【9/28】アジア大会の台湾タオル制止|旭日旗だけ謝罪、規定を検証

愛知・名古屋アジア大会の野球で、台湾のファンが掲げた「Taiwan」と書かれた応援タオルを会場の係員が制止し、没収したと台湾メディアが報じました。翌日の日本-台湾戦では、球場の入口に中華民国の国旗と旭日旗を並べて「上記の旗は持ち込めません」とする掲示が出されました。

大会の組織委員会は9月28日、このうち旭日旗の掲示だけを「不適切だった」として公式サイトで謝罪しました。報道で伝えられている範囲では、中華民国旗と「Taiwan」タオルの扱いについて組織委の説明は出ていません。この記事では、何が起きたのか、大会の規定には何と書いてあるのか、47年前の「名古屋決議」とどうつながるのかを、出典つきで整理します。

この記事でわかること

  • 何が起きたか:9月25日の台湾-中国戦で「Taiwan」タオルが制止・没収され、26日の日本-台湾戦では中華民国旗と旭日旗の持ち込み禁止が掲示されました。
  • 組織委の対応:9月28日に謝罪したのは旭日旗の掲示についてです。報道で見る限り、タオルと中華民国旗には触れていません。
  • 規定の中身:大会の禁止行為一覧は「政治的な主張を表示する旗など」と「参加していない国の国旗」を禁じていますが、「Taiwan」という文字そのものを名指しした規定は見当たりません。
  • 背景:台湾が「チャイニーズタイペイ」として国際大会に出る仕組みは、1979年に名古屋で開かれたIOC理事会の「名古屋決議」が出発点です。
目次

アジア大会で台湾の「Taiwan」タオルはなぜ制止されたのか

現場の係員は「大会の基準では『Taiwan』の文字は政治的な主張にあたる」と説明したと報じられています。

ただし、これは台湾メディアが伝えた現場の係員の口頭の説明です。組織委員会が「Taiwan」の表記を政治的な主張と判断する基準を公表したという報道は、9月28日夜の時点で確認できません。現場の判断なのか、大会全体の統一した運用なのかは、まだ分かっていません。

9月25日の台湾-中国戦で何があったか

野球の台湾-中国戦の試合中、台湾の観客が「Taiwan」と書かれたタオルを掲げようとして係員に止められました。

毎日新聞によると、大会規定は政治的なメッセージを含むグッズの持ち込みを禁じており、係員はそれに沿って対応したとされます。一部の台湾ファンは「『台湾』は政治的メッセージではない」と抗議し、「チーム台湾」と声を上げました。試合は台湾が9-1で勝っています(毎日新聞、2026年9月26日)。中央社フォーカス台湾は、係員が観客に対し、騒ぎが続けば安全な大会運営に影響するとして退場の可能性を伝えたものの、最終的に退場は求められなかったと報じています(中央社フォーカス台湾、2026年9月26日)。

係員の説明と観客の反論

観客は「規則があるなら明記すべきだ」と求め、係員は「全ての状況を逐一列挙することはできない」と答えたとされます。

台湾メディアのETtoday新聞雲を紹介したTHE ANSWERによると、観客は場内にあった中国の国旗を指して「私たちに言わせれば、あれも政治的です」「どうしてあれはよくて、我々はダメなのか」と訴えました。係員は「大会運営側の基準に従えば、『Taiwan』の文字は政治的な主張であると考えられるため、協力してほしい」と伝えたと報じられています(THE ANSWER、2026年9月27日)。中国は大会の参加国なので、その国旗は禁止の対象ではありません。観客が問うたのは、参加国の国旗と、参加している台湾の名前を書いたタオルとで扱いが分かれることの理屈です。

翌26日の日本-台湾戦で出た「持ち込めません」の掲示とは

岡崎中央総合公園野球場の入口に、中華民国の国旗と旭日旗を例示して「上記の旗は持ち込めません」と書いた掲示が出されました。

中央社フォーカス台湾によると、掲示は日本語・英語・繁体字の中国語の3つの言語で書かれていました。台湾の野球ファンから不満が出たほか、SNSでは日本人の利用者からの反発も見られたと伝えています(中央社フォーカス台湾、2026年9月27日)。

タオルの件と掲示のつながりは確認されていない

タオルの制止の翌日に掲示が出たという順番は報じられていますが、両者の因果関係を組織委は説明していません。

日刊スポーツは、旭日旗禁止の掲示が出る前日に「Taiwan」タオルの没収があったと台湾の自由時報が指摘したことを伝えています(日刊スポーツ、2026年9月28日)。ただし、掲示を誰の判断で、何をきっかけに出したのかについて、組織委は「現場で誤った認識により掲示した」とだけ説明しています。

27日の台湾-中国戦では掲示が見当たらなかった

中央社フォーカス台湾は、9月27日の台湾-中国戦では同じような張り紙は見当たらなかったと報じています。

掲示が26日の試合だけの対応だったのか、撤去されたのかは、同社の記事からは分かりません。掲示の扱いが試合ごとに違った可能性があり、現場ごとの運用のばらつきをうかがわせる材料の一つです。

組織委はなぜ旭日旗の掲示だけを謝罪したのか

旭日旗は禁止対象でなく誤認だったため謝罪しましたが、台湾に関わる2つに触れなかった理由は公表されていません。

共同通信によると、組織委は9月28日、26日の日本と台湾の試合で会場の入口などに旭日旗のデザインを例示し「上記の旗は持ち込めません」とする不適切な掲示をしていたと発表し、公式サイト上で「観客の皆さまに不快な思いを抱かせる結果となったことを、深くおわび申し上げます」とのコメントを出しました(共同通信、2026年9月28日)。日刊スポーツは、組織委が旭日旗の扱いを全ての競技会場にあらためて周知徹底し、同様のことが起きないよう努めるとしていると伝えています(日刊スポーツ、2026年9月28日)。

同じ掲示に並んでいた中華民国旗と、前日の「Taiwan」タオルについて、組織委がどう説明したかは、共同通信・日刊スポーツの記事には出てきません。3つの扱いを、報道と公式資料で確認できた範囲で並べると次のとおりです。

対象 現場で起きたこと 関係しうる公式の規定 組織委の説明(9月28日時点)
旭日旗 26日の日本-台湾戦で入口に持ち込み禁止の掲示 禁止の対象ではない(組織委) 「現場の誤った認識」として謝罪
中華民国の国旗 同じ掲示で持ち込み禁止と例示 「参加していない国の国旗」の禁止(22番) 報道では確認できず
「Taiwan」タオル 25日の台湾-中国戦で制止・没収 「政治的な主張を表示する旗など」の禁止(19番)を当てたとみられるが、組織委は明らかにしていない 報道では確認できず

表のとおり、組織委が公に誤りを認めたのは旭日旗だけで、台湾に関わる2つは説明のないまま残っています。

(編集部分析)旭日旗を禁止対象と誤って掲げたことを速やかに認めた点は評価できます。一方で、同じ掲示の中で台湾に関わる部分だけが説明されないままでは、「日本の旗は誤りだったが、台湾の扱いは正しかった」と受け取られかねません。台湾のファンにとっては、自分たちの名前そのものが「政治的」と扱われた形になっており、判断の根拠を示すのが開催国の組織委として筋だと考えます。

大会の禁止行為一覧には何と書いてあるか

公式の禁止行為一覧は、政治的な主張を表示する旗などと、参加していない国の国旗を禁じています。

大会公式サイトの「ご来場のみなさまへ」に掲載されている一般観客向けの「遵守行為・禁止行為一覧」では、19番で「政治的、思想的若しくは宗教的な主義、主張」などを表示したり連想させたりする旗・バナー・横断幕などの設置・着用を、22番で「参加していない国の国旗及び1m×2m以上の旗、横断幕等」の使用を禁じています(愛知・名古屋2026アジア競技大会 公式サイト「ご来場のみなさまへ」)。

「参加していない国の国旗」と中華民国旗

台湾は「チャイニーズタイペイ」として参加しているため、中華民国の国旗はこの規定の対象として扱われたとみられます。

中央社フォーカス台湾も、掲示の背景として大会の「参加していない国の国旗」の禁止規定を挙げています。台湾の選手団は大会に参加していますが、選手団は中華民国の国旗ではなく、チャイニーズタイペイ・オリンピック委員会の旗を使って出場しています。ただし、22番の規定は国旗を「使用すること」を禁じる文言で、観客による中華民国旗の持ち込みそのものについて、組織委が個別に説明したことは確認できません。

「政治的な主張」の線引きは公表されていない

「Taiwan」という地名の文字だけで政治的な主張にあたるのかは、規定の文言からは読み取れません。

日刊スポーツによると、自由時報は「『Taiwan』という文字のみが書かれたタオルや関連応援グッズについて、大会側の特別な禁止規定はない」と指摘しています。規定の19番は旗の種類を幅広く挙げていますが、何を「政治的な主張」とみなすかの例示はありません。私設の応援タオルに地名が書かれているだけで該当するのかは解釈の問題で、その解釈を組織委が示していないことが、今回の混乱の中心にあります。

47年前の「名古屋決議」とチャイニーズタイペイの関係

台湾が「チャイニーズタイペイ」名義で国際大会に出る仕組みは、1979年に名古屋で開かれたIOC理事会の決議が出発点です。

CNNによると、台湾の選手団がチャイニーズタイペイとして出場する限り、五輪へのボイコットを取りやめることで合意し、この取り決めが「名古屋決議」と呼ばれるようになりました。決議は中華民国の旗を五輪で掲げることを禁じ、代わりに白地に五輪マークなどをあしらったチャイニーズタイペイ・オリンピック委員会旗が作られました(CNN、2021年7月28日)。

台湾が受け入れたのは1981年

台湾側は当初この決議に反発しており、名義と旗の扱いを受け入れて合意したのは1981年です。

1979年の決議で即座に決まったわけではなく、2年がかりの交渉を経て、現在まで続く「チャイニーズタイペイ」の形が固まりました。今回のアジア大会でも、台湾は「チャイニーズタイペイ」として参加しています。その取り決めが生まれた名古屋で、47年後に同じ問題が表に出たことになります。

(編集部分析)国際大会で中華民国旗が使えないのは、台湾自身が受け入れてきた国際的な取り決めです。しかし、その取り決めが禁じているのは国旗や国歌であり、台湾の人々が自分たちの地名を口にしたり書いたりすることまで禁じたものではないと理解できます。取り決めの範囲を現場が広げて運用すれば、それは中国の主張に日本側が必要以上に歩み寄る結果になりかねません。

台湾側と日本国内ではどんな反応が出ているか

台湾では複数のメディアが詳しく報じ、日本では神戸市議が文部科学相に台湾の尊重を求める要望書を出しました。

タオルの件はETtoday新聞雲や自由時報など台湾の複数のメディアが報じ、THE ANSWERなど日本の媒体も転載・紹介しています。「台湾タオルなら問題ないのでは」という台湾ファンの困惑も伝えられています(THE ANSWER、2026年9月27日)。

神戸市の上畠寛弘市議が関芳弘文科相に要望書

上畠寛弘・神戸市議は、事実関係の検証と、規則の拡大解釈で台湾の応援を制限しないことなどを求めました。

中央社フォーカス台湾によると、要望書は関芳弘文部科学相に宛てたもので、①事実関係の検証、②大会規則の趣旨と適用範囲を確認し、拡大解釈で台湾の正当な応援や表現を制限しないこと、③日本で開かれる国際競技大会で全ての参加者の人格と尊厳が尊重されるよう国として必要な働きかけを行うこと、の3点を求めています。要望書は「その運用によって必要な範囲を超えて台湾の人々の尊厳やアイデンティティを傷つけることがあってはならない」と指摘しています(中央社フォーカス台湾、2026年9月28日)。

9月28日夜の時点で、文部科学省や台湾の当局が公式にどう対応したかを伝える報道は確認できていません。

台湾タオル制止から謝罪までの経緯

タオルの制止から組織委の謝罪までは4日間で、謝罪は旭日旗の分だけでした。

報道で確認できた順に並べると次のとおりです。

アジア大会・野球をめぐる旗とタオルの経緯

9月25日 台湾-中国戦(台湾9-1):「Taiwan」タオルを係員が制止・没収
9月26日 日本-台湾戦(岡崎中央総合公園野球場):入口に中華民国旗と旭日旗の持ち込み禁止の掲示
9月27日 台湾-中国戦:同様の張り紙は見当たらず(フォーカス台湾)/上畠寛弘・神戸市議が文科相に要望書
9月28日 組織委が旭日旗の掲示を「不適切」と謝罪。中華民国旗とタオルへの言及は報道では確認できず

流れを見ると、4日間で公式に動いたのは旭日旗の部分だけで、発端となったタオルの件は説明がないまま残っています。

(編集部分析)開催国の日本に問われていること

問われているのは、国際的な取り決めを守りつつ、台湾の人々の名前まで締め出さない運用ができるかどうかです。

(編集部分析)日本と台湾は、価値観を共有し、互いに親しみを持ってきた隣人です。その台湾のファンが日本の球場で、自分たちの名前を書いたタオルを取り上げられ、同じ場内には中国の国旗が掲げられていた。規定上は説明がつく部分があるとしても、受け止める側がどう感じたかは想像に難くありません。

(編集部分析)今回、中国側から何らかの要請があったという報道はありません。組織委は旭日旗について「現場の誤った認識」と説明する一方、「Taiwan」タオルの判断の経緯は説明していません。どの規定を、誰の判断で当てはめたのかが分からない以上、まず判断の経緯を検証し、その結果を公表する必要があります。友好的な隣人の表現を、根拠の示されない運用で狭めたままにするのであれば、開催国としての主体性が問われると評価できます。

(編集部分析)必要なのは感情的な非難ではなく、線引きの公表です。何が「政治的な主張」にあたり、何があたらないのかを組織委が示せば、台湾のファンも日本の観客も安心して応援できます。規則の運用を明確にすることは、日本が国際大会を主催する力量そのものを示すことにつながると考えます。

これから観戦に行く人が確認しておくこと

応援グッズを持って行くなら、公式の禁止行為一覧を事前に読み、判断に迷う物は入場時に係員に確認するのが確実です。

現時点で分かっていることを踏まえると、次の3点を押さえておくと安心です。

  • 国旗と大きさの決まり:公式の禁止行為22番は、「参加していない国の国旗」と1m×2m以上の旗・横断幕などの使用を禁じています。大きさの決まりは、どの国の旗にも当てはまります。
  • 地名や応援の言葉が入ったグッズ:「Taiwan」の表記がどう扱われるかについて、組織委の統一見解は9月28日時点で出ていません。会場で止められた場合は、どの規定にあたるのかを係員に尋ねておくと、あとで問い合わせるときの材料になります。
  • 旭日旗:組織委は持ち込み禁止の対象ではないと明言し、全会場に周知するとしています。

組織委が台湾関係の扱いについて追加の説明を出すかどうかは、大会公式サイトのお知らせで確認できます。

アジア大会の台湾タオル問題のよくある質問

本文で扱わなかった呼び方や他の大会との違いを、Q&Aで補います。

Q. 報道で「チャイニーズ・タイペイ」と「台湾」が混ざっているのはなぜですか?

A. 大会での正式な名義は「チャイニーズタイペイ」ですが、日本や台湾の報道の多くは読みやすさのために「台湾」と書いています。日刊スポーツは試合名を「日本-チャイニーズ・タイペイ」、共同通信は「日本と台湾の試合」と表記しており、指しているのは同じ試合です。

Q. 没収されたタオルは返されたのですか?

A. 9月28日夜の時点で、タオルが持ち主に返されたかどうかを伝える報道は確認できていません。日刊スポーツは自由時報の報道として「没収された」と伝えています。

Q. 「名古屋決議」はアジア大会の規則に書かれているのですか?

A. 書かれていません。名古屋決議は1979年のIOC(国際オリンピック委員会)の決議で、今大会の観客向けの禁止行為一覧には名古屋決議への言及はありません。観客の旗や応援グッズの扱いは、大会ごとの観戦ルールで決められています。

読み終えたあとに確認したいのは、組織委が「Taiwan」タオルと中華民国旗の扱いについて追加の説明を出すか、そして上畠市議の要望書を受けて文部科学省が何らかの対応を示すか、の2点です。この記事の比較表と経緯は、続報が出たときに見比べる基準として使えます。

参考情報

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