【10/2】簗和生農水相「誤解招いた」と会見|道路予算「大幅カット」音声で何が報じられたか

【10/2】簗和生農水相「誤解招いた」と会見|道路予算「大幅カット」音声で何が報じられたか

簗和生(やな・かずお)農林水産相が大臣就任前の2026年5月、2月の衆院選で自身を支援しなかった栃木県那須烏山市と那珂川町の道路予算を「大幅にカットした」と地元の会合で発言したと、週刊新潮と文春オンラインが9月30日に報じました。TBSは10月2日、発言の音声を入手したと伝えています。

簗氏は10月2日午前の閣議後会見では「大臣就任前の一議員の活動については、回答を控えたい」と繰り返しました(産経新聞)。同じ日の夕方には国会内であらためて記者会見を開き、「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」と述べたうえで、「職責を果たしたい」と続投する考えを示しています(時事通信)。この記事では、何が報じられたのか、2つの市町の予算は実際にどれだけ減ったのか、簗氏と政府はどう説明しているのかを、10月2日18時の時点で報道と公的な資料をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 報道の中身:簗氏は5月24日の自民党大田原支部の懇親会で、那須烏山市は64%減、那珂川町は54%減にしたと語ったと報じられています。
  • 実際の数字:国が両市町に示した道路の交付金は、2025年度から2026年度にかけて那須烏山市が約63%、那珂川町が約54%減りました(毎日新聞)。
  • 政府の説明:官房長官は「調査中」、国交相は「報道されているような形で削減された事実はない」と述べました。簗氏は10月2日夕方の会見で「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」と語り、続投する考えです。
目次

簗和生農水相の道路予算「大幅カット」発言とは 何が報じられたのか

衆院選で自身を支援しなかった首長がいる2つの市町の道路予算を、大幅に減らしたと語ったとされる発言です。

デイリー新潮によると、発言があったのは2026年5月24日、自民党大田原支部の総会が終わったあとの懇親会です。会合は非公開で、数十人の党員が出席していました。簗氏はこの場で「那須烏山市と那珂川町の令和8年度の道路予算については、大幅にカットをしました」と述べたとされます。週刊新潮は、この発言を収めた音声データを入手したとしています。

時事通信は、文春オンラインなども9月30日に同じ発言を報じたと伝えています。TBS NEWS DIGは10月2日午前4時すぎに、音声を入手したとして発言の中身を報じました。簗氏は9月の内閣改造で農林水産相に起用されたばかりで、発言があったとされる5月の時点では閣僚ではありません。

簗氏は10月2日夕方の会見で「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」と述べました(時事通信)。ただし、報じられた発言の一つひとつを本人がどこまで認めたのかは、時事通信の第一報からは分かりません。この記事では、発言の中身は「報じられた内容」として扱います。

簗農水相の音声で語られたとされる中身 64%減・54%減と2つの理由

報じられた音声では、削減の割合と、首長の行動と得票数という2つの理由が語られています。

TBS NEWS DIGが報じた音声の中身は次のとおりです。「那須烏山市と那珂川町の令和8年度の道路予算については、大幅にカットしました。那須烏山市については、前年比で64%減、3分の1にしました。そして、那珂川町は54%減にしています」。理由については「1つは首長が自民党の国会議員はいらないと。2つめの要件は、票数。多くの市民、町民がそういう判断をしたということですから」と述べたとされます。

デイリー新潮は、ほかにも「自民党の議員に頼っていくらの予算が必要だというところに、多く回すのが当たり前」「命に支障がないところを削減しています」といった発言があったと報じています。時事通信によると、簗氏は「私が選挙区からいなくなったら完全に予算が切られる」とも語ったとされます。報じられた発言を表にまとめます。

論点 報じられた発言 報じた媒体
予算の削減 「令和8年度の道路予算については、大幅にカットをしました」 デイリー新潮・TBS
削減の割合 那須烏山市は「前年比で64%減、3分の1」、那珂川町は「54%減」 デイリー新潮・TBS
理由1 「首長が自民党の国会議員はいらないと」 TBS
理由2 「2つめの要件は、票数」 TBS
予算の回し方 「自民党の議員に頼っていくらの予算が必要だというところに、多く回すのが当たり前」 デイリー新潮
自身の役割 「私が選挙区からいなくなったら完全に予算が切られる」 時事通信

表の発言はいずれも、週刊誌とテレビ局が入手したとする音声にもとづく報道です。簗氏は「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」と述べていますが、どの発言を指すのかは第一報では示されていません。報道された文言と本人の説明は、分けて読む必要があります。

那須烏山市・那珂川町の道路予算は実際にどれだけ減ったのか

国が示した道路の交付金は、2025年度から2026年度にかけて那須烏山市で約63%、那珂川町で約54%減っています。

毎日新聞が両自治体に取材したところ、国の社会資本整備総合交付金のうち道路の部分について、国土交通省が示した金額は次のとおりでした。比べているのは2025年度と2026年度の提示額(内示額)です。

自治体 2025年度 2026年度 減少率 報じられた発言の数字
那須烏山市 約6,535万円 約2,426万円 約63%減 64%減
那珂川町 約4,934万円 約2,262万円 約54%減 54%減

那珂川町は発言の数字と同じ、那須烏山市は1ポイント違いです。デイリー新潮は、2026年度の要望額と内示額も報じています。那珂川町は要望7,208万円に対して内示2,262万4,000円、那須烏山市は要望4,783万6,000円に対して内示2,426万7,000円でした。

ただし、数字が近いことと、簗氏の働きかけで減ったことは別の話です。金額が減ったのは両自治体が認めている事実ですが、なぜ減ったのかは、政府の調査結果がまだ出ていません。

那珂川町では町道の工事が発注できなくなったと報じられている

デイリー新潮は、那珂川町東部の町道「上郷須賀川線」の工事が発注できなくなったと報じています。

同誌は、高齢者の多い地区で緊急車両が通りにくくなることを心配する声も伝えています。那須烏山市の川俣純子市長は、TBSの取材に「道路が何本かは、今年中にやれるはずだった予定ができないのは確かなので、その辺のところは困ってしまうなと思っています」と話しました。

社会資本整備総合交付金とは 道路予算は誰がどう決めるのか

自治体が出した整備計画にもとづき、国土交通省が毎年度の交付額を決めて配る交付金です。

国土交通省によると、社会資本整備総合交付金は2010年度に、同省が自治体向けに出していた個別の補助金をひとつにまとめてつくられました。自治体は、目標と事業を書いた「社会資本総合整備計画」をつくって国に出します。国は毎年度、その計画にもとづいて交付額を決めます。市町村の道路の整備や改良は、この交付金の主な使いみちのひとつです。

国土交通省が公表している手続きは、自治体が整備計画を出し、同省が交付額を決めるという流れです。国会議員が個別の自治体の金額を決める手続きは、そこには示されていません。井林辰憲国土交通相も10月2日の会見で「自治体の要望や事業の進み具合などを勘案して配分している」と説明しました(下野新聞)。

一方、毎日新聞によると、那須烏山市の幹部は「道路予算は前年度からの基準額があり、県を通じて国と打ち合わせもしている。それが大きく下がったので驚いた」と話しています。現場の受け止めと国交相の説明には開きがあります。

(編集部分析)道路の交付金は、国民が納めた税金です。本来の物差しは、どの道が傷んでいるか、どの工事が住民の安全に要るかであって、選挙で誰を応援したかではないはずです。公表されている手続きに議員が金額を決める場面が無いのであれば、なぜ「カットした」と語れたのかが問われます。発言が誇張だったのか、実際に働きかけがあったのかで、問題の重さは大きく変わります。政府の調査は、役所の内側の記録まで確かめて公表する必要があると考えます。

簗農水相・官房長官・国交相は何と説明しているのか

簗氏は10月2日夕方に「誤解を招く表現だった」と述べ、官房長官は調査中、国交相は削減の事実はないとしています。

簗氏の説明は、3日間で「報道を見ていない」「回答を控えたい」「誤解を招いた」と変わりました。日付の順に表にまとめます。

日付 誰が 発言 出典
9月30日 木原稔官房長官 「事実の有無も含めて関係省庁で調査中だ」 日本経済新聞・ANN
9月30日 簗農水相(福島県で) 「まだ報道を見ておらず、発言は控えたい」 日本経済新聞
10月1日 簗農水相(農水省で) 「大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄については回答は控えたい」 共同通信
10月2日 簗農水相(閣議後会見) 「大臣就任前の一議員の活動については、回答を控えたい」と繰り返す 産経新聞
10月2日 井林辰憲国交相 「報道されているような形で削減された事実はない」 下野新聞
10月2日夕方 簗農水相(国会内で会見) 「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」「職責を果たしたい」 時事通信

表のとおり、簗氏が自分の言葉で説明したのは、報道から3日目の夕方でした。

簗農水相は10月2日夕方の会見で「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」と述べた

簗氏は国会内で会見し、発言の表現が誤解を招いたと述べたうえで、農水相を続ける考えを示しました。

時事通信によると、簗氏は10月2日、国会内で記者会見を開き、文春オンラインなどが報じた「予算カット」発言について「表現ぶりが一部誤解を招くものであった」と述べました。「職責を果たしたい」とも語り、続投する考えを示しています。NHKによると、この会見は「一部報道の件」について「一議員として行う」ものと事前に発表されていました。

時事通信の第一報(17時47分配信)で伝えられたのはここまでです。実際に予算の配分に働きかけたのかどうか、数字をどこで知ったのかについて、簗氏がどう説明したかは、この記事を書いている時点では確認できていません。

簗農水相は10月2日午前の閣議後会見では「回答を控える」を繰り返した

午前の会見では、発言の有無も、首相や官房長官から問い合わせがあったかどうかも答えませんでした。

産経新聞によると、10月2日の閣議後会見では、この問題に質問が集中しました。簗氏は、選挙の支援と予算の関係を一般論として聞かれても「農林水産行政の所管外のことについては回答を控えたい」と繰り返しました。大臣としてではなく、国会議員として説明するかどうかについても、明言を避けています。

木原官房長官は「関係省庁で調査中」と説明した

木原稔官房長官は9月30日の会見で、事実の有無も含めて関係省庁が調べていると述べました。

ANNによると、木原氏は「ご指摘の道路予算に関する点については、そうした事実の有無も含めて今、関係省庁において調査中である」と説明し、政府の立場からのコメントは差し控えるとしました。簗氏から、週刊誌の取材を受けたという報告があったことも明らかにしています。

井林国交相は「報道されているような形で削減された事実はない」と否定した

井林辰憲国交相は10月2日の会見で、恣意的に予算を削ったという見方を否定しました。

下野新聞によると、井林氏は「自治体の要望や事業の進み具合などを勘案して配分している。報道されているような形で削減された事実はない」と述べました。官房長官が9月30日に「調査中」とした件について、予算を配る役所のトップが2日後に否定したかたちです。調査がどこまで進んだうえでの発言なのかは、報道からは分かりません。

(編集部分析)午前に回答を控え、夕方に会見を開き直したことは、説明の場を自分でつくったという点で前に進んだと評価できます。ただ、「誤解を招く表現だった」という説明だけでは、発言と同じ割合で交付金が減っている理由には答えていません。国交相の言うとおり恣意的な削減が無いのであれば、数字をどこで知り、なぜ「カットした」と語ったのかまで説明して、はじめて疑いは晴れます。高市内閣は食料品の消費税の引き下げなど、国民の暮らしに直結する政策を臨時国会で通す局面にあります。閣僚ひとりの説明の不足で審議が止まることは、国民の利益になりません。内閣を支える立場から見ても、国会が始まる前に説明を尽くすことが必要だと考えます。

なぜ那須烏山市と那珂川町なのか 2月の衆院選栃木3区の結果

両市町は簗氏の地盤の栃木3区にあり、2月の衆院選で首長が簗氏を支援しなかったと報じられています。

時事通信の開票結果によると、2026年2月の衆院選の栃木3区は次のとおりでした。簗氏は小選挙区で敗れ、比例代表の北関東ブロックで復活当選しています。

候補 党派 得票 結果
渡辺真太朗氏 無所属 58,483票 当選
簗和生氏 自民党 53,975票 比例復活
伊賀央氏 中道改革連合 20,611票 落選

簗氏と渡辺氏の差は4,508票でした。デイリー新潮は、この選挙区が保守分裂の構図になり、那須烏山市と那珂川町の首長は渡辺氏を支援したと報じています。日本経済新聞も、いずれの首長も簗氏を支援しなかったとされると伝えています。報じられた音声の「首長が自民党の国会議員はいらないと」「票数」という2つの理由は、この選挙の経緯を指しているとみられます。

下野新聞によると、簗氏は当選6回です。デイリー新潮は、高市首相が簗氏を「私の知恵袋のやなちゃん」と紹介したことがあると報じています。

野党と地元はどう反応しているのか

野党は説明を求めて批判を強め、地元の市長は事実なら大変遺憾だとコメントしています。

民改の後藤祐一氏と国民民主党の榛葉賀津也幹事長の発言

後藤氏は「しのげると思ったら大間違い」と批判し、榛葉氏は「事実だとすると大問題だ」と述べました。

産経新聞によると、民改の後藤祐一氏は10月2日、記者団に「少なくとも『いち議員のときのことはお答えできない』という言い方でしのぐことができると思っていたら、大間違い」と語りました。10月5日に召集される臨時国会で追及するかを聞かれると「これから考える」と答えています。

国民民主党の榛葉賀津也幹事長は同じ日の会見で「事実だとすると大問題だ」「スルーするつもりはない」と述べました(産経新聞)。「これが本当だったら違う意味でやな大臣だ」とも語っています。榛葉氏は同じ会見で、政党交付金の扱いをめぐって野党の側にも説明の責任があると指摘しました。

(編集部分析)野党が説明を求めるのは当然です。そのうえで、音声の一部と交付金の数字が近いことだけを根拠に、恣意的な削減が「あった」と決めつけて審議の時間を費やすのは、順序が違います。先に要るのは政府の調査結果と本人の説明です。榛葉氏が自分たちの側のお金の扱いにも触れたように、追及する側の姿勢も同じ物差しで見られています。

那須烏山市長は「事実なら大変遺憾」、那珂川町長はコメントを控えた

那須烏山市の川俣純子市長は遺憾の意を示し、那珂川町の益子純恵町長はコメントを控えています。

毎日新聞によると、川俣市長は「報道の内容が事実なら大変遺憾だ」とのコメントを出しました。デイリー新潮の取材には「簗先生が本当に自分の選挙区の住民を不安にさせる発言をしたなら、市長としては許せません」と話しています。益子町長は「コメントは差し控える」としました。

これからの焦点 臨時国会と政府の調査はどうなるのか

焦点は、政府の調査結果がいつ出るかと、10月5日召集の臨時国会で簗氏がどこまで説明するかの2つです。

これまでの経過と、次に動きが出そうな場面を時系列で示します。

2月
衆院選。簗氏は栃木3区で敗れ、比例復活
5月24日
自民党大田原支部の懇親会。「大幅にカット」発言があったと報じられる
9月
内閣改造。簗氏が農林水産相に就任
9月30日
週刊新潮・文春オンラインが報道。官房長官「調査中」
10月1日
簗氏「回答は控えたい」。那須烏山市長「事実なら大変遺憾」
10月2日
TBSが音声を報道。簗氏は午前の会見で回答を控え、夕方の会見で「誤解を招いた」と説明。国交相は削減の事実を否定
10月5日
臨時国会が召集される予定

図のとおり、報道から3日で政府の説明は「調査中」と「削減の事実はない」に分かれ、簗氏本人は「誤解を招いた」と述べて続投する考えを示しました。見るべき点は3つあります。1つめは、関係省庁の調査結果が公表されるかどうかです。2つめは、簗氏が国会で「誤解」の中身、つまり予算への働きかけがあったのかどうかを答えるかです。3つめは、2つの市町の交付金がなぜ減ったのかを、国土交通省が具体的に説明するかどうかです。

読者が続報を追うときは、官房長官の会見、国土交通相の会見、臨時国会の予算委員会での質疑の3か所を見ておくと、動きをつかめます。働きかけを認めるのか、否定するのか、調査結果で数字の理由が示されるのかで、この問題の意味は変わります。

(編集部分析)道路は、地方に住む人の暮らしと命を支える土台です。その予算が、誰に投票したかで左右されるかもしれないと住民が感じるだけで、国への信頼は傷つきます。保守の政治が大切にしてきたのは、支持してくれた人だけでなく、地域の共同体全体を守るという姿勢のはずです。調査の結果、恣意的な削減が無かったのであれば、その根拠を数字で示して疑いを晴らす。あったのであれば、けじめをつける。どちらの場合も、説明を先送りにしないことが、政権への信頼を守る道だと考えます。

簗農水相の道路予算発言のよくある質問

本文で触れきれなかった点を、質問の形でまとめます。

Q. 音声は公開されていますか。

A. TBSは、入手したとする音声をニュースの映像のなかで報じています。週刊新潮は音声データを入手したとして、文言を記事にしています。簗氏が音声の一つひとつの文言を認めたかどうかは、時事通信の第一報では伝えられていません。

Q. 政府の調査結果はいつ出ますか。

A. 時期は示されていません。木原官房長官は9月30日に「関係省庁において調査中」と述べましたが、どの省庁が何を調べ、いつ公表するかは明らかにしていません。臨時国会は10月5日に召集される予定です。

Q. 那須烏山市と那珂川町はどこにありますか。

A. どちらも栃木県の東部にあり、衆院の栃木3区に入っています。発言があったとされる懇親会は、同じ栃木3区の大田原市の自民党支部のものでした。

参考情報

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