【10/23】笹かま倒産が相次ぐ背景|宮城の老舗3社とすり身高騰

宮城県の名物「笹かまぼこ」をつくる老舗メーカーの倒産が続いています。2026年9月には亘理町の馬上かまぼこ店と塩竈市のカネコ橋沼商店が相次いで破産手続きに入り、報道によれば2025年11月には塩竈市の武田の笹かまぼこも破産しています。
この記事では、笹かまの倒産がどこでどう起きたのかを3社の一覧で整理し、背景として挙げられている原料「すり身」の値上がり、包装資材やエネルギーのコスト、売上の落ち込み、震災の借入金を、信用調査会社の速報と業界団体の発表をもとに順に見ていきます。
この記事でわかること
- どこが倒産したか:武田の笹かまぼこ(2025年11月)、馬上かまぼこ店(2026年9月)、カネコ橋沼商店(同)の3社
- 背景は何か:原料すり身の値上がりと供給不安に、包装資材・エネルギー・人件費の上昇が重なった
- これからどうなるか:業界団体は一部商品の供給制限や出荷停止の可能性まで示し、価格転嫁への理解を求めている
笹かまの倒産はどこで起きた?宮城の老舗3社の一覧
2025年11月から2026年9月までに、塩竈市の2社と亘理町の1社、創業90年を超える3社が破産しました。
3社の所在地・創業・手続きの日付・負債を並べると次のとおりです。負債は信用調査会社や倒産情報サイトの報道によるもので、武田の笹かまぼこの負債は今回の取材では確認できていません。
| 会社 | 所在地・創業 | 手続き | 負債 |
|---|---|---|---|
| 武田の笹かまぼこ | 塩竈市・1935年 | 2025年11月20日付で事業停止、21日に破産申請・同日開始決定(FNNの報道) | 確認中 |
| 馬上かまぼこ店 | 亘理町・1912年 | 2026年9月8日に破産申請・同日開始決定 | 約6億円(債権者約200名) |
| カネコ橋沼商店 | 塩竈市・1927年 | 2026年9月25日までに事業停止、28日に破産開始決定 | 約4億5400万円(約4億5000万円とする報道もある) |
3社とも、宮城の土産物売り場や直売店で長く名前を知られてきた会社です。以下で1社ずつ、何が起きたのかを見ていきます。
武田の笹かまぼこ:2025年11月に事業停止と破産
塩竈市の武田の笹かまぼこは、2025年11月21日に仙台地裁へ自己破産を申請し、同日に開始決定を受けたと報じられています。
FNNプライムオンラインの報道によると、同社は1935年の創業で、JR仙台駅構内や道の駅、百貨店などで販売していました。2013年3月期の売上高は約6億1900万円でした。コロナ禍のあとは自動販売機の導入やコラボ商品の開発に取り組みましたが、支払利息などの負担が重く赤字が続き、2025年11月20日付で事業を停止したとされています。
馬上かまぼこ店:負債約6億円で9月8日に破産申請
亘理町の馬上かまぼこ店は2026年9月8日に仙台地裁へ破産を申請し、負債は約6億円、債権者は約200名です。
東京商工リサーチによると、同社は1912年に水産物加工を目的に創業し、1980年7月に法人化しました。もとは細工かまぼこが主力でしたが、法人化のあとは笹かまぼこへ移り、直営店を広げていました。JC-NETによると、1991年5月には本社と工場、直売・見学施設を兼ねた「笹かまの郷」を開いていました。破産手続きの開始決定は、申請と同じ2026年9月8日に出ています。2026年の第77回全国蒲鉾品評会では、細工蒲鉾「特大鯛」が水産庁長官賞を受けたばかりでした。
商品は「笹ごのみ」「笹かまくん」「吉次入り笹かまぼこ」などの笹かまぼこのほか、ヒラメを使った炭火焼の笹かまぼこ「笹かまの郷」も扱っていました。仙南地区の直営店とネット販売で売っていましたが、一部の店を閉めて経費を削っていたと伝えられています。品評会で賞を取るほどの技術があっても、会社の資金繰りは別の問題として行き詰まったことになります。
カネコ橋沼商店:「松島笹」の老舗が9月28日に破産開始
塩竈市のカネコ橋沼商店は9月25日までに事業を止め、9月28日に仙台地裁から破産手続きの開始決定を受けました。
JC-NETによると、同社は1927年の創業で、主力の「松島笹」は全国蒲鉾品評会で水産庁長官賞を何度も受けています。9月25日付で公式サイトに閉店の知らせを出しました。不景気.comは、牛タンや牡蠣、フカヒレを使った笹かまぼこも手がけていたと伝えています。負債はJC-NETが約4億5400万円、不景気.comが2026年3月期末時点で約4億5000万円としていて、報道によって数字が少し違います。
手続きの流れは、9月25日に事業を止めて自己破産の申請準備に入ったことが報じられ、その3日後の9月28日に裁判所が破産手続きの開始を決めた、という順番です。「申請準備」と「開始決定」は別の段階で、記事によって書いている時点が違うため、表記が食い違って見えることがあります。
笹かまメーカーの倒産が相次ぐ背景は原料すり身の値上がり
主な原料である冷凍すり身の値上がりと供給不安が続き、各社の採算を悪化させたことが背景にあります。
笹かまぼこは、魚の身をすりつぶした「すり身」を焼いて作ります。業界団体の日本かまぼこ協会と全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会は、2025年12月5日の発表で、すり身は2024年から値上げが続いていると説明しました。2026年にも値上げが予想されるとし、加盟各社は生産の効率化や原材料の見直しでコストを削ってきたものの、自助努力だけでは限界だと訴えています。
米国アラスカ産すり身はAシーズンより15%上昇
2025年のBシーズンに出た米国アラスカ産スケソウダラのすり身は、同じ年のAシーズンより15%値上がりしました。
スケソウダラ漁は1年をAシーズン(冬から春)とBシーズン(夏から秋)に分けて行われます。業界団体の発表は、この「同じ年の前のシーズン」と比べた数字です。一方で、東南アジア産のイトヨリダイのすり身については「前年同月比」で10%以上の上昇としていて、比べている時期の取り方が違います。2つの数字を足したり並べたりして全体の値上がり率を出すことはできません。
同じ発表では、すり身以外の副原料や人件費、配送費も含めた総コストが、2025年8〜9月の時点と比べて4〜5%以上上がったとしています。
米国の生産減とロシアの加工転換で供給そのものが細る
2026年に入ると、値段だけでなく、日本へ入ってくるすり身の量そのものに不安が出ています。
業界2団体は2026年6月1日に「水産練り製品の安定供給に関する緊急声明」を出しました。声明は、米国でスケソウダラのAシーズンのすり身生産が減ったこと、ロシアですり身からフィレー(切り身)への加工の切り替えが進んでいることを挙げ、日本向けのすり身の先行きに不透明感が急速に高まっているとしています。中東情勢による原油供給の不安定化で、インドや東南アジアでは漁船の燃料が足りず、漁そのものが止まる事態も確認されたと述べています。
「カニカマ人気」の余波という指摘
朝日新聞は、世界的なカニカマ人気がすり身をめぐる状況に影響していると報じています。
朝日新聞の記事の見出しは「笹かまぼこメーカー、相次ぐ倒産 世界的な「カニカマ」人気が余波」です。カニカマもすり身から作られるため、海外で需要が伸びると原料の取り合いが起きる、という見立てです。ただし、業界団体の2つの発表には「カニカマ」という言葉は出てきません。カニカマの需要がどれだけ価格に効いているかを示す数字は、今回の取材では確認できていません。
原料の値上がりと供給不安が重なった流れを、時期の順に並べると次のようになります。
2024年〜
すり身の値上げが続く
2025年11月
武田の笹かまぼこが破産
2025年12月
業界団体がアラスカ産15%高を公表
2026年6月
供給危機の緊急声明
2026年9月
馬上・カネコ橋沼が破産
原料の値上がりは3社に共通する背景ですが、各社の倒産には売上の落ち込みや借入金の負担など、会社ごとの事情も重なっています。それを次の節から見ていきます。
すり身以外にも重なったコスト:包装資材・ナフサ・エネルギー
原料のほかに、石油からできる包装フィルム、燃料・電気代、鶏卵、人件費と物流費が同時に上がっています。
業界2団体の6月の緊急声明は、OPPやCPPといった石油由来の包装フィルムでも、原料不足と物流の目詰まりで供給不安と値上がりが同時に進んでいるとしました。冷凍すり身と包装資材の両方で供給が細るのは「これまでに例のない複合的危機」だと書いています。2025年12月の発表では、伊達巻などに使う鶏卵の値上がりや、為替と原油価格によるガス・重油・電力の値上がり、毎年上がる最低賃金と物流費も挙げていました。
倒産した会社の側でも、同じ要因が挙げられています。東京商工リサーチは馬上かまぼこ店の破産の理由として、消費の低迷と同業者との競争に加え、ロシア・ウクライナ情勢による物価高で水産物の仕入れが重くなったこと、ナフサ(石油化学製品の原料)不足などでコスト高が続いたことを挙げています。
老舗ほど苦しい理由:売上はピークの4〜6割に
馬上かまぼこ店はピークの約45%、カネコ橋沼商店は約61%まで売上が落ち、そこへコスト高が重なりました。
報道に出ている売上高を、ピークの年と直近の年で並べると次のとおりです。比べている決算期は会社ごとに違います。
| 会社 | ピーク | 直近 | ピーク比 |
|---|---|---|---|
| 馬上かまぼこ店 | 約9億円(1992年6月期) | 約4億730万円(2025年6月期・赤字6077万円) | 約45% |
| カネコ橋沼商店 | 約7億9000万円(1994年3月期) | 約4億8100万円(2026年3月期) | 約61% |
| 武田の笹かまぼこ | 確認中 | 約6億1900万円(2013年3月期) | 確認中 |
ピーク比は、報道に出た売上高を編集部が割り算したものです。売上が縮んだところへ原材料費の上昇が重なると、利益を確保しにくくなります。実際に、信用調査会社や倒産情報サイトは2社とも直近の決算が赤字だったと伝えています。
JC-NETによると、馬上かまぼこ店は2022年6月期から4期続けて赤字で、債務超過も広がっていました。店舗の一部を閉めて経費を削り、関連会社の吸収合併などで立て直しを図りましたが、資金繰りが限界に達したとされています。
震災の借入金がまだ重荷だった:カネコ橋沼商店の場合
カネコ橋沼商店は東日本大震災で工場を失い、再建の借入金を返しながらコスト高に直面していました。
JC-NETによると、2011年の東日本大震災の津波で本店工場と事務所が全壊し、約1年間休業しました。本店を建て直して2012年4月に生産を再開しましたが、そのための借入金の返済が重荷になっていました。不景気.comは、近年は売上が持ち直してきていたものの、原材料の値上がりで採算が悪くなり、資金繰りが行き詰まったと伝えています。2026年3月期は生産コストの上昇で営業段階から赤字でした。
(編集部分析)震災から立ち直った地元の老舗が、15年たって原料の国際価格の波で倒れたことは重く受け止めるべきです。設備を建て直したあとも借入金の返済が続く会社に、市況の急変が重なったときの支え方は、地域の食文化を守るうえで課題として残ると考えられます。
業界団体の緊急声明は何を求めたのか
業界2団体は政府に原料の確保を、取引先と消費者には値上げへの理解を求めています。
6月1日の緊急声明が挙げた要請は次の5つです。
- 冷凍すり身の輸入不足や供給断絶が起きないよう、政府による国際的な調整と原料確保の対策を進めること
- 包装資材の安定供給に向けて、業界の垣根を越えて対応すること
- 電気・ガスなどエネルギーの安定供給に向けた政策的な支援
- 水産練り製品の安定供給に向けた行政の総合的な支援
- 原材料・包材の値上がりを踏まえた価格改定への社会的な理解と、価格転嫁がしやすい取引環境の整備
声明は、業界として調達先を広げたりコストを吸収したりしてきたものの、いまの状況は企業努力だけで吸収できる範囲を大きく超えていると訴えています。
(編集部分析)すり身の多くを米国・ロシア・東南アジアの漁と加工に頼っている構図は、エネルギーと同じく食の分野でも海外の事情に左右されやすいことを示しています。笹かまのような地域の伝統食品を守るには、価格転嫁への理解に加えて、原料の調達先を偏らせない国の後押しが必要だと考えられます。
笹かまはこれから値上がり・品薄になるのか
業界団体は、すり身と包装資材の状況次第で、一部商品の供給制限や出荷停止の可能性があるとしています。
6月の緊急声明は、消費者と取引先に向けて、安定供給の維持が難しくなる可能性、一部商品の供給制限や出荷停止の可能性、販売規格や販売内容の見直しが必要になる可能性を示しました。2025年12月の発表では、2026年のAシーズンのアラスカ産すり身についても、すでに値上げの情報が伝えられていると書いています。
ただし、宮城のほかのメーカーがどれだけ値上げするか、どの商品が店頭から消えるかを示す公表資料は、今回の取材では見つかっていません。読者の立場によって、確かめる先は次のように分かれます。
- ほかのメーカーの値上げや品切れが気になる人:そのメーカーの公式サイトや直売店の「価格改定のお知らせ」を確かめる
- 倒産した3社の商品を探している人:販売の再開や事業の引き継ぎは、確認できる発表が出るまで未定と考える。発表が出れば破産管財人や引き継ぎ先から示される
倒産した3社の商品について気になる点を、次の質問でまとめます。
Q. 倒産したメーカーの笹かまは、もう買えないのですか?
A. 3社とも事業を停止しているため、会社として新たに製造・出荷する状態にはありません。店頭や通販に残った在庫が売られることはあり得ますが、JC-NETは、カネコ橋沼商店の通販サイトが残っていても営業を続けている根拠にはならないと指摘しています。
商品の扱いや店舗の今後は、破産管財人の判断によって変わることがあります。
笹かま倒産のよくある質問
笹かまの倒産について、検索でよく調べられている点を最後にまとめます。
Q. すり身の値上がりだけが倒産の原因ですか?
A. いいえ、すり身の値上がりは共通の背景で、それだけではありません。武田の笹かまぼこは支払利息の負担、馬上かまぼこ店は消費の低迷と同業との競争、カネコ橋沼商店は震災の借入金と、会社ごとに別の事情が報じられています。
Q. 笹かまの原料のすり身はどこから来ていますか?
A. 業界団体の発表では、米国アラスカ産のスケソウダラや東南アジア産のイトヨリダイのすり身が挙げられています。ロシアの加工の動きも日本向けの供給に影響するとしています。
Q. 馬上かまぼこ店の「笹かまの郷」はどうなりますか?
A. 会社が事業を停止して破産手続きに入っているため、営業は止まっています。JC-NETによると、財産状況の報告集会は2026年12月4日に予定されています。
新しい倒産や業界の発表が出たら、この記事で続報を足していきます。
参考情報
- 東京商工リサーチ「(株)馬上かまぼこ店」(2026年9月8日)
- JC-NET「馬上かまぼこ店が破産開始決定 創業114年「笹かまの郷」、負債約6億円」
- JC-NET「カネコ橋沼商店が破産開始 9月25日閉店、震災から再建した「松島笹」の老舗」(2026年10月7日)
- 不景気.com「宮城の笹かま製造「カネコ橋沼商店」が破産へ、負債4.5億円」(2026年9月26日)
- 日本かまぼこ協会・全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会「水産練り製品の安定供給に関する緊急声明」(2026年6月1日・PDF)
- 日本かまぼこ協会・全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会「魚肉煉り製品の価値と品質の向上を図るため」(2025年12月5日・PDF)
- FNNプライムオンライン「宮城・仙台の名物「笹かまぼこ」に暗雲 老舗メーカーが次々に破産」(2026年10月2日)
- 朝日新聞「笹かまぼこメーカー、相次ぐ倒産 世界的な「カニカマ」人気が余波」(2026年10月23日)
