【10/28】スペインで高速列車が衝突、少なくとも30人死亡|トレド県ウルダの事故で分かっていること

【10/28】スペインで高速列車が衝突、少なくとも30人死亡|トレド県ウルダの事故で分かっていること

スペイン中部トレド県ウルダで10月28日朝(日本時間28日夕方)、高速鉄道の列車同士が衝突する事故が起きました。自治州当局の話として、少なくとも30人の死亡が伝えられています。2本の列車には540人以上が乗っていたとされ、死傷者はさらに増える可能性があります。

この記事では、日本時間28日夜の時点で報道されている内容をもとに、何が起きたのか、死者数の報道の違い、衝突した列車、原因の見方、今年1月の事故との違い、日本人の被害と運行への影響を整理します。数字はまだ動いているため、発表元と時点を添えて書きます。

この記事でわかること

  • 何が起きたか:トレド県ウルダで、止まっていた高速列車に後続の高速列車が追突し、車両が脱線・転落した
  • 被害:自治州当局の話で少なくとも30人が死亡。地元メディアには46人、50人とする報道もあり、数字は確定していない
  • 日本人:日本外務省関係者によると、日本時間28日夜の時点で邦人被害の情報はない
目次

スペインの列車事故はトレド県ウルダで起きた高速列車の追突

事故は28日午前9時ごろ、トレド県ウルダで起き、停車中の高速列車に後続の高速列車が追突しました。

現場は首都マドリードの南約130キロで、中部カスティーリャ・ラマンチャ自治州にあります(AFP通信)。自治州政府によると、2本の列車はどちらもマドリードから南部セビリアへ向かう同じ向きの列車で、前を走っていて止まっていた列車の後ろに、もう1本が衝突しました(フランス24)。

時事通信によると、駅の近くに止まっていた民間高速鉄道「イリョ」の列車に、国鉄が運行する後続の列車が追突したとみられています。複数の車両が脱線し、少なくとも2両が土手の下に転落しました。毎日新聞は、両方の列車の車両の一部が、のり面から転落したと伝えています。

事故の流れを時刻順に並べると、次のようになります。

事故の前
システムの不具合で、現場周辺の複数の列車が一時停止したと報道
午前9時ごろ
止まっていたイリョの列車に、国鉄の後続列車が追突
直後
複数の車両が脱線し、少なくとも2両が土手の下へ転落
その後
救急隊が救助。マドリードとアンダルシア方面の高速鉄道が運転見合わせ

事故の前の「システムの不具合」は、現地紙の報道で、当局が原因として認めたものではありません。原因の見方は後の章で詳しく扱います。

死者は少なくとも30人、報道によって数字が違う

自治州当局の話として少なくとも30人の死亡が伝えられていますが、地元メディアには46人や50人とする報道もあります。

事故の直後は「少なくとも10人」と伝えられ、その後、数字が増えてきました。発表元と伝え方が報道ごとに違うため、同じ数字として比べることはできません。日本時間28日夜までに出た主な数字を、出どころごとにまとめます。

数字 出どころ 伝えた媒体
少なくとも10人死亡 自治州政府(事故直後の発表) 時事通信、フランス24など
少なくとも30人死亡 自治州当局 AFP通信、ロイター通信、時事通信
けが人80人以上 スペイン紙エル・パイス 読売新聞
少なくとも46人または50人死亡、179人以上けが 地元メディア テレビ朝日系、ABEMA TIMES
乗客540人以上 2本の列車の合計とされる数字 読売新聞、毎日新聞

当局の確認が取れているのは、日本時間28日夜の時点では「少なくとも30人」です。それより多い数字は地元メディアの集計で、当局がまだ確定させていません。

数字が報道ごとに違う理由

数字が違うのは、発表した機関と集計した時刻が報道ごとに異なるためです。

今回は、自治州政府、自治州当局、エル・パイス紙、地元メディアがそれぞれ別の時刻に数字を出し、10人、30人、46人、50人と伝えられています。数字が異なる具体的な理由は、日本時間28日夜の時点では確認できていません。どれが最終的な数字に近いかは、まだ判断できません。この記事では、当局の確認がある「少なくとも30人」を基準にしています。

首相の反応と各界の追悼

サンチェス首相はSNSで「深刻な列車事故に衝撃を受けている」と投稿し、救急隊が現地で活動していると説明しました。

サッカーのレアル・マドリードとバルセロナも、そろって哀悼の意を表明しています。

衝突したのは民間のイリョと国鉄レンフェの列車とみられる

止まっていたのは民間高速鉄道イリョの列車で、後ろから追突したのは国鉄レンフェの列車とみられています。

スペインの高速鉄道では、国鉄レンフェのほかに民間の会社も同じ線路で列車を走らせています。今回の路線は首都マドリードと南部アンダルシア地方を結ぶ幹線で、同じ向きに走る2社の列車が同じ線路上にいたことになります。

イリョの列車:止まっていたところに追突された

イリョの列車は駅の近くで止まっていたところを、後ろから追突されたと報じられています。

米CNBCは初期の報道として、追突を受けたイリョの列車の2両が脱線したと伝えています。時事通信は、少なくとも2両が土手の下に転落したとしています。

レンフェの列車:進行の許可が出た経緯が焦点

後続のレンフェの列車がなぜ止まっている列車のいる区間へ進んだのかが、原因を調べるうえでの焦点です。

CNBCは、追突したのがレンフェの高速列車AVEだった可能性を伝えています。ただし、どちらの会社も、日本時間28日夜の時点で事故の詳しい経緯を発表していません。

原因はまだ分かっておらず、信号システムの不具合が報じられている

事故の原因は公式にはまだ分かっていません。現地紙は、システムの不具合のあとに後続列車へ誤って進行の許可が出たと報じています。

時事通信が伝えたエル・パイス紙(電子版)の報道によると、事故の前に現場周辺でシステムの不具合が起き、複数の列車が一時停止していました。運行が再開されたあと、イリョの列車は動かなかったものの、国鉄の列車に誤って進行の許可が出たとされています。

鉄道では、同じ線路の前方に列車がいるあいだは、後ろの列車が入れないように信号で区間を守るのが基本です。報道どおりなら、その仕組みが不具合のあとの再開の場面でうまく働かなかった可能性があります。ただし、これは現地紙が伝えた見方で、事故調査の結果ではありません。

今回の再開の手順に問題があったかどうかは、調査中です。(編集部分析)原因が信号設備そのものにあったのか、再開のときの運用にあったのかで、再発防止策は大きく変わるとみられます。調査当局の発表を待つ必要があります。

事故が起きたのはスペインで最初に開業した高速鉄道の路線

現場のマドリードとセビリアを結ぶ路線は、1992年に開業したスペイン最初の高速鉄道の路線です。

この路線は、セビリア万博に合わせて1992年に開業し、スペインの高速鉄道AVEの始まりになりました。首都マドリードから中部のカスティーリャ・ラマンチャ地方を抜け、コルドバを経てセビリアへ向かいます。途中で分かれてマラガ方面へ向かう列車もあり、首都と南部アンダルシア地方を結ぶ大動脈です。

国鉄と民間が同じ線路を走る仕組み

スペインの高速鉄道では、国鉄レンフェのほかに、民間の会社も同じ線路で列車を走らせています。

スペインは欧州連合(EU)の方針に沿って旅客鉄道の市場を開き、2020年代に入ってから民間の会社が高速鉄道に参入しました。イリョはその1社で、マドリードとアンダルシア地方を結ぶ区間でも運行しています。線路や信号の管理は列車を走らせる会社とは別の公的な機関が担っていて、複数の会社の列車が同じ線路を時間をずらして走ります。

今回の事故は、別々の会社が運行する2本の列車が、同じ線路の上で追突した形です。運行する会社が違うことが事故に関係したかどうかは、確認されていません。

原因を調べるのは鉄道事故の調査機関

スペインでは鉄道事故の原因を、鉄道事故の調査を担う政府の調査委員会が調べます。

調査では、信号やシステムの記録、運転士と指令のやり取り、列車の速度などを確かめるのが一般的です。1月の事故でも調査委員会が原因を調べており、最終的な結論が出るまでには長い時間がかかることがあります。今回も、日本時間28日夜の時点では、当局から原因についての公式の説明は出ていません。

(編集部分析)調査の結果、原因がどこにあったと示されるかは、複数の会社が同じ線路を使う国の鉄道にとって参考になる点だといえます。

今年1月のアダムスの事故に続く2度目の重大事故

今回の事故は、1月に南部アダムス近くで40人以上が亡くなった事故に続く、今年2度目の高速鉄道の重大事故です。

1月の事故は、南部アンダルシア地方のコルドバ県アダムス村の郊外で起きました。AFP通信は46人、時事通信は40人以上が死亡したと伝えています。ロイター通信は、今回の事故を「9カ月前にも同じ路線で事故」と報じています。毎日新聞は、今回の鉄道が、1月に46人が犠牲となった事故を起こした鉄道会社によって運行されていると伝えています。

2つの事故を並べると、次のようになります。

項目 2026年1月の事故 2026年10月28日の事故
場所 南部コルドバ県アダムス近く 中部トレド県ウルダ
路線 マドリードとアンダルシアを結ぶ高速鉄道 マドリードとセビリアを結ぶ高速鉄道
事故の形 高速列車2本が絡む衝突・脱線 停車中の列車に後続列車が追突、脱線・転落
死者 40人以上(AFPは46人) 少なくとも30人(日本時間28日夜・自治州当局)

同じ年に、同じ幹線で2度、数十人が亡くなる事故が起きたことになります。

2件の事故に共通する安全管理上の問題があるかどうかは、現時点では分かっていません。(編集部分析)同じ幹線で同じ年に2度の重大事故が起きたことで、路線全体の安全管理が議論になる可能性があります。

日本人の被害の情報はなく、高速鉄道は運転を見合わせている

日本外務省関係者によると、日本時間28日夜の時点で邦人被害の情報はありません。

マドリードとアンダルシア方面の高速鉄道は、事故を受けて運転を見合わせています。

共同通信によると、在スペイン日本大使館が現地当局から情報を集めています。韓国の聯合ニュースは、駐スペイン韓国大使の話として、韓国人6人が乗っていて軽傷を負ったと伝えています。

CNBCによると、マドリードとアンダルシア地方を結ぶ高速鉄道の運行は止まっています。セビリアやコルドバ、マラガ方面へ鉄道で移動する予定の人は影響を受ける可能性があります。運行の再開時期は、日本時間28日夜の時点では伝えられていません。

立場ごとに、確かめる先が違います。現地にいる家族と連絡が取れない人は、在スペイン日本国大使館と外務省へ。高速鉄道に乗る予定がある人は、乗る会社の公式サイトで運休と予約の変更の扱いを確かめてください。

高速鉄道が止まっているあいだ、マドリードとセビリアのあいだは飛行機や長距離バスで移動する方法があります。ただし、鉄道から乗り換える人が増えると、席が取りにくくなったり、料金が上がったりすることがあります。予約済みの高速鉄道の切符は、まず購入した会社の案内で、払い戻しや変更の扱いを確かめるのが先です。旅行会社を通して予約した人は、旅行会社にも連絡しておくと手続きが早く進みます。

外務省の「たびレジ」に登録しておくと、現地の安全情報をメールで受け取れます。

スペインの列車事故で分かっていること・分かっていないこと

確かなのは事故の場所と形、少なくとも30人の死亡で、最終的な死者数と原因はまだ分かっていません。

日本時間28日夜の時点の情報を、確かさで分けてまとめます。

分かっていること 分かっていないこと
事故はトレド県ウルダで28日午前9時ごろに起きた 最終的な死者数・けが人の数
止まっていた列車に後続の高速列車が追突し、車両が脱線・転落した 後続列車に進行の許可が出た理由(当局の調査結果)
自治州当局の話で少なくとも30人が死亡 運転見合わせがいつまで続くか
日本人の被害の情報は今のところない(外務省関係者) 1月の事故との共通点があるかどうか

死者数や原因は、スペイン政府と調査当局の発表で変わる可能性があります。

今後の焦点は3つあります。1つ目は、救助と身元の確認が進んだあとの最終的な死者数です。2つ目は、事故の前に起きたとされるシステムの不具合と、後続の列車に進行の許可が出た経緯について、調査当局が何を明らかにするかです。3つ目は、マドリードとアンダルシア方面の高速鉄道がいつ再開するかで、スペイン国内の移動や旅行者の予定に直接かかわります。

移動の予定がある人は、レンフェやイリョの公式サイトで運休と予約変更の条件を確かめてください。現地の家族と連絡が取れない人は、在スペイン日本国大使館の案内を確認してください。

スペインの列車事故のよくある質問

本文で触れきれなかった疑問に答えます。

Q. 事故を起こした列車の運行会社は、ほかの路線でも走っていますか?

A. 走っています。国鉄レンフェはスペイン各地の高速鉄道を運行し、イリョもマドリードとバルセロナ、バレンシアなどを結ぶ路線を走らせています。事故の区間以外の運行状況は、各社の公式サイトで確かめてください。

Q. 現地にいる家族と連絡が取れません。どこに問い合わせればよいですか?

A. 在スペイン日本国大使館と、外務省の海外安全ホームページの案内を確認してください。鉄道会社も事故の関係者向けの窓口を設けることがあり、乗っていた列車の会社の公式サイトにも案内が出るか確かめてください。

Q. スペイン旅行は取りやめたほうがよいですか?

A. この記事では判断できません。日本時間28日夜の時点で、事故はマドリードとアンダルシア方面の高速鉄道の区間に限られた話として伝えられています。外務省の危険情報と、利用する交通機関の運行状況を見て判断してください。

新しい発表があれば、この記事に追記します。

参考情報

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