【9/24】サウジアラムコが日本で原油備蓄拡大へ|沖縄の共同備蓄と狙い

サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセル社長兼CEOが9月24日に来日し、日本などでの原油備蓄を拡大する方針を示しました。日本経済新聞によると、ナセル氏は中東の混乱で揺れた原油輸出について「止めたことはない。我々は顧客に供給し続ける」と述べています。

日本とアラムコの間には、沖縄の石油基地のタンクをアラムコに貸して原油をためてもらい、いざというときは日本が優先して買える「産油国共同備蓄」という仕組みがすでにあります。2026年3月には、この備蓄が始まって以来初めて放出されました。この記事では、今回の発言の中身、共同備蓄の仕組み、なぜ今拡大なのか、日本にとって何が変わるのかを出典つきで整理します。

この記事でわかること

  • 発表の中身:アラムコのナセルCEOが9月24日の来日時に、日本などでの原油備蓄を拡大する方針を示しました。量や場所はまだ公表されていません。
  • 共同備蓄の仕組み:JOGMECが沖縄石油基地のタンクの一部(約130万キロリットル)をアラムコに貸し、緊急時は日本が優先して原油の供給を受けます。契約は2025年11月12日に3年間更新されました。
  • 今なぜ拡大か:9月10日の無人機攻撃で、ホルムズ海峡を通らずに原油を運ぶサウジの東西パイプラインが一時止まり、供給ルートの弱さが表に出たためです。
目次

サウジアラムコは日本で何を発表したのか

アラムコのナセルCEOは9月24日の来日時、原油供給を続けると述べ、日本などでの原油備蓄を拡大する方針を示しました。

日本経済新聞は9月24日、ナセル氏が2月の米国・イスラエルとイランの軍事衝突で混乱した原油輸出について「止めたことはない。我々は顧客に供給し続ける」と語り、供給の強靱性を高めるために日本などでの原油備蓄を拡大すると伝えました(日本経済新聞、2026年9月24日)。

ナセルCEOの発言「止めたことはない」の意味

この発言は、中東の混乱が続く中でも、日本を含む顧客への原油の出荷を止めていないという意味です。

日経が9月25日に掲載した一問一答では、ナセル氏はアジア、とりわけ日本の顧客を大切にしてきたと述べ、原油の輸送ルートを複数用意して、さまざまな事態を想定していると語っています(日本経済新聞、2026年9月25日)。同じ取材を伝えた中東メディアのZAWYAによると、ナセル氏は「設備が止まっても数日で復旧できる」「止まるのは数日で、数週間や数か月ではない」と述べ、サウジ国外での備蓄の拡大や輸出ルートの追加を検討していると話しました(ZAWYA)。

備蓄をどれだけ増やすのかは、まだ公表されていない

拡大する量・場所・時期は、9月27日時点で日本政府からもアラムコからも公表されていません。

報道で確認できるのは「日本などで拡大する方針」という段階までです。沖縄以外の基地を使うのか、既存のタンクを増やすのか、新たな契約を結ぶのかは分かっていません。日本側の窓口である経済産業省やJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の正式な発表を待つ必要があります。

発言の中身を整理すると、次のようになります。

項目 分かっていること 出典
日時・場所 9月24日、来日中の東京 日本経済新聞
供給 「止めたことはない。顧客に供給し続ける」 日本経済新聞
備蓄 日本などで原油備蓄を拡大する方針 日本経済新聞
復旧 止まっても「数日で」復旧できる ZAWYA
量・場所・時期 未公表 -

表のとおり、今回はっきりしているのは「方針」までで、具体的な数字はこれからです。まずは土台になっている沖縄の共同備蓄の仕組みから見ていきます。

産油国共同備蓄とは|沖縄のタンクをアラムコに貸す仕組み

産油国共同備蓄は、日本のタンクを産油国の石油会社に貸し、緊急時に日本が優先して原油を買える仕組みです。

アラムコの日本法人によると、アラムコはJOGMECから沖縄のタンクを借りて原油をため、平時はアジアの顧客向けの在庫として使います。日本で原油の供給が思いがけず足りなくなったときは、日本がタンクの原油を買い取る優先権を持ちます。同社は日本の原油輸入のおよそ4割を担っているとしています(Aramco Japan「Okinawa」)。

沖縄の契約の中身は次のとおりです。

項目 内容
始まり 2010年から。以後3年ごとに更新
場所 沖縄県うるま市の沖縄石油基地
タンク 沖縄石油基地株式会社の原油タンクの一部を、JOGMECがアラムコに貸す
量 約130万キロリットル(約820万バレル)。国内需要の4日分強
直近の更新 2025年11月12日に3年間の更新契約(JOGMECの発表は11月19日)
緊急時 日本が優先的に供給を受ける

契約の中身はJOGMECが2025年11月19日に発表しました(JOGMEC ニュースリリース)。「国内需要の4日分強」は沖縄タイムスの報道によります(沖縄タイムス)。サウジの経済メディアArgaamも更新を伝えています(Argaam)。表で押さえておきたいのは、日本は原油をただでもらえるのではなく、緊急時に「優先して供給を受けられる」立場だという点です。

国家備蓄・民間備蓄との違い

国家備蓄と民間備蓄は日本側が持つ原油で、共同備蓄は産油国の会社が日本に置いている原油という違いがあります。

資源エネルギー庁は、日本の石油備蓄を国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄の3本立てで説明しています(資源エネルギー庁「エネこれ」)。共同備蓄は、日本の予算で原油を買わずに、国内のタンクに原油を置いておける点が特徴です。

沖縄の共同備蓄はどう広がってきたか

沖縄の共同備蓄は2010年に始まり、2017年に量を増やして今の約820万バレルになりました。

Aramco Japanによると、日本とアラムコは2016年に覚書を更新し、2017年9月に備蓄量を190万バレル増やして820万バレルに達しました。共同通信は、日本の産油国共同備蓄そのものは2009年に始まったと伝えています。つまり今回の「拡大」は、ゼロからの新しい取り組みではなく、15年以上続く仕組みをさらに広げる話です。過去にも量を増やした例があるため、今回も契約の見直しで量を足す形になる可能性があります(ただし具体的な方法は未公表です)。

この「買える権利」が実際に使われたのが、2026年3月の初放出です。

2026年3月、共同備蓄は初めて放出された

産油国共同備蓄は2026年3月26日に初めて放出され、3月中に約6日分を出すと経済産業相が発表しました。

共同通信によると、赤沢亮正経済産業相は3月27日の閣議後会見で、共同備蓄の放出が26日から始まったと明らかにし、3月中に合計6日分を放出すると述べました。対象はサウジアラビアなど中東3か国の石油会社の原油で、備蓄が始まってから放出は初めてです(琉球新報(共同通信)、2026年3月27日)。「6日分」は経済産業相の会見での言い方で、何を基準にした日数かは報道では詳しく示されていません。日本経済新聞も同日、UAE・サウジアラビア・クウェートの企業に貸したタンクから放出が始まったと報じています(日本経済新聞、2026年3月27日)。

この年の中東情勢と備蓄の動きを時系列で並べると、次のようになります。

2026年の原油をめぐる流れ

2月:米国・イスラエルとイランが軍事衝突
3月11日:IEA加盟32か国が4億バレルの協調放出で合意
3月16日以降:日本が民間備蓄15日分・国家備蓄1か月分を放出
3月26日:産油国共同備蓄を初めて放出
9月10〜11日:東西パイプラインが無人機攻撃で停止
9月24日:アラムコCEOが来日し、日本での備蓄拡大の方針

3月の協調放出と日本の放出方針は、日本貿易振興機構(JETRO)が3月にまとめています(JETRO ビジネス短信)。流れを見ると、今回の拡大方針は、3月に共同備蓄が実際に役立ったあとの話だと分かります。

なぜ今、日本での備蓄拡大なのか

(編集部分析)9月に東西パイプラインが攻撃で止まり、ホルムズ海峡を避ける道が揺らいだことが背景にあるとみられます。

9月10日の無人機攻撃で東西パイプラインが停止

サウジアラビアは9月11日、イラク方面から飛来した無人機の攻撃を受け、東西パイプラインの稼働を止めたと発表しました。

AFP通信によると、攻撃はリヤド州とメディナ州で起き、負傷者と設備の損傷が出ました。東西パイプラインはペルシャ湾側のアブカイクから紅海側のヤンブー港まで原油を運ぶ管で、ホルムズ海峡をイランが封鎖したとされる中、サウジはこのルートの輸送量を増やしていました(AFPBB News、2026年9月12日)。ZAWYAによると、このパイプラインの設計上の輸送能力は日量約700万バレルです。

日本経済新聞は9月15日、パイプラインの損傷でサウジの積み出しが止まった可能性を報じ、供給への懸念が広がりました(日本経済新聞、2026年9月15日)。その後、アラブニュースは関係者の話として、サウジがパイプラインを再開し、ヤンブー港からの輸出を再開する見通しだと伝えています(アラブニュース)。ナセル氏の「数日で復旧できる」という発言は、この一連の停止と再開を受けたものです。

ホルムズ海峡の代わりの道が弱点になった

海峡の代わりに頼っていた陸の道まで狙われたため、消費国の近くに原油を置いておく意味が大きくなりました。

パイプラインは、止まれば復旧まで原油が届きません。一方、日本国内のタンクにある原油は、海上輸送もパイプラインも通らずにすぐ使えます。(編集部分析)ナセル氏自身は両者を結びつけて説明していませんが、「国外での備蓄」を強調したのは、この弱点を補うためと読むのが自然です。

ホルムズ海峡が閉じたときの日本への影響は「【図解】ホルムズ海峡再封鎖は危機か|日本への影響を検証」で詳しく整理しています。

日本にとって何が変わるのか

拡大が実現すれば、日本は原油そのものの購入費を負担せずに、国内に置かれる原油の量を増やせる可能性があります。

JETROによると、日本は原油輸入の93.5%を中東に頼っています(2026年3月の記事時点の数字)。調達先を急に変えるのが難しい以上、「中東の原油を日本の近くに置いておく」ことは、現実的な守りの一手です。

日本側から見た利点と、注意しておきたい点を並べます。

見る点 利点 注意点
お金 原油の購入費を国が負担しない 緊急時に買うときは代金がかかる
量 国内に置かれる原油が増える 増える量はまだ未公表
使い道 3月に実際に放出された実績がある 平時はアラムコのアジア向け在庫として動く
調達先 最大の取引先との関係が深まる 中東依存そのものは変わらない

表のとおり、備蓄の拡大は「中東頼み」を減らすものではなく、中東頼みのまま途切れにくくする手当てです。(編集部分析)エネルギーは国の安全保障そのものであり、原油の購入費を国が負担せずに国内の備えを厚くできるなら、国益にかなう取引と評価できます。一方で、共同備蓄の原油はあくまで相手企業のものです。日本の自前の国家備蓄を減らしてよい理由にはならず、両方をそろえておくことが大切だと考えます。

日本の原油の共同備蓄には、米国産原油をめぐる動きもあります。「米国産原油を共同備蓄へ!日米首脳会談の合意と中東情勢の行方」もあわせてご覧ください。

「日本が選ばれた」という見方は正しいのか

日本が信頼されている面はありますが、アラムコ自身の得にもなる取引で、一方的な好意とは言い切れません。

一部の解説動画では「日本が最強のパートナーに指名された」という受け止めも出ています。事実として確認できるのは、アラムコが沖縄の共同備蓄を2010年から続けていること、日本が同社にとって大口の顧客であること、そして今回「日本など」で備蓄を広げると述べたことです。

(編集部分析)アラムコにとって、日本のタンクはアジアの買い手の近くに原油を置ける在庫拠点でもあります。借り賃の条件は公表されていませんが、平時は自社の在庫として販売にも使えます。つまり、日本の安全と信用、アラムコの販売戦略の両方がかみ合った結果とみるのが実態に近いといえます。報道は「日本など」と伝えており、日本だけを選んだとは言っていない点にも注意が必要です。

次に、これから何が決まれば「拡大」が形になるのかを見ておきます。

今後の焦点|量・場所・契約の3点

今後の焦点は、増やす量、使う基地、日本政府との新しい契約の3点が公表されるかどうかです。

沖縄の契約は2025年11月に延長したばかりで、次の更新は3年後の2028年ごろになります。拡大が契約の見直しで進むのか、別の基地で新しい枠を作るのかによって、日本側の窓口であるJOGMECと経済産業省の発表の形も変わります。原油の値動きや中東の情勢次第で話が急に進むこともあるため、続報が出たらこの記事に追記します。

続報を自分で確かめるには

正式な決定は、経済産業省(資源エネルギー庁)とJOGMECの発表で確かめるのが確実です。

共同備蓄の契約更新や放出は、これまで経済産業相の会見やJOGMECの発表として出てきました。一部の動画には「日本が選ばれた」といった強い言い方も見られますが、量や場所が書かれていない情報は、まだ決まっていないと受け止めるのが安全です。家計への影響を見たい人は、備蓄のニュースよりも、原油相場とガソリンの補助の動きを合わせて見るほうが役に立ちます。

サウジアラムコの原油備蓄のよくある質問

備蓄の量や家計への影響は、本文とは別によく聞かれる点です。

Q. 沖縄の共同備蓄は国内需要の何日分ですか?

A. 沖縄タイムスによると、約130万キロリットルは国内需要の4日分強に相当します。拡大後の日数はまだ示されていません。

Q. 備蓄が増えるとガソリン代は下がりますか?

A. 直接は下がりません。備蓄は供給が止まったときの備えで、店頭価格は原油の相場や為替、税などで決まります。

数字や方針は、今後の政府発表で変わることがあります。

参考情報

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