【10/2】常陸大宮の核のごみ調査、大井川知事が概要調査に同意せず|知事が反対するとどうなる

茨城県の大井川和彦知事は2026年10月2日の定例記者会見で、常陸大宮市が受け入れた「核のごみ」(原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選びをめぐり、第2段階にあたる概要調査には同意しない考えを示しました(共同通信・茨城新聞・テレビ朝日)。常陸大宮市の鈴木定幸市長が第1段階の文献調査の受け入れを表明してから、2日後の発言です。

この記事では、知事が会見で何と述べたのか、なぜ同意しないのか、知事が反対すると常陸大宮市の調査はどうなるのか、交付金の額、先に調査を受け入れた北海道などの状況までを、報道と国の資料をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 知事の発言:大井川知事は10月2日、概要調査について「同意するつもりはない」と述べました。理由は、茨城県がすでに原子力施設を多く抱えていることです。
  • 手続きへの影響:概要調査へ進むには知事と市町村長の意見を聴く決まりで、どちらかが反対すれば次の段階へは進みません。知事の発言だけで文献調査の手続きが止まるわけではありません。
  • お金と先例:交付金は文献調査で最大20億円、概要調査で最大70億円です。先に受け入れた4か所で、概要調査へ進んだ所はまだありません。
目次

常陸大宮の核のごみ調査で大井川知事は何と言ったのか 10月2日の会見

大井川知事は10月2日の定例会見で、第2段階の概要調査へ進むことには同意しないと明言しました。

茨城新聞によると、知事は「茨城は原子力政策に既に大きく貢献している。概要調査については同意するつもりはない」と述べました。テレビ朝日は、知事が「茨城県で次の段階で概要調査に進むということは、私としては受け入れるつもりはない」と語ったと伝えています。言い回しは媒体によって少し違いますが、概要調査に同意しない考えを示した点は共通しています。

一方で、鈴木市長が文献調査の受け入れを表明したこと自体については、知事は「特段それについて申し上げることはない」と述べ、自分の考えは市長に内々に伝えたと説明しました(茨城新聞)。会見での発言を表にまとめます。

論点 知事の発言・説明 出典
概要調査 「概要調査については同意するつもりはない」 茨城新聞
概要調査 「私としては受け入れるつもりはない」 テレビ朝日
理由 「茨城は原子力政策に既に大きく貢献している」 茨城新聞
理由 最終処分場まで建てるのは「受益と負担のバランスが取れていない」 テレビ朝日
市の文献調査の受け入れ 「特段それについて申し上げることはない」 茨城新聞

表のとおり、知事が反対したのは第2段階の概要調査で、市が決めた第1段階の文献調査を止めると言ったわけではありません。この線引きが、今回の発言を読むうえでの要になります。

なぜ大井川知事は概要調査に同意しないのか 「受益と負担」という理由

茨城県はすでに原子力施設を多く引き受けており、最終処分場まで加わるのは負担が重すぎるというのが知事の理由です。

テレビ朝日によると、知事は、県内には東海第二原発など原子力施設が数多くあり、さらに最終処分場の建設となると「受益と負担のバランスが取れていない」と説明しました。茨城新聞も、知事が「茨城は原子力政策に既に大きく貢献している」と述べたと伝えています。

東海第二原発など原子力施設が集まる茨城県の事情

茨城県は東海村を中心に原子力施設が集まる県で、知事はその現状を理由に挙げました。

東海村には日本原子力発電の東海第二原発があり、知事が会見で名前を挙げたのもこの原発です(テレビ朝日)。原子力の恩恵は電気を使う全国に及ぶ一方で、施設を置く負担は立地する地域に集まります。知事の言う「受益と負担」は、この釣り合いを指しています。

文献調査には口を出さず、概要調査で止めるという線引き

文献調査は市町村長の判断で始められますが、概要調査からは知事の意見が手続きに入るためです。

東京新聞によると、知事は9月30日の時点では市の受け入れ表明について「市長として決定したもの」と述べ、特段のコメントはないとしていました。10月2日の会見では、自分の意見が手続きに入る段階について、先に答えを示した形です。

(編集部分析)原子力を現実的なエネルギー源として使い続けるなら、核のごみの行き先を決めることは避けて通れない国の宿題です。そのうえで、原子力施設をすでに多く抱える県が「これ以上は引き受けられない」と言うのは、筋の通った主張と評価できます。電気を最も多く使う大都市圏が負担をどう分かち合うのかという議論を抜きに、立地県と過疎の自治体だけに答えを求める進め方には課題が残ります。

知事が反対すると常陸大宮の核のごみ調査はどうなるのか 3段階の手続き

知事の発言だけで文献調査の手続きは止まりませんが、知事が反対のままなら概要調査へは進めません。

なお、10月2日の時点で確認できるのは市長の受け入れ表明までで、文献調査そのものが始まったわけではありません。調査は、NUMO(原子力発電環境整備機構、処分事業を担う組織)の手続きを経てから始まります。

最終処分場の場所選びは、文献調査、概要調査、精密調査の3段階で進みます。資源エネルギー庁の資料は、概要調査と精密調査へ進む前に知事と市町村長の意見を聴き、いずれかが反対の場合は次の段階へ進まないと説明しています。共同通信も、概要調査とその先の精密調査へ進むには知事の同意が必要だと伝えています。3段階の中身を表で比べます。

段階 何をするか 期間の目安 知事の意見
第1段階 文献調査 論文や地質のデータなど、すでにある資料で断層や鉱物資源の有無を調べる 2年程度 手続きに入らない
第2段階 概要調査 ボーリング(地面に穴を掘る調査)などで地下の様子を調べる 4年程度 進む前に聴く。反対なら進まない
第3段階 精密調査 地下に調査用の施設をつくって詳しく調べる 14年程度 進む前に聴く。反対なら進まない

期間の目安はNUMOの説明によるもので、3段階を合わせると約20年かかります(東京新聞)。処分場は、地表から300メートルより深い岩盤の中につくる計画です。

知事の発言が手続きのどこに効くのかを、流れの図で示します。

文献調査
市長が受け入れを表明
(9月30日)
→
知事と市長の意見を聴く
知事は「同意しない」
(10月2日の会見)
→
概要調査
どちらかが反対なら
進まない
→
精密調査
ここでも意見を聴く

図のとおり、知事の意見が正式に問われるのは文献調査が終わったあとです。今回の発言は、その場面が来る前に、答えを先に示したものといえます。

Q. 知事の意見が正式に聴かれるのはいつですか。

A. 文献調査の結果がまとまり、概要調査へ進もうとする段階です。文献調査の期間の目安は2年程度なので、正式に意見が問われるのはその後になります。10月2日の発言は会見での見解で、手続き上の正式な意見ではありません。

次に、調査を受け入れた自治体に国から出る交付金の額を見ます。

文献調査と概要調査の交付金はいくらか 最大20億円と最大70億円

交付金は調査期間を通じて、文献調査で最大20億円、概要調査で最大70億円が国から出ます。

資源エネルギー庁の資料によると、文献調査の交付金は1年あたり10億円が上限で、調査期間を通じて最大20億円です。概要調査では1年あたり20億円が上限で、調査期間を通じた限度額は70億円とされています。テレビ朝日も、文献調査で20億円、概要調査で最大70億円が自治体に交付されると伝えています。

段階 1年あたりの上限 調査期間を通じた上限
文献調査 10億円 20億円
概要調査 20億円 70億円

知事が概要調査に同意しなければ、常陸大宮市が受け取れるのは文献調査の分までになります。東京新聞によると、鈴木市長は8月31日に申し入れを受けた際、交付金を念頭に「お金の問題と感じている」と述べていました。

常陸大宮市はなぜ文献調査を受け入れたのか 8月31日からの経緯

市長は、国策への貢献、市の存続、地下の知見が防災の財産になることを理由に受け入れを決めました。

国の申し入れから受け入れの表明までは1か月でした。鈴木市長は9月30日の会見で「熟慮の結果、受け入れることと判断した」と述べています(読売新聞)。

時事通信によると、経済産業省の幹部は8月31日に常陸大宮市役所を訪れ、鈴木市長に文献調査の申し入れ書を手渡しました。市長はその場で「非常に前向きに捉えている。市議会の話も聞いて最終判断をしたい」と述べています。日付順に並べると次のとおりです。

8月31日 経済産業省が常陸大宮市に文献調査を申し入れ(時事通信)
9月29日 鈴木市長が赤沢亮正経済産業相と面会し、住民の懸念について国の考えを確認(東京新聞)
9月30日 鈴木市長が文献調査の受け入れを表明。全国5例目、本州では初めて(読売新聞・日本経済新聞)
10月2日 大井川知事が概要調査に同意しない考えを表明(共同通信・茨城新聞)

申し入れから受け入れ表明まで1か月、知事の発言まではさらに2日という速さで事態が動いています。

鈴木定幸市長が挙げた3つの理由

3つの理由は、国策への貢献、消滅可能性自治体としての存続、地下環境の知見を防災に生かすことです。

東京新聞によると、鈴木市長は9月30日の会見で、受け入れの理由として国策への貢献、消滅可能性自治体(将来なくなるおそれがあるとされた自治体)としての存続、地下環境の知見が防災上の財産になることを挙げました。「地層処分という選択肢を将来世代から奪う権利はない」とも述べています。日本経済新聞は、市長が「文献調査を受け入れ、市民を含めた議論の俎上に載せることで可能性を未来につなげられる」と語ったと伝えました。

住民説明会を開かずに決めたことへの声

市は表明の前に住民説明会を開いておらず、住民からは先に説明を求める声が出ています。

東京新聞によると、市長は市議の意見は聴いたものの、住民説明会は設けませんでした。同紙は、住民が「どうしてここなのか、ちゃんと説明してから決めてほしかった」と話したと伝えています。市長は文献調査を「地域とのコミュニケーションの始まり」と位置づけ、2年ほどの調査期間に住民への説明を行うとしています。概要調査へ進む場合については「住民投票という手段は1回は取るべきだ」と述べました(日本経済新聞)。

(編集部分析)国の将来にかかわる施設の議論を、自治体が自分の判断で引き受けたことには意義があります。ただ、決める前に住民へ説明する場がなかった点は、進め方として課題が残ります。国策ほど、地元の納得が土台になります。順番を後回しにすると、調査の中身より手続きへの不信が先に立ち、冷静な議論が難しくなるおそれがあります。

なぜ常陸大宮市が選ばれたのか 国が申し入れた理由

国の地図で適地と評価されていたことと、市内の有志から調査の要望があったことが理由とされています。

東京新聞によると、国が2017年に公表した「科学的特性マップ」(処分場に向くかどうかを地域ごとに色分けした地図)で、常陸大宮市は全域が「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域とされ、南東部は「輸送面でも好ましい」とされています。赤沢経産相は、市内の有志から文献調査の要望があったと説明しました。

常陸大宮市は茨城県の北西部にあり、栃木県と隣り合っています。人口は約3万5,000人で、水戸市から約20キロの位置です。東京新聞は、先に調査を受け入れた4か所と違い、人口の多い地域に近いと指摘しています。

申し入れの方式にも特徴があります。時事通信は、自治体の応募を待たずに国が主導して申し入れるのは、東京都小笠原村に続いて2例目だと伝えています。赤沢経産相は「文献調査地区をさらに拡大すべく、国の責任で地域に申し入れを行っていきたい」と述べました。なお、佐賀県玄海町でも2024年に国が町へ申し入れていますが、これは町議会が調査を求める請願を採択したあとの申し入れで、報道では別の扱いになっています。

北海道や佐賀など先に受け入れた4か所はどうなっているのか

先に文献調査を受け入れた4か所で、第2段階の概要調査へ進んだ所はまだありません。

時事通信によると、常陸大宮市より前に文献調査の対象になったのは、北海道の寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町、東京都小笠原村の南鳥島の4か所です。東京新聞は、この4か所で第2段階へ進んだ所はないと伝えています。

自治体 都道府県 現在の段階 知事の姿勢
寿都町 北海道 文献調査の報告書が2024年11月に出された 概要調査へ移る場合は「現時点で反対の意見を述べる」
神恵内村 北海道 同上 同上
玄海町 佐賀県 文献調査の段階 ―
小笠原村(南鳥島) 東京都 文献調査の段階 ―
常陸大宮市 茨城県 市長が文献調査の受け入れを表明(2026年9月30日) 概要調査には「同意するつもりはない」

北海道では、NUMOが2024年11月22日に寿都町と神恵内村の文献調査の報告書を両町村長と知事に届けました。NUMOの発表によると、北海道の鈴木直道知事は、核のごみの持ち込みを受け入れがたいとする道の条例を踏まえ、概要調査へ移ろうとする場合には「現時点で反対の意見を述べる」との考えを示しています。茨城でも北海道と同じく、知事が概要調査に反対の考えを示す形になりました。

常陸大宮の核のごみ調査は今後どうなるのか

文献調査が始まれば2年ほど続き、その間に市が住民へ説明し、概要調査へ進むかどうかが問われます。

鈴木市長は、概要調査へ進む場合には住民投票を1回は行うべきだとしています(日本経済新聞)。ただ、住民投票で賛成が多数になっても、知事が反対の意見を述べれば概要調査へは進みません。知事の任期や、その時点での県の判断がどうなるかは、現時点では分かりません。

これから確かめておきたい点は次の5つです。いずれも常陸大宮市、茨城県、NUMOの発表で確認できます。

  • NUMOによる文献調査がいつ正式に始まるか
  • 市が住民への説明会をいつ、どこで開くか
  • 文献調査の報告書がいつまとまるか
  • 概要調査へ進むかを決める段階で、市長と知事がどんな意見を述べるか
  • 市長が言及した住民投票が実際に行われるか

(編集部分析)処分場の候補地が、知事の一言で次々に行き止まりになる構図が、北海道に続いて茨城でも見えてきました。交付金を示して過疎に悩む自治体の手が挙がるのを待つやり方は、限界に来ていると評価できます。原子力を使う以上、処分地を決めるのは今の世代の責任です。国は調査地を全国に広げ、電気の大消費地を含めて負担をどう分かち合うのかを、正面から示す必要があります。

常陸大宮の核のごみ調査のよくある質問

検索されることの多い疑問を、報道と国の資料の範囲で答えます。

Q. 文献調査を受け入れると、常陸大宮市に処分場ができることが決まるのですか。

A. 決まりません。文献調査は3段階のうちの最初で、すでにある資料を調べる段階です。鈴木市長も「調査はスタートラインに立つ前のもの」という認識を示しています(日本経済新聞)。

Q. 文献調査の交付金は何に使えるのですか。

A. 地域振興、公共施設の整備、医療や福祉のサービスなどに使えます。資源エネルギー庁の資料が使い道として挙げているもので、調査を受け入れた自治体の事業に充てられます。

以上の内容は、次の報道と公的な資料にもとづいています。

参考情報

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