【9/19】向陽紅18とは?尖閣・久場島沖の日本EEZで中国調査船2隻がワイヤ投入、4月にも同じ船が同じ海域に

【9/19】向陽紅18とは?尖閣・久場島沖の日本EEZで中国調査船2隻がワイヤ投入、4月にも同じ船が同じ海域に

沖縄県・尖閣諸島の久場島沖にある日本の排他的経済水域(EEZ)で、中国の海洋調査船「向陽紅18」と「海洋地質七号」の2隻が、ワイヤやパイプのようなものを海中に延ばしているのが相次いで確認されました。海上保安庁は巡視船と航空機から無線で調査の中止を求め、2隻はいずれも日中の地理的な中間線を西へ越えてEEZの外に出ています。向陽紅18については、2026年4月18日にもほぼ同じ海域で同じ行動が確認され、海上保安庁が発表していました。本記事では、共同通信・時事通信・内外タイムスの報道と、海上保安庁・外務省の公開資料をもとに、何が起きたのかを整理します(2026年9月19日時点の情報です)。

この記事でわかること

  • 向陽紅18の動き:9月18日午前7時10分ごろ、久場島の北北西約100キロの日本のEEZ内でワイヤのようなものを海中へ延ばし、午後3時10分ごろEEZの外へ出ました。
  • 4月にも同じ船:2026年4月18日午前7時13分ごろ、久場島の北北西約57海里(約106キロ)で同じ船が船尾からワイヤ様のものを延ばし、午後1時8分ごろ中間線を西へ越えています。
  • 海洋地質七号の動き:9月17日午後5時35分ごろから確認され、18日も続けたのち、午後8時5分ごろにEEZを離脱しました。
  • 海保が伝えた内容:4月の発表によれば、中止要求は「我が国の同意を得ない海洋の科学的調査は認められない」という趣旨を無線で伝えるものです。
  • 「相次ぐ」の実数:海保の集計では、中国船の特異行動は2025年に6件、2026年は4月20日時点で3件です。
目次

向陽紅18とは?尖閣・久場島沖の日本のEEZで何をしていたのか

向陽紅18は中国の海洋調査船で、9月18日に尖閣諸島・久場島沖の日本のEEZ内でワイヤのようなものを海中へ延ばしていた船です。

共同通信によると、海上保安庁の巡視船がこの活動を確認したのは9月18日午前7時10分ごろでした。海保は無線で調査の中止を求めています(共同通信「尖閣周辺で中国海洋調査か EEZ、海保が中止要求」9月18日)。

9月18日午前7時10分、久場島の北北西約100キロ

確認された場所は、久場島の北北西およそ100キロ、海里に直すと約54海里の海域です。

久場島は尖閣諸島を構成する島の一つで、魚釣島の東側に位置します。北北西100キロという距離は、島そのものの周辺ではなく、そこから東シナ海の中央寄りに離れた海域だということを意味します。内外タイムスは同じ地点を「約54海里」と海里で併記しています(内外タイムス「尖閣EEZに中国調査船2隻 連日のワイヤー投入、海保要求で離脱」)。

同じ船が2026年4月18日にも同じ海域で確認されている

向陽紅18は今回が初めてではなく、2026年4月18日にも久場島沖の日本のEEZで同じ行動が確認され、海上保安庁が発表しています。

第十一管区海上保安本部の発表によると、4月18日午前7時13分ごろ、巡視船が久場島の北北西約57海里(約106キロ)の日本のEEZで、向陽紅18が船尾からワイヤ様のものを海中へ延ばしている状況を確認しました。巡視船は無線で中止を求め、同船は同日午後1時8分ごろ、地理的中間線を西側へ航過しています(海上保安庁「我が国周辺海域における海洋調査船の活動(令和8年4月18日)」)。

4月と9月の記録を並べると、時刻も場所も対応の流れもよく似ています。

向陽紅18の2回の記録(海上保安庁の発表と共同通信の報道をもとに作成)
項目 2026年4月18日 2026年9月18日
確認時刻 午前7時13分ごろ 午前7時10分ごろ
場所 久場島の北北西約57海里(約106キロ) 久場島の北北西約100キロ(約54海里)
確認された行動 船尾からワイヤ様のものを海中へ延ばす ワイヤのようなものを海中へ延ばす
海保の対応 巡視船が無線で中止要求 巡視船が無線で中止要求
その後 午後1時8分ごろ中間線を西へ航過 午後3時10分ごろEEZ外へ
出どころ 第十一管区海上保安本部の発表 共同通信

4月の発表は「第1報/最終報」として出され、船体の写真も添えられています。

もう1隻の「海洋地質七号」は何をしていたのか

海洋地質七号は、向陽紅18より前の9月17日夕方から同じ海域で活動が確認されていた、もう1隻の中国の海洋調査船です。

第11管区海上保安本部(那覇)が確認したのは9月17日午後5時35分ごろ。久場島の北北西約140キロの日本のEEZ内で、パイプのようなものを海中へ延ばしていました。海保の航空機が無線で中止を求めています(共同通信「中国船尖閣沖で海洋調査か EEZ、3月以降相次ぐ」9月18日)。

17日夕から18日夜まで、およそ丸一日

海洋地質七号の活動は9月17日の夕方から18日の夜まで続き、1日をまたいでいます。

内外タイムスによると、海保は9月18日午前7時25分と午後4時25分にも警告を繰り返しました。同じ船に対して日をまたいで複数回の中止要求が出ていることになります。距離は約141キロ(約76海里)と記録されており、向陽紅18より40キロほど沖寄りの位置です。

2隻が日本のEEZ内にいた時間帯は重なっている

9月18日の日中は、向陽紅18と海洋地質七号がどちらも日本のEEZ内にいた時間帯があります。

向陽紅18が確認された午前7時10分の時点で、海洋地質七号はまだEEZ内におり、離脱したのは同じ日の午後8時5分ごろです。両船がEEZ内にいた時間帯は重なっていたことになります。ただし、その間ずっと2隻が同時に機材を海中へ延ばしていたかどうかは、公表されている情報からは分かりません。

2隻はいつ日本のEEZを出たのか?2日間の時系列

2隻はいずれも9月18日のうちにEEZを出ており、向陽紅18が午後3時10分ごろ、海洋地質七号が午後8時5分ごろです。

報道をもとに、確認できている時刻を順に並べると次のようになります。

9月17〜18日の時系列(共同通信・時事通信・内外タイムスの報道をもとに作成)
日時 船名 できごと 出どころ
9月17日 午後5時35分ごろ 海洋地質七号 久場島の北北西約140キロのEEZ内で、パイプのようなものを海中へ延ばすのを海保航空機が確認。無線で中止要求 共同通信
9月18日 午前7時10分ごろ 向陽紅18 久場島の北北西約100キロのEEZ内で、ワイヤのようなものを海中へ延ばすのを海保巡視船が確認。無線で中止要求 共同通信
9月18日 午前7時25分/午後4時25分 海洋地質七号 同様の活動が続き、海保が改めて中止を要求 内外タイムス・共同通信
9月18日 午後3時10分ごろ 向陽紅18 日本のEEZ外へ出る 共同通信
9月18日 午後8時5分ごろ 海洋地質七号 日本のEEZから離脱 時事通信

離脱の方向についても記録があります。内外タイムスは、2隻とも日中の地理的な中間線を西側へ航過して出ていったと伝えています。なお、中止要求を受けたことが退去の理由だったかどうかを示す説明は、日中どちらからも出ていません。

海上保安庁は今回どう対応したのか

海保の対応は、巡視船と航空機を出して活動状況を確認し、無線で調査の中止を求めることでした。

海上保安庁は自らのサイトで、外国の海洋調査船への対応を「事前の同意を得ない調査活動又は同意内容と異なる調査活動」への対応と位置づけ、巡視船・航空機を派遣して活動状況や行動目的を確認し、関係省庁と連携して対応すると説明しています(海上保安庁「領海・EEZを守る」)。今回確認した報道と海保の発表の範囲では、立ち入り検査や拿捕が行われたという記述は見当たりません。

中止要求で海保が伝えている文言

4月の発表によれば、中止要求は「我が国の同意を得ない海洋の科学的調査は認められない」という趣旨を無線で伝えるものです。

第十一管区海上保安本部は4月18日の発表で、巡視船から向陽紅18に対してこの趣旨の中止要求を無線で実施した、と書いています。9月の件について同じ文言が使われたかを明記した発表は確認できませんでしたが、報道が伝える「調査の中止を求めた」という対応は、4月の記録と同じ形にあたります。

「ワイヤのようなもの」という書き方になる理由

報道も海保の発表も、機材の種類を特定せず、外から見えた形を「ワイヤのようなもの」と書いているためです。

海保は4月の発表で「ワイヤー様のもの」という表現を使っています。報道でも表現は揺れており、共同通信は向陽紅18について「ワイヤのような物」、海洋地質七号については9月17日時点で「パイプのような物」と書き分けました。時事通信は海洋地質七号についても「ワイヤのようなもの」としています。どれが正しいかを断定できる情報は公表されていないため、本記事では媒体ごとの表現をそのまま併記します。

なぜ「同意のない調査」になるのか?国連海洋法条約246条

国連海洋法条約246条2項が、EEZと大陸棚での海洋の科学的調査は沿岸国の同意を得て行うと定めているためです。

条文は「排他的経済水域及び大陸棚における海洋の科学的調査は、沿岸国の同意を得て実施する」と書かれています。同条1項は、沿岸国がこれらの海域での海洋の科学的調査を規制し、許可し、実施する権利を持つとしています(海洋法に関する国際連合条約(日本語訳・データベース「世界と日本」))。海保の中止要求の文言にある「我が国の同意を得ない海洋の科学的調査」は、この枠組みを指しています。

外務省も同条約の解説で、沿岸国はEEZで天然資源の探査・開発・保存・管理などのための主権的権利を持ち、さらに人工島などの設置・利用、海洋環境の保護および保全、海洋の科学的調査に関する管轄権を持つと整理しています(外務省「海洋の国際法秩序と国連海洋法条約」令和8年9月11日更新)。

領海とEEZでは、条約上の位置づけが違います。領海には沿岸国の主権が及び、外国船には無害通航権が認められます。EEZでは、沿岸国は天然資源について主権的権利を、海洋の科学的調査などについて管轄権を持ち、外国船には航行の自由が認められます。ただし外国による海洋の科学的調査については、領海でもEEZでも沿岸国の同意が要る点は変わりません。今回、海保が巡視船と航空機で確認し無線で中止を求めたのは、このEEZ側の枠組みに基づく対応です。

日中の中間線と、食い違う主張

2隻は日本がEEZとする中間線の東側で確認され、その後いずれも中間線を西へ越えて離脱しています。

日本は両国の海岸から等しい距離にある中間線を境界の基礎とする立場です。これに対して中国は、大陸棚が沖縄トラフまで自然に続いているとして、より東側までを自国の権利が及ぶ範囲と主張してきました。海保の4月の発表も内外タイムスの記述も、船の動きを「地理的中間線を西側へ航過」という形で記録しています。日本側がどこに線を引いているかが、記録のとり方に表れています。

ワイヤやパイプは何を測っているのか

海中に機材を吊り下げる調査は海底の地形や地質、水の状態を調べるために行われますが、今回の目的を示した公式説明はありません。

海中へ延ばす機材にはいくつかの型があり、外から見える形だけでは目的を特定できません。想定される主な用途を整理すると次のようになります。

海中に機材を下ろす調査で分かること(一般的な分類。今回の目的を示すものではありません)
海底の地形
水深や起伏の形。航路の選定や、海底に何を置けるかの判断に使われます
地層と地質
堆積物の厚みや構造。石油・天然ガスなど資源の見込みを探る調査の基礎になります
水温と塩分
音の伝わり方が変わる層の位置。潜水艦の探知のしやすさに関わります

このうちどれが目的だったのかは、海保も外務省も明らかにしていません。本記事でも断定はしません。

2025年の奄美沖では約60キロ×5キロを塗りつぶすように往復していた

2025年には、中国の海洋調査船「向陽紅22」が奄美大島沖の日本のEEZで、一定の範囲を繰り返し往復していたと報じられました。

南日本新聞は2025年10月12日の記事で、この船が北西から南東に約60キロ、幅5キロの範囲を繰り返し往復し、長方形を塗りつぶすような航跡を描いていたと伝えています。船は2025年9月25日に上海を出港し、10月6日まで活動が確認されました(南日本新聞「海中にワイヤ、パイプ…中国調査船 ”ある海域”を塗りつぶすように何度も往復していた」2025年10月12日)。同紙はこの海域を、天然ガスなどの海洋資源が豊富にあると期待される日中中間線の付近だと説明しています。航跡の形からは、狙いの海域の広さと調べ方の丁寧さは読み取れますが、目的そのものは同紙も断定していません。

「相次いでいる」とはどのくらいか?海保が公表している件数

海上保安庁の集計では、中国船による特異行動は2025年に6件、2026年は4月20日時点で3件です。

共同通信は9月の記事で「3月30日以降、中国船による海洋調査とみられる特異行動が相次いでいる」と書いていますが、この表現に件数は添えられていません。海保が公表している資料には年ごとの件数があります。

外国海洋調査船の特異行動件数(海上保安庁・2026年4月20日午前8時現在。9月の2隻は含まれません)
国・地域 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年
中国 2 2 1 6 3
台湾 1 3 0 3 0
韓国 2 0 4 2 0
5 5 5 11 3

2022年から2024年までは毎年5件でしたが、2025年は11件と倍増しています。同じ資料には2026年の中国船3件の内訳も示されており、向陽紅22が3月30日、科学が4月15日、向陽紅18が4月18日です(海上保安庁「外国海洋調査船の特異行動状況(2022年〜2026年)」PDF)。共同通信が起点に挙げる「3月30日」は、この向陽紅22の件にあたります。

6月には逆に、日本の測量船が中止を求められている

2026年6月30日には、日本の測量船が中国海警局の船から調査の中止と退去を求められるという、今回と逆向きの出来事が起きています。

米外交・安全保障専門誌「ディプロマット」東京特派員の高橋浩祐氏によると、6月30日夜、日本のEEZ内で海洋調査をしていた海上保安庁の測量船「拓洋」に対し、中国海警局の船が無線で調査中止と退去を繰り返し要求しました。日本政府は外交ルートを通じて抗議しています。日本のEEZ内で海保の測量船が中国公船から中止要求を受けたのは2012年以来、14年ぶりだといいます(高橋浩祐「中国海警船が日本のEEZで海保測量船に退去要求 中国の『管轄権』主張が新段階に」2026年7月2日)。同じ海域で、日本と中国が互いに相手の調査へ中止を求める形が生まれていることになります。

今回、日本政府は抗議したのか

今回の9月17〜18日の件について、外務省が中国側へ抗議したという発表は、本記事の執筆時点では確認できませんでした。

外務省は、日本のEEZで事前の同意なく海洋の科学的調査が行われた場合、中国大使館を通じて抗議し、即時の中止を求めるという対応を取ってきたと説明しています。6月30日の測量船「拓洋」の件では、実際に外交ルートを通じた抗議が行われました。今回について同じ対応が取られたかどうかは、確認でき次第この記事に追記します。確認できていないことを「抗議しなかった」と読み替えないようご注意ください。

この件の続きを自分で確認する手順

海上保安庁の「我が国周辺海域における海洋調査船の活動」と、外務省の報道発表一覧を見れば、この件の続きを自分で追えます。

本記事で使った公開資料は、次の順でたどると見つかります。

この件の続きを追う順番
1. 海保の個別発表
「我が国周辺海域における海洋調査船の活動」に、船名入りの第1報・最終報がPDFで載ります。4月18日の向陽紅18もここにあります
2. 外務省の報道発表
報道発表の一覧で、9月17〜18日の件への抗議の発表があるかを探します。条文の位置づけは「海洋の国際法秩序と国連海洋法条約」で確認できます
3. 報道と突き合わせ
船名・時刻・距離を複数の媒体で照合します。表現が揃わない部分は、どちらか一方に寄せず両方を見ます

今回の件では、船名と時刻は複数の媒体で一致し、機材の呼び方だけが割れていました。海保の個別発表が出れば、時刻と距離は海里単位まで確定できます。

よくある質問

Q. 久場島はどこにある島ですか?記事に出てくる海域との関係は?

A. 沖縄県石垣市に属する尖閣諸島の島の一つで、魚釣島の東側にあります。ただし今回の活動が確認されたのは島そのものの周辺ではなく、そこから北北西に約100〜141キロ離れた海域です。4月18日の向陽紅18も同じ久場島の北北西約57海里(約106キロ)で、9月とほぼ同じ方角・同じ距離帯にあたります。

Q. 向陽紅18の写真や公式の記録はどこで見られますか?

A. 海上保安庁が2026年4月18日に出した「中国海洋調査船『向陽紅18』について(第1報/最終報)」に、船体の写真が別添として付いています(海上保安庁「我が国周辺海域における海洋調査船の活動(令和8年4月18日)」)。船の大きさや所属機関を説明した日本語の公開資料は、本記事の執筆時点では確認できませんでした。

Q. 海上保安庁は今回、具体的に何を伝えたのですか?

A. 4月18日の発表によれば、巡視船から調査船に対し「我が国の同意を得ない海洋の科学的調査は認められない」旨の中止要求を無線で実施しています。9月の件について同じ文言を明記した発表は確認できませんでしたが、報道はいずれも「調査の中止を求めた」と伝えています。

参考情報

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