【10/11】銃殺刑の生配信「私が決める」トランプ氏 ハサン死刑囚12月執行

【10/11】銃殺刑の生配信「私が決める」トランプ氏 ハサン死刑囚12月執行

米陸軍フォートフッド基地で2009年に13人を射殺したニダル・ハサン死刑囚の銃殺刑を、国防総省が生配信する計画について、トランプ大統領は10日(現地時間)、配信するかどうかは「最終的に私が決める」と述べました。銃殺刑の執行そのものは10月5日に承認済みですが、生配信は政権内でも意見が割れたまま、大統領の判断待ちになっています。

この記事では、ハサン死刑囚の銃殺刑と生配信計画について、発表から大統領発言までの経緯、賛否の顔ぶれ、実現を左右する条件を整理し、死刑を非公開で執行する日本の制度との違いも見ていきます。

この記事でわかること

  • トランプ氏の発言:10日に「最終的に私が決める」と述べ、生配信はまだ決まっていません。
  • 執行の予定:銃殺刑は承認済みで、12月3日午後1時にフォートフッド基地で執行される予定です。
  • 日本との違い:日本は死刑を刑事施設内で非公開に執行し、国民の83.1%が制度を容認しています。
目次

銃殺刑の生配信、トランプ氏は何と言ったのか

トランプ氏は10日、生配信するかどうかは「最終的に私が決める」と述べ、配信の可否をまだ決めていないことを示しました。

共同通信によると、トランプ氏はホワイトハウスで記者団の質問に答えました。執行の承認は済んでいますが、映像を公開するかどうかは別の判断として大統領の手元に残っている形です。

10日の発言「最終的に私が決める」と抑止効果

トランプ氏は「見せるべきだ」と「見せるな」の二つの意見があると述べ、公開には抑止効果があり得るとの考えも示しました。

共同通信の報道では、トランプ氏は「見せることで、他の人が同じことをしなくなるかもしれない」とも語っています。超党派の議員から「見せ物にするべきではない」との批判が出ており、共同通信は世論の反応を見極める狙いがあるとみています。

9日の発言とヘグセス国防長官の説明の食い違い

トランプ氏は9日の時点で、生配信は国防総省が判断しているところだと述べ、決定済みとする国防総省の説明と食い違いました。

AFP通信によると、トランプ氏は9日、死刑執行は支持するとしたうえで「その件については彼らが判断しているところだ。だが、彼は処刑されることになる」と述べました。これに対し、国防総省の当局者は8日に生配信すると明らかにしており、ヘグセス国防長官も「国民が見られるように必ず公開で執行する」と発言していました。ホワイトハウスは、トランプ氏が生配信を支持しているかどうかについての質問を国防総省に回しています(AP通信)。

つまり、「処刑する」ことは大統領も国防総省も一致していますが、「映像を流す」ことは国防総省が先に打ち出し、大統領が後から判断を引き取った構図です。

ハサン死刑囚とは誰か|フォートフッド銃乱射事件

ハサン死刑囚は元陸軍少佐の精神科医で、2009年にフォートフッド基地で銃を乱射し13人を殺害、32人を負傷させました。

AP通信によると、現場は派遣前の兵士が予防接種や健康診断を受ける医療施設で、建物の中から146個の薬きょうが見つかりました。ハサン死刑囚は、兵士がアフガニスタンへ行ってイスラム教徒を殺すのを止めるために犯行に及んだと主張しましたが、軍事法廷の判事はこれを弁護理由として認めませんでした。ハサン死刑囚は自らを「寝返った」兵士だと述べていたと伝えられています。

バンス副大統領は、この事件を米国内で2001年の同時多発テロに次ぐ2番目にひどいテロ攻撃だと位置づけています(AFP通信)。軍事法廷で死刑判決を受けた後、軍法の定めにより大統領の承認を待つ状態が続いていました。

項目 内容
氏名・身分 ニダル・マリク・ハサン元陸軍少佐(精神科医)
事件 2009年、テキサス州フォートフッド陸軍基地の医療施設で銃を乱射
被害 13人死亡・32人負傷
刑 殺人罪などで死刑(軍事法廷)
執行の承認 2026年10月5日に国防総省が発表(ヘグセス長官の勧告を大統領が承認)
執行予定 12月3日(木)午後1時、フォートフッド基地で銃殺刑

表のとおり、執行の手続きは大統領の承認で最後の段階に入っており、残る論点は「公開するかどうか」に絞られています。

執行は12月3日午後1時、なぜこの日時なのか

執行は犯行と同じ場所・曜日・時刻に合わせ、12月3日木曜日の午後1時にフォートフッド基地で行う予定です。

フォートフッドは米中部時間の地域で、12月3日午後1時は日本時間で12月4日午前4時にあたります。ただし、これは執行の予定時刻で、生配信の開始時刻や配信先は発表されていません。

ロイター通信によると、ヘグセス国防長官がこの日時を説明しました。公開する理由について、長官は「こうした行為には重大な結果が伴うことを、人々が理解する必要があるからだ」と述べています。ハサン死刑囚が最後の要望を出したかとの問いには「どうでもいい。12月3日に会うことになる」と答えたと報じられています。

CNNによると、ヘグセス長官はこの方針を7日、空母エイブラハム・リンカーンの艦上で、ポッドキャスト番組のインタビューに答える形で明らかにしました。国防総省の当局者が生配信を正式に説明したのは翌8日です。

発表から大統領発言までの経緯

銃殺刑の承認から6日間で、国防総省の生配信方針、議会の批判、大統領の判断引き取りへと事態が動きました。

日付はいずれも米国の現地時間です。流れを図にまとめると次のとおりです。

10月5日 国防総省が、トランプ大統領による銃殺刑の承認を発表
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10月7日 ヘグセス長官が空母上の番組で「国民が見られるよう公開する」
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10月8日 国防総省当局者が生配信の方針を明らかに
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10月9日 与野党の議員と国連が批判/バンス氏「私は見ない」/トランプ氏「彼らが判断している」
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10月10日 トランプ氏「最終的に私が決める」

図のとおり、生配信は国防総省の主導で表に出たあと、批判が集まった段階で大統領が判断を自分の手元に引き取りました。12月3日までの約8週間、配信の可否は政治判断として残り続けます。

生配信に賛成・反対しているのは誰か

生配信を推すのはヘグセス国防長官で、反対はハサン死刑囚の処刑を支持する共和党議員を含め、与野党の双方から出ています。

主な発言者の立場を表にまとめます。

発言者 立場 主な発言(報道)
ヘグセス国防長官 推進 「人々が視聴できるよう、確実に公開する」(CNN)
トランプ大統領 判断を保留 「最終的に私が決める」(共同通信)
バンス副大統領 慎重 「本当に実現するかは分からない」「私は見ない」(AFP通信)
スコット下院議員(共和党) 反対(処刑は支持) 「米国はそこまで落ちぶれていない」(AFP通信)
ケリー上院議員(民主党) 反対(処刑は支持) 「イランやタリバンがやるようなことだ」(AFP通信)
国連人権高等弁務官事務所 反対 生配信は公開処刑と同じで「拷問の絶対的禁止に違反する」(AFP通信)

表で目を引くのは、反対する議員の多くがハサン死刑囚の処刑そのものには賛成している点です。争点は「死刑の是非」ではなく、「執行を映像で見せることの是非」にあります。

共和党内からも批判が出た理由

共和党議員も、処刑の公開は米国の品位を落とし、テロ組織や強権国家と同じに見られるとして反対しています。

AFP通信によると、共和党のオースティン・スコット下院議員は「処刑の生配信はイスラム過激派がやることだ」と述べました。民主党のマーク・ケリー上院議員は公開処刑について「これらと同列視されたいのか」と疑問を呈しています。FNNによると、議会では共和・民主双方から「野蛮な見世物だ」「ひどく不快だ」との声が出ました。カトリック信者のバンス副大統領も、信仰との関係を問われた場で、配信されても見ないと答えています。

国連とSNS各社の反応

国連は拷問禁止に反すると非難し、SNS各社は配信を受け入れるかどうかの態度をすぐには示していません。

AFP通信によると、ユーチューブ、メタ、Xはコメント要請にすぐ応じませんでした。TikTokは「人が銃撃される場面」を含む暴力描写を禁止していると回答しています。TBSによると、メタは死刑執行の生配信を明確に禁じているといい、どこで視聴できるのかは分かっていません。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、2025年にアフガニスタンで6件、イランで11件の公開処刑を確認しています(AFP通信)。

米国で死刑の公開・軍の銃殺刑は何年ぶりか

米国で最後に公開処刑が行われたのは1936年とされ、米軍の銃殺刑は1945年以来、米軍の死刑執行自体は1961年以来です。

各報道で示された「何年ぶり」の数字は、それぞれ数え方が違います。混同しないよう表に分けます。

数え方 最後の例 出典
米国の公開処刑 1936年、ケンタッキー州での絞首刑 CNN
米軍の銃殺刑 1945年、敵前逃亡の罪のエディ・スロビク AFP通信
米軍の死刑執行 1961年4月13日、陸軍のジョン・ベネット二等兵(絞首刑) AP通信

「死刑執行の生配信」は米国でも前例がありません。ロイター通信によると、過去にメディアが死刑執行をテレビ中継しようとした際は、裁判所に阻止されてきました。

生配信は本当に実現するのか

実現は確定しておらず、大統領の判断、ハサン死刑囚側の提訴、配信先の確保という3つの条件に左右されます。

1つ目は大統領の判断です。トランプ氏は「私が決める」と述べた段階で、結論を出していません。2つ目は法廷です。AP通信によると、イェール大学のユージーン・フィデル氏は、ハサン死刑囚が民間の裁判所に人身保護請求を起こせば執行が大きく遅れる可能性があり、「現政権の任期を超えるかもしれない」と指摘しました。3つ目は配信先です。国防総省は配信の方法を明らかにしておらず、主要SNSは態度を示していません。

米連邦通信委員会のブレンダン・カー委員長は、死刑執行がテレビ放送されることはないと理解しているとしつつ、今後の対応はヘグセス長官の判断に委ねる考えを示しました(CNN)。

読者が配信の有無を確かめるなら、国防総省の発表と、トランプ氏の記者団への発言の2つを追うのが確実です。

生配信の是非をめぐる疑問として、次の点もよく挙がります。

Q. 生配信をやめても銃殺刑は執行されるのですか?

A. 執行の予定は変わりません。トランプ氏は配信の可否にかかわらず「彼は処刑されることになる」と述べており(AFP通信)、迷っているのは映像の公開だけです。

次に、この問題を日本の死刑制度と並べて見ます。

日本の死刑制度との違い

日本も死刑を存置していますが、刑法で刑事施設内での絞首と定められ、執行は公開されません。

日本は83.1%が容認、執行は刑事施設内

内閣府の2024年調査では、日本の国民の83.1%が「死刑もやむを得ない」と答え、「廃止すべき」は16.5%でした。

この調査は2024年10月24日から12月1日に、全国の18歳以上3,000人を対象に郵送で行われ、有効回答は1,815人でした。選択肢が前回の3択から2択に変わったため、内閣府は前回(2019年、80.8%)との単純比較はしないとしています。法務大臣は2025年2月25日の会見で、この結果を「現行制度について国民から肯定的な結果が示された」と受け止めると述べました。

比べる点 今回の米軍の計画 日本の死刑
執行の方法 銃殺刑 絞首(刑法11条)
執行の場所 事件現場の陸軍基地 刑事施設内(刑法11条)
公開 生配信を検討中 非公開
国民の支持 配信には与野党から批判 制度の容認83.1%(2024年調査)

表のとおり、日米ともに死刑を維持している点は同じですが、「見せるかどうか」で大きく違います。

(編集部分析)見せしめ型の公開は死刑存置国の立場を弱める

重大犯罪に死刑で応えることと、その執行を映像で見せることは、切り分けて考えるべきだと編集部はみています。

(編集部分析)ハサン死刑囚の事件は13人の命を奪ったテロであり、極刑で応えるという米国の判断は主権国家の司法として尊重されるべきものです。日本でも国民の8割超が死刑制度を容認しており、凶悪犯罪に対する国民の正義感は日米で共通しています。一方で、執行を生配信する案は、処刑される側の尊厳だけでなく、刑罰の厳粛さそのものを損なう懸念があります。日本の死刑が刑事施設内で静かに執行されるのは、刑罰を見せ物にしないという考え方の表れと評価できます。

(編集部分析)もう一つの問題は、国連人権高等弁務官事務所が今回「拷問の絶対的禁止に違反する」と強い表現を使った点です。米国が公開処刑に踏み込めば、死刑を存置する国全体への国際的な圧力が強まり、その矛先が非公開で執行している日本にも向かう可能性があります。誰が得をするのかという観点で見ると、見せしめ型の公開は、死刑の抑止効果を示すよりも、死刑廃止を迫る国際機関や団体に格好の材料を与える結果になりかねません。死刑制度のあり方は、外国の演出にも国際機関の圧力にも流されず、日本の国民が自らの価値観で判断すべき事柄です。

日本の刑事司法をめぐる最近の動きとしては、再審見直し法の成立と検察抗告の扱いも合わせて押さえておくと、死刑制度の議論の土台が見えやすくなります。また、トランプ氏をめぐる直近の話題はノーベル平和賞を逃した際の発言でも整理しています。

ハサン死刑囚の銃殺刑と生配信のよくある質問

執行は日本時間12月4日午前4時の予定ですが、生配信の有無と配信先、開始時刻はいずれも未定です。

Q. 生配信があるとしたら、日本時間では何時になりますか?

A. 執行予定の米中部時間12月3日午後1時は、日本時間12月4日(金)午前4時です。ただし配信の開始時刻は発表されておらず、執行時刻と同じになるかは分かっていません。

配信の可否が決まり次第、続報として追記します。

参考情報

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