富士登山届出制度とは?富士山ヘリ救助の有料化はいつから・いくらか【2026年9月14日山梨県発表】

山梨県は2026年9月14日、閉山期の富士山で遭難し、県の防災ヘリコプターに救助された登山者から手数料を取る方針を発表しました。あわせて、登山計画や装備を事前に県へ届け出る「富士登山届出制度(仮称)」を新しく作り、届出を出して安全対策をしていた人は手数料を減免します。適用は2027年9月の閉山期からを目指しており、金額はまだ決まっていません。本記事では、山梨県の発表資料と長崎幸太郎知事の記者会見の記録をもとに、富士登山届出制度の中身、ヘリ救助が有料になる範囲、金額の見通し、同じ日に別の案をまとめた静岡県との違いを整理します(9月16日朝の時点の情報です)。
この記事でわかること
- 富士登山届出制度:今の登山届を富士山に限って強め、県が登山計画・装備・保険を事前に確認して助言する制度です(名称は仮称)。
- 有料になる救助:閉山期に県の防災ヘリで救助された場合が原則有料です。県警ヘリと地上部隊の救助は対象外です。
- 減免の条件:登山届の提出、装備・計画・保険が県の基準に合っていること、届出どおりに行動したことで判断します。
- 金額:未定です。県は他県の例を参考に燃料費や人件費を含めて精査するとしています。
- いつから:2027年9月の閉山期からの適用を目指し、これから条例を作ります。
- 静岡県:同じ日にヘリ救助の有料化を見送り、登山届の義務化を軸にした案をまとめたと報じられています。
富士登山届出制度とは?山梨県が9月14日に創設を表明
富士登山届出制度は、閉山期の富士山に登る人の計画や装備を県が事前に確認し、基準に照らして助言する新しい仕組みです。
山梨県は9月14日、「富士山閉山期における無謀登山対策パッケージ(方向性)」を公表しました。柱は「防災ヘリ救助手数料」「富士登山届出制度(仮称)の創設」「通行規制・広報の強化」の3つです(山梨県の発表資料)。知事は会見で、無謀登山を未然に防ぐには「登らせない」「来させない」仕組みが重要だと説明しました。
3つの柱の中身を、県の資料の表現に沿って表にしました。
| 柱 | 主な中身 | 担当 |
|---|---|---|
| 防災ヘリ救助手数料 | 防災ヘリ救助は有料化。登山届を出し安全対策を講じた登山者は減免。対象のエリア・期間は届出制度と連動して設定 | 消防保安課 |
| 富士登山届出制度(仮称) | 現行の登山届出制度を富士山限定で強化。登山計画・装備・保険の届出を受け付け、基準に照らして助言。対象エリア・期間の拡大など | 富士山観光振興グループ |
| 通行規制・広報の強化 | バリケードの追加、ゲートのすり抜け防止、センサーによる警告音・回転灯、罰則の看板表示、多言語の映像とSNSでの広報 | 富士山観光振興グループ・道路管理課 |
3つは別々の対策ではなく、届出制度で安全対策を確認し、その結果を手数料の減免に結び付ける設計になっています。
今の登山届との違いは「事前に確認して助言する」こと
今の登山届は遭難時の居場所確認が中心で、新制度は登る前に計画を確かめて安全性を高めることを主眼にしています。
会見で県の担当者(振興監)は、現行制度について「基本的には遭難があったときにどこにいるのかを確認する制度」と説明しました。新しい制度は、事前に確認したうえで登ってもらうことに重点を置きます。助言は行政が行い、専門家の知見を使うことも案の1つとしています(山梨県知事記者会見 2026年9月14日)。
知事は、遭難してから対応する制度から「遭難させないための制度」へ、行政と登山者の双方の意識を変えたいと述べています。
なお、一部の報道は山梨県の方針を「登山届の義務化」と伝えていますが、県の発表資料と会見の記録にある表現は、現行制度を富士山限定で「強化」する制度の「創設」です。提出しなかった人への罰則などは、県の資料には書かれていません。
届けても通行止め区間は登れない
登山届を出しても、通行止めになっている登山道を通ってよいことにはなりません。県が会見でわざわざ念を押した点です。
知事は「登山届は通行止めとなっていない場所を登る者を対象とするもの」と説明し、通行止め区間の通行を認めるものではないと明言しました。県の資料にも「通行止め区間の通行を認めるものではない」と書かれています(対策パッケージ資料PDF)。届出は「登る許可」ではなく、登る人の安全対策を確認する手続きと読むのが正確です。
富士山のヘリ救助は有料になる?閉山期の防災ヘリが対象
有料になるのは、閉山期の富士山で遭難し、山梨県の防災ヘリに救助された場合です。原則として手数料を取ります。
富士山の山梨県側の開山期は9月10日までで、知事は会見の冒頭で今年の開山期が終わったことに触れました。閉山期の富士山は地面の凍結や強風で危険が大きく、知事によると県内で閉山期が設けられている山は富士山だけです。防災ヘリの救助には多額の経費がかかり、富士山特有の強風や風向きで救助する側にも高い危険が伴うと説明しています。
そのうえで、十分な計画や装備がないまま入山して遭難し、防災ヘリが救助した場合に「救助事務に要する経費として手数料を徴収」するとしました。手数料の対象となるエリアと期間は、富士登山届出制度と連動して今後決めます。
登山届と装備・計画・保険の基準を満たせば減免
減免されるかどうかは、登山届を出したか、装備・計画・保険が基準に合うか、届出どおりに動いたかで判断します。
県の資料は、救助が起きた場合に減免の対象になるかを専門的な知見を持つ人が確認することを想定しています。知事は、手続きを適切に行っていた登山者からは手数料を「徴収しない」ことを考えていると述べました。一方で「減」と「免」をどう分けるかを問われると「これから検討します」と答えています。判断の流れを図にしました。
つまり、同じ遭難でも準備の中身によって負担が変わる設計です。基準の具体的な中身(どんな装備が必要か、どの保険が対象か)は、まだ公表されていません。
県警ヘリと地上部隊の救助は無料のまま
手数料の対象は県の防災ヘリだけです。県警のヘリと、地上を歩いて向かう救助隊には手数料がかかりません。
会見で記者から県警ヘリとの整合性を問われた知事は、防災ヘリの手数料徴収は法で認められている一方、警察は警察法によって費用を徴収しないと定められており「国の法律の問題」だと答えました。どちらのヘリが来るかで負担が変わる不公平感については「反射的な効果であって、そういうものだと理解していただくしかない」と述べています。地上部隊については「手数料を徴収する規定がありません」として、現状ではできないとの考えです。
| 救助の主体 | 手数料 | 知事・県の説明 |
|---|---|---|
| 県の防災ヘリ | 原則有料(減免あり) | 手数料の徴収は法で認められている |
| 県警のヘリ | 無料 | 警察法で費用を徴収しないと定められている |
| 地上部隊 | 無料 | 手数料を徴収する規定がない(今後のテーマにはなり得る) |
知事は、この「ちぐはぐ感」は認めざるを得ないとして、国に警察法の見直しを求めていく考えも示しました。
ヘリ救助はいくら?金額はまだ決まっていない
山梨県の手数料の金額は、まだ決まっていません。県は他県の例を参考に、燃料費や人件費を含めて精査するとしています。
会見で金額を問われた担当課長は、手数料は地方自治法で救助に要した経費(実費)とされているとして、「他県の例を参考に、燃料費や人件費などを含めて今後具体的に精査していきたい」と答えました。県の発表資料にも金額は書かれていません。
報道の「5分8,000円」は埼玉県の例を参考にした検討案
一部報道の「5分あたり8,000円程度」は検討中の案として伝えられたもので、県が決めた金額ではありません。
FNNプライムオンラインは9月14日、山梨県が防災ヘリの救助費用として「5分あたり8000円程度を徴収する案も検討」していると報じました(FNNプライムオンライン)。この数字は、全国で初めて防災ヘリの山岳救助を有料にした埼玉県の現在の手数料と同じ額です。会見で課長は、防災ヘリの有料化は埼玉県に次いで山梨県が2例目になると説明しています。埼玉県の制度を、県の公式ページで確認しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 埼玉県防災航空隊の緊急運航業務に関する条例 |
| 制度の開始 | 2018年(平成30年)1月1日 |
| 現在の金額 | 救助のために飛行した時間5分ごとに8,000円 |
| 金額の改定 | 2024年(令和6年)4月1日に、5分ごと5,000円から8,000円へ変更 |
| 対象 | 県内の山岳のうち指定された地域での救助 |
| 除外・減免 | 業務や人命救助での立ち入り、自然災害が原因の遭難、生活保護の受給者など |
埼玉県のページによると、過去の平均救助時間は1時間程度です。仮に埼玉県の金額で1時間(5分×12回)飛行した場合の手数料は9万6,000円になります(埼玉県「防災ヘリコプターの救助活動に係る手数料」)。これは埼玉県の制度で計算した参考値で、山梨県の金額ではありません。富士山は標高や風の条件が埼玉県の山と違うため、実費の積み上げがどうなるかは県の精査を待つ必要があります。
いつから?2027年9月の閉山期からの適用を目指す
届出制度とヘリ手数料は、2027年(令和9年)9月の閉山期からの適用を目指しています。決定ではなく目標で、条例はこれから作ります。
知事は会見で「令和9年9月の閉山期からの適用を目指し、今後条例化などの準備を進めていきたい」と述べました。条例案をいつ議会に出すかについて課長は、制度設計を詰めたうえで、来シーズンの閉山期からの開始に向けて周知期間も含めて作業を進めると答えています。発表から適用目標までの流れを整理しました。
つまり、この冬(2026年9月からの閉山期)に遭難して防災ヘリに救助されても、新しい手数料はまだかかりません。通行規制の強化のうち実施できるものは、県が「速やかに着手」するとしています。
なぜ有料化するのか:知事が会見で語った理由
理由は、閉山期に準備不足で登る人を減らし、救助に向かう人を危険にさらさないためだと知事は説明しています。
知事は、行動の自由の尊重や登山文化を守るという考え方も理解できるとしたうえで、万が一遭難すれば救助をしなければならず、救助する人を命の危険にさらすことになると述べました。有料化と届出制度で効果が見られない場合には「更なる厳しい規制強化というものも考えなければならない」とも話しています。制度を作るうえで一番悩ましいのは、憲法で保障された移動の自由にどこまで合理的な制約を課せるかだとしました。
閉山期の遭難は山梨県側で7年21件・4人死亡(報道)
FNNの報道によると、富士山の山梨県側では去年までの7年間に遭難事故が21件起き、4人が亡くなっています。
この数字はFNNプライムオンラインの記事に「去年までの7年間に(山梨県側だけで)遭難事故が21件発生し、4人が死亡」とあるもので、何年から何年までかの区切りは記事に書かれていません。一方、会見で課長は、昨年度の閉山期に防災ヘリが救助した実績は無く、2024年度(令和6年度)は1件出動したものの気象条件のため救助できずに引き返したと説明しました。防災ヘリが実際に救助に入る件数は多くなく、知事も地上部隊の救助が多いという記者の指摘に「1つのテーマにはなり得る」と答えています。
「自由だけを振りかざすのはやめて」発言の文脈
この言葉は、救助に行く人やその家族のことを考えてほしいという呼びかけの中で出たものです。登山そのものを否定した発言ではありません。
知事は「一般の方の閉山期の富士山の登山はやめていただきたい」としたうえで、「自由だけを振りかざすのはやめていただきたい」「冬山登山で安易なレジャー感覚はやめていただきたい」と述べました。一方で、十分な準備と経験を持つ登山者を一律に止めることには「いかがなものかという議論はあろうかと思っています」とも話し、無謀な登山と区別して向き合える形にしたいとしています。「来させない」ための広報では、特に外国人に閉山期の危険を理解してもらうため、厳しい自然環境を伝える映像を作ってSNSで発信するとしています。
静岡県はヘリ有料化を見送り、登山届の義務化が軸
静岡県は同じ9月14日、ヘリ救助の有料化を見送り、登山届の提出を義務にする案をまとめたと報じられています。
静岡朝日テレビによると、静岡県庁で開かれたワーキンググループの会議で、冬場に約2,000人が富士山に登っている実態が報告されました。登山届の提出を義務化し、出さなかった人には何らかのペナルティーを科す方向で検討し、来年9月までに制度を導入したいとしています。消防のまとめでは2023〜2025年度の3年間に117件の遭難救助事案があり、閉山期は重症者と死者の割合がそれぞれ1割を超えたということです(静岡朝日テレビ)。
| 項目 | 山梨県 | 静岡県(報道) |
|---|---|---|
| ヘリ救助の有料化 | 防災ヘリを原則有料(減免あり) | 見送り |
| 登山届 | 富士登山届出制度(仮称)を創設し、事前に確認・助言 | 提出を義務化し、未提出者にペナルティーを検討 |
| 導入の目標 | 2027年9月の閉山期から | 来年9月までに |
| 出典 | 県の発表資料・知事会見 | 静岡朝日テレビの報道 |
静岡県が有料化を見送った理由について、県の公式な説明は本記事の執筆時点で確認できていません。山梨県の知事は会見で、静岡県とは連絡を取り合っており最終的には調和を取る必要があるとしつつ、静岡県の判断については「静岡県に取材いただきたい」と答えています。
閉山期の通行規制はどう強化される?
吉田口登山道で、バリケードの追加、ゲートのすり抜け防止、センサーによる警告などを行い、立ち入りを抑えます。
県の資料には、吉田口登山道での具体的な対策が7つ並んでいます。泉ヶ滝から佐藤小屋の間へのバリケード追加、泉ヶ滝入口ゲートのすり抜け防止、センサーを使った警告音と回転灯、罰則規定を書いた通行止め看板、ホームページやSNSでの通行禁止と罰則の周知、馬返より先への通行止め案内看板の追加、佐藤小屋の下山道へのバリケード追加です。
通行規制に違反した人には道路法にもとづく罰則があり、県はその可能性を多言語の看板で知らせるとしています。資料の地図では、ゲートの設置期間は場所により9月11日〜6月30日と11月1日〜4月30日に分かれています。
残る論点:警察法との整合と金額の決め方
残る論点は、県警ヘリが無料のままの不公平感、金額と減免基準の中身、静岡県との足並みの3つです。
1つ目は救助の主体による差です。知事自身が「ちぐはぐ感」を認め、国の制度との調和を今後のテーマに挙げました。2つ目は制度の中身で、金額、対象エリアと期間、装備や保険の基準、「減」と「免」の線引きがいずれも未定です。3つ目は隣県との関係で、登山道が両県にまたがる富士山で、有料化の判断が分かれた状態をどうそろえるかが問われます。
これから閉山期の富士山に登ることを考えている人は、県が条例案や基準を公表した段階で中身を確かめる必要があります。いずれにしても、知事は一般の人の閉山期の登山そのものを控えるよう求めています。
よくある質問
Q. 夏の開山期に富士山でヘリ救助されても有料になりますか?
A. 今回の方針は閉山期の無謀登山対策で、手数料の対象になるエリアと期間は今後、届出制度と連動して決めます。
県の資料は「手数料の対象となるエリア・期間を設定」としており、開山期を含むかどうかは書かれていません。発表の対象は閉山期です。
Q. この冬に遭難したら手数料を払うことになりますか?
A. 新しい手数料はまだありません。県は2027年9月の閉山期からの適用を目指して、これから条例を作ります。
ただし閉山期の登山道は通行止めで、規制に違反すると道路法の罰則の対象になると県は周知しています。
Q. 制度について県に問い合わせるにはどこへ連絡すればよいですか?
A. 県の発表資料では、柱ごとに窓口が分かれています。電話番号は県の発表資料に載っているものです。
防災ヘリ救助手数料は消防保安課(055-223-1430)、富士登山届出制度は富士山観光振興グループ(055-223-1316)、通行規制は道路管理課(055-223-1695)、対策パッケージ全体は総合防災政策室(055-223-1560)です。
Q. 富士登山届出制度に届け出れば、閉山期でも登ってよいのですか?
A. いいえ。届出は通行止めになっていない場所を登る人が対象で、通行止め区間の通行を認めるものではありません。
知事は会見で「当たり前ですが念のためお伝えします」と前置きして、この点を説明しました。
Q. 知事の会見の全文はどこで読めますか?
A. 山梨県の公式サイトに、9月14日の知事記者会見の記録がテキストで掲載されています。記者との質疑応答も含まれます。
本記事で引用した県警ヘリとの関係、金額の決め方、静岡県との違いについてのやり取りも、この記録で確認できます。URLは下の参考情報に載せています。
参考情報
- 山梨県「~富士山の防災ヘリ救助の有料化へ~『富士山閉山期における無謀登山対策パッケージ(方向性)』の公表について」2026年9月14日
https://www.pref.yamanashi.jp/sogobosai/release/0809/14.html - 山梨県 対策パッケージ資料(PDF)
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/127705/260914_pressrelease_fujisantaisaku.pdf - 山梨県「知事記者会見(令和8年9月14日月曜日)」
https://www.pref.yamanashi.jp/chiji/kaiken/0809/0914.html - 埼玉県「埼玉県防災ヘリコプターの救助活動に係る手数料」
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0404/herizyourei/herizyourei.html - FNNプライムオンライン「閉山中の富士山遭難でヘリ救助が有料に 5分で8000円徴収する案も検討 登山届提出も義務化へ」2026年9月14日
https://news.yahoo.co.jp/articles/893b75c64d8800a9211d23e969c763c1e9636a4b - 静岡朝日テレビ「閉山期の富士登山 静岡県はヘリ救助の有料化見送り 山梨県とは対応分かれる 登山届の義務化が軸」2026年9月14日
https://news.yahoo.co.jp/articles/4cda42e4a021f972883630859d4eaad2c3fba7f6 - トラベル Watch「閉山期の富士山、防災ヘリ救助を有料化へ。新しい登山届の提出で費用減免も」
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/2141069.html






