【10/27】防衛特別所得税、来年1月から所得税額に1%|手取りは変わる?復興税の10年延長で増える負担を試算

【10/27】防衛特別所得税、来年1月から所得税額に1%|手取りは変わる?復興税の10年延長で増える負担を試算

2027年1月から、所得税に「防衛特別所得税」が上乗せされます。所得税額に1%を掛ける新しい付加税で、防衛力を強めるための財源です。同時に、東日本大震災の復興財源として払ってきた復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がるため、来年の給与から引かれる税額の合計は今と変わりません。一方で、復興特別所得税の期限は2037年末から2047年末へ10年延び、防衛特別所得税には終わりの年がありません。この記事では、財務省・国税庁・国会の一次資料をもとに、来年1月から何が変わり、手取りはどうなり、長い目で見ると負担がいくら増えるのかを整理します。情報は2026年10月27日時点のものです。

この記事でわかること

  • 来年1月の変化:防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%の合計は2.1%で、今と同じ率だと分かります。
  • 手取りへの影響:毎月の給与・年末調整・配当の源泉徴収で、計算のしかたが変わらない理由が分かります。
  • 長い目で見た負担:2038年以後に上乗せが続く分を、所得税額ごとの試算表で確かめられます。
  • 決まった経緯と論点:2026年3月31日の法成立までの流れと、「流用」批判をどう見るかが分かります。
目次

防衛特別所得税は来年1月から何が変わるのか

2027年1月1日以後に生じる所得から、所得税額の1%が防衛特別所得税として上乗せされ、所得税と一緒に納めます。

根拠は、2026年3月31日に参議院本会議で可決・成立し、同じ日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)です。参議院の議案情報に載っている要旨は「所得税額に対する税率一%の新たな付加税として、防衛特別所得税を創設する」「あわせて、復興特別所得税の税率を一%引き下げる」というものです。

財務省の令和8年度税制改正の大綱は、防衛特別所得税額を「その年分の基準所得税額に1%の税率を乗じて計算した金額」とし、課税期間を「令和9年以後の当分の間」としています。申告・納付・源泉徴収のしくみは、復興特別所得税と同じ形にそろえられました。

防衛特別所得税と復興特別所得税はどう組み合わさるのか

来年からは所得税額に対して防衛1%と復興1.1%の2つが掛かり、合計は今の復興2.1%と同じになります。

国税庁が2026年5月に出した「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」は、改正の前と後で「合計税率(2.1%)に変更はありません」とし、源泉徴収税額の計算方法も変わらないと明記しています。率の違いを表にすると次のとおりです。

期間 復興特別所得税 防衛特別所得税 上乗せの合計
2026年まで 2.1% なし 2.1%
2027年〜2037年 1.1% 1% 2.1%(変わらない)
2038年〜2047年 1.1%(10年延長分) 1% 2.1%(旧制度なら0%)
2048年以後 なし 1%(当分の間) 1%(旧制度なら0%)

表のとおり、2037年までは率が同じで、違いが出るのは2038年以後です。ここが「増税ではない」と「長い目では増税だ」という2つの見方が分かれる点です。

防衛特別所得税はいくらかかるのか

年収ではなく所得税額に1%を掛けるため、所得税額が10万円の人なら防衛特別所得税は年1,000円です。

1%を掛ける対象は、年収や所得ではなく基準所得税額です。給与所得控除や基礎控除などを引いて所得税額を出し、その所得税額(基準所得税額)に1%を掛けます。基準所得税額は、住宅ローン控除などの税額控除を差し引いたあとの所得税額です。国税庁のQ&Aでも、年末調整の年税額は「年調所得税額」(住宅借入金等特別控除を差し引いた後の税額)に102.1%を掛けて求めるとしています。

所得税額ごとに見る1年あたりの金額

所得税額10万円なら防衛1,000円と復興1,100円で計2,100円となり、今の復興2,100円と同じ額です。

家族構成や控除で所得税額は人ごとに違うため、ここでは所得税額そのものを仮に置いて計算します(端数の扱いは考えていません)。

年間の所得税額(仮定) 2026年の上乗せ(復興2.1%) 2027年の防衛1% 2027年の復興1.1% 2027年の上乗せ合計
5万円 1,050円 500円 550円 1,050円
10万円 2,100円 1,000円 1,100円 2,100円
20万円 4,200円 2,000円 2,200円 4,200円
50万円 10,500円 5,000円 5,500円 10,500円

どの所得税額でも、2027年の上乗せ合計は2026年と同じ額になります。防衛特別所得税の分だけ、復興特別所得税が減る形です。

来年1月から給与の手取りは減るのか

防衛特別所得税だけを理由に、来年1月の給与から引かれる税額が増えることはありません。合計の率が同じだからです。

国税庁のQ&Aは、改正の前後で「源泉徴収税額の計算方法に変更は生じません」としています。会社は所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額を源泉徴収し、1枚の所得税徴収高計算書(納付書)でまとめて納めます。

給与明細や源泉徴収税額表はどう変わるのか

毎月の天引き額は令和9年分の源泉徴収税額表で決まり、その税額に防衛分と復興分が最初から含まれています。

国税庁が公表した令和9年分 源泉徴収税額表の表紙には「この税額表の税額には、防衛特別所得税相当額及び復興特別所得税相当額が含まれています」とあり、防衛特別所得税の課税期間は令和9年1月1日以後、復興特別所得税は令和29年12月31日までと書かれています。給与明細でどう表示するかは勤務先によって異なります。国税庁が示しているのは、源泉徴収する額の計算と納め方です。

ただし、来年1月の給与明細で所得税の額が今年と違っていても、それは防衛特別所得税のせいとは限りません。同じ法律には基礎控除の引き上げや給与所得控除の最低保障額の引き上げも入っており(参議院の議案要旨)、控除の変化や昇給・扶養の変化でも天引き額は動きます。

年末調整と確定申告は何が変わるのか

年末調整は3つの税の合計で行い、年税額は年調所得税額×102.1%で求める決まりも今年と同じです。

国税庁のQ&Aは、令和8年分と令和9年分で年調年税額の求め方(掛ける率)に変更はないとしています。退職金の源泉徴収税額の速算表も、令和8年分と令和9年分で変わりません。確定申告をする人は、申告書で所得税と一緒に防衛特別所得税と復興特別所得税を計算することになります。

配当や利子の源泉徴収はどうなるのか

配当や利子など源泉徴収される支払いにも防衛分が掛かりますが、合計の率は15.315%などで変わりません。

国税庁のQ&Aでは、合計税率は「所得税率×102.1%」で、所得税率15%なら15.315%、20%なら20.42%です。上場株式の配当や特定口座の譲渡益など、所得税法や租税特別措置法で源泉徴収する支払いは、すべて防衛特別所得税の源泉徴収の対象になります。講演料・原稿料の10.21%も同じです。

給与・年末調整・配当のどれでも、来年1月から計算が変わらない点はそろっています。気になるのは、次に見る期限の側です。

Q. 会社で何か手続きをする必要はありますか?

A. 会社員が自分で届け出ることはありません。会社が令和9年分の源泉徴収税額表を使って天引きします。

復興特別所得税の10年延長で負担はいくら増えるのか

2038年から2047年までの10年間、旧制度ならゼロだった上乗せが2.1%残り、所得税額10万円なら計約2万1,000円です。

旧制度では復興特別所得税は2037年12月31日で終わり、2038年からは上乗せが無くなる予定でした。改正後は、復興特別所得税(1.1%)が2047年12月31日まで続き、防衛特別所得税(1%)も「当分の間」続くため、2038年〜2047年は合計2.1%、2048年以後も防衛分の1%が残ります。期限の動き方を図にすると次のとおりです。

2013年〜2026年

復興2.1%

合計2.1%

2027年〜2037年

復興1.1%+防衛1%

合計2.1%(同じ)

2038年〜2047年

復興1.1%+防衛1%

旧制度0%→2.1%

2048年以後

防衛1%(当分の間)

旧制度0%→1%

図の右側2つが、旧制度と比べて負担が増える期間です。毎年の所得税額が同じだと仮定して、2038年〜2047年の10年分を足すと次の表になります。

年間の所得税額(仮定) 復興1.1%の延長分(10年) 防衛1%(2038〜2047年の10年) 10年の合計 2048年以後(1年あたり)
5万円 5,500円 5,000円 10,500円 500円
10万円 11,000円 10,000円 21,000円 1,000円
20万円 22,000円 20,000円 42,000円 2,000円
50万円 55,000円 50,000円 105,000円 5,000円

表の金額は所得税額に率を掛けたもので、課税所得に掛けたものではありません。上乗せの対象は所得税額なので、課税所得に率を掛けて計算すると負担を大きく見積もることになります。

防衛特別所得税の「当分の間」はいつまでか

終わりの年は決まっていません。大綱と国税庁の資料は「令和9年以後の当分の間」「令和9年1月1日以後」とだけ書いています。

復興特別所得税には2047年末という期限がありますが、防衛特別所得税は期限のない付加税として作られました。やめるには、改めて法律を変える必要があります。

(編集部分析)期限の無い税は、一度始まると見直しの時期が来ないまま続きやすいと考えられます。防衛力を自前で支える財源を持つこと自体は主権国家として筋が通りますが、国民の負担を求める以上、いつ・どんな条件で見直すのかを政府が示さなければ、納税者は判断の材料を持てません。「当分の間」をどう区切るかは、今後の国会で問われるべき論点です。

防衛特別所得税はどう決まったのか

防衛費の財源を所得税・法人税・たばこ税の3税で賄う方針のうち、所得税だけ先送りされ、2026年3月に法律が成立しました。

共同通信によると、政府は2023〜2027年度の5年間に必要な防衛費を43兆円程度と定め、財源を所得税・法人税・たばこ税の3税で確保する方針でした。2025年度の税制改正では、他党の反発が大きかった所得税だけ実施時期の明記が先送りされました。2025年12月、自民党が所得税に1%を付加して2千億円強を確保する案を検討していると報じられ、同月19日の報道で2027年1月実施が決まったと伝えられました。

その後、2026年2月20日に法案が国会に提出され、3月31日に成立・公布されています(参議院の議案情報)。

法人税とたばこ税はどうなっているのか

法人税は2026年4月から税額の上乗せが始まり、たばこ税は加熱式の見直しに続き2027年4月から1本0.5円ずつ3回上がります。

中小機構のJ-Net21の解説によると、計算式は「(基準法人税額−500万円)×4%」で、税額がゼロでも原則として申告書の提出が要ります。所得税の付加税である防衛特別所得税とは、納める人も計算のしかたも別の税です。

秋田魁新報(2026年3月30日)によると、たばこ税は加熱式たばこの税率を2026年4月と10月の2回に分けて上げて紙巻きと同じ水準にそろえ、2027年4月からは全体の税率を計3回、1本あたり50銭ずつ引き上げます。増税額はたばこ税が2120億円、所得税が2560億円、法人税が平年度ベースで8690億円と伝えています。

防衛費が膨らむ見込みの中で、法人税にさらに上乗せする案が政権内で出ていると共同通信が10月17日に報じた件は、「【10/17】防衛財源に法人税の追加増税案|防衛費は年10兆円超へ、今の4%との違い」で整理しています。

防衛特別所得税に反発が出るのはなぜか

復興のための税率を下げて同じ分を防衛に回す形のため、「復興財源の流用」だと受け止める声があるからです。

夕刊紙の日刊ゲンダイは2026年7月30日の記事で、復興特別所得税から1%分を捻出した形を「流用」だと批判し、SNSで「防衛費への流用ヤメロ!」という声が再び広がっていると報じました。また共同通信は2025年12月の段階で、課税期間の延長により「長期で見れば納税者の税負担は増える」と伝えていました。政府は、税率を下げても期間を延ばすことで、東日本大震災からの復興に要る財源は引き続き確保すると説明しています(財務省の大綱の注記)。

(編集部分析)防衛力の強化は、周辺の安全保障環境を考えれば先送りできない課題で、他国任せにせず自国で守る力を持つ方向は評価できます。一方で、その財源をまず国民の所得税に求め、しかも復興の期限を延ばして帳尻を合わせる設計は、「誰が負担し、誰の説明責任なのか」が見えにくくなります。歳出の見直しや経済成長による税収増で賄う道をどこまで尽くしたのか、財務当局の説明は十分とは言えません。来年1月の手取りが変わらないことを強調するだけでなく、2038年以後の負担を正面から示すことが、国民の理解を得る前提だと考えられます。

Q. 復興の予算が減るのですか?

A. 政府は減らないと説明しています。毎年の税率は下がりますが、課税期間を10年延ばして総額を確保する設計です。

会社員・個人事業主・投資家がいまやることは何か

会社員は手続き不要で、確定申告をする人と源泉徴収をする事業者は令和9年分の様式と税額表を使うことが要点です。

会社員がいま確かめること

来年1月と今年12月の給与明細を並べ、所得税の欄の差が控除や昇給の変化で説明できるかを見るだけで足ります。

防衛特別所得税だけで天引き額が増えることはないため、差が大きいときは扶養の届け出や控除の変更が反映されているかを会社に確かめるのが先です。

個人事業主と源泉徴収をする事業者がいまやること

2027年1月以後の支払いは令和9年分の源泉徴収税額表を使い、合計額を1枚の納付書で納めます。

国税庁のQ&Aは、手元の納付書の区分欄に「源泉所得税及び復興特別所得税」と印字されている場合の扱いも説明しています。人を雇っている事業者や、報酬を払う事業者は、年明けの最初の支払いの前に国税庁のQ&Aを1度読んでおくと安心です。

投資をしている人がいまやること

特定口座の配当や譲渡益は証券会社が合計の率で源泉徴収するので、自分で計算し直す必要はありません。

国税の合計率は15.315%のまま変わらないため、2027年1月以後の配当の手取りも防衛特別所得税だけを理由には減りません。

いずれの立場でも、来年1月の変化は小さく、論点は2038年以後の負担と「当分の間」の扱いです。最後によく出る疑問をまとめます。

防衛特別所得税のよくある質問

本文で触れきれなかった細かい疑問に、一次資料の範囲で答えます。

Q. 12月分の給与を2027年1月に払う会社は、どちらの扱いですか?

A. 支給日で決まるので、2027年1月に支給する給与は防衛特別所得税の対象です。支給日が2026年中なら従来の復興2.1%です(国税庁Q&A)。

Q. 役員賞与や、さかのぼって払う昇給の差額はどう判定しますか?

A. 原則は支給日です。利益で額が決まる役員賞与は株主総会などの決議の日、給与規程の遡及改訂の差額は支給日(定めが無ければ改訂の効力が生じた日)で判定します(国税庁Q&A)。

Q. 住民税にも防衛特別所得税は掛かりますか?

A. 掛かりません。法律が定めたのは所得税額に対する付加税で、住民税への上乗せは要旨に含まれていません。

Q. 住宅ローン控除で所得税がゼロになった人も払いますか?

A. 払いません。基準所得税額は住宅ローン控除などを差し引いた後の額なので、それがゼロなら防衛特別所得税もゼロです。

Q. 2026年分の年末調整で戻る還付金を2027年1月の給与で精算するときは?

A. 精算のしかたは国税庁Q&AのQ11に納付書の書き方つきで載っています。会社の担当者が確認する事項で、従業員の手続きは要りません。

制度の中身や様式は、下の一次資料で確かめられます。

参考情報

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