【10/31】第2青函トンネル構想とは?首相が具体化を指示、建設費1兆円規模で計画は未定

北海道と本州を結ぶ青函トンネルと並ぶ「第2青函トンネル」の構想が、国土交通省内で浮上していることが10月31日に分かりました。共同通信によると、井林辰憲国土交通相が推進を求め、高市早苗首相も政策の具体化を指示しています。

ただし、建設費は1兆円規模と見込まれ、今のところ国の計画や事業には入っていません。この記事では、構想の中身、誰が求めてきたのか、今の青函トンネルが抱える問題、費用と工期、自民党の議員連盟の動き、これからの課題を、報道と公開資料で確認できた事実をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 何が分かったか:井林国交相が推進を求め、首相が具体化を指示しましたが、国の計画にはまだ入っていません。
  • どんなトンネルか:民間団体JAPICの案は全長約31キロで、上が自動運転車専用の道路、下が貨物列車の線路の2層構造です。
  • なぜ求められるか:今の青函トンネルは新幹線と貨物列車が線路を共用し、北海道新幹線は通常時速160キロに抑えられています。
目次

第2青函トンネル構想とは?首相が国交相に具体化を指示

第2青函トンネル構想は、今の青函トンネルの近くに道路と貨物鉄道のトンネルを新しく掘る計画で、首相が具体化を指示しました。

共同通信によると、構想が国土交通省内で浮上していることが10月31日に分かりました。井林辰憲国交相は、9月の内閣改造の前に提出した役職希望アンケートで、この構想を推進したいと明記していました。高市首相も政策の具体化を指示しています。新潟日報によると、構想は現時点で国の計画や事業には含まれていません。

現時点で決まっていることと、決まっていないことを分けると次のとおりです。

項目 いまの状態 出所
首相の指示 政策の具体化を指示した 共同通信
国交相の姿勢 役職希望アンケートで推進を明記 共同通信
国の計画・事業 現時点で含まれていない 新潟日報
建設費 1兆円規模の見込み(何を含む額かは報道では示されていない) 共同通信
着工・完成の時期 決まっていない 報道に記載なし

表のとおり、今回分かったのは政府の中で検討の号令がかかったことで、予算や着工が決まったわけではありません。

誰が言い出した?JAPICの提言と井林国交相のアンケート

構想を提唱してきたのは、民間の一般社団法人「日本プロジェクト産業協議会」(JAPIC)などで、経済界が長く求めてきました。

共同通信によると、第2青函構想はJAPICなどが提唱し、物流機能の強化を期待する経済界などが求めてきたものです。今回、所管大臣の井林国交相が就任前から推進を望んでいたことが分かり、首相の指示とあわせて、民間の構想が政府の検討の場に乗った形です。

JAPICとはどんな団体?

JAPICは大手ゼネコンやデベロッパー、総合商社などでつくる団体で、国土づくりの大型事業を政策として提言しています。

東洋経済によると、JAPICは2017年に「青函マルチトンネル構想」として第2青函の案を公表し、地元の経済団体と内容を練り直して、2020年11月に「津軽海峡トンネルプロジェクト」として発表しました。自動運転ラボによると、JAPICは2020年12月、「今後推進すべきインフラプロジェクト」という提言を当時の赤羽一嘉国交相に手渡しています。

どんなトンネル?全長約31キロ・上は自動運転の道路、下は貨物鉄道

JAPICの案は、直径15メートル・全長約31キロの円形トンネルを上下2層に分け、道路と貨物鉄道を通すものです。

東洋経済によると、トンネルの上の層は片側1車線の自動運転専用道路、下の層は単線の貨物鉄道と、避難通路を兼ねた緊急車両用の通路です。工法はシールド工法を使い、断面を小さく、延長を短くすることで費用を抑えるとしています。主な仕様を表にまとめました。

項目 今の青函トンネル 第2青函(JAPIC案)
通るもの 鉄道だけ(新幹線と貨物列車が共用) 自動運転車の道路と貨物鉄道
長さ — 約31キロ
形 — 直径15メートルの円形・上下2層
新幹線の速度 通常時速160キロに制限 貨物が移れば高速化できるとJAPICなどは主張
開通 1988年(開通から38年) 未定

表のとおり、第2青函は今のトンネルの代わりではなく、貨物と車を引き受けて、今のトンネルを新幹線に空ける役割が想定されています。

自動運転に対応していない車はどうする?

自動運転に対応していない車は、自動運転のパレット台車に載せて運ぶ方式を併用することが想定されています。

自動運転ラボによると、対応していない車は追加料金を払い、パレット台車に積んで運ぶ仕組みが考えられています。車の大きさや重さによる制限があるかどうかは、公開されている資料では確認できていません。東洋経済も、トラックをパレット台車に載せて運ぶ想定だと伝えています。道路を自動運転車に限るのは、長い海底トンネルの中での多重衝突を防ぎ、安全を保つためだと説明されています。

なぜ必要と言われる?新幹線と貨物列車が線路を共用する問題

今の青函トンネルは新幹線と貨物列車が同じ線路を使うため、北海道新幹線は通常、時速160キロに抑えられています。

共同通信によると、JAPICや議員連盟は、貨物が第2青函に移り、道路も整備されれば、新幹線の高速化と物流の充実につながると強調しています。開通から38年がたつ青函トンネルの老朽化対策や、もしもの時の代わりの道の確保にもなるとしています。構想が描く役割分担を図にしました。

構想が描く2本のトンネルの役割分担

今の青函トンネル
新幹線と貨物列車が共用
→ 貨物が移れば新幹線を中心に使える
第2青函トンネル(構想)
上:自動運転車の道路
下:貨物列車の線路と避難通路
期待される効果
新幹線の高速化・物流の充実・老朽化への備えと代わりの道

図のとおり、構想の狙いは道路を通すことだけでなく、2本で鉄道と物流の役割を分けることにあります。

(編集部分析)北海道は国の食料を支える一大産地で、本州との物流が1本の鉄道トンネルと船に頼っている現状は、災害や有事のときの弱点になり得ます。代わりの道を持つことは、国土の守りと食料の安定供給の観点から評価できます。一方で、効果の多くは推進する側の説明で、新幹線がどこまで速くなるのか、貨物の量がどう変わるのかは、国が自ら数字で示す必要があります。

費用と工期は?建設費1兆円規模・工期は約15年の見込み

建設費は1兆円規模と見込まれ、JAPICは調査から完成まで約15年かかるとしています。実現性は不透明です。

共同通信は、1兆円規模と見込まれる建設費などの課題が多く、実現性は不透明だと伝えています。この1兆円がトンネル本体だけの額か、前後の道路や線路の整備まで含む額かは、報道では示されていません。自動運転ラボによると、JAPICの提言は調査・設計・施工やアクセス道の整備を含めて約15年の計画です。国の計画に入っていない今の段階から数えれば、開通はさらに先になります。

完成までに何が決まらないといけない?

国の計画に位置づけ、事業の主体と費用の分担、ルートと工法を決める必要があり、どれもまだ決まっていません。

新潟日報によると、構想は現時点で国の計画や事業に含まれていません。首相の「具体化の指示」は、検討を始める段階の号令です。道路と鉄道を1本のトンネルにまとめる案のため、道路の整備を担う側と鉄道を担う側のどちらが、どの割合で費用を出すのかも決めなければなりません。

1兆円と7,200億円、どちらが正しい?

2023年の報道では約7,200億円、2026年10月31日の報道では1兆円規模とされ、どちらも構想段階の見込みです。

ビジネスジャーナルは2023年7月、北海道の建設業の団体(道建協)の副会長が、建設費用を約7,200億円と説明したと伝えています。今回の共同通信は1兆円規模と見込んでいます。2つの数字がどんな条件で、どこまでの工事を対象にした試算なのかは、どちらの報道でも確認できていません。国が自ら試算した数字はまだなく、正式な額は国の調査を待つことになります。

地元や経済界はどう動いてきた?北海道と青森で推進の会

北海道経済連合会が自らのプロジェクトとして推進し、トンネルの出入り口になる北海道福島町や青森県今別町にも推進の会ができています。

ビジネスジャーナルによると、北海道経済連合会は構想を自らのプロジェクトとして推進する立場で、道建協も連携しています。2023年7月には、北海道福島町の「第2青函トンネル構想を実現する会」が総会を開いて約40人が出席し、青森県今別町も推進会議の設立総会を開く予定だと伝えられていました。

推進する側も認める課題は?

推進する地元自身が、費用が大きすぎるため国が主体になる必要があると認め、札幌延伸の優先で機運が高まりにくいとも述べていました。

同じ記事によると、福島町の担当者は、工事費が莫大なため「国が主体となり実施してもらう必要がある」と指摘しました。また、北海道新幹線の札幌延伸が最優先となっているため、道内全体では機運が高まりにくいとも述べています。道建協の副会長も、行政を含む関係機関の理解と連携が必要だとの見方を示していました。民間と地元の熱意だけでは進められない事業だということは、推進する側も早くから認めていたことになります。

自民党の議員連盟はどう動いた?2025年12月に発足し、2026年7月に決議

自民党の推進議員連盟は2025年12月9日に設立総会を開き、2026年7月には建設推進を求める決議を党の政調会長に出しました。

北海道新聞によると、議連は北海道選出の中村裕之衆院議員や向山淳衆院議員らが発起人になって設立されました。2026年7月9日には、建設推進を求める決議文を小林鷹之政調会長に提出し、北海道新幹線の高速化に意義があると訴えています。これまでの流れを表にしました。

時期 出来事 出所
2017年 JAPICが「青函マルチトンネル構想」を公表 東洋経済
2020年11月 「津軽海峡トンネルプロジェクト」として発表 東洋経済
2020年12月 JAPICが赤羽国交相(当時)に提言を手渡す 自動運転ラボ
2023年7月 福島町の「実現する会」が総会・道建協副会長が約7,200億円と説明 ビジネスジャーナル
2025年12月9日 自民党の推進議員連盟が設立総会 北海道新聞
2026年7月9日 議連が建設推進の決議を小林政調会長に提出 北海道新聞
2026年10月31日 国交省内で構想が浮上・首相が具体化を指示と判明 共同通信

表のとおり、民間の提言から9年近くをかけて、党の議連、そして首相の指示へと段階が上がってきました。

これからの課題は?財源と、国が自ら示すべき数字

最大の課題は1兆円規模の財源で、国が効果と費用を自らの数字で示せるかどうかが、実現の分かれ目になります。

今回の情報は、国交相の就任前のアンケートと首相の指示が報道で明らかになった段階で、国交省が正式に発表したものではありません。費用、効果、事業の主体、工期のどれも、これから国の検討で詰めることになります。10月31日時点で、構想に慎重な立場からの具体的な発言は報じられていません。

(編集部分析)大型の公共事業には「無駄遣い」の批判がつきものですが、緊縮の物差しだけで国の骨格となる道を測れば、国土の守りは細っていきます。北海道と本州をつなぐ道を複数持つことは、平時の物流だけでなく、災害や有事に国が自らの力で国民の暮らしを守るための備えと評価できます。だからこそ、民間の推進団体の試算に頼るのではなく、国が自ら費用と効果を示し、国民に説明したうえで判断するのが筋だと考えます。

第2青函トンネルのよくある質問

Q. JAPICの案のほかにも案はありますか?

A. ビジネスジャーナルによると、2018年には民間の有志が道路だけのトンネル案を示していました。JAPICは2020年に、道路のトンネルに単線の線路を加えた今の案にまとめています。国がどの案を土台に検討するかは示されていません。

Q. 通行料はいくらになりますか?

A. 決まっていません。自動運転に対応していない車に追加料金がかかる仕組みは示されていますが、通行料の額や、道路を有料にするかどうかは、公開されている資料にも報道にも出ていません。

Q. 北海道新幹線の札幌延伸と関係はありますか?

A. 直接の事業としては別です。ただ、構想を求める側は、貨物が第2青函に移れば今の青函トンネルで新幹線を速く走らせられると説明しており、北海道新幹線の使い勝手に関わる構想として位置づけています。

今後は、国交省がこの構想を正式な調査や計画にどう位置づけるかが焦点です。年末の予算編成で調査費が付くかどうかを、国交省の発表と報道で確かめてください。

参考情報

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