【9/12】仮放免の外国人13人が免許更新拒否で提訴|在留カード義務化の中身

【9/12】仮放免の外国人13人が免許更新拒否で提訴|在留カード義務化の中身

在留資格のない「仮放免」の状態で日本に住む外国籍の男女13人が、2026年9月11日、運転免許証の更新を拒まれたのは違法だとして埼玉県を相手取り、さいたま地裁に提訴しました。争点になっているのは、2025年10月1日に施行された改正道路交通法施行規則です。この改正で、外国籍の人が免許を更新するときは在留カードなどの提示が義務づけられ、在留カードも代わりの書類も用意できない人は窓口で受け付けてもらえなくなりました。ここでは「仮放免の人は今も免許を更新できるのか」という手続きの現在地を先に整理したうえで、提訴の中身と、規則がなぜ変わったのかを公表資料と報道で確かめます。

この記事でわかること

  • 結論から:仮放免の人は、2025年10月1日以降は原則として運転免許の更新も新規取得もできません。窓口で提示できる書類が制度上そろわないためです。
  • 提訴は2026年9月11日:埼玉県内に住む仮放免の13人が、更新に必要な適性検査と講習の実施などを求めてさいたま地裁に訴えを起こしました。
  • 変わったのは規則:2025年10月1日施行の改正道路交通法施行規則で、更新時に在留カード・特別永住者証明書・特定事項入りの住民票の写しのいずれかの提示が必要になりました。
  • 対象は仮放免だけではない:住民基本台帳法の適用を受けない人(観光などの短期滞在者、仮放免中の人、領事館職員)が広く対象です。外交官などは例外書類で手続きできます。
  • 改正の理由は2つで別物:短期滞在者がホテルなどを住所として免許を取っていた問題(住所確認の厳格化)と、外国免許からの切り替え手続きの甘さ(外免切替の厳格化)は、同じ改正に入っていますが別の話です。
  • 背景の数字:退去強制が確定した外国人は2025年末で3,369人。前年より246人(7.9%)増えました。
目次

仮放免の人は今も運転免許を更新できるのか

できません。2025年10月以降、住民基本台帳法の適用を受けない外国籍の人は、外交官などを除いて更新できません。

住民基本台帳法の適用を受ける人が更新時に示す書類

マイナ免許証、在留カード、特別永住者証明書、特定事項入り住民票の写しのいずれか1通を示します。提示がなければ更新できません。

愛知県警察は、対象になる手続きを「取得時」「記載事項変更時」「更新時」と示したうえで、「これら書類の提示がない場合、運転免許証の更新等ができません」と明記しています。警視庁も同じ改正について、申請・更新・記載事項変更・外免切替のそれぞれで書類の提示が要ると案内しています。仮放免の人は在留資格がないため在留カードを持てず、住民票にも記載されないので、この4種類のどれも用意できません。住民基本台帳法の適用を受けない人向けの代わりの書類はありますが、用意できるのは外交官や領事館職員など限られた立場の人です。

立場 更新時に提示するもの 手続きの可否
日本国籍の人 従来どおり(免許証・通知はがき等) 変更なし
住民基本台帳法の適用を受ける外国籍の人(中長期在留者・特別永住者など) マイナ免許証/在留カード/特別永住者証明書/特定事項入り住民票の写しのいずれか1通 提示できれば可
住民基本台帳法の適用を受けない外国籍の人(短期滞在者・仮放免中の人・領事館職員など) 外務省発行の身分証明書または権限のある機関が発行する身分証明書+公の機関が発行した住所を確かめるに足りる書類 外交官・領事館職員など限られた場合を除き不可

表の3段目が今回の訴訟の当事者にあたる区分です。書類の名前だけを見ると「代わりの道がある」ように読めますが、その代わりの書類を用意できるのは実際には外交関係者などに限られます。

仮放免許可書は本人確認の書類として使えない

仮放免中の人が常に携帯している仮放免許可書は、免許の更新で提示する書類の一覧に入っていません。そのため窓口では受理されません。

神奈川県警察は、住民基本台帳法の適用を受けない人の例として「観光等の短期滞在者、仮放免の決定を受けている者、領事館職員」を挙げ、「外交官や領事館職員などの限られた方を除き、免許の取得や更新ができなくなりました」と説明しています。仮放免は、出入国管理及び難民認定法第54条にもとづき、収容を一時的に解く制度です。住居や行動範囲の制限、呼び出しへの出頭義務が付き、仮放免許可書の常時携帯が求められますが、在留資格が与えられるわけではありません。

更新窓口での判定(2025年10月1日以降)

1. 住基法の適用があるか
中長期在留者・特別永住者=あり/短期滞在・仮放免=なし
2. あり → 書類を1通
マイナ免許証/在留カード/特別永住者証明書/特定事項入り住民票
3. なし → 2種類が必要
外務省等発行の身分証明書+公の機関発行の住所確認書類
4. どちらも出せない
適性検査・講習に進めない=更新できない

※ 原告13人のうち9人は、この4に当たって窓口で申請を受け付けられなかったと訴えています。

図の4に当たる人が、今回さいたま地裁に訴えを起こしました。制度の入口で止まっているため、更新の可否を争う前に「検査と講習を受けさせてほしい」という形の請求になっています。

仮放免の外国人13人は何を求めて提訴したのか

更新に必要な適性検査と講習を実施するよう求める訴えです。免許を直ちに交付せよという請求ではありません。

原告13人のうち9人はすでに窓口で断られている

9人は2025年10月以降に埼玉県警の免許センターで申請を受け付けられず、4人はこれから更新期を迎えます。

訴えたのは埼玉県内に住む外国籍の男女13人で、いずれも国から退去強制令書を出された後、仮放免の状態にあります。提訴日は2026年9月11日。同じ日に東京・霞が関の司法記者クラブで会見が開かれました。弁護士ドットコムニュースによれば、原告側は「ある日突然、車の運転ができなくなる。子どもの学校の送り迎えもできない、あるいは病院にも行けない。そうした深刻な訴えを聞いている」と話しています。

原告側は「規則が法律の委任の範囲を超えている」と主張

原告代理人は、在留資格を基準に免許の交付を決める規定は道路交通法にないとして、規則の定めは無効だと主張しています。

河西拓哉弁護士は「道路交通法全体を見ても、在留資格を基準として免許証の交付を決定するような規定は一切ない。在留カードなどの提示を求める規則の規定は、法律の委任の範囲を逸脱して無効だと考えている」と述べました。神原元弁護士は、国会での議論を経ないままルールが変わった点を問題視し「行政官の、はっきり言えば気まぐれ。社会の風潮に乗っかった行政官たちの気まぐれによって、多くの人々の生活が破壊されている」と話しています。児玉弁護士は「昨年あたりから始まっている排外政策の一環だろう」と指摘し、無免許運転を誘発しかねないと懸念を示しました。いずれも原告側の主張で、埼玉県側の反論はこれからの審理で示されます。なお、原告側が具体的に道路交通法のどの委任規定を指しているのかは、現時点の報道では特定されていません。

Q. 提訴されたのは国ではなく埼玉県なのはなぜですか

A. 運転免許の交付・更新の事務を行っているのが各都道府県の公安委員会・警察だからです。今回は埼玉県警の運転免許センターで申請が受け付けられなかったため、埼玉県が被告になっています。規則そのものを定めたのは国(内閣府令)ですが、窓口での取り扱いを争う形になっています。

被告が県であることは、この訴訟が「制度の是非」だけでなく「窓口の運用」を問う形になっていることを示しています。では、その窓口の扱いを変えた規則は、いつ、何を変えたのでしょうか。

2025年10月に変わったのは何か

改正道路交通法施行規則が2025年10月1日に施行され、外国籍の人の住所確認が厳格になりました。

改正前は在留資格がなくても更新できていた

原告側によれば、改正前は有効な免許証を示せば適性検査を受けられ、在留資格がなくても更新できていたとされます。

山形県警察本部が各警察署長あてに出した通達(運免第237号・2025年9月25日)にも、「住民基本台帳法の適用を受けない外国人について、従来、旅券等の提示で免許証を取得できた手続を改め」たと明記されています。つまり、法律そのものではなく、下位の規則と運用が変わったという構図です。ここが「法律の委任の範囲」を争点にしている理由でもあります。

項目 2025年9月30日まで 2025年10月1日から
更新時の確認 有効な免許証の提示で適性検査へ 在留カード等の提示が必要
住基法の適用がない人 旅券等の提示で手続き可 外務省等発行の身分証明書+住所確認書類が必要
外国免許からの切り替え 滞在先の住所でも申請可・知識確認は10問 特定事項入り住民票が必要・知識確認を強化
マイナ免許証 券面で確認できれば追加書類は不要

表のとおり、変更は更新だけに向けられたものではありません。免許制度のなかで「日本に住所があること」をどう確かめるかを、全体としてそろえた改正でした。

なぜ規則は厳しくなったのか

見直しは住所確認と知識・技能確認の2系統です。政府は背景に短期滞在者の住所と、外免切替後の事故を挙げました。

理由1:ホテルを住所にした免許取得(住所確認の厳格化)

観光ビザなどの短期滞在者が、ホテルなどの滞在場所を住所として免許を取得していた実態が指摘されていました。

国家公安委員会委員長は2025年7月10日の記者会見で、この点と、外免切替制度で免許を取得した外国人による交通事故が起きていることの両方に触れ、同年10月1日からの開始を目指すと述べています。今回の訴訟で問題になっている更新時の書類要件は、このうち住所確認の厳格化の流れに位置づくものです。

理由2:知識確認が10問では簡単すぎる(外免切替の厳格化)

外国免許から日本の免許に切り替える際の知識確認が10問しかなく、簡単すぎるという指摘が寄せられていました。

これは更新の話とは別の手続きです。同じ改正に入っているため一緒に語られますが、対象も理由も分かれています。

(編集部分析)報道でもこの2つはしばしば一括りに語られますが、分けて見たほうが制度の評価はしやすくなります。切り替えの厳格化は、日本の交通ルールを理解しないまま公道に出る人を減らすという安全の話です。一方、住所確認の厳格化は、在留管理と免許制度の整合を取る話で、誰に免許を与えるかという資格の線引きに近いものです。前者は事故という具体的な被害で説明できますが、後者は「在留資格がない人に運転を認めるか」という価値判断を含みます。争点は後者に集まっており、司法の判断もここに向かうとみられます。

今回の対象は仮放免の人だけなのか

仮放免の人に限りません。住民基本台帳法の適用を受けない人が原則の対象で、外交官や領事館職員には例外の書類があります。

住民票に載らない人が制度上の分かれ目になる

原則の分かれ目は、住民基本台帳に記録されるかどうかです。記録されない人は住所を証明する公的書類を持てません。

中長期在留者や特別永住者は住民票に記載され、在留カードや特別永住者証明書も持っています。一方、観光などの短期滞在者、仮放免中の人、領事館職員は住民基本台帳法の適用を受けません。このうち領事館職員や外交官は、外務省が発行する身分証明書という代わりの書類を持っているため手続きができます。代わりの書類を持たない人だけが、結果として窓口で止まる形になっています。永住許可の手数料引き上げと同じく、在留資格の有無で受けられる行政サービスの線が引き直されている流れの一つといえます。

Q. 中長期在留者や特別永住者も更新できなくなるのですか

A. いいえ。在留カードや特別永住者証明書、特定事項が記載された住民票の写しを提示できれば、これまでどおり更新できます。マイナ免許証を持っている場合は、券面で確認できる限り追加の書類は不要です。

つまり、日本に住所を持って暮らしている外国籍の人の大半は、書類を1通用意すれば従来どおりです。影響が集中しているのは、制度上その1通を用意できない人たちということになります。

背景にある数字はどれくらいの規模なのか

退去強制が確定した外国人は2025年末で3,369人です。前年末より246人(7.9%)増えました。

3,369人は「仮放免者の総数」ではない

この3,369人は、退去強制が確定した人を仮放免・監理措置・収容の3つの状態で合計した数です。仮放免者だけの人数ではありません。

出入国在留管理庁の「令和7年の出入国在留管理業務の状況」によれば、増加の要因は難民認定申請の処理を速めた結果、退去強制令書の発付が年末にかけて増えたこと(2024年10〜12月の1,964件に対し2025年10〜12月は2,428件・速報値)などとされています。同庁は「不法滞在者ゼロプラン」で、この数を2030年末までに半減させる目標を掲げています。今回の原告13人も、この母集団の一部にあたります。

指標 数字 定義・注記
退去強制が確定した外国人(2025年末) 3,369人(前年比246人・7.9%増) 仮放免・監理措置・収容の3状態の合計
退去強制令書の発付(10〜12月) 2024年1,964件 → 2025年2,428件 速報値。難民認定申請の処理迅速化が要因とされる
難民認定申請の未処理数(2025年12月末) 1万5,969人 2025年5月末の過去最高から4,172人減
政府目標 2030年末までに半減 「不法滞在者ゼロプラン」

数字の上では、対象となる人の規模は数千人単位です。制度全体の影響は限定的に見えますが、一人ひとりの生活では通勤・通院・送迎の手段が一度に失われる話になります。ベトナムの不法残留への罰金強化のように、送り出し国側でも在留管理を締める動きが同時に進んでいます。

この訴訟は何を決めることになるのか

現時点の報道で確認できる主な争点は、法律が委任した範囲を規則が超えたかどうかです。是非の判断はその後にきます。

行政の裁量と、国会の関与の線引きが問われる

原告側は、国会の審議を経ずに規則と告示で資格の線が動いた点を問題視しています。手続きの正しさを問う訴えです。

(編集部分析)在留資格のない人に運転免許を与え続ける運用が適切だったかと問われれば、在留管理と免許制度の整合という観点からは、見直しそのものに理由があると評価できます。日本に住む資格を認められていない人が、日本の公的資格を更新し続けられる状態は、制度としてちぐはぐだったのは確かです。一方で、この線引きが法律の改正ではなく内閣府令と告示で行われ、国会の審議を経ていない点は、手続きの観点で課題が残ります。誰に権利を認めるかという判断は本来、国民の代表が決めるべき領域です。今回の訴訟は「外国人に有利か不利か」ではなく、「行政がどこまで規則で決めてよいか」を確かめる場になります。永住許可の取り消し要件の厳格化をめぐる議論と同じく、実務の運用が先に動き、法律の議論が後を追う形が続いています。

次に見るべきは県側の反論と第1回口頭弁論

次の節目は、埼玉県が答弁書で示す主張と、さいたま地裁の第1回口頭弁論です。期日は現時点で公表されていません。

県側が「規則にもとづく適法な取り扱い」と主張するのか、窓口運用の裁量に触れるのかで、争点の形が決まります。同種の請求が他の都道府県でも起きるかどうかも、この訴訟の帰すうに左右されるとみられます。読者としては、住んでいる自治体の警察が公表している外国籍の方向けの案内ページを確認するのが、いちばん確実な情報源になります。

仮放免と免許更新のよくある質問

ここまでの内容に入らなかった、周辺の疑問をまとめます。

Q. 仮放免とはどういう状態ですか

A. 出入国管理及び難民認定法第54条にもとづき、収容令書や退去強制令書を受けて収容されている人の収容を、健康上・人道上などの理由で一時的に解く制度です。住居と行動範囲の制限、呼び出しへの出頭義務が付き、仮放免許可書の常時携帯が求められます。在留資格が与えられるわけではありません。

Q. 有効な免許証を持っていれば、更新しないまま運転してよいのですか

A. 有効期間内は免許自体が有効です。ただし更新できなければ期限が切れた時点で失効し、その後に運転すれば無免許運転になります。原告側が「無免許運転を誘発しかねない」と述べているのは、この点を指しています。

Q. 更新期限が迫っています。どこに確認すればよいですか

A. 住所地の都道府県警察の運転免許センターに、更新期間が始まる前に問い合わせてください。必要な書類は各警察の「外国籍の方へ」の案内ページに掲載されています。マイナ免許証を持っている場合は、券面で確認できれば追加の書類は不要です。

Q. 提訴された埼玉県はどう反論しているのですか

A. 2026年9月12日時点で、県の主張は公表されていません。訴状が届いた後に答弁書で示されるのが通常の流れです。

制度の細かい取り扱いは都道府県ごとの案内で更新されるため、手続きの前に各警察の公式ページを確認してください。

参考情報

  • 弁護士ドットコムニュース「『在留カードがないと免許更新できない』は違法か 仮放免の外国人13人が埼玉県を提訴」(2026年9月11日)
    https://www.bengo4.com/c_1017/n_20915/
  • 愛知県警察「運転免許の取得時、記載事項変更時、更新時における住所確認の厳格化(外国籍の方)」(2025年10月1日掲載)
    https://www.pref.aichi.jp/police/menkyo/topics/gaikokuseki-menkyo-koushin.html
  • 神奈川県警察「運転免許試験又は外国免許切替手続を受ける外国籍の方へ」
    https://www.police.pref.kanagawa.jp/tetsuzuki/menkyo/mes83155.html
  • 警視庁「令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について」
    https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/oshirase/low.html
  • 国家公安委員会委員長 記者会見(2025年7月10日)
    https://www.npsc.go.jp/pressconf_2025/07_10.htm
  • 山形県警察本部 運転免許課長通達「道路交通法施行規則の一部改正に伴う留意事項」(運免第237号・2025年9月25日)
    https://www.pref.yamagata.jp/documents/5576/202512_90_doukouhoukaiseiryuuizikou.pdf
  • 出入国在留管理庁「令和7年の出入国在留管理業務の状況」
    https://www.moj.go.jp/isa/content/001459199.pdf
  • 出入国在留管理庁「仮放免制度について」
    https://www.moj.go.jp/isa/08_00050.html

数字と制度の内容は各資料の公表時点のものです。訴訟の進行や運用の見直しで変わる場合があります。

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