【9/2】旧統一教会総裁に懲役2年 自室の金庫から現金30億円押収

【9/2】旧統一教会総裁に懲役2年 自室の金庫から現金30億円押収

2026年8月31日、ソウル中央地裁は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)総裁の韓鶴子(ハン・ハクチャ)被告(83)に、政治資金法違反などの罪で懲役2年の実刑判決を言い渡しました。特別検察官の求刑は懲役13年でした。翌9月1日には、韓国の検察と警察による合同捜査本部が、韓被告の自室にある金庫などから現金260億ウォン(約30億円)を押収していたと発表しています。日本では2026年6月23日に教団への解散命令が最高裁で確定し、清算手続きが進んでいるところです。ここでは、韓国の判決で何が有罪と認定されたのか、なぜ実刑なのに収監されていないのか、そして日本の信者が納めた献金と日本の政界との関係がいまどこにあるのかを、報道と公的な記録にもとづいて順に整理します。

この記事でわかること

  • 判決の中身:尹錫悦前政権側に金品を渡して教団への便宜を求めた行為などが有罪と認定され、求刑13年に対して懲役2年が言い渡されました。教団側は控訴する方針です。
  • 収監されていない理由:健康悪化を理由とする勾留執行停止が9月30日まで延長され、滞在先は治療を受ける病院に制限されています。
  • 金庫の30億円:合同捜査本部は260億ウォン(約30億円)を押収し、教団への献金などを横領して現金で保管していたとみて捜査しています。
  • 日本との違い:日本は宗教法人そのものへの解散命令が確定し清算段階に入っているのに対し、韓国で問われているのは総裁個人の刑事責任です。
  • 解明が止まっている場所:韓国では国会議員ら132人への違法な政治資金提供が捜査対象になった一方、日本の政界との関係は2022年の自民党の内部点検から先に進んでいません。
目次

韓鶴子総裁は何の罪で懲役2年になったのか

尹錫悦前政権側に便宜を受ける目的で金品を提供したとして、政治資金法違反などの罪が有罪と認定されました。求刑は懲役13年でした。

判決を言い渡したのは2026年8月31日のソウル中央地裁です。地裁は「国から支援を受け政治的影響力を拡大する目的だった」と指摘しました。韓被告は起訴内容をすべて否認しており、教団側は「総裁承認の判断が納得できない」として控訴する方針を示しています。まず、有罪とされた行為と、判断が示されなかった行為を分けて押さえます。

有罪と認定された3つの金品提供

権性東(クォン・ソンドン)元国会議員への1億ウォン、尹被告の妻へのネックレスとバッグ、与党議員らへの1億ウォンの3件です。

聯合ニュースによれば、地裁が認定したのは次の行為です。2022年1月ごろ、韓被告が元教団幹部らと共謀し、尹錫悦前大統領の元側近で最大野党「国民の力」の権性東元国会議員に対し、政権による教団への支援を要請して政治資金1億ウォン(約1160万円)を渡したこと。同年7月、呪術師のチョン・ソンベ氏を通じて尹被告の妻である金建希(キム・ゴンヒ)被告に、ダイヤモンドのネックレスや高級ブランドバッグなどを渡し、教団に便宜を図るよう依頼したこと。そして同年3月、韓被告と元幹部らが教団の資金約1億ウォンを国民の力の議員らに供与したことです。権元議員とチョン氏は、いずれも別の裁判で実刑が確定しています。

公訴棄却となった証拠隠滅教唆と海外送金

証拠隠滅教唆と海外送金の2件は、特別検察官法上の捜査対象ではないとして公訴棄却になりました。

公訴棄却となったのは、証拠隠滅教唆の罪と、ネパール・セネガルの政治家への7億8700万ウォンの送金です。

証拠隠滅教唆は、韓被告自身の海外賭博疑惑に関する警察の捜査に備えて元教団幹部に指示したとされたものです。海外送金は2022年5月から7月にかけて、選挙資金として教団の資金を渡し横領したとされたものでした。公訴棄却は中身の有罪無罪を判断せずに手続きを打ち切る決定であり、無罪が確定したという意味ではありません。求刑13年に対して懲役2年にとどまったのは、この2件が判断の対象から外れたことが大きく影響しています。

時期 問われた行為 金額 判決
2022年1月ごろ 権性東元国会議員への政治資金提供 1億ウォン(約1160万円) 有罪
2022年3月 国民の力の議員らへの教団資金の供与 約1億ウォン 有罪
2022年7月 金建希被告へのネックレス・バッグの提供 金額の認定は公表なし 有罪
2022年5〜7月 ネパール・セネガルの政治家への送金 7億8700万ウォン 公訴棄却
時期の公表なし 元幹部への証拠隠滅の指示 ― 公訴棄却

有罪とされた3件はいずれも2022年に集中しており、韓国で政権交代が起きた年に教団側から政権中枢へ働きかけがあったという構図が、裁判所の判断として残ったことになります。

Q. 韓国の「政治資金法」は日本の政治資金規正法と同じものですか。

A. 別の国の別の法律です。韓国の政治資金法は政治資金の授受を規制する法律で、法人や団体が政治資金を提供することを禁じています。日本の政治資金規正法とは規制の対象も罰則も異なるため、同じ基準で比べることはできません。

次に、実刑判決を受けながら身柄が拘束されていない理由を見ます。

実刑判決なのになぜ収監されていないのか

健康悪化を理由とする勾留執行停止が9月30日まで延長され、法廷での身柄拘束が行われなかったためです。

ソウル中央地裁は判決と同時に保釈請求を棄却しましたが、9月2日までは勾留執行停止が認められていたため、その場での収監はありませんでした。9月1日までにこの期間が9月30日まで延長され、当面は収監を免れることになったと聯合ニュースと毎日新聞が伝えています。地裁は停止期間中、韓被告に対し治療を受ける病院にだけ滞在するよう住居を制限したとされ、医療関係者と弁護士以外との面会も禁じられています。

釈放はすでに半年に及ぶ

韓被告は2026年3月下旬に病気治療を理由に釈放され、期間の延長が繰り返された結果、釈放は半年に達しました。

毎日新聞によれば、勾留執行停止は2025年11月と2026年2月に健康上の理由から認められ、3月以降も延長が繰り返されてきました。韓国の裁判所は深刻な持病がある場合などに釈放を決めることができます。1審は実刑判決ですが、教団側が控訴する方針を示しているため、刑が確定するのは控訴審以降になります。

Q. 控訴すると懲役2年はなくなるのですか。

A. なくなりません。1審の判決は控訴審で改めて審理され、維持されることも変更されることもあります。教団側は控訴する方針とされる一方、特別検察官側の対応は本稿の時点で公表されていません。

身柄の扱いと並行して動いていたのが、判決の翌日に公表された現金の押収です。

自室の金庫から出た30億円は何の資金なのか

合同捜査本部が押収した260億ウォン(約30億円)で、教団への献金などを横領して現金で保管していたとみて捜査が進められています。

韓国の検察と警察による合同捜査本部は、2026年1月に発足し8月31日に活動を終了しました。終了に合わせて出した声明で、韓被告の自室にある金庫などから260億ウォン相当の現金を押収したと発表しています。テレビ朝日は日本円でおよそ30億3000万円相当と伝え、韓国メディアは日本円を含む複数の通貨があったと報じています。公開された資料には、スーツケースや棚に詰め込まれた札束が写っていました。

105億ウォンの横領で8月下旬に追起訴

2017年から2025年にかけて教団資金約105億ウォン(約12億円)を横領したとして、韓被告らは8月下旬に追起訴されています。

捜査本部によれば、手口は海外宣教費などと偽って会計処理したり、現金で受け取った献金を帳簿に計上しなかったりするものだったとされます。押収された現金は、韓被告の自室に設置された金庫などに保管されていました。この横領事件は8月31日の判決とは別の裁判として、これから審理が進むことになります。

判決確定前に処分されないよう保全手続きへ

捜査本部は、判決が確定する前に教団側が現金を処分できないよう保全の手続きを進めるとしています。

合同捜査本部が動いた8か月

2026年1月

政界と宗教団体の癒着を調べる合同捜査本部が発足

2026年3月下旬

健康を理由に韓被告が釈放(以後、延長が続く)

2026年8月下旬

約105億ウォンの横領で追起訴

2026年8月31日

懲役2年の実刑判決/捜査本部が活動終了

2026年9月1日

260億ウォン押収を公表/勾留執行停止を9月30日まで延長

捜査本部の活動は終わりましたが、横領事件の審理と控訴審はこれからです。ここで日本側の状況と重ねると、両国で問われているものが違うことが見えてきます。

日本の解散命令と韓国の判決はどこが違うのか

日本は宗教法人そのものへの解散命令が確定して清算段階に入り、韓国で問われたのは総裁個人の刑事責任です。対象も手続きも別物です。

日本では2026年3月4日に東京高裁が東京地裁の解散命令を維持する決定を出し、清算手続きが始まりました。教団は3月9日に最高裁へ特別抗告しましたが、最高裁第3小法廷は6月23日までにこれを退け、解散を命じた司法判断が確定しています。最高裁は、1973年から2022年までの長期にわたる寄付勧誘が組織として多額の損害を与えたと認定した高裁の判断を踏まえ、解散命令は憲法に違反しないとしました。

項目 日本 韓国
対象 宗教法人そのもの 総裁個人と元幹部
手続き 宗教法人法にもとづく解散命令(民事の非訟手続き) 政治資金法違反などの刑事裁判
問われた行為 1973〜2022年の組織的な寄付勧誘による損害 2022年の政権側への金品提供、献金の横領
現在の段階 2026年6月23日に確定、清算手続き中 1審判決、教団側は控訴の方針
法人格 失われ、資産は清算人の管理下 維持されている

つまり、韓国で総裁に実刑が出ても、韓国の教団が自動的に解散するわけではありません。ただし読売新聞は、韓国でも解散が現実味を帯び始めたと伝えています。李在明大統領が「組織的かつ体系的に政治に介入した事例がある」と述べたことに加え、日本からの巨額送金が途絶えていることが背景にあります。

(編集部分析)日本と韓国で手続きの筋道が違うことは、そのまま「日本側で解明が止まっている場所」を映しています。日本で確定したのは寄付勧誘によって信者に損害を与えたという法人の責任であり、その資金がどこへ流れ、どの政治的働きかけに使われたのかという部分は、日本の裁判では正面から問われていません。韓国では捜査機関が政界との癒着を主題に据えて捜査本部を立ち上げ、8か月で総裁の刑事責任と現金の所在まで到達しました。同じ教団をめぐって、資金の出し手だった日本側のほうが解明が浅いという状態は、国益の観点では課題が残ると評価できます。

Q. 解散命令が確定すると、教団は日本で活動できなくなるのですか。

A. 活動そのものが禁止されるわけではありません。解散命令で失われるのは宗教法人格と、それにともなう税制上の優遇です。任意団体として信仰を続けること自体は、信教の自由の範囲として妨げられません。

では、日本の信者が納めた献金は、いまどこにあるのでしょうか。

日本の信者が出した献金はどこへ行ったのか

2018〜22年度の海外送金は年間約83億〜179億円で、その9割超が韓国向けでした。解散命令によってこの送金は途絶えています。

この金額は読売新聞が報じたものです。韓国の教団にとって日本は最大の資金源であり、送金が止まったことが教団の存続に直結していると同紙は伝えています。押収された30億円がこの送金と直接つながるかどうかは、捜査本部からも裁判所からも示されていません。捜査本部が明らかにしているのは、教団への献金などを横領して現金で保管していたとみている、という点までです。

被害を申し出る期限は2027年5月20日

清算手続きにともなう債権の申出期間は、2026年5月20日から2027年5月20日までの1年間です。

法テラスによれば、裁判所が選任した清算人に対して債権を申し出ることで、損害賠償などを求めることができます。申出はオンラインのアカウント登録でも、書面の郵送でも可能です。また、別途の申請により、教団が保有していた献金等の情報の開示を受けられる場合があるとされています。高額献金をした本人が亡くなっている場合や、家族が金額を把握していない場合に備えた仕組みです。

献金と資金の流れ、いま止まっている場所

日本の信者の献金

1973〜2022年の勧誘が組織的な損害と認定

→

韓国への海外送金

2018〜22年度は年83億〜179億円、9割超が韓国向け

→

韓国の教団本部

2017〜25年に約105億ウォンの横領で追起訴

→

政界への金品提供

2022年の3件が有罪認定、懲役2年

※各段階は別々の手続きで認定されたもので、特定の献金が特定の金品提供に使われたと裁判所が認定したものではありません。

日本で問われたのは入口、韓国で問われたのは出口にあたる部分で、その間をつなぐ流れは、どちらの司法手続きでも確定していません。

日本の政界との関係はどこまで解明されたのか

韓国では議員132人が捜査対象になった一方、日本は2022年の自民党の内部点検から先へ進んでいません。

読売新聞によれば、韓国の検察は2019年から2025年にかけて、国会議員ら132人に計約1億8900万ウォン(約2200万円)の違法な政治資金が寄付されたとしています。日本では2022年8月31日に自民党が役員会で教団および関連団体との関係を「一切断つ」とする基本方針を決め、所属議員に点検と見直しを通達して結果を公表しました。しかし、この点検は党の内部で行われたもので、外部機関による検証は実施されていません。2026年3月に高裁が解散命令を維持した際も、野党側は自民党との関係の解明を求めています。

解散命令の確定で終わっていない論点

被害者への謝罪と救済、そして政治との関係の検証という2つが、確定後も残された論点です。

日本弁護士連合会は解散命令の確定にあたり会長談話を出しています。専門家からは、教団から被害者への謝罪がないままである点への懸念も示されています。清算手続きは債権の申出期間が2027年5月まで続くため、被害の全体像が見えるのはその先になります。

(編集部分析)ここで問うべきは「誰が得をしたのか」です。日本の信者から集めた資金が韓国へ渡り、その一部が韓国の政権中枢への働きかけに使われたと韓国の裁判所が認定しました。つまり日本人が納めた金が、日本国内の議論を経ないまま外国の政治に流れ込む経路があったことになります。宗教活動としての献金と、外国での政治的働きかけの原資は本来別のものです。その区別が制度として担保されていたのかは、解散命令が確定した今こそ検証されるべき点だといえます。政治資金と外国からの影響力をめぐる規律は、教団の問題に限らず、主権の観点から詰めるべき論点として残っています。

政治資金をめぐる国内の論点は、こちらの記事でも扱っています。
→ 小野田紀美氏に公選法違反疑惑|「ヤミ選挙事務所」報道を事実で整理

旧統一教会と韓国の判決のよくある質問

報道では触れられにくい周辺の疑問を、公表されている範囲でまとめます。

Q. 「世界平和統一家庭連合」と「旧統一教会」は同じ団体ですか。

A. 同じ団体です。1954年に韓国で設立され、日本では「世界基督教統一神霊協会」の名称で活動していましたが、2015年に「世界平和統一家庭連合」へ名称変更しました。報道では旧称を使って「旧統一教会」と表記されることが一般的です。

Q. 押収された30億円は被害者に返されるのですか。

A. 現時点では決まっていません。押収された現金は韓国の刑事手続きのなかで保全されており、日本の清算手続きとは別の枠組みです。日本での債権申出は、清算人が管理する日本の教団の財産に対して行うものです。

Q. 韓国の判決は日本の裁判に影響しますか。

A. 直接の法的効力はありません。韓国の判決は韓国の法律にもとづくもので、日本の解散命令はすでに確定しています。ただし、教団の資金がどう動いていたかを示す事実関係として、今後の被害者救済の議論で参照される可能性はあります。

参考情報

  • 聯合ニュース「旧統一教会総裁 懲役2年の実刑判決も収監されず=勾留執行停止延長で」(2026年9月1日)
  • 共同通信「旧統一教会総裁自室に30億円 韓国当局押収、献金横領か」(2026年9月1日)
  • 時事通信「韓総裁金庫から30億円押収 韓国合同捜査本部」(2026年9月1日)
  • 毎日新聞「旧統一教会の韓総裁、釈放半年に 裁判所が延長を決定」(2026年9月1日)
  • テレビ朝日「旧統一教会・韓鶴子被告の自宅から現金約30億円を押収」(2026年9月1日)
  • 読売新聞「旧統一教会解散、韓国でも現実味…日本からの巨額送金が途絶えるなか」(2026年8月31日)
  • 日本経済新聞「旧統一教会の解散命令、最高裁で確定」(2026年6月)
  • 法テラス「『旧統一教会』の清算手続開始について」
  • 日本弁護士連合会「旧統一教会に対する解散命令確定に当たっての会長談話」(2026年3月4日)
  • 自由民主党「旧統一教会『関係を一切断つ』役員会で基本方針を決定」(2022年8月31日)
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