【10/4】上関町長選で西哲夫氏再選 中間貯蔵施設は今後どう進むか

山口県上関町長選挙が2026年10月4日に投開票され、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設推進を掲げた現職の西哲夫氏(79)が再選されました。中国電力が町内で施設の建設を検討していることが2023年に明らかになってから、初めての町長選です。

この記事では、開票結果と投票率の中身に加え、「中間貯蔵施設は今後どう進むのか」を、町の受け入れ判断・山口県の同意・関西電力の搬出先問題の3つに分けて整理します。事実は報道と事業者の公表資料に基づき、編集部の見方は「(編集部分析)」と明記して分けています。

この記事でわかること

  • 選挙の結果:西哲夫氏が1,023票、原康司氏が428票。投票率は77.99%で前回を3.02ポイント上回りました。
  • 計画の段階:中国電力は2025年8月に「立地は可能」と町へ報告しましたが、規模や着工時期を示す事業計画はまだ出ていません。
  • 今後の山場:事業計画の提示、町の受け入れ判断、周辺市町の意向を踏まえた山口県の判断、そして関西電力の福井県外への搬出計画が焦点です。
目次

上関町長選の結果は?西哲夫氏が1,023票で再選

現職の西哲夫氏が1,023票を集め、新人の原康司氏の428票に大差をつけて2回目の当選を果たしました。

選挙は任期満了に伴うもので、無所属の現職と無所属の新人による一騎打ちでした。山口新聞の速報によると、開票結果は10月4日20時40分に確定しています。原氏の肩書は、時事通信が「自営業」、毎日新聞が「アウトドアガイド」、朝日新聞が「平生町在住の自然体験観光業」と報じており、媒体によって表現が分かれています。

得票と投票の数字を表にまとめます。

項目 数字
西哲夫氏(79・無所属・現職) 1,023票(当選)
原康司氏(54・無所属・新人) 428票
当日有権者数 1,890人
投票者数 1,474人
投票率 77.99%(前回74.97%)

両候補の得票の合計は1,451票で、投票者数1,474人との差の23票は無効票などにあたります(編集部計算)。有効票に占める西氏の得票は約70.5%で、およそ7割の票が推進を掲げた現職に集まりました。

毎日新聞によると、1982年に町内で中国電力の原発建設計画が浮上して以降、無投票だった2015年と2019年を除き、今回を含めて計11回の町長選があり、いずれも原子力関連施設の推進派の候補が勝っています。

(編集部分析)施設の是非を正面から掲げた現職が約7割の票を得たことは、町の有権者が「施設を含めた町の将来像」を選んだ結果と受け止めるのが自然です。ただし、選挙は町長を選ぶものであり、施設の受け入れそのものを決める手続きではありません。この区別は、後に見る今後の手続きを読むうえで欠かせません。

投票率77.99%の中身 午後4時の34.55%から何が起きたか

午後4時時点で低く見えたのは期日前投票が多かったためで、最終の投票率は前回を3.02ポイント上回りました。

テレビ山口(tys)によると、午後4時現在の投票率は34.55%で、4年前の前回より12.07ポイント低い水準でした。一方で、前日までに期日前投票を済ませた人は776人で、前回より255人多くなっていました。同局は、祝島地区が期日前投票となったことも当日の投票率を下げた一因だと伝えています。

期日前投票が投票者の半数を超えた計算

期日前投票の776人は投票者1,474人の約52.6%で、半数超が投票日より前に投票しました(編集部計算)。

当日の途中経過の投票率は、当日に投票所へ来た人だけを数える一方、最終の投票率には期日前投票が加わります。そのため、期日前投票が増えるほど、途中経過は低く、最終値は高く出やすくなります。今回の「午後4時は12.07ポイント低いのに、最終は3.02ポイント高い」という動きは、この仕組みで説明できます。

(編集部分析)人口の少ない町で投票者の半数超が期日前に投票したことは、関心の高さの表れと見ることができます。途中経過の数字だけで「関心が低い選挙」と判断すると、実態を読み違えます。

争点は中間貯蔵施設 西氏の推進と原氏の「争点にしない」戦い方

西氏は施設の必要性を前面に出し、原氏は施設への賛否を示さずに町政の転換を訴えました。両者の土俵は最後まで重なりませんでした。

西哲夫氏の主張:交付金で医療・福祉と人口減少対策

西氏は町長選を「施設が必要か必要でないかの審判」と位置づけ、交付金を医療・福祉や子育て支援の財源にすると訴えました。

時事通信によると、西氏は2022年に町長に就任し、上関原発の準備工事が中断するなかで、2023年に中国電力が提案した中間貯蔵施設の調査を受け入れました。選挙戦では「原子力関係の交付金があるから子育て支援や住民福祉に取り組める」と主張しています。当選後は山口朝日放送(yab)の取材に「上関町の一番の課題は人口減少です」「やはり中間貯蔵施設が必要です」と述べ、支持者への報告会では「中間貯蔵施設が必要だという民意が表れた」と述べました(毎日新聞)。

原康司氏の主張:原子力財源に頼らないまちづくり

原氏は施設の賛否を争点にせず、原子力の財源に左右されない町づくりと、原子力政策による町の分断の解消を訴えました。

毎日新聞によると、原氏は施設の可否について、住民投票の実施や周辺市町との協議を踏まえて判断するとしていました。開票後には「選挙の結果がすべて(中間貯蔵施設の)賛否に繋がるという考え方は、やめていただきたい」と述べています(yab)。

(編集部分析)原氏が「選挙結果を施設の賛否と結びつけないでほしい」と述べたのは、賛否を示さない戦い方を選んだ以上、筋の通った主張です。一方で、相手が施設を最大の争点に掲げた選挙で賛否を示さなかったことが、町民の判断材料を減らした面も否めません。争点を避けた側が、結果の読み方だけを限定するのは難しいと言えます。

上関の中間貯蔵施設とは 計画はいまどの段階か

中国電力は2025年8月に「立地は可能」と町へ報告しましたが、施設の規模や着工時期を示す事業計画はまだ出ていない段階です。

中間貯蔵施設は使用済み核燃料を一時保管する施設

中間貯蔵施設は、原発で使い終えた核燃料を、再処理工場へ運び出すまでの間、金属容器に入れて一時的に保管する施設です。

日本原子力産業協会(JAIF)によると、上関の施設は容器に入れて空気で冷やす「乾式貯蔵」を想定し、関西電力との共同運用を想定しています。完成すれば、原発の敷地外にある中間貯蔵施設としては青森県むつ市の施設に次ぐ全国2例目となる見通しです。

2023年の調査受け入れから「立地可能」まで

計画は約2年間の調査を終え、「事業計画を待つ」段階で止まっています。主な経緯を時系列で示します。

2023年2月 上関町長が中国電力に地域振興策の検討を要請
2023年8月2日・18日 中国電力が施設の検討を回答し、町が調査の受け入れを連絡
2023年8月〜2025年8月 立地可能性調査(ボーリング調査など)
2025年8月29日 中国電力が「立地は可能」と町長に報告
2026年3月18日 町議会が事業計画の提示を求める請願を賛成5・反対4で採択
2026年10月4日 町長選で推進の現職が再選

中国電力の公表資料によると、調査では敷地内に活断層は確認されず、硬い岩盤の存在を確認したとして、「立地の支障となる技術的に対応できない問題はなく、立地は可能」と判断しました。一方、具体的な計画は「調査・検討結果を踏まえて策定する」とされ、2026年10月5日時点で規模や着工時期は公表されていません。

町はいつ受け入れを決めるのか 事業計画がまだ出ていない

町が受け入れの可否を決めるのは、中国電力から事業計画が示されてからで、その時期はまだ見えていません。

中国電力社長「提出時期は見通しが立っていない」

中国電力の中川賢剛社長は2026年1月、事業計画の「提出時期が現時点で見通しが立っていない」と述べています。

山口新聞によると、事業計画には施設の規模や町への経済効果などを盛り込む予定です。調査結果の報告から1年以上が過ぎても計画が出ていないため、町長選も、具体的な数字が無いまま施設の是非が語られる選挙になりました。

町議会は5対4で計画の提示を求めた

町議会は2026年3月18日、中国電力に事業計画の提示を求める町商工会の請願を、賛成5人・反対4人の1票差で採択しました。

日本経済新聞によると、この採択を踏まえて西町長は中国電力に事業計画の提示を求め、住民の理解を得られるような地域振興策の検討も要請しました。議会の賛否が1票差だったことは、町内の意見が割れていることを示しています。

(編集部分析)町は調査を受け入れ、議会も計画の提示を求めています。ボールはすでに事業者の側にあります。有権者1,890人の町に判断を求めながら、判断に必要な規模・期間・安全対策・経済効果を示さない状態が続くのは、町民に対して誠実とは言えません。再選によって町の意思表示がはっきりした以上、中国電力と関西電力には、速やかに具体的な計画を示す責任があります。

山口県と周辺市町の同意はどうなるか

村岡嗣政知事は、事業計画の説明が尽くされた後に、安全の確保と周辺市町の考え方を確認して県として判断するとしています。

共同通信によると、知事は2026年9月17日、上関町と周辺1市3町の各議会の議長と県庁で意見交換した後、「説明などが尽くされた上で、安心安全の確保や周辺市町の考え方を確認し、県として判断する」と述べました。知事はこれまで「周辺自治体の理解が大前提」と話しており、7月の記者会見では、周辺市町がすべて建設に反対だった場合は進めるべきでないとの認識を示しています。

受け入れの可否を決めるのは上関町ですが、建設に知事が同意すれば地元に入る交付金が増える仕組みです(共同通信)。誰が何を判断するのかを表にまとめます。

主体 役割 2026年10月5日時点の状況
中国電力・関西電力 事業計画を策定・提示する 事業計画は未提示(1月時点で提出時期は見通し立たず)
上関町 受け入れの可否を決める 推進の現職が再選。議会は計画提示を求める請願を採択
周辺市町 県の判断で考え方を確認される 9月17日に各議会の議長が知事と意見交換
山口県(知事) 建設への同意を判断する 説明が尽くされた後に、安全と周辺市町の意向を確認して判断する方針

表のとおり、すべての手続きの起点は事業計画の提示です。計画が出ない限り、町の判断も県の判断も前に進みません。

(編集部分析)知事が周辺市町の理解を重んじるのは当然です。ただ、「周辺がすべて反対なら進めない」という基準は、立地する町の判断より周辺の判断を上に置く運用にもなり得ます。施設を引き受ける町の民意が2度の首長選で示されている以上、県には、町の判断を出発点に据えたうえで周辺の不安に一つずつ答える姿勢が求められます。

関西電力の搬出先問題 福井県との約束と上関

上関の施設は、福井県外への搬出先を探す関西電力にとって、有力な受け皿とみられています。

関電は2035年末までに県外へ搬出を始める方針

関西電力は、福井県の原発の使用済み核燃料を、遅くとも2035年末までに県外の中間貯蔵施設へ運び出し始める方針です。

日本経済新聞によると、関西電力は2025年8月29日、この方針を福井県知事に報告しました。

同じ報道によると、関西電力は美浜・高浜・大飯の3原発に乾式貯蔵施設を設け、2030年ごろからプールの燃料を移す計画です。乾式貯蔵施設の燃料も県外へ搬出する方針とし、地域振興のため年50億円を基準とする寄付の制度も設けるとしています。県外の搬出先が決まらなければ、この方針そのものが絵に描いた餅になります。

上関は関電の搬出先として有力とみられる

上関の施設は関西電力との共同運用が想定されており、県外搬出の有力な候補とみられています。

日本経済新聞は、上関が関西電力の搬出先として有力候補になるとみられると報じています。ただし、事業計画が出ていない以上、上関でどれだけの量を、いつから受け入れるのかは決まっていません。関西電力の「2035年末まで」という期限と、上関の計画の進み方が、今後どう結びつくかが焦点です。

(編集部分析)ここで問われるのは「誰が得をし、誰が負担するのか」です。施設で恩恵を受けるのは、原発を動かし続けたい関西電力と、その電気を使う関西の消費者です。一方で、保管の負担を引き受けるのは中国地方の小さな町です。この非対称を交付金だけで埋めようとすれば、原氏が指摘したような「原子力財源への依存」という批判に答えられません。事業者だけでなく国が前面に立ち、受け入れる町に対して長期の責任を明確にすることが必要です。

再選は日本のエネルギー政策に何を意味するか

再選は、原発の運転を続けるうえで避けて通れない「使用済み核燃料の置き場」の問題を、前に進める地元の後押しになります。

使用済み核燃料を保管する場所が足りなくなれば、原発は燃料を交換できず、運転を続けられなくなります。中間貯蔵施設は、再処理までの時間を確保し、原発の安定運転を支える役割を持ちます。

(編集部分析)エネルギーの安定供給と国の自立を考えれば、原子力を現実的に使い続けることは避けられません。その前提となる燃料の置き場を、地元が自らの選挙で受け止めようとしている点は重く評価できます。一方で、国の原子力政策の後始末を一つの小さな町と一つの電力会社に任せきりにする構図は、国益の観点からも健全とは言えません。上関の判断を「地方の選挙」で終わらせず、国が責任をもって最終的な処分の道筋まで示すことが、受け入れる町への最低限の礼儀です。

(編集部分析)同時に、町が交付金に頼りきる形を避ける工夫も求められます。原氏が訴えた「自立できるまちづくり」は、推進か反対かにかかわらず町の将来に必要な視点です。交付金を一時的な収入で終わらせず、人口減少に歯止めをかける産業や人材に結びつけられるかどうかが、2期目の西町政の評価を分けると考えられます。

上関町長選と中間貯蔵施設のよくある質問

選挙の結果と施設計画について、本文で扱いきれなかった疑問をまとめます。

Q. 中間貯蔵施設は最終処分場とは違うのですか?

A. 違います。中間貯蔵施設は、使用済み核燃料を再処理工場へ運び出すまでの間、容器に入れて一時的に保管する施設で、廃棄物を最終的に埋める場所ではありません。

Q. 上関原発の計画と中間貯蔵施設は同じ計画ですか?

A. 別の計画です。上関原発は1982年に浮上した中国電力の原発建設計画で、準備工事が中断しています。中間貯蔵施設は2023年に中国電力が町に提案した、使用済み核燃料を保管する施設の計画です。

Q. 次の上関町長選はいつですか?

A. 町長の任期は4年のため、通常であれば次の町長選は2030年秋の見込みです。日程は町の選挙管理委員会が告示で決めます。

今後この問題を追うときは、①中国電力が事業計画(規模・着工時期・経済効果)を公表するか、②上関町と町議会が受け入れをどう判断するか、③山口県と周辺1市3町がどう対応するか、④関西電力が福井県外への搬出計画をどう具体化するか、の4点を確認してください。

参考情報

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