【10/10】国慶節で日本は人気圏外|21億人移動でもトップ10外の理由
中国の国慶節(建国記念日)に合わせた大型連休(2026年10月1〜7日)で、旅行などに出た人は延べ21億4400万人にのぼりました。中国交通運輸省が10月8日に発表した推計です。一方、共同通信によると、中国の旅行大手・途牛(トゥーニウ)がまとめた人気の国外旅行先で、日本はトップ10に入りませんでした。
昨年まで中国人の国外旅行先で日本は人気の上位にいました。それが1年で圏外に落ちた背景には、2025年11月に中国外務省が自国民へ日本への渡航を控えるよう呼びかけたことがあります。この記事では、国慶節の移動と出入国の数字、人気の旅行先の顔ぶれ、日本が外れた経緯、訪日客の実際の減り方を、出典をもとに整理します。
この記事でわかること
- 国慶節の規模:10月1〜7日の移動は延べ21億4400万人、出入国は延べ1546.2万人で前年同期比6.7%増でした。
- 日本の順位:途牛の集計で人気の国外旅行先はインドネシア・トルコ・韓国などで、日本はトップ10の外でした。
- 背景:2025年11月14日の中国外務省による渡航自粛の呼びかけ以降、中国からの訪日客は2026年8月に前年同月比59.0%減まで落ちています。
国慶節で日本が人気圏外に|何が起きたのか
2026年の国慶節連休で、中国人に人気の国外旅行先トップ10から日本が外れました。移動の総数は延べ21億人を超えています。
共同通信が10月8日に北京発で配信した記事が伝えた内容です。中国全体では移動も海外への出国も増えたのに、日本は行き先として選ばれなかったという構図になっています。まず、移動の規模から見ていきます。
21億4400万人の移動|交通運輸省の推計
中国交通運輸省は10月8日、連休中の移動を延べ21億4400万人と推計しました。連休前の予想は延べ21億3000万人でした。
連休初日の10月1日の時点で、中国政府は期間中に延べ21億3000万人が移動すると見込んでいました(テレビ東京の報道)。実際の推計はこの予想をわずかに上回った形です。ここでいう「移動」は旅行だけでなく、帰省や地域をまたぐ移動の全体を延べ人数で数えたもので、国外旅行の人数ではありません。
途牛の人気旅行先|インドネシア・トルコ・韓国など
途牛の集計では、人気の国外旅行先はインドネシア、トルコ、韓国などで、日本はトップ10に入っていません。
注意したいのは集計の期間です。共同通信によると、この順位は国慶節連休だけでなく、その前の中秋節連休(9月25〜27日)を含む期間のものです。国慶節の7日間だけを切り出した順位ではありません。また、途牛は中国の旅行会社の1社で、中国人の海外旅行全体を網羅した統計ではない点も押さえておく必要があります。
数字の出どころが分かったところで、次は連休全体の数字を一覧で確認します。
2026年国慶節の数字|移動・出入国・海外旅行
連休中の出入国は延べ1546.2万人で、前年同期比6.7%増でした。中国本土の住民の出国は444.4万人で9.3%増えています。
中国の国家移民管理局が10月8日に発表した数字です(中国の経済紙・21世紀経済報道の報道による)。海外へ出る中国人そのものは前年より増えており、日本が外れたのは「中国人が海外旅行をしなくなったから」ではないことが分かります。主な数字を表にまとめます。
| 項目 | 数字 | 発表元・出典 |
|---|---|---|
| 連休の期間 | 2026年10月1日〜7日 | 共同通信 |
| 移動(延べ) | 21億4400万人(予想は21億3000万人) | 中国交通運輸省の推計(共同通信・テレビ東京) |
| 出入国(延べ) | 1546.2万人・1日平均220.9万人(前年同期比6.7%増) | 国家移民管理局(21世紀経済報道) |
| 中国本土の住民の出国 | 444.4万人(9.3%増) | 同上 |
| 外国人の入国 | 68.2万人(5.4%増)、うちビザ免除50.5万人(9.2%増) | 同上 |
| 出入国の最多日 | 10月4日・239.7万人 | 同上 |
表のとおり、出入国の総数も中国本土の住民の出国も前年を上回っています。海外へ出る人が増えたなかで日本が順位を落としたのですから、問題は需要の大きさではなく「行き先として選ばれるかどうか」にあると言えます。
海外へ出た中国人は増えたのか
増えています。中国本土の住民の出国は444.4万人で、前年同期比9.3%増でした。
ただし、この出国者数には香港・マカオへの往来も含まれるとみられ、444.4万人がすべて遠方の国へ旅行したわけではありません。国別の内訳は報道された発表に含まれていないため、日本へ何人が来たかはこの数字からは分かりません。日本側の数字は、後の章で日本政府観光局(JNTO)の推計を使って確かめます。
国慶節の人気海外旅行先はどこだったか
途牛の集計ではインドネシア・トルコ・韓国など、中国メディアの報道ではタイ・マレーシア・韓国などが人気でした。
出典によって挙がる国が少し違います。共同通信は途牛の集計としてインドネシア・トルコ・韓国を挙げ、テレビ東京は中国メディアの報道としてタイ・マレーシア・韓国を挙げました。集計の方法も時点も違うので、ここでは無理に1つにまとめず、両方を並べます。共通しているのは、韓国が上位に入り、日本がトップ10に入っていないことです。2025年との違いを表で比べます。
| 年 | 日本の位置 | 人気とされた行き先 | 出典・集計の種類 |
|---|---|---|---|
| 2025年 | 1位 | 日本(福岡・伊豆半島・沖縄も人気上昇) | Airbnb中国の検索数(訪日ラボ) |
| 2026年 | トップ10外 | インドネシア・トルコ・韓国など | 途牛の集計・中秋節連休を含む期間(共同通信) |
| 2026年 | トップ10外 | タイ・マレーシア・韓国など | 中国メディアの報道(テレビ東京) |
2025年の「1位」は検索数、2026年の「圏外」は旅行会社の集計と、物差しが同じではありません。それでも、どの出典でも日本が上位から消えている点は一致しており、人気の落ち込みそのものは確かだと読めます。
2025年の国慶節では日本が1位だった
2025年の国慶節では、Airbnb中国で最も検索された旅行先が日本でした。検索数は前年の2倍になっています。
訪日インバウンドの専門メディア・訪日ラボが2025年9月に伝えたもので、福岡・伊豆半島・沖縄の人気上昇も挙げられていました。共同通信も「昨年までは国外旅行先として日本が人気トップだった」という趣旨で伝えています。わずか1年で、日本は「最も探される国」から「上位10か国に入らない国」へ変わったことになります。
なぜ日本はトップ10圏外になったのか
2025年11月14日に中国外務省が自国民へ日本への渡航を控えるよう呼びかけ、そこから人気が落ちたと報じられています。
共同通信は、2025年11月に高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態になり得る」とした国会答弁に中国当局が反発し、訪日の自粛を国民に呼びかけて以降、人気が低下したと説明しています。日本政府観光局(JNTO)も、中国からの訪日客の減少について、中国政府による日本への渡航の注意喚起の影響を挙げています。ただし、旅行先の順位が落ちた理由のすべてを渡航自粛の呼びかけだけで説明できるかは、統計からは分かりません。経緯を時系列で並べます。
時系列で並べると、共同通信とJNTOが挙げる渡航自粛の呼びかけのあと、日本の人気低下と訪日客の減少が1年近く続いている流れになります。次に、それぞれの出来事をもう少し詳しく見ます。
2025年11月7日の高市首相の答弁
高市首相は衆院予算委員会で、台湾有事で武力の行使を伴う場合は「存立危機事態」になり得るとの考えを示しました。
存立危機事態とは、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃で日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態のことで、集団的自衛権を使える条件として安全保障関連法に定められています。首相はその後も、政府の従来の見解に沿った答弁だとして撤回しませんでした。
2025年11月14日の中国外務省の渡航自粛呼びかけ
中国外務省は、首相の発言で在日中国人の安全にリスクが生じたと主張し、日本への渡航を当面控えるよう呼びかけました。
CNNによると、中国外務省は声明で、台湾に関する首相の発言を「露骨な挑発的発言」と表現したとされます。この呼びかけに法的な強制力はなく、渡航を禁じるものではありません。それでも、政府が国民に向けて特定の国への旅行を控えるよう求めたことの影響は大きく、日本政府は中国側に抗議しました。
(編集部分析)在日中国人の安全が脅かされたという中国外務省の主張は、具体的な事件や統計で示されたものではありません。日本の首相が自国の安全保障について国会で答えたことを理由に、相手国が自国民の観光を止めにかかるのは、観光客の流れを外交の圧力に使う動きと受け止めるのが自然です。
訪日中国人は何割減ったのか|JNTOの推計
2026年8月の中国からの訪日客は41万8000人で、前年同月比59.0%減でした。前年の4割程度まで落ちています。
日本政府観光局(JNTO)の推計を伝えたnippon.comによると、8月の訪日客全体は309万8900人で、前年同月比9.6%減でした。1〜8月の累計は2762万6300人で前年同期比2.7%減です。中国以外の市場が伸びても、中国の落ち込みを埋め切れていない構図です。主な国・地域の数字を表にまとめます。
| 市場 | 2026年8月の訪日客 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 中国 | 41万8000人 | 59.0%減 |
| 韓国 | 85万500人 | 28.7%増 |
| 台湾 | 66万6000人 | 7.3%増 |
| 全体 | 309万8900人 | 9.6%減 |
表のとおり、韓国と台湾からの訪日客は増えています。中国の減少分が大きいため全体はマイナスですが、訪日客の構成は中国頼みから、韓国・台湾などへ重心が移りつつあります。
減少はいつから続いているのか
中国からの訪日客は渡航自粛の呼びかけの後から前年を下回り続けており、8月で9か月連続の減少と報じられています。
呼びかけが出たのは2025年11月半ばで、そこから毎月の推計が前年割れになっている計算です。国慶節の連休は10月なので、連休の影響が日本側の統計に表れるのは10月分の推計が出てからになります。
日本の観光業・経済への影響は
中国からの訪日客は前年の4割程度に減った一方、韓国・台湾などは増えており、影響は地域や業種によって差が出ています。
JNTOの推計では、2026年1〜8月の訪日客の累計は前年同期を2.7%下回っています。nippon.comは、このままでは2025年の過去最多(4268万3600人)を下回る見通しだと伝えています。中国人客の比重が大きかった免税売上や、中国の団体客を受け入れてきた観光地ほど影響は大きいと考えられますが、業種別の損失額を示す公的な統計はまだ出ていません。この記事では推計の金額は書きません。
(編集部分析)見方を変えれば、訪日客の総数が1割減にとどまっているのは、中国以外の国・地域からの客が伸びているからです。特定の1か国に客の多くを頼る形は、その国の政府の判断ひとつで売上が揺らぐ弱さを抱えています。今回の落ち込みは、観光の客層を幅広い国へ分散させることが、日本の観光業そのものの守りになることを示したと評価できます。
国慶節の「日本離れ」で客はどこへ流れたのか
中国の海外旅行の需要自体は伸びているため、日本が外れた分の客は韓国や東南アジアなど他の国へ流れたとみられます。
出入国の総数が前年比6.7%増、中国本土の住民の出国が9.3%増だった以上、旅行に出る中国人が減ったわけではありません。人気の旅行先に韓国が共通して入っていることから、日本に来るはずだった客の一部が近い国へ向かった可能性があります。ただし、日本を避けた客がどの国へ何人移ったかを直接示す統計はありません。
編集部分析:観光を外交カードにする中国と日本の選び方
中国当局は観光客の流れを外交の圧力に使っており、日本は安全保障の判断を観光収入と引き換えにしないことが問われています。
ここまでの事実を整理すると、①日本の首相が国会で安全保障について答弁し、②中国外務省がそれを理由に自国民へ訪日の自粛を呼びかけ、③その後、中国からの訪日客が大きく減り、国慶節の人気旅行先からも日本が消えた、という順番になります。
(編集部分析)ここで「誰が得をするのか」を考えると、渡航自粛の呼びかけは、中国当局が日本の世論と観光業に圧力をかけ、安全保障をめぐる日本の発言を抑えさせる手段として働きます。観光業界から「発言を控えてほしい」という声が出れば、それは中国側の狙いどおりということになります。台湾有事は日本の南西諸島やシーレーン(海上交通路)に直結する問題であり、自国の安全保障を国会で語ることは主権国家として当然の行為です。観光収入を理由にその判断を曲げれば、次も同じ手で揺さぶられることになります。
(編集部分析)同時に、区別して見るべき点もあります。渡航自粛を呼びかけたのは中国共産党が率いる中国政府であり、日本を旅行したいと考える中国の一般の人々ではありません。2025年に日本が検索数1位だったことは、多くの中国人が日本を旅先として好んでいた証拠です。政府の方針と国民の気持ちを混同せず、日本としては、特定の国の政治判断に左右されにくい観光の形を作っていくことが、経済安全保障の観点から求められると考えられます。
日本が取れる手は何か
客層を多くの国へ広げること、そして観光を理由に安全保障の判断を変えないことの2つが軸になります。
(編集部分析)韓国・台湾からの訪日客が伸び、nippon.comの見出しにあるとおりイタリアやスペインも8月として過去最多になりました。こうした国・地域への発信や受け入れの体制を強めることは、特定の国への依存を下げる現実的な手段です。観光は大切な産業ですが、国の安全保障と天秤にかけるものではないという線を、日本の側がはっきり持っておくことが大切だと評価できます。
これから注目すべき点
次に見るべきは、JNTOが発表する9月・10月の訪日客の推計と、中国外務省の渡航自粛の呼びかけが続くかどうかです。
国慶節の連休は10月なので、連休中に日本へ来た中国人の数は10月分の推計で分かります。また、中国側の呼びかけが続くかどうかで、2027年の春節(旧正月)の旅行先の顔ぶれも変わってきます。日本政府が中国側にどう向き合うかも、観光の数字に跳ね返ってくる点として注目されます。
国慶節と日本人気のよくある質問
本文で触れた3つの数字の違い、渡航自粛の呼びかけの今の扱い、中国の減少を他の国で補えているかに答えます。
Q. 21億人・1546.2万人・444.4万人は何が違うのですか。
A. 数えている対象が違います。21億4400万人は国内を含む地域をまたぐ移動の延べ人数、1546.2万人は中国人と外国人を合わせた出入国の延べ人数、444.4万人はそのうち中国本土の住民が出国した人数です。
Q. 中国外務省の渡航自粛の呼びかけは今も続いているのですか。
A. 取り下げられたとの発表は、この記事の出典の範囲では確認できません。JNTOは2026年8月の推計でも、中国からの訪日客が減った理由として渡航の注意喚起の影響を挙げています。
Q. 中国からの減少を、ほかの国からの訪日客で補えているのですか。
A. まだ補い切れていません。韓国や台湾は増えていますが、2026年1〜8月の訪日客の累計は前年同期比2.7%減で、2025年の過去最多を下回る見通しとされています。
数字や経緯の出どころは、次の参考情報で確認できます。
参考情報
- 沖縄タイムス(共同通信)「中国大型連休、21億人移動 日本は国外旅行の人気圏外」(2026年10月8日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1940619 - テレ東BIZ「中国『国慶節』21億人超が移動ヘ 日本は人気圏外に」(2026年10月1日)
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/you/news/post_349711 - 21世紀経済報道「国家移民管理局:国慶節連休の出入境1546.2万人、前年同期比6.7%増」(2026年10月8日・中国語)
https://www.21jingji.com/article/20261008/herald/af21660f7a9e0515f7f88292d659a0c6.html - nippon.com「8月の訪日客9.6%減の310万人―政府観光局:中国6割減、イタリア・スペインは単月で最多」
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02895/ - CNN.co.jp「中国、自国民に日本渡航を控えるよう警告 台湾巡る対立激化受け」(2025年11月15日)
https://www.cnn.co.jp/world/35240515.html - 訪日ラボ「2025年国慶節、人気旅行先で日本がトップ 福岡・伊豆半島・沖縄が人気上昇」(2025年9月17日)
https://honichi.com/news/2025/09/17/airbnb-2025kokkeisetsu/
