【10/7】海苔弁いちのやが破産|ロケ弁の人気店はなぜ行き詰まった?店舗の営業は
高級海苔弁当の専門店「海苔弁いちのや」を運営していた株式会社いちのや(東京都中央区)が、2026年9月30日に東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けました。帝国データバンクと東京商工リサーチが10月7日に伝えました。負債額は現在調査中です。
テレビのロケ弁として芸能人に人気が広がり、直営とフランチャイズで28店舗まで広げた店が、なぜ5年あまりで行き詰まったのか。この記事では、信用調査会社と報道の内容をもとに、破産の中身、行き詰まった理由、店舗がいまどうなっているのか、取引先や利用者が確かめておくことを、出典付きで整理します。
この記事でわかること
- 何が決まったか:株式会社いちのやは9月30日に東京地裁から破産手続き開始決定を受けました。負債は調査中で、債権の届け出期間は10月28日までです。
- なぜ行き詰まったか:出店の資金負担に、仕入れ価格と人件費の高騰、競争の激化が重なり、資金繰りが悪化しました。2024年9月に米穀卸業者の傘下に入った後も赤字が続きました。
- 店舗はどうなったか:主力の靖国通り本店は2026年7月31日に閉店しました。一方で、事業停止後も一部のフランチャイズ店は営業を続けていると報じられています。
海苔弁いちのやの破産で何が決まったのか
運営会社の株式会社いちのやが、9月30日に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けました。会社は清算に向かいます。
東京商工リサーチによると、破産管財人には川畑和彦弁護士(川畑法律事務所)が選ばれました(東京商工リサーチ 10月7日)。帝国データバンクも同じ内容を伝え、債権の届け出期間を10月28日までとしています(帝国データバンク 10月7日)。
破産手続きは、破産法にもとづき、会社の財産をお金に換えて債権者に配当する手続きです(e-Gov法令検索 破産法)。事業を続けながら立て直す民事再生とは別の手続きで、会社としてのいちのやが営業を再開する見通しは、10月7日時点の報道からは読み取れません(編集部分析)。
運営会社・株式会社いちのやの概要
2021年5月に「株式会社本塁打」の名前で設立され、東京都中央区日本橋小伝馬町に本社を置く会社です。
両社の報道から、会社の基本情報を表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社いちのや(旧商号:株式会社本塁打) |
| 所在地 | 東京都中央区日本橋小伝馬町 |
| 設立 | 2021年5月 |
| 店名 | 海苔弁いちのや(直営店とフランチャイズ店、百貨店などの販売店) |
| 破産手続き開始決定 | 2026年9月30日(東京地裁) |
| 破産管財人 | 川畑和彦弁護士(川畑法律事務所) |
| 債権の届け出期間 | 2026年10月28日まで |
| 負債 | 調査中(10月7日時点) |
表のとおり、破産の決定は9月30日で、報道されたのは1週間後の10月7日でした。負債の金額は、10月7日時点でどの報道も示していません。
負債額はまだ分かっていない
負債額は帝国データバンク、東京商工リサーチとも「調査中」としており、10月7日時点で金額は出ていません。
負債の規模は、破産管財人が財産と債権を調べる中で固まっていきます。金額が分かった時点で続報が出るとみられます。ネット上で金額を断定する書き込みがあっても、信用調査会社や管財人の発表で確かめるまでは数字として扱わないほうが安全です(編集部分析)。
海苔弁いちのやはどんな店だったのか
瀬戸内海産の海苔を2枚使った高級海苔弁当の専門店で、テレビ番組のロケ弁として芸能人に人気が広がった店です。
帝国データバンクによると、定番の「海苔弁」は、2枚の瀬戸内海産の海苔にはさまれたご飯の上に、磯辺揚げ、白身魚フライ、焼き鳥のもも肉、きんぴら、野沢菜などを敷き詰めたものでした。季節ごとの「季節の海苔弁」も出していました。東京新聞も、芸能人に人気のロケ弁としてテレビ番組などで多数紹介されていたと伝えています(東京新聞 10月7日)。
九段下の1店から1年で7店舗へ
2022年の時点で、九段下の1店からわずか1年ほどで7店舗に広がっていました。看板の海苔弁は1080円でした。
小学館のDIMEは2022年7月の記事で、それまで東京・九段下に1店だけだった店が1年で7店舗に増えたと紹介しています(DIME 2022年7月30日)。記事は、お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さんが「おかずがパンパン」「白身フライ、磯辺揚げがでかい」などと評したことを、店舗が急に増えたきっかけの一つとして取り上げています。
1000円を超える海苔弁は、一般的なのり弁の数倍の値段です。それでも「ロケ弁で見た」「芸能人が勧めていた」という話題が客を呼び、高い値段でも売れる店として名前が知られていきました(編集部分析)。
日本ロケ弁大賞で金賞、28店舗まで拡大
2024年6月の「第1回 日本ロケ弁大賞」で金賞を取り、直営とフランチャイズで28店舗まで広げていました。
帝国データバンクによると、28店舗を出していた2024年5月期の年間売上高は約6億4100万円でした。東京商工リサーチは、百貨店などにも弁当の販売店を出し、高い価格帯ながらテレビやSNSで取り上げられて人気店になっていたと伝えています。2024年9月以降は人気アニメとのコラボメニューも出すなど、事業を広げようとしていました。
なぜ破産したのか|いちのやが行き詰まった理由
出店にかかる資金負担に、仕入れ価格と人件費の高騰、ほかの店との競争の激化が重なり、資金繰りが悪化したためです。
帝国データバンクと東京商工リサーチは、どちらも次の要因を挙げています。順に見ていきます。
出店の費用と、原材料・人件費の高騰
店を増やすための費用が重くのしかかる中で、材料と人の費用が上がり、売上を伸ばしても利益が残りにくくなりました。
帝国データバンクは、出店にともなう資金負担や、仕入れ価格と人件費の高騰、他店との競争の激化で、資金繰りが徐々に悪化したとしています。東京商工リサーチも、原材料費や人件費の高騰、出店費用などで費用負担が重くなったと伝えています。
海苔弁の材料は、ご飯(米)、海苔、白身魚、鶏肉、揚げ油と、ここ数年で値上がりが目立った品目が多く並びます。すでに高い価格帯だったため、値上げで費用の上昇分を取り戻す余地は限られていた可能性があります(編集部分析)。
米穀卸の傘下に入っても売上は減った
2024年9月に米穀卸業者の傘下に入り、経営体制を一新しましたが、売上は減り、赤字が続きました。
帝国データバンクによると、取引先への支払いが滞り、一部は訴訟になる中で、2024年9月から米穀卸業者の傘下に入りました。経営の効率化を進め、不採算店舗を閉めたものの、2025年5月期の年間売上高は約6億1400万円に減りました。店舗閉鎖にともなう費用の計上や物価高の影響で赤字が続き、債務超過(負債が資産を上回る状態)に陥ったとしています。
帝国データバンクが示した売上高を並べると次のとおりです。
| 決算期 | 年間売上高 | その時期の状況 |
|---|---|---|
| 2024年5月期 | 約6億4100万円 | 直営とフランチャイズで28店舗を出店 |
| 2025年5月期 | 約6億1400万円 | 米穀卸の傘下で不採算店を閉鎖。赤字が続き債務超過に |
表のとおり、売上の減り方は1年で約2700万円、率にして4%あまりです。売上が大きく落ちたというより、店を閉める費用と物価高で赤字が続いたことが、債務超過につながったと読めます(編集部分析)。
なお、米を扱う卸の傘下に入ったことで、ご飯の仕入れ面では支えがあったとも考えられます。ただし、それでも立て直せなかった理由を、報道は具体的には示していません。
取引先への支払いが滞り、訴訟にも
傘下入りの前の段階で、すでに取引先への支払いが滞り、一部は訴訟に発展していました。
帝国データバンクが伝えたこの経緯は、2024年の時点で資金繰りがかなり苦しくなっていたことを示しています。人気が出て店舗を一気に広げた時期と、支払いが滞り始めた時期が近い点は、急な出店の負担が大きかったことをうかがわせます(編集部分析)。どの取引先との、どんな訴訟だったのかは報じられていません。
破産までの経緯を時系列で見る
設立から破産開始決定まで、約5年4か月です。人気の広がりと資金繰りの悪化が、ほぼ同じ時期に進んでいました。
報道で伝えられた出来事を、時系列で並べます。
並べてみると、ロケ弁大賞で金賞を取った2024年6月と、米穀卸の傘下に入った2024年9月はわずか3か月しか離れていません。外から見て最も勢いがあった時期に、内側ではすでに資金繰りが苦しくなっていたことが分かります(編集部分析)。
いちのやの店舗はまだ営業しているのか
主力の靖国通り本店は7月31日に閉店しました。ただ、事業停止後も一部のフランチャイズ店は営業を続けていると報じられています。
両社の報道を並べると、本店と一部の店舗はすでに閉まり、フランチャイズ店の一部が残っている、という状態です。
靖国通り本店は7月31日に閉店
帝国データバンクは、2026年7月31日に主力の靖国通り本店を閉店したことで、動向が注目されていたと伝えています。
東京商工リサーチも、2026年に入ってから店舗の入れ替え(スクラップ・アンド・ビルド)で事業を縮小し、7月31日に一部の店舗を閉めたとしています。そのうえで、8月4日までに事後処理を弁護士に任せていました。東京商工リサーチは9月19日の業界分析でも、靖国神社近くで店を出していたいちのやが8月に事業を止めたことを取り上げています(東京商工リサーチ 9月19日)。
一部のフランチャイズ店は営業を続けている
東京商工リサーチによると、事業停止後も一部のフランチャイズ店は運営を続けています。どの店かの一覧は報じられていません。
フランチャイズ店は、本部(いちのや)とは別の会社や個人が経営している店です。本部が破産しても、店の経営者が自分の判断で営業を続けられる場合があります。ただし、看板や仕入れの契約は本部とのものなので、今後も同じ名前・同じ中身で続けられるかは、店ごとの事情によります(編集部分析)。
買いに行くつもりの人は、店の公式SNSや電話で営業しているかを先に確かめるのが確実です。インターネットの地図や口コミサイトの営業情報は、閉店が反映されていないことがあります。
弁当店の倒産が増えている背景
弁当店の倒産は2026年1〜8月で83件に上り、年間で過去最多だった2025年の89件を上回る勢いです。
東京商工リサーチの9月19日の分析によると、2026年1〜8月の弁当店の倒産は83件でした。地域別では関東が35件で全体の42.1%を占め、資本金1000万円未満の小さな会社が67.4%でした。同社は、米、鶏肉、小麦粉、食用油、光熱費などの費用が上がる一方で、コンビニ、スーパー、宅配などとの競争が激しいことを背景に挙げています。
| 項目 | 数字(東京商工リサーチ) |
|---|---|
| 2025年の弁当店の倒産 | 89件(年間で過去最多) |
| 2026年1〜8月の弁当店の倒産 | 83件 |
| 2026年の地域別(8月まで) | 関東35件(42.1%)、近畿10件(12.0%)、九州10件(12.0%) |
| 2026年の資本金別(8月まで) | 1000万円未満が67.4% |
この数字は弁当店の業界全体の動きで、いちのやが破産した直接の理由を示すものではありません。いちのやについては、帝国データバンクと東京商工リサーチが、出店の負担と費用の高騰を個別の理由として挙げています。業界全体で同じ費用の上昇が起きていた中で、高級路線と急な出店が重なった店が先に行き詰まった、という位置づけで見るのが妥当です(編集部分析)。
取引先と利用者が確かめておくこと
取引先は10月28日までの債権届け出、利用者は行く前に店が営業しているかの確認が、それぞれ必要です。
帝国データバンクによると、債権の届け出期間は10月28日までです。破産法は、破産手続きに参加しようとする債権者は届け出期間内に裁判所へ債権を届け出ると定めています(破産法111条)。実際の提出先や書式は、裁判所や破産管財人から届く通知書類に書かれているので、その案内に従います。期限に遅れると配当を受けられないおそれがあるため、通知書類の期限を早めに確かめておくことが大切です。
- 取引先(仕入れ先・家主など):未払いの請求があれば、通知書類の案内に従って10月28日までに債権を届け出る
- フランチャイズ加盟店:本部との契約の扱いは管財人と相談することになる。営業を続けるかは店ごとの判断
- 利用者:行く前に店の公式SNSや電話で営業を確かめる。閉店した店の予約や注文は成り立たない
このほか、回数券や前払いの商品券のようなものを持っている人は、使えるかどうかを店や管財人の案内で確かめる必要があります。いちのやがそうした券を出していたかどうかは、報道では確認できていません。
海苔弁いちのや破産のよくある質問
検索の多い疑問に、10月7日時点で分かっている範囲で答えます。
Q. 「立ち蕎麦いちのや」や和菓子の「いちの」とは関係がありますか?
A. 破産したのは東京都中央区の株式会社いちのやで、「海苔弁いちのや」を運営していた会社です。名前の似た別の店(秋田県の立ち蕎麦店など)が破産したという報道はありません。
Q. 百貨店の催事などで、いちのやの海苔弁はまた買えますか?
A. 運営会社が破産したため、会社として新たに出店する見込みは立っていません。営業を続けているフランチャイズ店があっても、今後の催事出店などが続くかは、10月7日時点で何も発表されていません。
Q. 傘下に入った米穀卸の会社はどこですか?
A. 帝国データバンクと東京商工リサーチは「米穀卸業者」「米穀卸グループ」とだけ書き、会社名を出していません。この記事でも、報道で確認できない社名は書きません。
Q. 店の名前やレシピはほかの会社が引き継ぎますか?
A. 10月7日時点で、ブランドや店舗を引き継ぐ会社の発表はありません。破産手続きの中で、管財人が店の名前などの財産を売る可能性はありますが、決まったことはありません。
負債額や店舗の扱いについて新しい発表があれば、確かめて追記します。
