【9/28】衆院定数削減の「削減」が消えた|10月末結論で何が決まるか

衆議院の議員定数削減を含む選挙制度の見直しは、2026年9月28日、与野党でつくる衆院選挙制度協議会の幹事会で「10月末をめどに結論を得るよう努力する」との報告書案に大筋で合意しました。ところが、9月18日に示された当初案にあった「削減」の文言は、今回の報告書案では明記されませんでした。

この記事では、9月28日に何が決まり何が消えたのか、「10月末」「1年以内」という2つの期限の違い、継続審議になっている比例45削減法案の扱い、各党の立場までを、共同通信・時事通信・東京新聞などの報道をもとに整理します。報告書案は9月30日の協議会で了承される見通しです。

この記事でわかること

  • 9月28日の合意:現行制度の見直しは「10月末をめどに結論を得るよう努力する」とし、定数は「削減」と書かずに検討対象として残した。
  • 2つの期限:「10月末」は現行制度の手直し、「1年以内」は第三者機関による抜本改革の答申で、法案の「1年」とも別物。
  • 比例45削減法案:自民・維新が6月に出した法案は7月に継続審議となり、まだ成立していない。
目次

衆院選挙制度協議会は9月28日に何を決めたのか

現行制度の見直しについて「10月末をめどに結論を得るよう努力する」とする報告書案に、与野党が大筋で合意しました。

共同通信によると、合意は9月28日の衆院選挙制度協議会の幹事会で行われ、座長の鈴木馨祐氏(自民党)が幹事会後に記者団に明らかにしました。報告書案は9月30日の協議会で了承される見通しです(共同通信)。

時事通信は、報告書案の文言をより詳しく伝えています。現行制度の見直しについては「政党間で協議を行い、10月末を目途に具体的な結論を得るよう努力する」と記載しました。野党が求める抜本改革については、衆院議長の下に有識者による第三者機関を設け、1年以内に答申を受けるとしています(時事通信)。

議員定数については「抜本改革の検討に当たっては一体的に検討する」としつつ、「現行制度の見直しに当たっても具体的な結論を得るよう努力する」と併記しました。時事通信は、野党の反発を踏まえて、定数について結論を得る期限を曖昧な表現にとどめたと報じています。

ここでいう小選挙区比例代表並立制とは、1つの選挙区から1人を選ぶ小選挙区と、政党の得票に応じて議席を配る比例代表を、別々に並べて行う今の衆院選の仕組みです。現在の定数465のうち、小選挙区が289、比例代表が176を占め、この数は公職選挙法第4条に定められています(e-Gov法令検索 公職選挙法)。「現行制度の見直し」はこの枠組みを残したまま手直しすることを指し、「抜本改革」は枠組みそのものを変えることを指します。今回の報告書案は、この2つを別々の期限で進める形をとりました。

合意の中身を3点に絞ると、次のとおりです。

項目 9月28日の報告書案の書き方
現行制度の見直し 政党間で協議し、10月末をめどに具体的な結論を得るよう努力する
抜本改革 衆院議長の下に有識者の第三者機関を置き、1年以内に答申を受ける
議員定数 抜本改革と一体的に検討しつつ、現行制度の見直しでも結論を得るよう努力する(「削減」は明記せず)

表のとおり、今回の合意は「いつまでに何を決めるか」の段取りを決めたもので、定数を何議席にするかという中身はまだ決まっていません。

なぜ「削減」の文言は報告書案から消えたのか

定数削減に反発する野党に対して、与党が一定の譲歩をしたためだと共同通信は伝えています。

9月18日に鈴木座長が示した当初案では、議員定数について、2025年国勢調査の確定値にもとづく人口動態の変化や「削減を求める民意」を踏まえ「適切に見直す」と書かれていました。与党が目指す定数削減と現行制度の見直しを「10月末をめどに結論を得るよう努力する」とし、新しい選挙制度の下で次の衆院選を実施できるよう目指すことにも触れていました(東京新聞)。

10日後の9月28日の案では、定数は「在り方も併せて検討する」扱いにとどまり、「削減」という語は入りませんでした。当初案と今回の案の違いは次のとおりです。

比べる点 9月18日の当初案 9月28日の報告書案
結論の期限 10月末をめどに努力 10月末をめどに努力(変わらず)
定数の扱い 削減を求める民意を踏まえ「適切に見直す」 在り方を併せて検討。「削減」は明記せず
第三者機関 設置し1年以内に答申 衆院議長の下に設置し1年以内に答申
次の衆院選 新制度での実施を目指すと言及 報道では確認できず

期限は変わらず、定数の書き方だけが弱まった形です。「次の衆院選を新制度で」という記述が9月28日の案に残ったかどうかは、この記事で参照した報道(共同通信・時事通信・FNN)では確認できませんでした。なお、第三者機関の名称は「衆院選挙制度調査会(仮称)」とされています(FNNプライムオンライン)。

(編集部分析)「削減」の2文字が消えたことは小さな修文に見えますが、報告書の性格を変える変更と評価できます。当初案は「削減を求める民意」という言葉で、国民の側の要求を議論の出発点に置いていました。今回の案はその言葉を落とし、定数を「検討する項目の一つ」に戻しています。国会議員が自らの議席数を決めるという構造上、議員側の都合で結論が薄まりやすいことは、有権者として冷静に見ておく必要があります。

「10月末」と「1年以内」は何が違うのか

「10月末」は現行制度の手直しの期限、「1年以内」は第三者機関が抜本改革を答申する期限で、対象がまったく違います。

報告書案には2つの期限が並んでいます。1つ目の「10月末」は、小選挙区比例代表並立制という今の仕組みを前提に、区割りや定数などを見直す協議の目安です。2つ目の「1年以内」は、衆院議長の下に置く有識者の第三者機関が、制度そのものを変える抜本改革について答申を出すまでの期間です(時事通信)。

さらに紛らわしいのが、自民・維新が提出した比例45削減法案にも「1年」という数字が出てくることです。この法案は「与野党協議で1年以内に結論が出ない場合、比例代表45を自動的に減らす」という仕組みを持つと琉球新報は報じています(琉球新報)。これは法案が成立して初めて動く規定で、報告書案の「第三者機関の1年以内」とは別の枠組みです。法案は成立していないため、この「1年」はまだ数え始められていません。

3つの期限の関係を図にすると、次のようになります。

10月末:現行制度(並立制)の手直しの結論を目指す(努力目標) 1年以内:第三者機関が抜本改革を答申(衆院議長の下) 法案の「1年」:成立後に協議不調なら比例45減(未成立)

図のとおり、10月末に出るのは現行制度の手直しの結論で、選挙制度の根本的な作り替えは、早くても第三者機関の答申が出る1年後の話になります。

時期の違いを押さえたうえで、よくある疑問を1つ取り上げます。

Q. 10月末に結論が出れば、すぐに議員定数は減るのですか。

A. すぐには減りません。定数を変えるには公職選挙法の改正が必要で、協議会の結論は法改正に向けた与野党の合意にとどまります。報告書案も「結論を得るよう努力する」という表現で、期限を守る義務までは書いていません。

次に、継続審議になっている法案がいまどうなっているかを見ます。

比例45削減法案はいまどうなっているのか

自民党と日本維新の会が提出した比例45削減法案は、7月24日の衆院本会議で継続審議と決まり、成立していません。

法案は2026年6月24日に衆院に提出されました。小選挙区はそのままにして、比例代表だけを45議席減らす内容です。提出の翌日には、法律家団体の自由法曹団が廃案を求める声明を出しています(自由法曹団)。

琉球新報によると、衆院は7月24日の本会議で、この法案を継続審議とすることを賛成多数で決めました(琉球新報)。一方、時事通信は7月28日の記事で、法案は野党の反対で成立せず、協議が難航した場合には与党が秋の臨時国会での再提出を検討していると伝えています(時事通信)。継続審議と再提出の検討という2つの報じ方があり、秋の国会で与党がどちらの形で法案を動かすのかは、9月29日時点で明らかになっていません。

この法案が比例代表だけを削る理由や、比例を足場にする政党への影響は「衆院定数削減で比例代表はどうなる?自民・維新の法案と影響を解説」で詳しく扱っています。

(編集部分析)比例だけを45減らす案は、小選挙区で議席を取りにくい新しい政党ほど影響を受ける設計です。既存の大政党が地盤を持つ小選挙区は手を付けずに残るため、「身を切る改革」という看板の下で、新興勢力の入口だけが狭まるおそれがあります。定数削減そのものに賛成であっても、どの議席をどう削るかは別に問うべき論点だと考えます。

各党は定数削減にどう向き合っているのか

自民党と日本維新の会は定数の1割削減を求め、中道改革連合・参政党・共産党は反対の立場です。

時事通信によると、7月28日の協議会には与野党7党が参加し、9月の国勢調査確定値の公表までに結論を得ることを確認しました。その場で各党が示した立場は次のとおりです(時事通信)。

政党 定数削減への立場(7月28日の協議会)
自民党 人口減少を踏まえ「定数1割削減が必要」
日本維新の会 自民党に同調
中道改革連合 「多様な民意や地方の声が切り捨てられる。断固反対」
参政党・共産党 反対

表の7月の構図は、9月28日の合意でも基本的に変わっていません。与党は削減の旗を下ろしてはいませんが、報告書に「削減」と書くことは見送り、野党の反対を踏まえた書き方を選びました。

中道改革連合は、定数削減によって「多様な民意や地方の声が切り捨てられる」と主張しています。

(編集部分析)地方の声が国会に届きにくくなるという懸念は、保守の立場から見ても軽く扱えません。人口の少ない地方は、農業や水源、国境の島々など、国土を守る最前線を抱えています。一方で、議員の数を減らすべきだと考える有権者がいることも、当初案が「削減を求める民意」と書いた背景にあります。数の議論だけでなく、地方の代表をどう確保するかを制度の中に組み込めるかが、削減論の説得力を左右すると評価できます。

結論の期限はなぜ9月から10月末へずれたのか

各会派の意見の幅が広く9月中にまとまらなかったためで、座長案が「10月末をめど」に1か月延ばしました。

鈴木座長は9月28日、各会派の「意見の幅がかなり広がっていた状況」に触れたうえで、関係者の努力に謝意を示しました。報告書は「抜本改革の実現には相応の時間を要する」との認識を示し、そのうえで現行制度の見直しを10月末めどとしています(FNNプライムオンライン)。

時事通信によると、7月28日の協議会で与野党7党は、9月の国勢調査確定値の公表までに結論を得ることを確認し、鈴木座長が8月に私案を示す方針でした(時事通信)。その後、9月18日の当初案の段階で、期限は「10月末をめど」に変わっています(東京新聞)。北海道新聞は、9月18日の座長案を「従来の方針より1カ月先延ばし」したものと報じました(北海道新聞)。

国勢調査の確定値が節目になるのは、区割りや定数の配分が人口にもとづいて決まるためです。2025年国勢調査の速報値では、日本の総人口は1億2304万人で、5年間で309万人減りました(日本経済新聞)。東京新聞は、確定値が9月29日に公表されると伝えています。

(編集部分析)7月に「9月まで」と確認した期限が、2か月たって「10月末」に延び、しかも「努力する」という言葉で結ばれました。期限を延ばす理由として国勢調査の確定値を待つことには一定の合理性がありますが、延びた期限に拘束力が無いままでは、同じことが繰り返されるおそれがあります。10月末に具体案が出るかどうかが、協議会の本気度を測る最初の物差しになります。

第三者機関に抜本改革を任せて大丈夫なのか

第三者機関の答申には、議員が自分の議席を決めるという利害の衝突を避ける利点がある一方、人選次第で結論が左右される弱点もあります。

報告書案では、第三者機関は衆院議長の下に置かれ、有識者で構成されます。答申を受けるまでの期間は1年以内とされました(時事通信)。第三者機関の設置は、主要な野党が求めてきたものだと東京新聞は伝えています(東京新聞)。誰を委員にするのか、答申にどこまで拘束力を持たせるのかは、9月29日時点の報道では明らかになっていません。

(編集部分析)選挙制度は、どの政党が議席を取りやすいかを左右する、民主主義の土台です。有識者に任せれば中立になるとは限らず、委員の顔ぶれによって結論の向きが決まってしまう面があります。国民の代表である国会が最後に責任を持って決めること、そして委員の人選と議論の過程を公開することが、制度への信頼を保つ条件だと考えます。「専門家が決めたから」で国民の議論を終わらせないことが大切です。

第三者機関の位置づけについて、よくある疑問を取り上げます。

Q. 第三者機関の答申に国会は従わなければならないのですか。

A. 報道で確認できる範囲では、従う義務は示されていません。報告書案は答申を受けて協議を進めるとしており、答申をどこまで尊重するかは今後の与野党協議で決まります。

最後に、これからの日程を確認します。

9月30日以降の日程と注目点は何か

9月30日の協議会で報告書案が了承されれば、10月末をめどに現行制度の見直しの具体案づくりが始まります。

共同通信は、報告書案が9月30日の協議会で了承される見通しだと伝えています(共同通信)。そこから先の注目点は、次の3つです。

  • 10月末までに定数の具体的な数が出るか:「削減」の文言が消えたなかで、与党が1割削減を具体案に盛り込むかどうか。
  • 比例45削減法案をどう扱うか:継続審議の法案を秋の国会で動かすのか、協議会の結論を待つのか。
  • 第三者機関の人選:誰が委員になり、1年以内の答申に向けてどんな順序で議論するのか。

(編集部分析)今回の合意で確かなのは、段取りと期限だけです。定数を減らすのか、どの議席を減らすのか、地方の代表をどう守るのかという中身は、すべて10月末以降に持ち越されました。有権者にとって大切なのは、「削減」という言葉が消えたことで議論そのものが立ち消えにならないか、そして結論が国民の目の届く場所で出されるかを見届けることです。

比例だけを削る案がなぜ新しい政党に不利なのかという論点は「比例定数45削減はなぜ危険か|新党・保守が育たない仕組みと審議強行の経緯」で整理しています。

衆院定数削減のよくある質問

今回のニュースで検索されやすい疑問をまとめます。

Q. 比例45削減法案が成立すると、比例代表は何議席になりますか。

A. 計算上は131議席になります。現在の比例代表176から45を引いた数で、衆院全体の定数は465から420になります。ただし法案は、与野党協議で1年以内に結論が出ない場合に削減する仕組みと報じられており、成立してすぐに減るわけではありません。

Q. 10月末までに結論が出なかったら、どうなりますか。

A. 報道で確認できる範囲では、期限を過ぎた場合の扱いは決まっていません。報告書案は「努力する」という書き方で、守れなかったときの手当ては示していません。比例45削減法案も成立していないため、協議が止まっても自動的に議席が減ることはありません。

協議会の結論と法案の動きは、10月末に向けて続報を追っていきます。

参考情報

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