【10/20】議決延期請求、城内経財相が毎日新聞の報道を再否定|日銀利上げ巡り
城内実経済財政担当相は10月16日と20日の閣議後会見で、日銀の利上げを止めるために「議決延期請求」に言及したとする毎日新聞の報道を2度否定しました。議決延期請求は、政府が日銀の金融政策決定会合で議決を次の会合まで延ばすよう求められる、日本銀行法第19条の仕組みです。過去に使われたのは2000年8月の1回だけで、そのときも否決されました。
この記事では、毎日新聞が何を報じ、城内氏が何を否定したのかを日付順に並べます。そのうえで、議決延期請求権の条文と手続き、6月と9月の利上げで日銀が決めたこと、10月29〜30日の日銀会合で見ておきたい点を整理します。
この記事でわかること
- 何が否定されたか:6月の日銀会合の前に議決延期請求へ言及したという報道を、城内氏が10月16日と20日の会見で否定しました。
- 議決延期請求とは:日本銀行法第19条2項にある政府の権限で、延ばすかどうかは日銀の政策委員会が多数決で決めます。
- これからの焦点:城内氏は10月29〜30日の日銀会合にも「都合がつけば出席」すると述べ、高市内閣は日銀の自主性を尊重すると説明しました。
城内経財相は議決延期請求への言及を否定したのか
城内氏は「言及した事実は一切ない」と否定し、記事の前に取材や事実確認がなかったことを「極めて残念」と述べました。
否定は1回ではありません。10月14日の報道を受けて16日の会見で否定し、その後に毎日新聞が同じ内容を改めて掲載すると、20日の会見でも同じ趣旨の反論をしました。
10月16日の会見で城内氏が述べたこと
16日の会見で城内氏は、議決延期請求に言及したという報道を「そうした事実は一切ございません」と否定しました。
TBS NEWS DIGによると、城内氏は「報道にあたりまして、私に対して取材や事実確認がございませんでした」と述べ、「非常に重要な問題ですから、やはり事実確認ぐらいはしていただきたかった」と続けました。あわせて、自身が日銀の会合に多く出席していることを「金融政策に目を光らせる」と書かれた点について、「あたかも日本銀行に不当な圧力をかけているかのような印象を与える表現が用いられることは、極めて遺憾」と述べています。出席は日銀法に定められた正当な職務だとして、「今後も日程の都合がつけば出席したい」と説明しました(TBS NEWS DIG)。
10月20日の会見で城内氏が述べたこと
20日の会見で城内氏は、利上げを止めるために議決延期請求権の行使を検討したことはないと改めて反論しました。
ロイターによると、城内氏は自身に取材がなかったことを再び強調しました。今後、議決延期請求を行う可能性があるかと問われると、「高市早苗内閣は日銀の自主性を最大限尊重している」と答えています。10月29〜30日に予定されている日銀の金融政策決定会合にも、都合がつけば出席したいと述べました(ロイター 10月20日)。
毎日新聞は城内氏について何を報じたのか
毎日新聞は10月14日、城内氏が内閣府幹部らとの話の中で議決延期請求に言及したと電子版で報じました。
毎日新聞自身の16日の記事によると、14日の報道は、昨年10月に高市政権が発足して以降の城内氏の発言を扱ったものです。内閣府の中で具体的な検討には進まなかったものの、日銀の利上げをけん制する意図があったとの見方がある、と書いています。同じ記事は、城内氏が副大臣や官僚ではなく自ら日銀の会合に多く出席していることにも触れていました(毎日新聞 10月16日)。ロイターは、14日の記事が城内氏の出席回数の多さを「異例」とし、金融政策に「目を光らせている」と書いていたと伝えています(ロイター 10月16日)。
報道と否定の流れを日付順に並べると、次のとおりです。
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 6月15・16日 | 日銀が金融政策決定会合で利上げを決める(報道が「言及」の時期とした会合) | 日銀の決定 |
| 10月14日 | 毎日新聞(電子版)が、城内氏が内閣府幹部らとの話で議決延期請求に言及したと報道 | 毎日新聞 |
| 10月16日 | 城内氏が閣議後会見で「言及した事実は一切ない」と否定。取材がなかったと指摘 | TBS・ロイター・毎日新聞 |
| 16日以降 | 毎日新聞が同様の内容を改めて掲載 | ロイター |
| 10月20日 | 城内氏が会見で再び否定。日銀の自主性を最大限尊重と説明 | ロイター |
| 10月29〜30日 | 次回の日銀会合。城内氏は都合がつけば出席の意向 | ロイター |
報道は「言及した」、大臣は「言及していない」で、10月21日の時点で両者の説明は食い違ったままです。毎日新聞が城内氏の否定を受けて記事を訂正したという報道は、この時点では見当たりません。
議決延期請求権とは何か(日本銀行法第19条)
議決延期請求権は、政府の出席者が日銀の会合で、金融政策の議決を次の会合まで延ばすよう求められる権限です。
根拠は日本銀行法第19条です。第1項で、財務大臣と経済財政政策担当大臣は、必要に応じて金融政策を決める会合に出席して意見を述べるか、職員を出席させて意見を述べさせることができます。第2項は、会合に出席した財務大臣か財務省の職員、経済財政政策担当大臣か内閣府の職員が、金融調節事項(金融政策)に関する議案を出すことや、議事とされた金融調節事項の議決を「次回の金融調節事項を議事とする会議まで延期すること」を求められると定めています(e-Gov法令検索 日本銀行法)。
請求から決まるまでの流れは、次の図のとおりです。
財務相か経済財政担当相(または指名した職員)が会合で求める
第19条3項により、議事の議決の例(多数決)で決める
議決は次の会合へ持ち越し
その会合で議案を採決できる
つまり請求しても、議決が自動的に延びるわけではありません。延ばすかどうかを決めるのは政策委員会で、政府側は委員会の議決に加われません。
経済財政担当相は議決延期請求ができる立場なのか
経済財政政策担当大臣は、第19条2項で請求できる者に名指しされており、制度上は請求できる立場です。
城内氏が16日に「出席は日銀法に定められた正当な職務」と述べたのは、この第19条1項を指しています。報道が問題にしたのは、権限があるかどうかではなく、6月の利上げの前に使うことを口にしたかどうかです。
財務大臣と経済財政担当相の役割はどう違うのか
条文上、2人の権限は同じで、どちらも会合で意見を述べ、議案を出し、議決の延期を求めることができます。
違うのは、それぞれが受け持つ分野です。財務大臣は国の予算や国債、為替を、経済財政政策担当大臣は内閣府で経済全体の運営をそれぞれ担当します。第19条は、大臣の代わりに指名した職員を出席させてよいとしています。毎日新聞も16日の記事で、城内氏が副大臣や官僚ではなく自ら多く出席していると書いており、城内氏の「出席の多さ」に注目したのは、この点が背景にあります。
一方で、出席した大臣も政府の職員も、政策委員会の議決に加わる票は持っていません。会合で政府側ができるのは、意見を述べることと、金融調節事項に関する議案や議決延期の求めを出すことまでです。金利を上げるか据え置くかを決めるのは、総裁・副総裁2人・審議委員6人の計9人の政策委員です。
(編集部分析)政府の出席は、日銀の独立性と政府の経済政策をつなぐために法律が用意した窓口です。出席が多いことだけを「目を光らせる」と書けば、法律どおりの職務まで圧力のように見えてしまいます。出席の多さと、実際に延期を求めたかどうかは、分けて読む必要があります。
議決延期請求は過去に使われたことがあるのか
政府が議決延期請求をしたのは、2000年8月にゼロ金利政策を解除したときの1回だけで、請求は否決されました。
大和証券の用語解説によると、このとき政府は初めて議決延期を求めましたが、政策委員会が否決し、日銀はそのままゼロ金利を解除しました(大和証券 金融・証券用語解説「議決延期請求権」)。1998年に今の日本銀行法が施行されてから、使われたのはこの1回です。
(編集部分析)使われた例が1回しかないのは、請求そのものが「政府と日銀の意見が割れている」と市場に知らせる重い合図になるためと考えられます。だからこそ、大臣が言及したかどうかは市場にとって小さくない話であり、報じる側にも、確かめる側にも、本人への確認が欠かせない題材です。
6月と9月の日銀利上げで何が決まったのか
日銀は6月の会合で政策金利を1%程度へ、9月17・18日の会合で1.25%程度へ、2回続けて引き上げました。
報道が城内氏の「言及」の時期としたのは、このうち6月の会合の前です。2つの決定を並べると次のとおりです。
| 会合 | 政策金利 | 採決 | 議決延期請求 |
|---|---|---|---|
| 6月15・16日 | 0.75%程度 → 1%程度 | 賛成7・反対1 | 行われていない |
| 9月17・18日 | 1%程度 → 1.25%程度 | 賛成7・反対2 | 行われていない |
どちらの会合でも、政府が議決延期を求めたという報道はありません。9月の利上げは1995年以来の高い水準で、大和アセットマネジメントは、物価が2%を上回って上振れするリスクへの対応だったと解説しています(大和アセットマネジメント 9月18日)。毎日新聞の報道も、内閣府で具体的な検討には進まなかったとしています。
毎日新聞の報道と城内氏の説明はどこが食い違っているのか
食い違いの中心は、城内氏が6月の会合の前に議決延期請求を口にしたかどうかと、記事の前に本人へ確認したかどうかの2点です。
両者の説明を点ごとに分けると、次のようになります。
| 論点 | 毎日新聞の報道 | 城内氏の説明 |
|---|---|---|
| 議決延期請求への言及 | 内閣府幹部らとの話の中で言及した | 言及した事実は一切ない |
| 行使の検討 | 具体的な検討には進まなかった | 利上げを止めるために検討したことはない |
| 会合への出席 | 出席回数が異例に多く、金融政策に目を光らせている | 日銀法に定められた正当な職務 |
| 本人への取材 | 本稿で確認した資料(10月21日時点)では、毎日新聞側の説明を確認できていない | 取材も事実確認もなかった |
表のとおり、「検討には進まなかった」という点は両者で大きく違いません。食い違っているのは、言葉として口にしたかどうかと、その言葉を利上げのけん制と結びつけた書き方です。
城内氏は16日の会見で、記事を書いた記者がふだん会見に出ているのだから、直接確かめる機会はあったはずだと述べました。城内氏の言うとおり本人に一度も確かめないまま報じ、否定のあとに同じ内容を重ねて載せたのであれば、報道の進め方として疑問が残ります。
(編集部分析)政府が日銀に圧力をかけているかのように読める記事は、円や国債の値動きにも響きかねません。城内氏の説明どおり本人への確認がなかったのであれば、消費減税の法案が国会で審議に入った時期に、政府の経済運営そのものへの信頼を揺らす書き方が確認なしに出たことは重く見るべきです。報じる自由と同じ重さで、確かめる責任があります。大手紙には、根拠となった取材の中身と、本人に確認しなかった理由を説明することが求められると考えます。
10月29〜30日の日銀会合では何を見ればよいのか
見るべき点は、城内氏が実際に会合へ出席するかと、政府側から議決延期請求が出るかどうかの2つです。
城内氏は20日に出席の意向を示し、高市内閣は日銀の自主性を最大限尊重していると述べました。ただし、日銀の自主性を尊重することと、法律で認められた延期請求を一切しないことは同じではありません。現時点で延期請求をする方針が示されたわけではなく、実際に請求が出るかどうかは会合の結果で確かめる必要があります。
会合で政府が何を言ったかはどこで確かめられるのか
日銀の公表予定では、10月30日に決定内容、11月10日に「主な意見」、12月23日に「議事要旨」が出て、そこで確かめられます。
議事要旨には、政府からの出席者が述べた意見の要旨と、議決延期の求めがあったかどうかが記されます。2000年8月の議決延期請求も、議事要旨に記録が残っています。つまり、6月の会合で政府が延期を求めていないことは、公表資料でも裏が取れる事柄です。報道が問題にしたのは会合の場ではなく、その前の内閣府の中でのやり取りなので、公表資料だけでは白黒をつけられないという点も押さえておく必要があります。
同じ時期、国会では消費減税の法案が審議に入っています。審議の中身は「消費減税法案が衆院審議入り|就業者負担軽減支援金の対象と首相答弁」で、財源の議論は「消費税減税の財源、高市首相が国債「否定せず」」で整理しています。
(編集部分析)利上げは借り入れの多い中小企業や住宅ローンを抱える家計に直接響き、減税は可処分所得を押し上げます。政府と日銀がそれぞれの持ち場で何を決めたのかは、報道の見出しではなく、会見の言葉と公表資料で確かめていくことが、読者にとって一番確かな方法です。
城内経財相と議決延期請求のよくある質問
城内氏は議決延期請求への言及を否定しており、請求しても延ばすかどうかは日銀の政策委員会が決めます。
Q. 城内経財相は日銀の利上げを止めようとしたのですか?
A. 城内氏は否定しています。10月16日と20日の会見で、利上げを止めるために議決延期請求に言及したことも、行使を検討したこともないと述べました。6月の会合で日銀は利上げを決め、政府は議決延期を求めていません。
Q. 議決延期請求をすると利上げは止まるのですか?
A. 自動的には止まりません。日本銀行法第19条3項により、延ばすかどうかは日銀の政策委員会が決めます。否決されればその会合で採決できます。2000年8月の唯一の例も否決されました。
Q. 大臣が日銀の会合に出席するのは問題ないのですか?
A. 日本銀行法第19条1項で認められた職務です。財務大臣と経済財政政策担当大臣は、必要に応じて出席して意見を述べられます。ただし議決に加わる票はありません。
このニュースを自分で確かめたい人は、次の3つを見るのが近道です。1つ目は、内閣府が公開している経済財政担当大臣の閣議後会見の記録で、16日と20日の発言をそのまま読めます。2つ目は、10月29〜30日の会合のあとに日銀が出す決定内容(10月30日)と議事要旨(12月23日の公表予定)で、政府側が延期を求めたかどうかが分かります。3つ目は、毎日新聞が今後、取材の経緯について説明や訂正を出すかどうかです。見出しだけで判断せず、言葉の出どころを順に追うことで、どちらの説明に分があるかを自分で見極められます。
今後、毎日新聞が説明や訂正を出した場合や、10月29〜30日の会合で動きがあった場合は、この記事に書き足します。
