【10/6】日朝首脳会談の仲介要請、高市首相がトランプ氏に「高市と会え」
高市早苗首相が、9月の日米首脳会談でトランプ大統領に日朝首脳会談の仲介を頼んでいたことが、2026年10月6日に分かりました。米朝首脳会談が実現したら、トランプ氏から北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記に「日本の首相とも会うように」と働きかけてもらう、という依頼です。
首相は6日、首相官邸で拉致被害者の家族らと面会し、日米首脳会談の内容を伝えました。面会の後、元拉致問題担当相の加藤勝信氏が記者団に明かした言葉が「高市と会え」です。トランプ氏がどう答えたのかは、まだ明らかになっていません。依頼の中身、背景にある米朝会談の見通し、22年間止まったままの日朝首脳外交の経緯を整理します。
この記事でわかること
- 仲介要請の中身:米朝首脳会談が開かれたら、トランプ氏から金正恩総書記に日朝首脳会談に応じるよう働きかけてほしい、と首相が9月に依頼しました。
- 分かっていないこと:トランプ氏の反応と、北朝鮮側の反応はどちらも明らかになっていません。
- 背景:トランプ氏は年内の米朝会談に意欲を示し、北朝鮮は「核保有国の地位」を譲らない構えです。日朝首脳会談は2004年から開かれていません。
日朝首脳会談の仲介要請とは|高市首相がトランプ氏に頼んだこと
米朝首脳会談が実現したら、トランプ氏から金正恩総書記に日朝首脳会談にも応じるよう促してほしい、という依頼です。
NHKによると、高市首相は6日の面会で「アメリカのトランプ大統領に対し、今後、米朝首脳会談が行われた場合、キム・ジョンウン総書記に日朝首脳会談に応じるよう働きかけを依頼した」と説明しました。時事通信も、9月の日米首脳会談で首相が仲介を依頼したと伝えています。日米首脳会談は、首相が国連総会に出席するため訪れた米ニューヨークで行われたものです。
ポイントは「米朝首脳会談が実現した場合」という条件付きの依頼であることです。日本が直接北朝鮮と話す道が閉ざされている中で、トランプ氏と金正恩氏が会う場面を、日朝の扉を開くきっかけに使おうという考え方です。
「高市と会え」と言ってほしい――加藤勝信氏が明かした中身
首相はトランプ氏に「高市と会え」と言ってほしいと伝えた、と加藤勝信氏が記者団に説明しました。
時事通信によると、首相が伝えた言葉は「米朝首脳会談がもしあれば、その時には『高市と会え』と言ってほしい」です。この言葉は面会の後、加藤勝信元拉致問題担当相が記者団に明らかにしたものです。首相がトランプ氏に伝えた内容を、面会に同席した加藤氏が記者団に紹介した、という順番になります。首相本人が記者団の前で「高市と会え」と言ったわけではありません。
テレビ朝日系のANNは、同じ場面の加藤氏の言葉を「仮に米朝首脳会談があった時には、この(拉致)問題について、私と高市総理と話をするようにということをトランプ大統領に言われた」と伝えています。言い回しは媒体で少し違いますが、「米朝会談の場で、金正恩氏に高市首相と会うよう伝えてほしい」という中身は同じです。
トランプ氏の反応はまだ明らかになっていない
トランプ氏が依頼に応じると約束したのかどうかは、10月7日時点で報じられていません。
時事通信は「トランプ氏の反応は明らかになっていない」と書いています。一方で首相は、拉致問題そのものについては、9月の訪米でトランプ氏から強い支持の確約を得たと家族らに説明したと報じられています。拉致問題の解決を支持するという約束と、米朝会談の場で仲介するという約束は別のものです。後者についての返事は、まだ表に出ていません。
(編集部分析)「支持の確約」と「仲介の約束」は分けて読む必要があります。トランプ氏は相手との取引で動く政治家であり、仲介を引き受けるかどうかは、米朝会談そのものの行方と、日本が差し出せる材料に左右されると見るのが現実的です。
この依頼が出てきたのは、拉致被害者の家族と向き合った場でした。次の節で、6日の面会で何が語られたかを見ます。
10月6日、拉致被害者家族との面会で何が語られたか
首相は家族会代表の横田拓也さんらに日米首脳会談の内容を伝え、自分の手で突破口を開くと決意を語りました。
北日本新聞によると、首相は6日、官邸で拉致被害者家族会代表の横田拓也さんらと面会しました。拓也さんは、13歳のときに拉致された横田めぐみさんの弟です。家族会などの団体は9月に訪米しており、面会はその報告を受ける場にもなりました。
「何としても私の手で突破口を開く」
首相は面会で「何としても私の手で突破口を開くとの強い決意で臨む」と述べました(ANN)。
この言い回しは、首相が就任直後から繰り返してきたものです。2025年11月3日の拉致被害者の帰国を求める国民大集会でも、首相は「私の代で何としても突破口を開き、拉致問題を解決したい」と述べていました(秋田魁新報・共同通信)。また10月5日の所信表明演説では「一刻も早い解決に向け、首脳会談も含め、あらゆる選択肢を排除せず取り組む」と語っています(時事通信)。
Q. 仲介を頼んだことは、誰が明らかにしたのですか?
A. 首相本人が面会で家族らに説明し、その後に加藤勝信元拉致問題担当相が記者団に詳しい言葉を明かしました。首相が記者会見で発表したものではありません。
首相が「首脳会談も含め」と言い続けている背景には、米朝の動きがあります。
なぜトランプ氏に仲介を頼むのか|米朝首脳会談の見通し
トランプ氏が金正恩氏との会談に意欲を示しており、米朝が会う場面が日朝の扉を開く数少ない機会だからです。
共同通信によると、トランプ氏は8月19日(現地時間)、金正恩総書記との対面会談について、年内の実現に意欲を示しました。北朝鮮の核兵器については、保有を阻止すべきだったとする一方で「既に持っている」と述べています。
J-CASTニュースは、米メディアが11月に中国で開かれるAPEC首脳会議の機会に米朝首脳会談が実現する可能性を報じている、と伝えました。ただし、会談の日程が正式に決まったという発表はありません。
北朝鮮は「核保有国の地位」を譲らない構え
北朝鮮は国連の場で、核保有国の地位は誰にも覆せないと述べ、非核化に応じない姿勢を改めて示しました。
J-CASTニュースによると、北朝鮮のキム・ソンギョン外務次官は9月28日、国連総会の一般討論演説で「核保有国としての地位はいかなる場合でもいかなる者によっても覆すことはできない」と述べました。2018年の初の米朝首脳会談では朝鮮半島の完全な非核化で合意していましたが、北朝鮮はその後、核戦力を増強する方針を表明しています。
(編集部分析)米朝会談が開かれても、話題の中心は核とミサイルになる公算が大きいと見られます。その席で拉致問題がどこまで取り上げられるかは、日本が事前にどれだけ米側に念押しできるかにかかっています。今回の依頼は、その念押しを首脳同士で行ったものと位置づけられます。
では、日本はなぜ自分で北朝鮮と会えずにいるのでしょうか。
日朝首脳会談はなぜ22年間開かれていないのか
日朝首脳会談は2004年5月の小泉純一郎首相の2度目の訪朝を最後に、一度も開かれていません。北朝鮮が交渉を拒んでいるためです。
北朝鮮は拉致問題を「解決済み」と主張しています。2024年3月には、金正恩総書記の妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が、日本との「いかなる接触、交渉も無視し、拒否する」との談話を出しました(秋田魁新報・共同通信)。日本が呼びかけても、相手が席に着かない状態が続いています。
主な出来事を時系列で並べると、次のようになります。
2004年から数えて22年、日本の首相は北朝鮮の最高指導者と一度も顔を合わせていません。今回の依頼は、この空白を米朝の動きに乗せて埋めようとする試みです。
高市政権の日朝外交|就任直後の打診から今回の仲介要請まで
首相は就任直後に北朝鮮へ直接首脳会談を打診し、返事が来ない中で、米国経由の働きかけを重ねる形になりました。
秋田魁新報(共同通信)によると、首相は2025年10月21日の就任直後に、さまざまなルートを通じて北朝鮮に首脳会談を呼びかけました。首相は11月3日の国民大集会で「既に北朝鮮側には首脳会談をしたい旨を伝えた」と公表しましたが、翌4日の報道の時点で返事は届いていませんでした。打診から約2週間の時点の話で、その後に返事があったという発表はありません。時事通信は今回の記事で、日朝間の交渉は「こう着状態が続いて」いると書いています。
直接の打診と今回の依頼を並べると、違いがはっきりします。
| 項目 | 直接の打診 | トランプ氏への仲介要請 |
|---|---|---|
| 時期 | 2025年10月(就任直後) | 2026年9月(日米首脳会談) |
| 相手 | 北朝鮮(さまざまなルート) | トランプ大統領 |
| 中身 | 日朝首脳会談をしたいと伝えた | 米朝会談の場で「高市と会え」と言ってほしい |
| 公表 | 2025年11月3日、首相が国民大集会で | 2026年10月6日、首相が家族らに説明し加藤氏が記者団に |
| 相手の反応 | 2025年11月4日の報道時点で返事なし | 明らかになっていない |
表のとおり、どちらの道も相手の返事はまだ見えていません。直接の扉が開かないから米国を通す、という流れです。
9月の訪米では、首相は国連総会の一般討論演説にも臨みました。演説の中身は「高市首相の国連演説の要点(拉致・ICC・米中会談の焦点)」で整理しています。
報道で食い違う点と、まだ分かっていない点
依頼の中身はどの報道も一致していますが、加藤氏の言葉の言い回しと、トランプ氏の答えについては情報がそろっていません。
媒体ごとの伝え方を並べます。寄せずに、そのまま載せます。
| 媒体 | 伝えた内容 |
|---|---|
| 時事通信 | 首相はトランプ氏に「米朝首脳会談がもしあれば、その時には『高市と会え』と言ってほしい」と伝えた(加藤氏の説明)。トランプ氏の反応は明らかになっていない |
| NHK | 首相は米朝首脳会談が行われた場合、金正恩総書記に日朝首脳会談に応じるよう働きかけを依頼したと説明 |
| ANN(テレビ朝日系) | 加藤氏「仮に米朝首脳会談があった時には、この(拉致)問題について、私と高市総理と話をするようにということをトランプ大統領に言われた」 |
ANNが伝えた加藤氏の言葉は、文字どおりに読むと「トランプ大統領に言われた」と受け身になっていますが、前後の文脈から「首相がトランプ大統領に伝えた」という意味と読むのが自然です。発言の正確な形は、今後の続報で確かめる必要があります。
まだ分かっていないこと
トランプ氏の返事、北朝鮮の反応、米朝首脳会談の日程の3つは、10月7日時点で分かっていません。
- トランプ氏が仲介を引き受けると約束したかどうか
- 北朝鮮が今回の報道に反応するかどうか
- 米朝首脳会談が本当に開かれるのか、開かれるならいつ、どこでか
この3つのどれかが動いたら、この記事に追記します。
仲介要請は主権を取り戻す外交になるか
日本自身が交渉の主役であり続けるなら、主権を取り戻す外交の足がかりになり得ます。
拉致は日本の主権が侵された問題です。米国の力を借りても、最後に北朝鮮と向き合うのは日本だという点は変わりません。
政府が認定する拉致被害者は17人で、このうち帰国できたのは2002年の5人だけです。被害者の親の世代で存命の人はごくわずかになっており、時間が限られている中で、首相が使える手段を広げようとしているのが今回の動きです。
(編集部分析)同盟国の大統領に仲介を頼むこと自体は、使える外交資源を使う現実的な判断と評価できます。拉致は、国民が他国の工作員に連れ去られたという主権侵害であり、その解決のために米国との関係を活用するのは筋が通っています。
(編集部分析)ただし、仲介はあくまで入口です。米朝が核やミサイルで取引を進めるとき、拉致問題が付け足しの扱いにされないよう、日本自身が交渉の席に着くことが欠かせません。米国頼みが続けば、拉致の解決が米朝関係の都合に左右される危うさも残ります。「誰が得をするのか」という問いで見れば、米朝の合意が日本の頭越しに進む展開を防げるかという観点で課題が残ります。
(編集部分析)首相が「私の手で突破口を開く」と繰り返すのであれば、最終的に問われるのは、北朝鮮の指導者と日本の首相が直接向き合う場を作れるかどうかです。米国経由の働きかけは、そのための足場と位置づけるのが妥当と考えられます。
Q. 米朝首脳会談が開かれなかったら、仲介の話はどうなりますか?
A. 依頼は「米朝首脳会談が実現した場合」という条件付きなので、会談が開かれなければ仲介の機会もありません。日本は直接の打診も続けているとされます。
最後に、検索で多い疑問をまとめます。
日朝首脳会談の仲介要請のよくある質問
今回の報道をめぐって、読者が気になりやすい点をQ&Aで整理します。
Q. 金正恩総書記と会ったことのある日本の首相はいますか?
A. いません。小泉首相が会ったのは父の金正日総書記で、金正恩氏が最高指導者になった2011年末以降、日朝首脳会談は一度も開かれていません。
Q. 拉致被害者家族会とはどんな団体ですか?
A. 北朝鮮に拉致された被害者の家族でつくる団体で、1997年に結成されました。いまの代表は横田めぐみさんの弟の横田拓也さんです。
Q. 米朝首脳会談が開かれたら、何を見れば仲介が働いたと分かりますか?
A. 会談後の米側の発表や記者会見で拉致問題に触れたか、金正恩氏が日本との会談に言及したかが目安になります。日本政府がトランプ氏から結果の説明を受けたと公表するかも手がかりです。
今後の注目点は、①トランプ氏の返答、②北朝鮮側の反応、③米朝首脳会談の日程の3つです。米メディアが会談の可能性を挙げる11月のAPEC首脳会議の前後に、この3点の報道を確かめてください。新しい動きが出たら、この記事に追記します。
参考情報
- 時事通信「トランプ氏に日朝首脳会談の仲介要請 高市首相、米朝実現なら」https://www.jiji.com/jc/article?k=2026100600673&g=pol
- 時事通信(Yahoo!ニュース)同上 https://news.yahoo.co.jp/articles/8b6daf01847e7c2547c68c79d647ef3626369d03
- NHK「高市首相 米トランプ大統領に日朝首脳会談への働きかけを依頼」https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20261006de55168
- ANN(KSB瀬戸内海放送)「もし米朝首脳会談が実現すれば トランプ大統領に日朝仲介を依頼 高市総理」https://news.ksb.co.jp/ann/article/16943517
- 北日本新聞「首相、被害者家族と面会」https://webun.jp/articles/-/1106215
- 秋田魁新報(共同通信)「首相『日朝首脳会談を打診した』 拉致被害者の帰国求める集会で」https://www.sakigake.jp/news/article/20251103CO0055/
- 秋田魁新報(共同通信)「日朝首脳会談の返事来ず 政府、高市首相就任直後に打診」https://www.sakigake.jp/news/article/20251104CO0098/
- 琉球新報(共同通信)「米朝会談、年内実現に意欲 トランプ氏、金氏へ秋波」https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-5471164.html
- J-CASTニュース「トランプ大統領はなぜ、『核保有』固執する金正恩総書記との会談を望むのか」https://www.j-cast.com/2026/09/30518191.html
- 政府 拉致問題対策本部 https://www.rachi.go.jp/
