【10/29】安城市の水道管工事で土砂崩れ2人死亡|救助の作業員も犠牲

2026年10月29日午後、愛知県安城市横山町の水道管関係の工事現場で土砂が崩れ、作業員3人が埋まりました。最初に埋まった51歳の男性と、助けに入った25歳の男性の2人が亡くなり、もう1人は自力で抜け出しています。地元消防によると、2人は地上から3mほど下に埋もれていました。NHKは30日朝、亡くなった2人は親子だったと伝えています。

警察と消防が事故の経緯を調べています。この記事では、報道で分かっている事実を時系列で整理し、溝を掘る工事の土砂崩れがなぜ人の命を奪うのか、法律では何が決まっているのかを、法令と研究機関の一次資料をもとにまとめます。

この記事でわかること

  • 何が起きたか:安城市横山町の工事現場で土砂が2度流れ込み、作業員3人のうち2人が亡くなりました。
  • なぜ被害が広がったか:最初に埋まった人を助けに入った2人に、再び土砂が崩れてきたと報じられています。
  • 何が決まっているか:崩れるおそれのある掘削では土止め支保工などの措置が法律で義務づけられ、深さ2m以上なら作業主任者も要ります。
目次

安城市の水道管工事で何が起きた?

10月29日午後0時50分ごろ、安城市横山町の工事現場に土砂が流れ込み、作業員3人が埋まって2人が死亡しました。

中京テレビによると、現場は水道管を敷設する工事の現場で、作業員から「土砂に生き埋めになった」という通報がありました。CBCテレビは、通報の内容を「水道工事中に土砂が崩れてきて2人が埋もれている」と伝えています。現場は道路上でした。

報道で分かっている要点を表にまとめます。

項目 内容
日時 2026年10月29日 午後0時50分ごろ(通報)
場所 愛知県安城市横山町大山田中の道路上の工事現場(JR三河安城駅の南東約1.3km、東海道新幹線の線路沿いの住宅街)
工事の内容 道路の下の水道管と下水管を新築住宅の敷地につなげる工事(NHK)。安城市によると、届け出は民間会社から出ていた
埋もれた深さ 地上から3mほど下(地元消防の説明・共同通信)
埋まった人 作業員3人(1人は自力で脱出)
亡くなった人 51歳の男性作業員、25歳の男性作業員(一部の配信は23歳)
調べている機関 警察と消防(事故の経緯と原因)

亡くなった若い男性の年齢は、東海テレビ・中京テレビ・TBSなど多くの媒体が25歳と伝えています。一方、CBCテレビが10月30日未明に配信した記事の1本は「男性(23)」と書いていて、同じ局の29日の速報(25歳)とも食い違っています。この記事では多くの媒体が伝えている25歳と書き、警察の発表で確定したら直します。NHKは30日朝の報道で2人を「作業中の親子」と伝えていますが、ほかの媒体はまだ親子関係に触れていません。亡くなった2人の名前は、警察が身元を確認している段階のため載せません。

2人はどのような経緯で亡くなった?

最初に埋まった51歳の男性を同僚2人が助けに入ったところへ、再び土砂が流れ込み、3人が埋まりました。

東海テレビによると、土砂に埋もれた51歳の男性を別の作業員2人が見つけ、助けに入ったところへ2度目の土砂が流れ込みました。1人は自力で脱出しましたが、残る2人が取り残されました。報道をもとに時系列で並べます。

時刻(10月29日) 起きたこと
午後0時50分ごろ 工事現場に土砂が流れ込み、51歳の男性が埋まる。助けに入った2人にも再び土砂が流れ込む。作業員から119番通報
その後 1人が自力で脱出。25歳の男性が消防に救助され病院へ運ばれる
通報から約1時間〜1時間半後 25歳の男性の死亡を確認(FNNは約1時間後、中京テレビは約1時間半後と報道)
午後9時半ごろ 事故から約8時間半後、51歳の男性が救助されるが、その場で死亡を確認

51歳の男性の救助には8時間以上かかりました。崩れた土砂を取り除く作業そのものが、周りの地面をさらに崩すおそれがあるため、救助は慎重に進めるしかありません。夕方の時点では各社が「1人死亡、1人の救助活動続く」と伝えていて、2人目の死亡が分かったのは夜になってからでした。

なぜ助けに入った作業員まで埋まった?

最初の崩落のあと、助けに入った2人が再び流れ込んだ土砂に巻き込まれました。2度目が崩れた原因はまだ分かっていません。

今回の事故で2度目の土砂が崩れた理由は、警察がまだ明らかにしていません。ここからは、今回の原因とは切り離して、溝の崩壊による死亡事故を分析した研究の知見を紹介します。

旧労働省産業安全研究所(現在の労働安全衛生総合研究所)が1995年にまとめた報告書は、1986〜1988年に起きた溝の崩壊による死亡事故90件を調べています。報告書によると、崩れた土は「かたまり」のまま落ちてきて、形を保ったまま作業員に当たります。溝の中は狭いため、作業員は逃げ場がなく、土のかたまりと反対側の壁の間に挟まれてしまいます。

同じ報告書は、亡くなった人の約6割は全身が埋まっていなかったとしています。体の一部しか埋まっていなくても、胸や腹に土の圧力がかかると呼吸ができなくなるためです。「顔が出ているから大丈夫」とは言えず、外から引っ張り出そうとして溝に入れば、助ける側も同じ危険にさらされます。

報告書は、溝の壁の崩れ方を4つの型に分けています。壁の表面がすべり落ちる型、壁が手前に倒れてくる型、壁の一部がすべったり回転したりして落ちる型、土のかたまりが落ちてくる型です。どの型でも、崩れた土は狭い溝の底にいる人に向かってきます。(編集部の見方)報告書の分類を踏まえると、1度崩れた壁がどの型で再び崩れるかを外から見ただけで判断するのは難しく、見た目で「もう大丈夫」と判断できるものではないと考えられます。

(編集部分析)今回は、最初に埋まった同僚を見つけた2人がすぐに助けに入ったと報じられています。目の前で仲間が埋まれば、体が先に動くのは自然なことです。だからこそ、助けに入る前に崩れた壁を押さえる手段が現場にあったのかどうかが、原因を調べるうえで大きな点になります。

現場はどんな工事だった?

道路の下を通る水道管と下水管を、新築住宅の敷地へつなげる工事で、2人は地上から約3m下で埋まりました。

中京テレビや東海テレビは当初「水道管を敷設する工事」「水道管の工事現場」と伝えていました。その後NHKは、道路の下の水道管と下水管を新築住宅の敷地につなげる工事だったと報じています。CBCテレビによると、安城市は「個人の敷地に下水道をつなげる工事の届け出が民間会社から出ていた」と説明しています。報道の内容からは、道路の下の管から住宅の敷地まで管を引き込むための掘削だったとみられます(編集部の推測で、詳しい工事内容は公表されていません)。

共同通信によると、地元消防は2人が地上から3mほど下に埋もれたと説明しています。大人の背丈を大きく超える深さです。一方で、工事をしていた会社の名前、溝の幅、土止め(溝の壁が崩れないように板や鋼材で押さえる仮の設備)が置かれていたかどうかは、30日朝の時点では報じられていません。この記事では、分かっていないことを推測で埋めずに、分かった時点で書き足します。

家と道路の下の管をつなぐ工事は、新しい家が建つたびに住宅地で行われます。次の章では、こうした上下水道工事の溝で起きる崩壊がどれほど危ないかを、研究のデータで見ます。

溝を掘る工事の土砂崩れはどれくらい危ない?

1995年の研究報告では、土砂崩壊の死亡事故は上下水道工事などの溝と、切り取った斜面で、ほぼ半数ずつでした。

前述の産業安全研究所の報告書は、土砂崩壊による労働災害の死亡者が、報告書の当時(1990年代前半)で毎年60人前後だったとしています。そのうちの約半分が、上下水道工事などで掘った溝が崩れたものです。報告書が調べた90件の特徴をまとめます。

分析の項目 報告書の結果(1986〜1988年の溝崩壊の死亡事故90件)
死因 窒息31%、圧迫21%、骨折17%、内臓の破裂13%
埋まり方 約6割は全身が埋まっていなかった。全身が埋まったのは31%
溝の深さ 小規模な溝の崩壊の事故のうち、約8割が深さ3m未満、23%が2m未満
崩れた土 85%が、以前に掘って埋め戻した土にかかわっていた
作業の内容 約3割が、土止めを取り付けたり外したりしている最中に亡くなった

深さの数字は、報告書が「小規模な溝の崩壊」に分けた事故の中での割合で、90件すべての割合ではありません。それでも、大人の背丈より浅い溝でも死亡事故が起きていることが、この数字から分かります。

道路の下は、過去に何度も掘って埋め戻されていることが多く、締まった地山より崩れやすい場合があります。報告書が85%と示したのはこの点です。上下水道やガスの管が通る道路を掘る工事は、まさにこの条件に当てはまります。なお、報告書は30年以上前のデータで、今の発生件数とは異なります。

溝を掘る工事で法律は何を義務づけている?

労働安全衛生規則は、崩れるおそれがあれば土止め支保工などで防ぐことを求め、深さ2m以上なら作業主任者の選任も義務づけています。

地面を掘る作業の安全については、労働安全衛生規則の第355条から細かく決められています。主な条文を表にまとめます。

条文 決まっていること
第355条(作業箇所等の調査) 崩壊などのおそれがあるときは、掘る前に地山の形状・地質・き裂・湧き水などを調べ、掘る時期と順序を決めてその通りに作業する
第356条(掘削面のこう配) 機械を使わない手掘りでは、地山の種類と高さに応じて壁の傾きを制限する(岩盤・堅い粘土以外の地山は、高さ2m以上5m未満で75度以下、5m以上で60度以下)
第358条(点検) 点検者を決め、毎日の作業開始前と大雨・中震以上の地震の後に、き裂や湧き水の変化を点検させる
第359条・第360条(作業主任者) 掘削面の高さが2m以上の地山の掘削では、技能講習を修了した地山の掘削作業主任者を選び、作業の方法を決めて直接指揮させる
第361条(崩壊等による危険の防止) 崩壊や落石で危険を及ぼすおそれがあるときは、あらかじめ土止め支保工を設ける、防護網を張る、立ち入りを禁止するなどの措置をとる

大事なのは、第361条には深さの条件がないことです。作業主任者の義務は深さ2m以上からですが、崩れるおそれがあれば、浅い溝でも土止めなどの措置が要ります。土止め支保工の切りばりや腹起こしを取り付けたり外したりする作業には、別に土止め支保工作業主任者を選ぶ決まりもあります(第374条)。

土止め支保工は、溝の両側の壁に矢板(やいた)と呼ばれる板や鋼材を当て、それを横向きの腹起こし(はらおこし)で受け、両側の腹起こしを突っ張り棒の切りばり(きりばり)でつなぐ仕組みです。壁が内側に倒れようとする力を、反対側の壁で受け止めます。前述の報告書では、亡くなった人の約3割がこの土止めを取り付けたり外したりしている最中でした。壁を押さえる設備を作る作業そのものが、溝の中に人が入る時間をつくってしまうためです。報告書は、作業員が溝に入らずに土止めを取り付け・取り外しできる方法を作る必要があると結論づけています。

今回の現場について、消防は2人が地上から約3m下で埋まったと説明しています。ただし、埋まった位置と、法令でいう「掘削面の高さ」が同じとは限らず、掘削面の高さはまだ公表されていません。掘削面の高さが2m以上であれば、作業主任者の選任が必要になります。作業主任者がいたか、土止めが置かれていたかもまだ分かっていません。決まりが守られていたかどうかは、こうした事実が明らかになってから判断されることになります。

警察は何を調べている?今後の焦点は?

警察と消防が経緯と原因を調べています。編集部が見る確認点は、溝の深さ、土止めの有無、崩落後の対応の3つです。

各社の報道によると、警察と消防は事故の経緯と原因を詳しく調べています。警察が調べる項目を公表しているわけではありませんが、報道と法令を突き合わせると、次の点が明らかになれば、何が起きたのかが見えてきます(編集部の整理)。

  • 溝の深さと土の状態:消防は約3m下で埋まったと説明しています。掘削面の高さが2m以上なら作業主任者の選任が必要です。道路の埋め戻し土だったのか、雨の影響があったのかも崩れやすさに関わります。
  • 土止めの有無:溝の壁を押さえる設備が置かれていたか、取り付けや取り外しの途中だったかは、崩れた理由に直結します。
  • 1度目の崩落の後の対応:助けに入る前に、壁を押さえる・人を入れないといった手を打てる状況だったかどうかです。

労働災害で人が亡くなった場合、警察とは別に、労働基準監督署が安全衛生の決まりが守られていたかを調べることがあります。工事を届け出ていた民間会社の説明や、安城市の追加の発表が出れば、この記事に書き足します。

同じ10月29日には、兵庫県加古川市でも下水管の工事現場で男性作業員が下半身に土砂をかぶった状態で見つかり、病院で死亡が確認されたと神戸新聞や朝日放送が伝えています。同じ日に、管をつなぐ工事で2つの県の作業員が土砂に埋まって亡くなったことになります。

安城市の工事事故のよくある質問

浅い溝でも崩れるおそれがあれば対策が要り、埋まった人を見つけても溝に入らず119番するのが先です。

Q. 深さ2m未満の溝なら、安全対策は要らないのですか?

A. 要ります。作業主任者の選任は深さ2m以上が対象ですが、労働安全衛生規則第361条は深さに関係なく、崩れるおそれがあれば土止め支保工などで防ぐよう求めています。研究でも、小規模な溝の死亡事故の23%は2m未満の溝で起きていました。

Q. 工事現場で人が土砂に埋まっているのを見つけたら、どうすればよいですか?

A. 溝の中に入らず、すぐに119番通報してください。一度崩れた溝はまた崩れるおそれがあり、今回の事故でも助けに入った2人が2度目の土砂に巻き込まれています。救助は消防に任せるのが基本です。(編集部の見方)

Q. 工事をしていた会社の名前は分かっていますか?

A. 30日朝の時点では報じられていません。安城市は「民間会社から工事の届け出が出ていた」と説明していますが、会社名は明らかにしていません。

溝を掘る工事に関わる人は、今日の作業の前に3つを確かめてください。溝の深さが2m以上なら作業主任者がいるか、崩れるおそれのある壁に土止めがあるか、人が埋まったときに溝に入らず通報する手順を全員が知っているか、です。壁にひびが入る、水がしみ出す、土がこぼれ落ちるなど崩れそうな兆しや、土止めの不備に気づいたら、溝から出て作業を止め、現場の責任者に伝えてから安全を確かめ直してください。条文の全文は下の参考情報にある法令検索で読めます。

参考情報

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