高速度25km/h・全幅765mmのため2項目で外れます。日本の公道で走らせる場合は原動機付自転車としての扱いとなり、免許・ナンバー・保安基準への対応が必要になります。
Q. 標準版と高配版はどちらを選ぶべきですか。
A. 差はバッテリー容量(48V/24Ahと48V/30Ah)と航続距離(約80kmと約105km)で、価格差は700元・約1万6000円です。片道20kmを超える移動が日常にあるなら高配版、通勤通学が数kmで収まるなら標準版で足ります。約25kmの航続差に1万6000円を払う価値があるかで判断するのが分かりやすい方法です。
Q. なぜ最高速度が25km/hに抑えられているのですか。
A. モーターの性能ではなく、中国の規格による制限です。2026年7月1日から全面実施された新国標(GB 17761-2024)が、電動自行車の最高設計速度を25km/h以下と定めています。基準を超えると自動的に電力供給を遮断する仕組みも求められており、25km/hはこの上限に合わせた設定です。
Q. 初代ズーマーの中古を買うのと、どちらがよいですか。
A. 用途が違うため、そのまま比較できません。初代ズーマーは49ccの原付一種で免許が必要ですが、日本の公道を法定速度30km/hで走れます。ZOOMER e: は中国国内向けの電動自転車区分で、日本で同じようには使えません。日本で乗ることが前提なら、比較対象になるのは初代ズーマーの中古か、EM1 e: をはじめとする国内向け電動原付です。
まとめ
五羊ホンダが2026年7月に発表したZOOMER e: 2026年モデルは、初代ズーマーの外観要素を電動で再構成した1台です。標準版5999元(約14万円)・高配版6699元(約15万6000円)に特別色の溶岩レッドがそれぞれ200元高で設定され、航続距離はWMTCで約80kmと約105kmとなっています。
注目された「免許なしで乗れる」は、中国の新国標(GB 17761-2024)の電動自行車区分に収まっていることによるものです。最高速度25km/h・モーター最大出力400W・車両重量54.5kgという数値は、いずれも規格が定めた上限(25km/h・400W・55kg)に張り付いており、スペック表の主要な部分は制度の側が書いていると言えます。剥き出しのパイプフレームという意匠が、重量を55kg以下に収める設計とかみ合っている点が、この車の面白いところです。
一方、日本で同じ条件では乗れません。免許不要となる特定小型原付は最高速度20km/h以下・全幅0.6m以下で、ZOOMER e: は速度で5km/h、全幅で165mmはみ出します。速度は制御で下げられても、全幅は車体設計の問題です。日本導入について発表はなく、仮に来るとしても中国と同じ「約14万円で免許不要」という形にはならない、という前提で見ておくのが妥当です。
それでも、初代ズーマーの意匠を電動でここまで素直に再現した実車が出てきたこと自体は、2017年に終売を見送った側からすれば見る価値のある動きです。国内向けの動きが出るとすれば、まずホンダ本体からの発表を待つことになります。
参考:くるまのニュース「価格14万円! ホンダ新型スクーター『ズーマー』登場!」/バイクのニュース「ホンダ『ズーマー』2026年モデル登場! 『ZOOMER e:』中国で発表」/中国政府網「《電動自行車安全技術規範》(GB 17761-2024)主要技術内容問答」/警察庁「特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について」/webオートバイ「ホンダ『EM1 e:』発売! 国内ホンダ車で初の一般ユーザー向け電動バイク」/Wikipedia「ホンダ・ズーマー」





