【9/11】沖縄県知事選の情勢は?|3社調査は「横一線」と「古謝氏先行」に割れた、AI偽画像は両候補に

2026年9月13日投開票の沖縄県知事選は、投票まで残り2日になりました。3選を目指す現職の玉城デニー氏(66)と、前那覇市副市長で新人の古謝玄太氏(42)による事実上の一騎打ちです。9月5日から6日にかけて報道各社が行った情勢調査は、「横一線」と「古謝氏が先行」に分かれました。一方、SNSではAIで作ったとみられる画像や、発言を切り取った投稿が両候補をめぐって出回っています。この記事では、各社の調査が何を示し何を示していないのか、有権者が何を重視しているのか、期日前投票がどれだけ伸びているのか、そしてSNSで確認された偽情報の実例を、報道と公表資料だけで整理します。
この記事でわかること
- 情勢は「横一線」と「古謝氏先行」に分かれた:共同通信は横一線、朝日新聞・沖縄タイムス・QABと読売新聞は古謝氏の先行と報じました。支持率の数値はどの社も公表していません。
- 未定層の幅が大きい:態度を明らかにしていない有権者は、共同通信で1割弱、読売新聞で2割強、朝日新聞などで4割でした。
- 重視する政策は経済が最多:「経済・観光・雇用」が46%、「普天間移設・米軍基地問題」が26%でした(共同通信)。
- 期日前投票は前回より多い:9月6日までに7万3565人(有権者の6.25%)が投票し、前回の同じ時期を1.97ポイント上回りました。
- 偽画像は両候補に向いている:古謝氏の偽ポスターと、玉城氏をめぐる偽の動画・投稿の両方が確認されています。
- 玉城氏の辺野古反対は2010年から一貫:国を相手に7件の訴訟を起こしましたが、判決が出たものはすべて県の敗訴か不受理で、工事は止まりませんでした。辺野古の完成は、工期の見積もりで2030年代半ば以降です。
- 安全保障の論点:尖閣は中国が政府白書で領有を主張しており、2025年は接続水域に356日来ました。SNSの「中国の6つの戦争」は公式の計画ではない論評です。
沖縄県知事選2026の情勢は、投開票2日前でどうなっているのか
現職の玉城氏と新人の古謝氏が競り合っており、3社のうち2社が古謝氏の先行、1社が横一線と報じています。
立候補したのは過去最多の6人です。古謝氏、玉城氏のほか、兼島俊氏(48)、末吉正弘氏(73)、比嘉隆氏(49)、屋良朝助氏(74)が8月27日の告示日に届け出ました。古謝氏は自民、維新、国民民主、参政、日本保守の各党と公明党県本部が推薦し、玉城氏は辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力が支えています。
3つの情勢調査は「横一線」と「古謝氏先行」に分かれた
共同通信は「横一線」、朝日新聞などと読売新聞は「古謝氏が先行」で、比べる相手はいずれも玉城氏です。
どの調査も9月5日から6日にかけて行われました。次の表は、各社が報じた情勢の表現と、態度を明らかにしていない人の割合をまとめたものです。
| 調査した社 | 方法 | 古謝氏と玉城氏の情勢 | 態度未定 |
|---|---|---|---|
| 共同通信(琉球新報・沖縄テレビと合同) | 電話(固定603人・携帯404人) | 横一線 | 1割弱 |
| 朝日新聞・沖縄タイムス・QAB | 朝日新聞は「電話とインターネット」、QABは「ネット調査会社4社のモニターから1260件」と説明 | 古謝氏やや先行、玉城氏が激しく追う | 4割 |
| 読売新聞 | 電話・インターネットと取材 | 古謝氏が先行、玉城氏が追う | 2割強 |
表のとおり、3社のうち2社が古謝氏の先行と報じ、共同通信だけが横一線としています。ほかの4人については、朝日新聞が「厳しい戦い」と伝えています。
各社が公表しているのは情勢の表現だけで、支持率の数値は出ていない
各社の記事にあるのは「先行」「横一線」といった表現で、候補ごとの支持率や差の数値は載っていません。
そのため「何ポイント差か」は、どの報道からも読み取れません。「やや先行」と「先行」の違いも各社の判断基準によるもので、社をまたいで比べられる尺度ではありません。情勢調査は、調査した時点の傾向を示すものです。投票結果の予想として読むものではありません。
なぜ情勢調査の結果が社によって割れたのか
調査の方法や取材の加え方、態度未定の割合が社ごとに違い、単純に比べられないためです。
情勢調査の方法は3社でそれぞれ違う
共同通信は電話だけ、朝日新聞は電話とネット、読売新聞は電話とネットに取材を加えて情勢を判断しています。
同じ朝日新聞・沖縄タイムス・QABの調査でも、QABは「インターネット調査会社4社に委託し、各社のモニターから1260件の有効回答を得た」と説明しています。どの方法で誰に聞いたか、取材の情報をどれだけ加えたかは社ごとに違い、それが「横一線」と「先行」の差にどう効いたのかは、公表された情報からは分かりません。なお共同通信の分析では、古謝氏は60代以下で厚く支持され、玉城氏は70代以上で堅調でした。年代で支持が分かれている選挙であることは、情勢報道を読むときの前提として押さえておけます。
態度未定の割合は1割弱から4割まで開いている
態度を明らかにしていない人は、共同通信で1割弱、朝日新聞などで4割と、社によって大きく違います。
4割が態度を明らかにしていない調査では、残り6割の傾向で情勢を判断していることになります。朝日新聞も「情勢は変わる可能性がある」と書いています。琉球新報・共同通信・沖縄テレビの調査では、投票先を「決めている」と答えた人が88%でした。これも「決めている」と答えた人の割合であって、誰に投票するかを明かした人の割合ではありません。
沖縄の有権者は知事選で何を重視しているのか
最も多いのは「経済・観光・雇用」の46%で、「普天間移設・米軍基地問題」の26%を大きく上回りました。
経済を挙げた人と基地を挙げた人で、支持がはっきり分かれる
共同通信の調査では、経済を重視する層の7割が古謝氏を、基地問題を重視する層の8割が玉城氏を支持しました。
無党派層では玉城氏が6割近くに浸透しているとされます。政策の優先順位が、そのまま候補の支持に結びついている構図です。琉球新報などの合同調査では、玉城県政の2期8年を「評価する」が56%、「評価しない」が42%でした。
辺野古移設への賛否は48%対46%で拮抗している
辺野古移設を「容認」「どちらかといえば容認」とした人は計48%、「反対」側は計46%でほぼ並んでいます。
玉城氏が初当選した2018年以降、知事選は「辺野古反対の民意」が軸になってきました。今回は国との裁判がすべて終わり、移設工事を止める手だてが乏しくなっています。日本テレビの取材では、玉城氏が街頭演説で辺野古に触れる機会は減っていると伝えられています。
玉城氏と古謝氏は何を訴えているのか
玉城氏は実績と生活支援を訴え、古謝氏は県民所得の倍増と政府との連携を掲げています。
最終盤の「三日攻防」に入った9月10日、古謝氏は那覇市で「県民所得の倍増を必ずやる。稼げる沖縄、暮らしやすい沖縄にする」と訴えました。玉城氏はうるま市や浦添市、宜野湾市を回り、子育て世代の家賃補助や賃上げ支援を紹介しています。報道で確認できる主張を並べると、次のとおりです。
| 項目 | 玉城デニー氏 | 古謝玄太氏 |
|---|---|---|
| 立場 | 現職・3選を目指す | 新人・前那覇市副市長 |
| 経済 | 県税収が過去最高、「手取りを増やす循環型経済」 | 県民所得の倍増 |
| 子育て | 子どもの貧困対策の実績、家賃補助 | 子育て支援予算の倍増 |
| 辺野古移設 | 反対 | 容認 |
経済政策の方向は重なる部分もありますが、辺野古移設への立場は正反対です。有権者の関心が経済に向くほど、基地問題以外の実績と公約が比べられる選挙になっています。
期日前投票は前回の知事選よりどれくらい多いのか
9月6日までに7万3565人が投票し、有権者の6.25%と前回の同じ時期より1.97ポイント多くなりました。
県選挙管理委員会の発表では、期日前投票が始まった8月28日から9月6日までの10日間の数字です。分母は選挙人名簿登録者数の117万6321人で、比較の相手は2022年の前回知事選の同じ時期(5万359人・4.28%)です。人数では2万3206人の増加になります。
期日前投票の投票率(告示翌日から10日間)
4.28%(5万359人)
6.25%(7万3565人)
図のように、同じ日数での比較でおよそ1.5倍の水準です。期日前投票は9月12日まで、県内41市町村の投票所で午前8時半から午後8時まで受け付けています。琉球新報などの調査では、9月5日から6日の時点で19%が「期日前投票を済ませた」と答えています。
今回の選挙戦のSNSでは何が起きているのか
知事選に関するXの投稿は数百万件規模に上り、その8割台後半から9割近くが沖縄県外から発信されています。
投稿の数は宮城県知事選の3倍以上
琉球放送(RBC)の集計では、告示後2週間のXの投稿は約131万6000件で、昨年の宮城県知事選の3倍を超えました。
日本経済新聞は、8月1日から9月7日までに約370万件という数字を報じています。集計の期間と方法が違うので、2つの数字をそのまま比べることはできません。ただ、どちらの集計でも規模が大きいことは共通しています。
発信の9割近くが県外、最多は東京都
投稿者の発信地を推定すると、県外が9割近くを占め、最も多いのは東京都でした。
RBCの分析では東京都が29.8%で、関東地方が全体の約5割でした。日経の集計でも沖縄発は14%にとどまり、東京都27%、大阪府10%が続いています。投票するのは沖縄の有権者ですが、SNS上の議論の多くは県外の人が作っている、というのが実測の姿です。
関西学院大学の山田真裕教授はRBCの取材に、「誤った情報によって考え方や信念ができてしまうと、後から間違いだと言われても簡単に戻らない」と述べています。
どんな偽画像や切り取り投稿が確認されているのか
古謝氏の偽ポスター、玉城氏を重機が踏みつぶすAI動画、辺野古移設を玉城氏が決めたとする偽投稿が確認されています。
いずれも報道機関やファクトチェック団体が検証したものです。どちらの候補に不利な内容かに関係なく、同じ基準で並べます。
| 出回った内容 | 対象 | 検証の結果 |
|---|---|---|
| 「国益にかなう沖縄をつくる」と書かれたポスター風画像(8月21日投稿) | 古謝氏 | AI生成の電子透かし(SynthID)を確認。陣営は作っておらず、公式サイトにもこの文言はない(日本ファクトチェックセンター) |
| 玉城氏が辺野古移設を決めたとする投稿(約224万回表示) | 玉城氏 | 2010年の県外移設に関する映像を切り取ったもの。移設を決めたのは1999年の自民党政権(読売新聞) |
| 玉城氏が重機に踏みつぶされる動画(約50万回閲覧) | 玉城氏 | 実際の写真をもとに生成AIで作ったとみられる(RBC) |
表の3件はいずれも候補者本人の陣営が作ったものではありません。偽ポスターの投稿者は後に謝罪して削除しましたが、画像は今も拡散が続いていると報じられています。
陣営はどちらも対策を強めている
古謝陣営は「火種が広がる前に打ち消す」、玉城陣営は「悪質なものには踏み込んだ対策」と話しています。
読売新聞の取材に、古謝陣営の選対幹部は「野放しにすれば虚偽情報の拡散に歯止めがかからなくなってしまう」と語っています。8月末に300万回を超えて表示された「玉城氏が米軍基地をなくせと叫ぶ理由は中国」とする動画については、沖縄タイムスが「不正確」と判定しました。経緯は辺野古の転覆事故と沖縄県知事選の争点を整理した記事にまとめています。
選挙のAI画像のルールは2027年3月から変わる
改正公職選挙法が2027年3月1日に施行され、生成AIで作った画像や動画にはAI利用の表示が義務になります。
候補者についての虚偽情報をネット上に流して選挙の公正を害することも禁止されます。ただし罰則はありません。あわせて改正情報流通プラットフォーム対処法が、SNS事業者に偽情報の悪影響を軽くする措置を義務づけます。今回の知事選は、この法律が動き出す前の選挙です。
玉城氏の発言に一貫性はあるのか
辺野古反対と自衛隊配備への姿勢は2010年から変わらず、一貫性の批判が当たるのは那覇軍港の扱いです。
SNSでは「玉城氏は言っていることがころころ変わる」という投稿が出回っています。ここでは、報道と公表資料で確かめられる発言と行動を年代順に並べ、その主張がどこまで当たっているのかを確かめます。古謝氏の主張も、普天間の返還時期という同じ物差しで検証します。
辺野古への反対は民主党議員だった2010年から続いている
衆院議員だった2010年から知事選の今年8月まで、玉城氏は辺野古移設への反対を一度も取り下げていません。
2010年5月、民主党政権が辺野古回帰を閣議決定したときは「地元合意の前提が無いシュワブ辺野古案は実現不可能」と述べました。2013年12月に当時の知事が埋め立てを承認したときは「辺野古移設断念実現まで徹底して闘う」と語っています。今年8月12日に発表した基本政策でも「反対の民意を守り抜く」と掲げました。SNSで拡散した「辺野古移設を決めたのは玉城氏」「移設を英断と称賛した」という投稿は、日本ファクトチェックセンターと沖縄タイムスがいずれも「誤り」と判定しています。移設を決めたのは1999年の自民党政権で、「英断」の発言は別の文脈の言葉を切り取ったものでした。
自衛隊の南西配備についても同じです。2022年の知事選の政策で「地元合意の無い強行配備に反対」と明記し、今年8月31日の石垣市の街頭では「これ以上の配備強化は絶対に認めない」と訴えました。この2つの論点では、「言うことが変わる」という批判は記録と合いません。
止めようと国を相手に裁判を重ねたが、工事は止まらなかった
玉城県政は辺野古をめぐり国を相手に7件の訴訟を起こしましたが、判決が出たものはすべて県の敗訴か上告不受理でした。
県の公式ページにある争訟の一覧を、玉城氏が知事に就任した2018年10月以降に絞ると次のとおりです。止めようとした意図と行動は、ここでもはっきりしています。
| 争点 | 提訴 | 結果 |
|---|---|---|
| 埋め立て承認の撤回をめぐる訴訟(県が提訴・3件) | 2019年3月〜8月 | 2020年3月26日と2022年12月8日に最高裁で県敗訴。1件は判決前に終結 |
| 設計変更の不承認をめぐる訴訟(県が提訴・3件) | 2022年8月〜9月 | 2023年9月4日に最高裁が国の是正指示を適法と判断。最後の1件は2025年1月17日に最高裁が不受理 |
| サンゴの特別採捕をめぐる訴訟(県が提訴・1件) | 2023年8月 | 2024年4月26日に最高裁が不受理 |
| 代執行訴訟(国が提訴) | 2023年10月 | 2023年12月に高裁で県敗訴、国が代執行で設計変更を承認。2024年2月29日付で最高裁が県の上告を退けた |
表のとおり、ここに挙げた県提訴の訴訟は、2025年1月の不受理で一通り決着しました。国は代執行のあと、2024年1月に大浦湾側の軟弱地盤の改良工事に着手しています。「裁判を起こしてまで止めようとした」のは事実で、「裁判で止めた」のではありません。
普天間飛行場の返還は、合意から30年たっても実現していない
1996年4月に日米が「5〜7年以内の全面返還」で合意しましたが、30年たった今も普天間は返還されていません。
返還には県内での代替施設の建設が条件とされ、その代替施設が辺野古です。防衛省は2019年12月、軟弱地盤の改良を加えた計画で総工費を9300億円、工期を設計変更の承認から約12年と示しました。承認は2023年12月の代執行なので、工期をそのまま当てはめると、完成は2030年代半ば以降になります。これは工事の見積もりで、返還の日付そのものではありません。さらに米国防総省は、辺野古より長い滑走路が確保されない限り「普天間は返還されない」とする文書を出していると東京新聞が報じています。
この数字に照らすと、両候補の主張にはどちらも弱いところがあります。古謝氏は辺野古移設を「普天間の危険性除去の最も早い手段」としていますが、工期の見積もりでは完成は早くても2030年代です。玉城氏は「辺野古では早期返還はできない」として普天間の即時運用停止を求めていますが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」という立場を変えておらず、それより早く返還される具体的な道筋は示されていません。
那覇軍港の県内移設は認め、辺野古は認めない
玉城氏は2018年10月の県議会で、那覇軍港の浦添移設を「これまでの経緯を踏まえ認める」と答弁しています。
理由として挙げたのは「返還が実現すれば基地負担の軽減、跡地の有効利用により発展に寄与する」ことでした。同じ答弁で辺野古については「対話によって解決策を求めていく」と述べています。どちらも県内への移設で、浦添側も埋め立てを伴います。玉城氏は基地負担の軽減、跡地の利用、これまでの経緯を理由に挙げていますが、同じ県内移設である辺野古との扱いの違いをどこまで説明できているかは、一貫性がないという批判の最も具体的な論点になっています。
事実と違う発言も確認されている
8月30日の「那覇空港の管理は県です」という発言は、国が一元管理しているため誤りと判定されています。
うるま市の集会で、普天間の返還条件として米軍が那覇空港を使うことを拒む文脈で「那覇空港は国の所有です。管理は県です」と述べました。沖縄タイムスは9月9日のファクトチェックで、那覇空港は空港法に基づいて国が設置・管理し、県の関与はないとして誤りと判定しています。これは立場のぶれではなく、事実の誤りです。
まとめると、「玉城氏は言うことがころころ変わる」という主張は、辺野古と自衛隊については記録と合いません。一貫性の論点として残るのは、那覇軍港と辺野古の扱いの違いをどう説明するかです。これとは別に、那覇空港のように事実を誤った発言もあります。
沖縄の基地をめぐる安全保障の論点は何か
中国の領有権の主張、尖閣周辺の実測、原油の海上輸送、基地が抑止か標的かの4点が主な論点です。
SNSでは「沖縄の基地がなくなれば中国に取られる」という趣旨の動画や画像が広く出回っています。その中には、公式に確認できる事実と、出どころのはっきりしない話が混ざっています。ここでは、それぞれの論点を一次資料と報道で切り分けます。
中国は尖閣と琉球について何を主張しているのか
尖閣は2012年の政府白書で「固有の領土」と主張し、琉球は政府として公式には主張していません。
中国の国務院報道弁公室は2012年9月25日、「釣魚島は中国固有の領土である」と題する白書を出しました。日本政府が同じ月に尖閣諸島を購入したことへの対抗です。尖閣について、中国政府は政府として領有権を主張しています。
これに対し日本政府は、防衛白書で「尖閣諸島(沖縄県石垣市)は、歴史的にも国際法上も疑うことなきわが国固有の領土であり、現にわが国が有効に支配しています」とし、「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しません」という立場です。白書は中国政府の主張であって、それで領有権が決まるわけではありません。
琉球(沖縄)については事情が違います。2013年5月8日、共産党機関紙の人民日報が中国社会科学院の研究者らの論文を載せ、「台湾と付属諸島、琉球は日本に奪い去られた」と主張しました。このとき中国外務省は「琉球と沖縄の歴史は学術界が長く注目する問題」と述べるにとどめ、菅義偉官房長官は「全く不見識な見解だ」「紛れもなくわが国の領土だ」と反論しています。2023年6月には習近平国家主席が北京の史料館で「福州で働いた際、琉球との交流の根源が深いと知った」と語り、人民日報が報じました。
2025年11月、高市首相が国会で台湾有事は存立危機事態になりうると答弁したあと、中国の官製メディアが琉球を取り上げました。チャイナ・デーリーは「琉球は日本ではない」と題する記事を載せ、環球時報は「琉球諸島の主権の帰属については、歴史的、法的な論争が常に存在してきた」と書いています。時事通信は、これを日本への対抗カードと分析しています。ただ、中国政府が沖縄の領有を公式に主張したことは確認できません。沖縄は1972年に日本へ返還された日本の領土です。
「中国が50年で戦う6つの戦争」は中国政府の方針なのか
2013年ごろネットで広まった論評で、中国政府が公式の計画として示したものではありません。
SNSで出回っている一覧は、台湾統一(2020〜2025年)、南シナ海の島々、チベット南部、「釣魚島と琉球諸島」(2040〜2045年)、外モンゴル、ロシアに占領された領土の6つの「奪還戦争」を年代順に並べたものです。日本の研究機関の岡崎研究所は2013年の論評で、これらは「現在の中国の政策で裏付けされたものでもなければ、極端な超国粋主義者の見解にすぎないかもしれない」と書いています。中国語のネット上でも、この一覧は外国メディアの記事の転載として広まってきました。
一覧の1つ目の「台湾統一戦争(2020〜2025年)」は、期限の2025年を過ぎても起きていません。この一覧を中国の作戦の時間表として読むのは誤りです。この資料から言えるのは、琉球まで「取り戻す」対象に含める一覧が中国語圏のネット上で流通したということまでで、誰の考えを代表しているかは分かりません。
尖閣周辺には中国海警局の船が毎日のように来ている
中国海警局の船が尖閣周辺の接続水域で確認された日は、2025年に356日と過去最多でした。
NHKによると、2025年の航行日数は356日で、1年のほぼすべての日にあたります。2024年11月から続いた連続航行は、2025年10月に335日で途切れるまで過去最長を更新し続けました。尖閣は石垣市に属する島々で、今回の知事選の有権者が暮らす県の一部です。
原油を運ぶ海の道と沖縄はどう関係するのか
日本の原油は95%超が中東産で、その輸送路のそばに、沖縄を含む南西諸島が1,200kmにわたって連なっています。
資源エネルギー庁のデータをもとにしたnippon.comのまとめでは、日本は原油の95%超を中東に頼っています。アラブ首長国連邦とサウジアラビアがそれぞれ約4割で、どちらもホルムズ海峡を通って運ばれます。2024年度の国内の一次エネルギー供給のうち、石油は34.8%でした。防衛白書は、沖縄は全長約1,200kmの南西諸島のほぼ中央にあり、「全貿易量の99%以上を海上輸送に依存するわが国の海上交通路(シーレーン)に隣接している」と書いています。
海の道が1か所で止まるとどうなるかは、いま現実に起きています。2026年3月2日にイランがホルムズ海峡の封鎖を発表し、ペルシャ湾から出る船の動きはほぼ止まりました。時事通信のまとめでは、9月11日の時点でも通航は元に戻っていません。南西諸島の周りの海もこの輸送路の一部で、ここで船が通りにくくなれば、影響を受けるのはホルムズのときと同じく日本のエネルギー供給です。
沖縄の基地は抑止になるのか、標的になるのか
政府は在沖米軍が抑止力を高めるとし、県が設けた有識者会議は沖縄全体が標的になりうると指摘しています。
防衛白書は、沖縄に「高い機動力と即応性を有し、幅広い任務に対応可能な米海兵隊などの米軍が駐留していることは、日米同盟の実効性をより確かなものにし、抑止力を高める」と書いています。SNSで広まる「基地がなくなれば取られる」という主張は、この見方に立つものです。
これに対し、県が設けた「米軍基地問題に関する万国津梁会議」は2021年3月の提言で、中国のミサイル能力の向上により「拠点が中国のミサイル攻撃に対して脆弱である現実は変わらない」とし、「沖縄全体がミサイルの標的となる可能性もある」と指摘しました。そのうえで、辺野古の新基地計画は直ちに中止すべきだとしています。
古謝氏は辺野古移設を容認し、玉城氏は辺野古移設と先島諸島での自衛隊の配備強化に反対しています。基地が抑止になるという見方と、標的になるという見方のどちらを重く見るかが、今回の知事選で基地をめぐって有権者が選ぶことの中身です。
判断の材料になるのは、両候補の公式サイトと選挙公報に書かれた基地・安全保障の政策と、防衛白書や県の提言といった一次資料です。SNSの動画や画像で見た主張は、ここで挙げた出典と照らし合わせてから判断に使ってください。
投票の前に有権者が確かめておきたいことは何か
「誰が作った情報か」「どの調査のどんな表現か」「期日前投票の締め切り」の3つを確かめることです。
1つ目は発信元です。候補者の主張は、陣営の公式サイトや公式アカウント、選挙公報で確かめられます。ポスターや動画を見かけたら、同じ文言が公式の発信にあるかを探してください。無ければ、陣営とは関係のない人が作ったものかもしれません。
2つ目は情勢報道の読み方です。「先行」「横一線」は調査した時点の傾向で、数値は公表されていません。未定層が1割弱から4割まで開いている以上、どの調査も結果を約束するものではありません。
3つ目は日程です。期日前投票は9月12日まで、投票日は9月13日です。9月12日に高市首相が沖縄に入るという報道も出ましたが、自民党関係者は否定しており、確定していません。こうした未確定の情報を、投票の判断材料として扱うのは避けたほうが安全です。
沖縄県知事選2026のよくある質問
ここまでの内容のうち、検索で多く寄せられそうな疑問を4つ取り上げます。
Q. 沖縄県知事選2026の開票結果はいつ分かりますか
A. 投開票は9月13日で、開票は同じ日の夜に行われます。報道各社が当日夜から結果を伝える見通しです。
Q. 沖縄県知事の任期は何年ですか
A. 4年です。地方自治法第140条で、都道府県知事の任期は4年と定められています。今回当選した人は2030年までの県政を担います。
Q. 知事選と同じ日にほかの選挙もありますか
A. あります。うるま市区では県議会議員の補欠選挙が9月13日に同時に行われます。うるま市の有権者は投票所で2つの選挙に投票します。
Q. 選挙の偽画像を見つけたらどうすればよいですか
A. 拡散せず、候補者の公式の発信と見比べてください。報道機関の知事選ファクトチェックや、日本ファクトチェックセンターがすでに検証していることもあります。
ほかの疑問は、県選挙管理委員会の特設ページでも確かめられます。
参考情報
- 日本経済新聞「沖縄県知事選挙、古謝玄太・玉城デニー両氏が横一線 共同通信情勢調査」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA061VW0W6A900C2000000/
- 朝日新聞「古謝氏、やや先行 玉城氏、激しく追う 沖縄県知事選 朝日情勢調査」 https://news.yahoo.co.jp/articles/48d6289891baa4f6b6f5d6ec3a597da2aefa5b23
- 読売新聞「沖縄知事選は古謝氏が先行」 https://news.yahoo.co.jp/pickup/6594486
- 琉球朝日放送「県知事選挙 情勢調査/古謝候補が一歩リード 玉城候補激しく追う」 https://news.yahoo.co.jp/articles/a5712172cb43eec18d9af222cd90e620715de2dc
- うるま市「令和8年9月13日執行沖縄県知事選挙及び沖縄県議会議員補欠選挙」 https://www.city.uruma.lg.jp/5001001000/contents/p000021.html
- e-Gov法令検索「地方自治法」(第140条) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067
- 琉球新報「古謝氏、玉城氏 激しく競る 投票先『決めている』88%」 https://ryukyushimpo.jp/politics/entry-5501503.html
- 沖縄タイムス「沖縄知事選、過去最多6人が立候補」 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1910730
- 沖縄タイムス「沖縄県知事選の期日前投票、6日までに7万3565人 前回比1.97ポイント増」 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1918622
- 琉球新報「三日攻防突入 支持訴え熱く 古謝候補、玉城候補」 https://news.yahoo.co.jp/articles/6932b610f34e36ff791c9eb4856fda4f34453a64
- 日テレNEWS NNN「現職×新人“一騎打ち”の構図か」 https://news.yahoo.co.jp/articles/2b2080d8e439bab92ce5cea43a5ea91ae8763adf
- 琉球放送「飛び交う偽画像・映像で歪む認知 SNS投稿量は宮城県知事選の3倍」 https://news.yahoo.co.jp/articles/f0bb4cb201f35bd06b27bd7cac832cf83466ccab
- 日本経済新聞「沖縄県知事選、最終盤『3日攻防』に突入 SNS関連投稿370万件」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC0916Q0Z00C26A9000000/
- 日本ファクトチェックセンター「古謝げんた氏『国益にかなう沖縄をつくる』? ポスター風画像は陣営のものではない」 https://news.yahoo.co.jp/articles/d081742b2d4bf4c7c3d4da506bad17dddefef789
- 読売新聞「沖縄知事選挙でデマ拡散、AI作成の偽ポスターや発言のすり替えも」 https://news.infoseek.co.jp/article/yomiuri_20260910_gyt1t00010/
- 沖縄八重山日報「首相来県情報を否定 自民、公明に配慮か」 https://news.yahoo.co.jp/articles/e89b81a1050379d6750a183fedc67d19f19180bf
- 沖縄県「辺野古新基地建設問題の争訟」 https://www.pref.okinawa.lg.jp/heiwakichi/futenma/1017409/1027449.html
- 日本経済新聞「辺野古の代執行、沖縄県の敗訴確定 最高裁が上告退ける」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE27DDV0X20C24A2000000/
- 日本経済新聞「辺野古工費 2.7倍の9300億円 普天間返還30年代以降に」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53792960V21C19A2PP8000/
- 琉球新報「辺野古新基地の総工費9300億円 工事完了は『承認』後12年」 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1048549.html
- 東京新聞「返還合意から30年、『世界一危険』普天間基地めぐる状況は」 https://www.tokyo-np.co.jp/article/481252
- 日本ファクトチェックセンター「辺野古移設を決めたのは玉城デニー氏?」 https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/politics/okinawa-tamaki-henoko/
- 沖縄タイムス「玉城デニー氏が『辺野古移設を決めた』『英断と称賛』は誤り」 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1905655
- 時事通信「辺野古『反対の民意守り抜く』 玉城氏が政策発表」 https://www.jiji.com/jc/article?k=2026081200793&g=pol
- 沖縄八重山日報「自衛隊『配備強化絶対に認めず』 玉城氏、石垣の街頭で総決起」 https://www.yaeyama-nippo.co.jp/article/33482
- 琉球新報「玉城知事 新基地建設は『対話で解決』、那覇軍港の浦添移設は『経緯踏まえ認める』」(2018年10月19日) https://ryukyushimpo.jp/news/entry-820956.html
- 沖縄タイムス「玉城デニー氏『那覇空港の管理は県です』は誤り」 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1919972
- 沖縄タイムス「古謝玄太氏が県知事選に立候補を表明 辺野古の新基地建設は『容認する』」 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1800860
- 中華人民共和国駐日本国大使館「『釣魚島は中国固有の領土である』白書(訳文)」(2012年9月) https://jp.china-embassy.gov.cn/jpn/zt/diaoyudao/zhongfanglichang/201209/t20120925_2038205.htm
- 防衛省「令和7年版防衛白書 <解説>尖閣諸島について」 https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2025/html/nc012000.html
- 日本経済新聞「人民日報『沖縄帰属問題議論を』 中国の領有権示唆」(2013年5月8日) https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0807T_Y3A500C1FF2000/
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- 時事通信「中国、対日カードに『琉球』 官製メディアが沖縄帰属に疑義」(2025年11月) https://www.jiji.com/jc/article?k=2025112000854&g=int
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- 佐賀新聞(共同)「中国海警局船、連続航行途切れる 尖閣周辺、最長の335日」 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1577131
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- 米軍基地問題に関する万国津梁会議「新たな安全保障環境下における沖縄の基地負担軽減に向けて」(2021年3月) https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/342/r2proposals.pdf
- 沖縄県「令和8年沖縄県知事選挙及び沖縄県議会議員補欠選挙」特設ページ https://www.pref.okinawa.lg.jp/kensei/senkyo/1005009/1023802/1040303/index.html
本記事は2026年9月11日の時点の報道と公表資料に基づいています。情勢調査は調査時点の傾向で、投票結果を示すものではありません。9月11日、「玉城氏の発言に一貫性はあるのか」の節(辺野古の裁判と普天間の返還時期を含む)と、「沖縄の基地をめぐる安全保障の論点は何か」の節を追記しました。





