【10/19】火山の重点評価に十勝岳など4火山|駒ケ岳・吾妻山・阿蘇山の選定理由と警戒レベル

政府の火山調査委員会は2026年10月19日、国内111の活火山の現状評価をまとめ、今後重点的に評価する火山として十勝岳(北海道)、北海道駒ケ岳、吾妻山(山形・福島両県)、阿蘇山(熊本県)の4火山を新たに選びました。4火山は来年の次回会合に向けてデータを増やし、想定される噴火の規模や活動の推移を詳しく評価します。
このうち十勝岳・北海道駒ケ岳・阿蘇山は、2026年に入って気象庁の噴火警戒レベルが動いた火山です。この記事では、4火山が選ばれた理由と、2026年10月20日時点で確認できる警戒レベル・警戒範囲を、気象庁と文部科学省の発表をもとに火山ごとに整理します。
この記事でわかること
- 選ばれた4火山:十勝岳・北海道駒ケ岳・吾妻山・阿蘇山。直近1年の噴火や活動の変化が選定の基準です。
- いまの警戒レベル:十勝岳・北海道駒ケ岳・阿蘇山はレベル2(火口周辺規制)、吾妻山はレベル1と気象庁のページに表示されています。
- 重点評価で変わること:警戒レベルがすぐ上がるわけではなく、噴火の規模と推移を詳しく評価するための指定です。
重点評価の4火山はどこか(2026年10月19日選定)
選ばれたのは十勝岳・北海道駒ケ岳・吾妻山・阿蘇山の4つです。北海道から2火山、東北と九州から1火山ずつ入りました。
いずれも活動に変化があり、推移を詳しく見る必要があると判断された火山です。
日本経済新聞と共同通信の配信によると、重点評価の対象は「直近1年間に噴火した火山」と「活動が確認され、推移について検討が必要な火山」です。十勝岳は今年の噴火が理由に挙がり、残る3火山は活動の変化が理由とされました。
4火山の選定理由と、気象庁が出している現在の警戒レベルを1つの表にまとめます。
| 火山 | 所在 | 選ばれた理由(報道・委員長の説明) | 現在の警戒レベル(確認日) | 警戒範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 十勝岳 | 北海道(美瑛町・上富良野町など) | 7〜8月の噴火。切迫性は下がったが活動水準は高い | レベル2(10月16日に3から引き下げ) | 62-2火口から概ね1.5km |
| 北海道駒ケ岳 | 北海道(道南) | 警戒レベルの変動。切迫性が高いかを評価する必要 | レベル2(10月16日の解説情報で継続) | 火口から概ね4km |
| 吾妻山 | 山形県・福島県 | 断続的な活発化を繰り返す。長期的に見ていく | レベル1(気象庁の吾妻山のページ) | 火口周辺規制なし |
| 阿蘇山 | 熊本県(阿蘇市・南阿蘇村・高森町) | 警戒レベルの変動。切迫性が高いかを評価する必要 | レベル2(10月9日の解説情報で継続) | 中岳第一火口から概ね1km |
表のとおり、4火山のうち3火山はいまもレベル2で、火口の周りに入れない状態が続いています。吾妻山だけはレベル1で、選ばれた理由も「長い目で見る」という点がほかの3火山と違います。
選定の基準は「直近1年の噴火」と「活動の変化」
基準は、直近1年間に噴火したか、活動が確認されて推移の検討が必要かの2つです。噴火が理由になったのは十勝岳だけでした。
委員会は毎年秋の定例会合で111の活火山すべての現状を評価し、そのなかから重点的に見る火山を選んでいます。2025年は雌阿寒岳(北海道)や霧島山(宮崎・鹿児島両県)など5火山が対象でした(日本経済新聞・共同通信配信)。
「重点評価」に選ばれると何が変わるのか
国の委員会が噴火の規模や推移を詳しく評価するようになります。住民や登山者への規制は、この指定では変わりません。
登山規制や避難の判断の基準になるのは、これまでどおり気象庁の噴火警戒レベルと、地元の市町村の指示です。重点評価は、その判断の裏付けになる「この火山はどこまでの噴火が起こりうるか」という見立てを厚くする作業にあたります。
報道によると、4火山は来年の次回会合に向けて観測データを拡充し、評価を詳しくする予定です。気象庁の警戒レベルとの関係を、役割ごとに並べます。
| 項目 | 噴火警戒レベル | 重点評価 |
|---|---|---|
| 出すところ | 気象庁(各管区気象台) | 政府の火山調査委員会 |
| 目的 | いま警戒が必要な範囲と取るべき行動を知らせる | 起こりうる噴火の規模と推移を詳しく評価する |
| 変わる速さ | 活動に応じて随時(今年の十勝岳は3回変更) | 年1回の定例会合が基本(今年は十勝岳で臨時会合あり) |
| 住民・登山者への影響 | 立ち入り規制・避難の目安になる | 直接の規制はない |
表のとおり、山に入れるかどうかの目安になるのは噴火警戒レベルの側です。重点評価の指定そのものは、新しい立ち入り規制を意味しません。旅行や登山の可否は、最新の噴火警報・予報と自治体の規制で判断してください。
読者が迷いやすい点を1つだけ確認しておきます。
Q. 重点評価に選ばれた火山は、近く噴火するということですか?
A. そうとは言えません。重点評価は活動の変化を詳しく調べるための指定で、噴火の時期を予測したものではありません。差し迫った危険の有無は、気象庁の噴火警戒レベルと解説情報で確かめてください。
ここからは4火山を1つずつ見ていきます。最初は、今年もっとも大きく動いた十勝岳です。
十勝岳はレベル2に下がったのになぜ選ばれたか
十勝岳は今年噴火したうえ、レベルが下がった後も熱活動が高い状態だからです。委員長は切迫性は下がったが注意は必要だと述べました。
日本経済新聞によると、清水洋委員長は19日の会見で「切迫性は少し下がった」と述べる一方、活動のレベル自体は高く、引き続き注意が必要だとしました。共同通信の配信記事は、十勝岳で7〜8月に小規模な噴火が3回あったと伝えています。気象庁の10月16日の発表は、8月6日の「ごく小規模な噴火」以降は噴火を観測していないとしています。
今年の十勝岳の動きを、気象庁と文部科学省の発表から時系列で並べます。
図のとおり、十勝岳は4か月でレベルが3回変わり、国の委員会が臨時で集まるほど動いた火山です。レベルが2へ戻った3日後に重点評価に入ったのは、活動が落ち着いたと見なされていないことを示しています。
9月16日の臨時会合で示された見立て
火山性地震がさらに増えればマグマ噴火が起こる可能性があり、火砕流や溶岩流のおそれもある、という見立てでした。
文部科学省の発表によると、火山調査委員会は8月以降に山体付近でやや規模の大きな火山性地震が起きるなど活動の高まりが見られるとして、本部ができてから初めて臨時会合を開きました。評価文は、マグマ噴火が起きた場合、火山灰などが降るだけでなく、状況によって火砕流や溶岩流が発生するおそれがあるとしています。
10月16日にレベル2へ下げた理由
大きな火山性地震が起きなくなり、地震活動が下がってきたためです。気象庁は概ね3kmまで届く噴火の可能性は低くなったとしました。
気象庁によると、9月12日にレベル3へ上げた後、山体付近で振幅の大きな火山性地震は起きておらず、地震活動は低下傾向にあります。このため、62-2火口から1.5kmを超えて概ね3kmの範囲に影響する噴火の可能性は低くなったと判断しました。
レベル2でも続いている警戒
熱活動が高い状態が続いており、62-2火口から概ね1.5kmでは大きな噴石への警戒が必要です。山の膨張を示す変化も見られます。
気象庁は、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が増え、山体付近のやや深い場所の膨張を示す地殻変動も見られると説明しています。風下側では火山灰や小さな噴石が遠くまで降るおそれがあるとして、地元自治体の指示に従うよう呼びかけています。7月の噴火の経緯は「十勝岳が22年ぶり噴火|警戒レベル2据え置きの理由と温泉・観光への影響」でまとめています。
北海道駒ケ岳は10月2日に警戒レベル2へ
北海道駒ケ岳は10月2日朝にレベル1から2へ上がり、火口から概ね4kmで大きな噴石への警戒が続いています。
気象庁は、山頂火口原の中で小噴火が起こるおそれがあるとしています。
気象庁によると、10月2日0時ごろから山頂火口原の方向が上がる傾斜変動が見られ、山頂火口原の浅い場所を震源とする火山性地震が増えたため、同日7時30分にレベルを2へ引き上げました。
10月16日の解説情報(第14号)では、9月26日ごろから続く傾斜変動は鈍りながらも続き、山頂火口原の浅い場所が膨らんだ状態にあるとしています。地震は10月4日以降観測されておらず、山頂の監視カメラでも噴気に目立った変化はありません。それでも「火山活動は高まっており、山頂火口原内で小噴火が発生するおそれがある」としています。
日本経済新聞によると、清水委員長は北海道駒ケ岳と阿蘇山について、警戒レベルに変動があったことから、切迫性が高いかどうかを評価する必要があると述べました。
阿蘇山は2026年に警戒レベルが3回動いた
阿蘇山は6月にレベル2、8月に3へ上がり、9月1日に2へ戻りました。いまは中岳第一火口から概ね1kmで警戒が続いています。
気象庁の発表と報道から、今年の阿蘇山のレベルの動きを表にまとめます。
| 日付 | レベル | 理由・状況 | 警戒範囲 |
|---|---|---|---|
| 6月21日 | 1→2 | 火口周辺警報を発表 | 中岳第一火口から概ね1km |
| 8月14日15時45分 | 2→3 | 火山性微動の振幅が増え、二酸化硫黄が1日2,000トンを超えて急増 | 概ね2km(大きな噴石・火砕流) |
| 9月1日16時 | 3→2 | ガスの急な増減がなく、微動も小さい状態が続いた | 概ね1km |
| 10月9日 | 2(継続) | 噴煙は最高で火口縁上1,000m。二酸化硫黄の放出量は多い | 概ね1km |
表のとおり、阿蘇山は夏に一度レベル3まで上がり、いまはレベル2に戻っています。ただ、10月9日の解説情報でも火山活動は「高まった状態」とされています。
8月14日にレベル3へ上がったときの数字
二酸化硫黄が1日2,000トンを超え、8月6日の1,200トンから急増したことが決め手でした。微動の振幅も大きくなりました。
ウェザーニュースによると、8月12日19時ごろから火山性微動の振幅が大きくなり、14日15時過ぎには中岳西山腹の観測点で1分間の平均振幅が毎秒4マイクロメートルを超えました。現地調査でガスの急増が確かめられ、同日15時45分にレベル3へ引き上げられました。9月1日の引き下げは、この2つの数字がその後落ち着いたことによるものです。
気象庁は、2026年5月ごろから草千里付近の深い場所にあるとみられるマグマだまりにマグマがたまっていることを示す地殻の伸びが観測され、8月ごろから停滞していると説明しています。レベル3のときは阿蘇山上広場が規制範囲に入っていました(ウェザーニュース)。
吾妻山が「長期的に見ていく」火山とされた理由
吾妻山は断続的な活発化を繰り返しているため、長い期間で推移を見る対象として選ばれました。ほかの3火山とは理由が違います。
日本経済新聞によると、委員会は吾妻山について、活発化を繰り返していることから長期的に見ていく方針を示しました。気象庁の吾妻山のページでは、噴火警戒レベルは1(活火山であることに留意)と表示されています。
気象庁の過去の発表では、吾妻山は2018年9月と2019年5月に、大穴火口の方向の地殻変動などを理由にレベル2へ引き上げられ、2019年6月に1へ戻っています。大穴火口の周辺では地熱域の広がりと火山ガスの噴出が続いているとされています。今回の重点評価は、こうした「上がっては戻る」動きを長い目で追うためのものと受け止められます。
登山・観光の前に確かめること
出かける前に、気象庁の噴火警戒レベルと地元自治体の規制を確かめてください。警戒範囲は火山ごとに違います。
2026年10月20日時点で気象庁の発表から確認できる警戒範囲を、もう一度まとめます。
- 十勝岳:62-2火口から概ね1.5kmで大きな噴石に警戒(レベル2)
- 北海道駒ケ岳:火口から概ね4kmで大きな噴石に警戒(レベル2)
- 阿蘇山:中岳第一火口から概ね1kmで大きな噴石と火砕流に警戒(レベル2)
- 吾妻山:レベル1(火口内などで火山灰の噴出が起こる可能性はある)
どの火山でも、風下側では火山灰や小さな噴石が遠くまで降るおそれがあります。登山道や駐車場の閉鎖は市町村や管理者が決めるため、気象庁の発表と現地の自治体の発表を両方見てから出かけるのが確実です。
4火山の最新の状況は、気象庁の次のページで火山ごとに確かめられます。
地図のページでは、いま警報が出ている火山とレベルが一目でわかります。立ち入り規制の細かな範囲は、各火山の地元市町村のホームページで確かめてください。
国が火山の評価を一元化した意味(編集部分析)
火山の評価を国の1つの委員会が毎年まとめる仕組みは、防災を自治体任せにしないための土台になると考えられます(編集部分析)。
火山調査委員会は、文部科学省に置かれた火山調査研究推進本部の委員会です。今年9月16日には、本部ができてから初めて臨時会合を開き、十勝岳を評価しました。年1回の定例会合を待たずに国が見解を出したことは、仕組みが実際に動いた例といえます(編集部分析)。
一方で、国の評価がそのまま住民の安全につながるわけではありません。規制や避難を実際に運ぶのは地元の市町村です。国の評価を厚くするのと同じ重さで、人手の限られた小さな町が住民や観光客へ確実に情報を届けられるよう、国が手当てを考えるべきだと考えます(編集部分析)。
日本は111の活火山を抱え、どこで次の活動が起きても不思議ではありません。観光と住民の暮らしを守るには、観測の予算と人を途切れさせないことが国の役目だと考えます(編集部分析)。
火山の重点評価のよくある質問
4火山の選定について、検索で多い疑問に答えます。
Q. 噴火警戒レベル2とは、どんな状態ですか?
A. 火口の周りに影響する噴火が起きている、または起きると予想される状態で、火口周辺への立ち入りが規制されます。レベルは1〜5の5段階で、3は入山規制、4と5は住民の避難に関わる段階です(気象庁「噴火警戒レベルの説明」)。
Q. 「111の活火山」はどうやって決められていますか?
A. 気象庁は、おおむね過去1万年以内に噴火した火山と、いま活発な噴気活動がある火山を活火山としています。この定義にあてはまる火山が国内に111あります(気象庁「活火山とは」)。
警戒レベルは活動に応じて変わるため、出かける前に「登山・観光の前に確かめること」の気象庁のページで最新の状況を見てください。
参考情報
- 日本経済新聞「十勝岳など4火山を重点評価へ 政府調査委選定」(2026年10月19日)
- 熊本日日新聞(共同通信配信)「十勝岳などを重点評価へ 4火山、政府調査委選定」
- 気象庁「十勝岳の噴火警戒レベルを2へ引下げ」(2026年10月16日)
- 文部科学省「火山調査委員会(臨時会)の開催」(2026年9月16日)
- 気象庁「北海道駒ヶ岳 火山の状況に関する解説情報 第14号」(2026年10月16日)
- 気象庁「阿蘇山の噴火警戒レベルを2へ引下げ」(2026年9月1日)
- 気象庁「阿蘇山 火山の状況に関する解説情報 第27号」(2026年10月9日)
- ウェザーニュース「阿蘇山 噴火警戒レベル3(入山規制)に引き上げ」(2026年8月14日)
- 気象庁「吾妻山」の火山活動のページ
- 気象庁「噴火警戒レベルの説明」
- 気象庁「活火山とは」
