【10/17】防衛財源に法人税の追加増税案|防衛費は年10兆円超へ、今の4%との違い

【10/17】防衛財源に法人税の追加増税案|防衛費は年10兆円超へ、今の4%との違い

防衛費の財源として、法人税の追加増税案が政権内で浮上していることが、2026年10月17日に分かりました。共同通信が複数の関係者の話として伝えたものです。法人税には2026年4月から防衛特別法人税(税額から500万円を引いた額の4%)がすでに上乗せされており、今回の案はそこにさらに積み増す形になります。年内に改定される安全保障関連3文書で、防衛費は年10兆円超に膨らむ公算が大きいとされます。この記事では、何が浮上したのか、いまの防衛増税の中身、決まるまでの流れを表で整理します。

この記事でわかること

  • 浮上した案:安保3文書の改定に合わせ、防衛費の安定財源として法人税の追加増税が政権内で検討されています。
  • いまの防衛増税:法人税とたばこ税は2026年4月から、所得税は2027年1月から。3税で年約1兆3千億円の見込みです。
  • これから:案は「浮上」の段階で、税率や時期は決まっていません。経済界の反発も予想されます。
目次

防衛財源の法人税追加増税案とは何か

年10兆円超に増える見込みの防衛費を賄うため、法人税をさらに引き上げる案が政権内で出ているものです。

共同通信によると、防衛力強化に向けた安全保障関連3文書の改定を巡り、大幅な増額が見込まれる防衛費の財源として、法人税の追加増税案が政権内で浮上していることが分かりました。複数の関係者が17日に明らかにしたとしています。新しい3文書に基づく防衛費の水準は年間10兆円超に膨らむ公算が大きく、法人税はその安定財源として期待されていると伝えています。

同じ報道によると、政府は増税と併せて歳出改革も検討していますが、それで十分な額を捻出できるかは不透明です。賃上げへの影響や国際競争力の低下を心配する経済界が反発する可能性もあり、議論は曲折が予想されるとしています。

今回の案で決まっていることはあるか

決まっていることはありません。税率、開始時期、対象となる企業の範囲はいずれも報道されていません。

今回の情報は、政府や与党の正式な発表ではなく、関係者への取材に基づく報道です。政府が閣議で決めた方針でも、与党の税制調査会が了承した案でもありません。この記事でも「浮上した案」として扱い、決まった制度としては書きません。

防衛費は年10兆円超へ、どこまで増えるのか

現行計画は2023〜27年度の5年で43兆円程度ですが、次の計画では年10兆円超が見込まれています。

共同通信の報道と北海道新聞の報道から、防衛費の規模に関わる数字を並べると次のとおりです。

項目 金額 位置づけ
現行の防衛力整備計画(2023〜27年度) 5年で計43兆円程度 2022年に決めた3文書の一つ
2026年度の防衛省予算 約9兆円 米軍再編関連経費などを含む
新しい3文書での防衛費の水準 年10兆円超の公算 共同通信の報道(関係者の話)
次期計画(2027〜31年度)の単純試算 70兆〜80兆円規模の可能性 政権幹部の指摘として報道。政府の公式の数字ではない

次期計画では、無人機の大量調達や、長期戦に備えた弾薬・ミサイルの確保が柱になると報じられています。70兆〜80兆円という数字は、防衛省が必要と考える装備品や体制を積み上げて単純に試算した場合の規模として、政権幹部が述べたものです。予算要求や閣議決定で示された数字ではありません。

5年で43兆円と、次の計画の差はどれくらいか

仮に70兆〜80兆円になれば、現行の43兆円から5年で27兆〜37兆円上積みされる計算です。

ここでの差は、報道された数字どうしを単純に引いたもので、物価の変化や計画の中身の違いは考慮していません。北海道新聞によると、防衛費は2026年度予算で初めて9兆円を超え、10年前の約1.8倍になっています。年10兆円超の水準が5年続けば、それだけで50兆円を超えます。現行の財源の枠組みでは足りなくなることが、追加増税の議論が出てくる理由です。

いまの防衛増税3税はどうなっているか

法人税とたばこ税は2026年4月から、所得税は2027年1月から増税され、3税で年約1兆3千億円を見込んでいます。

佐賀新聞(共同通信配信)の2026年3月30日の報道から、3税の中身を並べると次のとおりです。

税目 開始 中身 増収見込み
法人税(防衛特別法人税) 2026年4月1日以後に始まる事業年度 税額から500万円を引いた額に4%を上乗せ 年8690億円(平年度)
たばこ税 2026年4月 加熱式を2026年4月と10月の2回で紙巻きと同じ水準へ。2027年4月から計3回、1本あたり50銭ずつ引き上げ 2120億円
所得税 2027年1月 税額に1%を上乗せし、復興特別所得税を同じ1%引き下げ 2560億円

3税を合わせると約1兆3千億円です。所得税は復興特別所得税を同じ率だけ下げるため、当面の負担は変わりません。ただし秋田魁新報(共同通信配信)によると、復興特別所得税の課税期間を延ばすため、長い目で見れば納税者の負担は増えます。所得税の増税は2025年度の税制改正でいったん先送りされ、2025年12月に2027年1月の実施が固まった経緯があります。

今回の追加増税は、いまの4%と何が違うのか

いまの4%は現行計画の43兆円のための財源で、今回の案は次の計画の上積み分のための財源です。

2026年4月に始まった防衛特別法人税は、2022年に決めた現行の3文書と43兆円の計画を賄うための仕組みです。今回浮上した追加増税は、年内に改定される新しい3文書で防衛費がさらに増える分に充てる案です。仮に実施されれば、法人は4%の上乗せに加えて、追加分を負担することになります。どの形で積み増すか(税率を上げるのか、別の枠を設けるのか)は報道されていません。

防衛特別法人税は中小企業にもかかるのか

基準法人税額が500万円以下の法人は税額が0になり、実際の負担は生じません。ただし申告は必要です。

国税庁のe-Taxの案内によると、防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税を納める法人が対象になります。法人税額をもとに計算した「基準法人税額」から年500万円の基礎控除を引き、残った額に4%をかけて税額を出します。基準法人税額が500万円以下なら、引いた後の額が0になるため税額も0です。それでも防衛特別法人税の確定申告書は出す必要があると案内されています。

基準法人税額の大きさごとに、税額がどう変わるかを並べると次のとおりです。

基準法人税額 500万円
(500万−500万)×4%=0円
基準法人税額 800万円
(800万−500万)×4%=12万円
基準法人税額 1億円
(1億−500万)×4%=380万円

上の数字は、事業年度が12か月で、ほかの税額控除などを考えない場合に、国税庁が示す計算方法にあてはめた例です。事業年度が1年未満なら500万円の控除は月数で按分されます。基準法人税額が500万円以下の法人は、企業の規模にかかわらず負担は生じませんが、納税義務者として申告は必要です。実際に税を負担するのは、主に利益の大きい企業になる仕組みです。中間申告は2027年4月1日以後に開始する事業年度から必要になると案内されています。

この仕組みの上に追加の増税が乗った場合、中小企業まで負担が広がるかどうかは、500万円の控除が維持されるかで変わります。この点も今回の報道では示されていません。

法人税の追加増税はいつ、どう決まるのか

通常は、与党の税制改正大綱で方針を固め、政府が法案を出し、国会で成立して初めて決まります。

北海道新聞によると、政府は2026年中に安保関連3文書を改定し、防衛費のさらなる増額を検討しています。税制の変更は、例年は年末に与党が税制改正大綱で方針をまとめ、政府がそれをもとに税法の改正案を作り、翌年の通常国会で成立して決まります。大綱は与党の方針で、法的な決定は国会での成立です。2022年は3文書の閣議決定と与党の大綱づくりが同じ12月に並行して進みました。今回も3文書の改定と財源の議論が並行する可能性があります。

通常想定される流れを順に並べると次のとおりです。

1. 3文書の改定
防衛費の総額と中身を決める(2026年中)
2. 与党の方針
税制改正大綱で税率と時期の方針をまとめる(例年12月)
3. 政府の法案と国会
政府が改正案を出し、国会で成立すれば施行

過去の防衛増税は予定どおり決まったか

予定どおりには決まっていません。2022年末は開始時期を決めず、所得税は2025年度改正でも時期の明記を見送りました。

野村総合研究所の木内登英氏のコラムによると、2022年末の与党税制改正大綱は、党内から予想以上に強い反発が出たため防衛増税の実施を盛り込めず、開始時期を「2024年以降の適切な時期」とだけ記しました。その後、2025年度の税制改正で法人税とたばこ税の2026年4月開始が決まり、所得税だけがさらに先送りされました(秋田魁新報・共同通信配信)。今回の追加増税も、与党や経済界の調整次第で中身や時期が大きく動く可能性があります。

経済界はどう受け止めそうか

経済界は賃上げや国際競争力への影響を理由に反発する可能性が高いと報じられています。

共同通信は、賃上げへの影響や国際競争力の低下を懸念する経済界が反発する可能性があると伝えました。政府は企業に賃上げを求めており、同じ企業に追加の税負担を求めることは、その方針とぶつかりかねません。2022年に法人税の付加税が議論されたときも、経済界や自民党の一部から「景気回復や賃上げに水を差す」との反対が出たとJ-CASTニュースが伝えています。

北海道新聞の社説は、高市早苗首相が就任前は経済への影響を懸念して防衛増税に慎重だったと指摘しています。首相が今回の案をどう扱うかは、まだ示されていません。

なぜ増税ではなく国債という案も出るのか

防衛費を税で賄うか借金で賄うかは、2022年から続く論点で、国債の活用を求める声も根強くあります。

J-CASTニュースによると、2022年の議論では自民党内に「企業に賃上げをさせようとしているのに、法人税の増税などできるはずがない」との声があり、エコノミストからは増税を避ければ防衛費は国債に頼ることになるとの指摘も出ていました。北海道新聞の社説は、首相が就任前に防衛財源に国債を活用する案に言及していたとしたうえで、これに否定的な立場を示しています。

(編集部分析)税で賄うか国債で賄うかは、負担を誰がいつ負うかの選択です。税で賄えば、いまの企業や家計の負担が増える一方、将来の利払いや償還は膨らみにくくなります。国債で賄えば、足元の増税は避けられますが、金利や返済の形で負担が後に残る可能性があります。どちらが国益にかなうかは、景気や金利の状況とあわせて、防衛費の規模が決まったあとに正面から論じるべきです。

防衛財源の法人増税をどう考えるべきか

防衛力の強化は必要ですが、財源を企業への増税に頼る前に、歳出の見直しと成長による税収増を示すべきです。

現行の防衛財源は、増税だけでなく歳出改革や税外収入などを組み合わせた仕組みで、3税の増収見込みは平年度で約1兆3,370億円です。

北海道新聞の社説によると、現行計画の43兆円を賄うために必要な新たな財源14兆5千億円のうち、増税で充てるのは4分の1です。残りは増税以外の手段で確保する計画です。次の計画で防衛費が年10兆円超に増えれば、この組み合わせのどこを広げるのかが改めて問われます。今回浮上した法人税の追加増税は、その選択肢の一つとして出てきたものです。

(編集部分析)周辺国の軍備増強やミサイル発射が続くなかで、自国を自分で守る力を高めることは、主権国家として当然の責務だと評価できます。無人機や弾薬の確保を柱にする方向も、長期戦への備えという現実に即しています。ただし、その財源を最初から法人増税に求める発想には疑問が残ります。政府は企業に賃上げを求めながら、同じ企業の手元資金を税で吸い上げようとしており、国内の投資と賃金を細らせかねません。決まった歳出の中から防衛に回せる分を洗い出す歳出改革や、経済成長による税収の上振れをどこまで充てられるのかを、増税の前に国民に数字で示すことが先だと考えます。

(編集部分析)「誰が得をするのか」という問いに照らすと、増税路線は財政当局にとっては確実な財源ですが、国内で稼ぎ、雇用を生む企業にとっては負担の上乗せです。日本の防衛を支えるのは結局、日本の産業と国民の所得です。その足腰を弱める形で防衛費を賄えば、長い目で国力をそぐことになりかねません。防衛力の強化と経済の強さを両立させる財源の組み立てが問われます。

防衛財源の法人税増税のよくある質問

赤字の会社の申告と、消費税への影響の2点を、本文で扱っていない角度からまとめます。

Q. 赤字の会社も防衛特別法人税の申告は必要ですか?

A. 必要です。国税庁の案内では、欠損などで基準法人税額が0になる場合や、500万円の控除で課税対象の額が0になる場合でも、防衛特別法人税の申告書を提出する必要があるとされています。

Q. 今回の追加案で消費税も上がりますか?

A. 今回の報道で浮上しているのは法人税で、消費税を防衛財源に充てる案は出ていません。現行の防衛増税も法人税・たばこ税・所得税の3税で、消費税は含まれていません。

自社の負担を確かめたいときは、国税庁e-Taxの「防衛特別法人税の創設に関するご案内・留意事項について」で計算方法と申告の手順を確認できます。追加増税の行方は、年内の安保3文書の改定で防衛費の総額が決まったあと、年末の与党税制改正大綱で税率・開始時期・500万円の控除が維持されるかの3点を見ると判断しやすくなります。その他の出所は、次の参考情報にまとめています。

参考情報

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