【10/1】高市首相「店の風評にも関わる」発言とは|消費税1%で食料品は本当に値下がりするのか

高市早苗首相は2026年10月1日、日本テレビの単独インタビューで、2027年4月から予定している食料品の消費税率1%への引き下げについて「税率引き下げ分については基本的に価格に反映される」との認識を示しました。減税後も同じ値段で売る店があれば「その店の風評にも関わります」とも語っています(日テレNEWS NNN・毎日新聞・日本経済新聞)。

この記事では、首相が実際に何と言ったのか、食料品の消費税1%はいつから始まるのか、税率が下がれば店頭の値段は本当に下がるのか、小売業界の見方とドイツの先例までを、報道と政府の資料をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 発言:首相は10月1日、減税分は「基本的に価格に反映される」と述べ、値下げしない店は「風評にも関わる」と語りました。
  • 制度:政府の大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に下げます。法案の成立が前提です。
  • 値下がりの見通し:小売業界は「ある程度下がる」との見方で一致していますが、ドイツの先例では店頭価格の下げ幅は減税分の7割ほどでした(日本経済新聞)。
目次

高市首相の「店の風評にも関わる」発言とは 10月1日に何を語ったのか

減税後も同じ値段で売る店は風評に関わるので、店は一定の値下げを試み、減税分は基本的に価格に反映されるという見通しです。

日テレNEWS NNNによると、首相は「私自身の感覚としましても、例えば今日から消費税率が引き下げられましたという時に、同じ飲食料品を昨日と同じ値段で売っているお店があったら、その店の風評にも関わりますので、日本の商慣行ということを考えると、一定の値下げを試みる傾向にあると思っております」と述べました。毎日新聞は、首相が「税率引き下げ分については基本的に価格に反映される」と語ったと伝えています。

日本経済新聞によると、首相は社会保障国民会議のヒアリングでも、小売業の団体から価格が下がるという意見が多く示されたと説明しました。インタビューでの主な発言を表にまとめます。

論点 首相の発言 出典
価格への反映 「税率引き下げ分については基本的に価格に反映される」 毎日新聞・日本経済新聞
値下げしない店 昨日と同じ値段で売る店があれば「その店の風評にも関わります」 日テレNEWS NNN
値下げの見通し 日本の商慣行を考えると「一定の値下げを試みる傾向にある」 日テレNEWS NNN
物価を押し上げる懸念 生活必需品で消費期限もあり、買いだめで急に消費が増える効果は「相対的には大きくない」 毎日新聞・日本経済新聞
財政 「マイナスの影響があるようなことは決していたしません」 日テレNEWS NNN

表のとおり、首相が挙げた根拠は、値下げを義務づける仕組みではなく、日本の商慣行と店の評判です。「一定の値下げ」という言い方で、減税分がすべて値下げに回ると言い切ったわけではない点も、発言の文言どおりに押さえておく必要があります。

(編集部分析)食料品の負担を下げるという方向は、物価高のなかで国民の可処分所得を守る政策として評価できます。そのうえで、減税の効果が家計に届くかどうかを「店の評判」に委ねる説明だけでは、心もとなさが残ります。減税に使う財源は国民のお金です。その分が確かに値札に表れているかを、政府が数字で確かめて公表する仕組みまで示せるかが問われます。

食料品の消費税1%はいつから始まるのか 政府の大綱の中身

政府の大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を今の8%から1%に下げます。

政府は2026年9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を閣議決定しました。今の軽減税率の対象になっている飲食料品について、消費税率を地方消費税と合わせて1%にする特例をつくる内容です。国税庁と財務省は、法案が国会に提出され、可決・成立した場合の内容だとしています。毎日新聞によると、関連法案は10月5日に召集される臨時国会で審議される予定です。

比べる点 今の制度 政府の大綱(9月15日閣議決定)
飲食料品(酒類・外食を除く) 8% 1%
それ以外(標準税率) 10% 10%のまま
期間 2019年10月から 2027年4月1日〜2029年3月31日の2年間
状態 実施中 閣議決定。法案の成立が前提

表のとおり、下がるのは今8%がかかっている飲食料品だけで、外食や酒類、日用品などの10%は変わりません。2年間の期間限定で、2029年4月には元の8%に戻る設計です。ほかの党の案との違いは、公明党の岡本三成新代表が示した「食料品0%・標準税率12%」の記事で比べています。

消費税が1%になれば店頭価格は必ず下がるのか

必ず下がるとは限りません。売値を決めるのはそれぞれの事業者で、税率の引き下げ分をどこまで値下げに回すかは店の判断になるためです。

日本経済新聞(2026年2月2日)は、消費税を下げても店頭価格が税率の分だけ下がるとは限らない理由として、商品が消費者に届くまでの各段階で別々の事業者が売値を決めており、すべての事業者が税率の分だけ下げるとは限らない点を挙げています。包装材や人件費など原材料以外の費用に充てられる可能性や、税率を元に戻すときに価格が戻りきらない可能性にも触れています。

首相の発言も、値下げを義務づける制度があるという説明ではなく、「商慣行」と「風評」を理由に、店が値下げを試みるだろうという見通しを述べたものです。

税抜き1,000円の食料品なら70円下がる計算

税抜き価格が変わらなければ、税抜き1,000円分の食料品は税込み1,080円から1,010円になり、70円下がります。

分かりやすくするため、税抜き価格を据え置いた場合を編集部で計算しました(実際の値段は店が決めるため、このとおりになるとは限りません)。

税抜きの食料品の買い物 今(8%)の税込み 1%のときの税込み 差
1,000円 1,080円 1,010円 70円
5,000円 5,400円 5,050円 350円
月60,000円 64,800円 60,600円 4,200円

表は、税抜き価格を据え置き、税率の変更だけを反映した場合の差額です。税込み価格で見ると、1,080円が1,010円になるので、下がる割合は約6.5%です。「8%から1%だから7%安くなる」とは少しずれる点に注意が必要です。店が税抜き価格を上げれば、下がる幅はこれより小さくなります。

小売業界は値下げについて何と言っているのか

小売の業界団体は、税率を下げれば店頭価格もある程度は下がるという見方で一致しています。ただし値上げの要因もあると説明しています。

日本経済新聞(2026年3月18日)によると、超党派の社会保障国民会議の実務者会議は、スーパーやコンビニ、百貨店などの業界団体から聞き取りをしました。出席した団体は、税率を下げれば店頭の販売価格もある程度下がるという見方で一致した一方、仕入れ値の上昇やシステム改修の費用を価格に乗せることで、販売価格が上がる可能性もあると説明しています。

この聞き取りは食料品の税率を0%にする案を検討していた時期のもので、団体側はPOSレジなどの改修に時間がかかるとして「法改正から最低でも1年は必要」と主張しました。短い期間で税率を変えることは経営に悪い影響があるとして、「他の手段があるのであれば、検討してほしい」という意見も出ています(日本経済新聞)。

(編集部分析)現場の声は「下がるが、全部とは限らない」という率直なものです。レジの改修や値札の付け替えにかかる費用は、とくに体力の乏しい中小の商店ほど重くのしかかります。価格が下がりきらない店を「風評」で追い込むのではなく、中小の事業者が無理なく値下げできるよう改修の負担を軽くする手当てを、政府が先に用意するのが筋だと考えられます。

ドイツでは減税分の7割 海外の先例はどうだったのか

ドイツが2020年に付加価値税を下げたとき、スーパーの店頭価格の下げ幅は減税分の7割ほどにとどまりました。

日本経済新聞(2026年2月2日)によると、ドイツは2020年7月から半年間、日本の消費税にあたる付加価値税を引き下げました。ドイツの研究機関CESifoの報告書では、スーパーの店頭価格の下げ幅は減税分の7割ほどだったとされています。減税分の流れを図にします。

①税率が下がる
国に納める消費税が減る(8%→1%)
②店が値段を決める
仕入れ値・人件費・レジ改修費も見て判断
③値下げに回る分
ドイツの先例では減税分の7割ほど
④残りの分
費用の上昇分や店の利益に回る可能性

図のとおり、税率が下がった分がそのまま値札に表れるわけではなく、あいだに「店が値段を決める」段階が入ります。ドイツと日本では税率の下げ幅も期間も違うため、日本で同じ割合になるとは限りません。仮に7割だった場合、税抜き1,000円の食料品で値下がりするのは70円のうち49円ほどという計算になります(編集部による仮の計算です)。

(編集部分析)7割という数字は、首相の「一定の値下げ」という言い方と矛盾しません。ただ、残りの3割にあたる分がどこへ行ったのかが国民に見えなければ、「減税したのに安くならない」という不信だけが残ります。国民の負担を軽くするための減税である以上、どれだけ値下げに回ったのかを政府が調べて示すことが、政策への信頼を守る条件になります。

買いだめや物価高の懸念に首相はどう答えたのか

首相は、食料品は消費期限があり、買いだめで急に消費が増える効果は大きくないと述べ、物価を押し上げる懸念を否定しました。

毎日新聞によると、減税で需要が増えて物価高につながるという懸念について、首相は「生活必需品で消費期限もある。買いだめをして急激に消費が増えるという効果は相対的には大きくない」と述べました。日本経済新聞によると、首相は物価高が「特に低所得世帯に非常に大きな負担になっている」と指摘し、この減税を「賃金の底上げを推進する政策と一緒に行う」ことで、「生活必需品に対する支援として必要な施策」だと説明しています。

財政については、日テレNEWS NNNによると、首相は「確実に財源確保しながら、必要な財政需要に対応していきますので、これがまさに『責任ある積極財政』なんですね」と述べ、今の国民にも将来の国民にも「マイナスの影響があるようなことは決していたしません」と強調しました。

(編集部分析)食料品は暮らしに欠かせない支出なので、その税を下げることは、家計に占める食費の割合が高い世帯ほど助けになります。減税と賃上げを一緒に進めるという説明は、緊縮や増税に頼らずに国民の暮らしを立て直す道として理にかなっています。課題は2年後です。2029年4月に税率が8%へ戻るとき、家計には実質的な負担増になります。そのときの景気や賃金を見て延長や恒久化を判断する基準を、今のうちから示しておくことが求められます。

臨時国会はいつから 法案成立までの流れ

関連法案は10月5日に召集される臨時国会で審議される予定で、成立すれば2027年4月1日から税率が下がります。

2026年9月15日
政府が大綱を閣議決定
10月1日
首相が「基本的に価格に反映される」と発言
10月5日
臨時国会を召集。関連法案を審議する予定(毎日新聞)
2027年4月1日
飲食料品の税率を1%に(法案の成立が前提)
2029年3月31日
特例の期限。4月から8%に戻る設計

図のとおり、今は閣議決定の段階で、法律はまだ成立していません。国会の審議では、価格への反映をどう確かめるのか、レジの改修が間に合うのか、2年後に税率を戻すのかが論点になるとみられます。首相の今回の発言は、その審議を前に政府の見通しを示したものといえます。

買い物をする側は何を見ればよいのか

減税の前後で、同じ商品の「税抜き価格」が変わっていないかを見比べるのが、いちばん確かな確かめ方です。

税率が下がっても、税抜き価格が同時に上がれば、支払う金額はあまり変わりません。レシートや値札には税抜き価格(本体価格)が書かれていることが多いので、よく買う商品について、2027年3月までの本体価格を控えておくと、4月以降に比べることができます。

制度の中身を自分で確かめるときは、①国税庁・財務省の「消費税率引下げ特設サイト」(対象の品目と期間)、②内閣官房が公表している大綱、③臨時国会での法案審議と首相・財務相の答弁の3か所を見ると、報道と政府の正式な説明を突き合わせることができます。

消費税1%と値下げをめぐるよくある質問

本文で触れきれなかった周辺の疑問に、短く答えます。

Q. 持ち帰りの弁当や宅配は1%になりますか?

A. 今の軽減税率では、持ち帰りや宅配の飲食料品は8%の対象です(国税庁)。大綱はこの8%の対象を1%にする内容です。店内で食べる場合は外食にあたり、10%のままです。

Q. 新聞の定期購読はどうなりますか?

A. 週2回以上発行される新聞の定期購読は、今の制度のまま8%に据え置かれます(国税庁・財務省の特設サイト)。

臨時国会で法案の審議が進み、価格への反映について新しい説明が出たら、この記事に追記します。出典は下の参考情報にまとめています。

参考情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次