【9/24】習近平訪米に抗議デモ|王丹氏の公開書簡、プーさん姿、晩さん会に届いた「香港に自由を」
中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が国賓として訪米していた2026年9月24日、ワシントンのホワイトハウス周辺と中国大使館の前で、習氏に抗議するデモが相次ぎました。在米のチベット人、ウイグル人、香港の民主派、中国から亡命した民主活動家らが「習近平は帰れ」と声を上げ、時事通信によると一連のデモには数百人が参加しました。一方で、習氏を歓迎する在米中国人の集会も開かれ、共同通信によると両者がもみ合いになって警察が割って入る場面もありました。
この記事では、誰がどこで何を訴えたのか、天安門事件の元学生リーダー王丹(おう・たん)氏が習氏あてに出した公開書簡の中身、くまのプーさん姿や習氏の人形を使った抗議、トランプ大統領の厚遇と米議会の批判までを、日米と台湾の報道をもとに整理します。
この記事でわかること
- デモの全体像:9月24日、ホワイトハウス周辺と中国大使館前でチベット・ウイグル・香港・中国民主派などが抗議し、時事通信によると参加者は一連のデモで数百人でした。
- 王丹氏の公開書簡:王丹氏は同日、習氏に「自由な選挙を行う勇気はあるのか」と問う公開書簡をFacebookに出し、現地の抗議にも加わりました。
- 街頭と式典の落差:トランプ氏は空港まで出迎える異例の厚遇をしましたが、与党・共和党の上院軍事委員長からも「やり過ぎ」との批判が出ました。
習近平氏の訪米で、ワシントンではどんな抗議デモがあったのか
9月24日、ホワイトハウス周辺と中国大使館前で、中国政府の人権弾圧に抗議するデモが朝から夜まで続きました。
習氏は23日にワシントンに到着し、25日までの3日間の日程で滞在しました(ロイター)。米中首脳会談が開かれた24日、ロイターによると中国大使館前とホワイトハウス前にデモ参加者が集まり、習氏を批判するプラカードや写真を掲げました。朝日新聞は、中国大使館の周辺には24日午前から大勢の人が集まり、警察が車両の通行を規制するなど厳戒態勢が敷かれたと伝えています(朝日新聞)。
抗議の場所と主な参加者を、報道をもとに並べると次のとおりです。
| 場所 | 主な参加者 | 訴え・様子 | 伝えた報道 |
|---|---|---|---|
| 中国大使館の周辺 | チベット出身者など | 「チベットに人権を」などの看板。24日午前から集まった | 朝日新聞・ロイター |
| ホワイトハウス周辺 | 在米チベット人ら | 「習近平は帰れ」。一部のデモ隊と警官がもみ合い | 時事通信 |
| ホワイトハウス東側の路上 | 王丹氏ら亡命した民主活動家 | 政治犯の釈放を要求。「退陣せよ」と連呼し、親中派ともみ合い | 共同通信 |
| ホワイトハウス北側の広場前 | 米国在住のウイグル人ら | 収容施設にいるとする同胞の写真を掲げ「ジェノサイド」と非難 | 共同通信・RFA |
| ラファイエット広場(夜) | チベット・ウイグル・香港・中国民主派・法輪功の各団体 | 晩さん会の最中に「香港に自由を」などと声を上げた | FOXニュース |
表のとおり、抗議は1か所にまとまったものではなく、団体ごとに場所と時間を変えて1日中続きました。時事通信が伝えた「数百人」は、特定の団体ではなく一連のデモ全体の参加者数です(時事通信)。
抗議したのは誰で、何を訴えたのか
中心はチベット人、ウイグル人、香港の民主派、中国民主派の4つで、いずれも中国政府による弾圧の停止を求めました。
FOXニュースは、チベット、ウイグル、香港の民主派、中国の民主派、法輪功の各団体が週内にワシントンへ集まったと報じています(FOXニュース)。AP通信は、台湾への中国の介入に反対する訴えもあったと伝えました(AP通信(ABCニュース掲載))。
チベット人は何を訴えたか
チベット人の参加者は、チベットへの弾圧をやめることと、チベットの人権を認めることを求めました。
時事通信によると、在米チベット人らは「習近平は帰れ」「中国がうそをつき人々が死ぬ」と声を張り上げました。ニューヨーク在住の写真家の男性(56)は「チベットを自由にし、独立させたい」と話し、7月に中国で施行された、少数民族に標準中国語の使用を義務づける法律への懸念を示しました。朝日新聞の取材に応じたチベット出身で米国籍の男性(58)は「中国政府は報道や言論、信仰の自由を守っていない」と語っています。
男性が触れた法律は「民族団結進歩促進法」で、2026年7月1日に施行されました。時事通信は施行前の6月、少数民族への統制を強める法律だと報じています(時事通信)。
ウイグル人は何を訴えたか
ウイグル人の参加者は、新疆での収容と文化の抹消を「ジェノサイド(集団殺害)」と呼び、トランプ氏に習氏へ直接ただすよう求めました。
共同通信によると、ホワイトハウス北側の広場前で、米国在住のウイグル人らが収容施設で思想教育を受けているとする同胞の写真を掲げました(共同通信)。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、ウイグルの団体が24日夜にホワイトハウスへ向けて行進し、民主党のジム・マクガバン下院議員も加わって「人権なくして習氏のワシントン訪問なし」と訴えたと伝えました(RFA)。
香港の民主派・中国民主派は何を訴えたか
香港の民主派は香港の自由の回復を、中国民主派は政治犯の釈放と習氏の退陣を求めました。
AP通信によると、香港の自由を訴える女性(30)は「香港が解放され、自由が完全に取り戻されるのを見たい」と話しました。倉庫で働く中国出身の女性(31)は「皇帝の習氏が権力の座にとどまらないことを願う」と語り、信教の自由と独裁の終わりを求める看板を掲げた参加者もいました。
王丹氏の公開書簡には何が書かれていたか
王丹氏は習氏に、1人1票の自由な選挙と言論の自由を実現する勇気はあるのかと問い、「勇気がないからやらない」と結びました。
台湾の新頭殻(Newtalk)によると、王丹氏は9月24日、自身のFacebookページに習氏あての公開書簡を載せました(新頭殻)。書簡の主な論点は次の3つです。
- ワシントンで抗議している人の多くは中国から来た人々である
- 中国共産党の統治下では、経済は発展しても利益はほぼ支配層が独占し、人々は自由も尊厳も持てず、自分の国の政策決定に参加できない
- 普通選挙(1人1票)を開き、現体制について自由に意見を言わせ、真の言論の自由を実現する勇気があるか
王丹氏は1989年の天安門事件で弾圧された民主化運動の学生リーダーで、24日の抗議活動の呼びかけ人でもあります。共同通信によると、王丹氏は現地で「中国では抗議の声が習氏の耳に届かない。だからこそ訪米に合わせて声を上げる責任がある」と話しました。
なぜ公開書簡という形をとったのか
中国国内では習氏への批判を公に届ける手段がないため、訪米という機会に合わせて、公開の場で問いを突きつける形をとったとみられます。
王丹氏自身が共同通信に語った「国内では声が届かない」という説明が、その理由を示しています。
くまのプーさん姿や習氏の人形は、何を意味するのか
プーさん姿は習氏を皮肉るネット上の定番の風刺で、人形を殴るパフォーマンスとあわせて、習氏個人への強い反発を示したものです。
米国の地方局向けニュース網ナショナル・デスクは、9月24日にホワイトハウスの外で、くまのプーさんの格好をした抗議者の写真を報じました。同局は、プーさんを習氏をからかうための政治的なミーム(ネット上で広まる風刺ネタ)だと説明しています(ナショナル・デスク)。
また、米ハワイの地元紙ホノルル・スター・アドバタイザーが掲載した通信社の写真には、「反中国共産党の抗議者が、習国家主席をかたどった人形を殴る」との説明が付いています(ホノルル・スター・アドバタイザー)。人形がどの団体のものだったかは、この写真説明からは分かりません。
時事通信は、一部のデモ隊と警官がもみ合いになり、辺りが一時騒然となったとも伝えています。
親中派の歓迎集会とはどう衝突したのか
習氏を歓迎する在米中国人の集団が抗議の場に近づき、罵り合いからもみ合いになったため、警察が双方を引き離しました。
共同通信によると、中国国旗を掲げた歓迎の集団が王丹氏らの抗議に近づくと、参加者の一部が罵倒し、もみ合いになりました。朝日新聞は、ホワイトハウス周辺に全米各地から集まった在米中国人数百人が、米中の国旗や赤い横断幕を掲げて「習主席、歓迎」と声を上げていたと伝えています。
AP通信は、習氏が泊まったホテルの前にも約200人の支持者が集まり、中国と米国の旗を振って「歓迎、歓迎、熱烈歓迎」と唱えたと報じました。抗議と歓迎が同じ通りの両側で向き合う形になり、時事通信も「通りの反対側には、米中両国の国旗を振りながら習氏の訪問を歓迎する多くの人々も集まった」と書いています。
歓迎と抗議の人数を並べると、次のようになります。
| 集団 | 報じられた人数 | 場所 | 報道 |
|---|---|---|---|
| 抗議(一連のデモ全体) | 数百人 | ホワイトハウス周辺など | 時事通信 |
| 抗議(ホワイトハウス近くの公園) | 数百人 | ホワイトハウス近くの公園 | AP通信 |
| 歓迎(在米中国人) | 数百人 | ホワイトハウス周辺 | 朝日新聞 |
| 歓迎(支持者) | 約200人 | 習氏の宿泊ホテル前 | AP通信 |
どの報道も人数は概数で、抗議と歓迎のどちらが多かったかを比べられる数字は出ていません。「抗議一色だった」とも「歓迎が上回った」とも言えない、というのが現時点で言える範囲です。
晩さん会の最中にも抗議の声は届いたのか
届きました。24日夜の晩さん会の最中、ラファイエット広場から「香港に自由を」の声が聞こえていたと報じられています。
FOXニュースによると、抗議者はホワイトハウスの北側正面の向かいにあるラファイエット広場に集まり、「香港に自由を」「習近平、お前は歓迎されていない」「政治犯に自由を」と唱えました。声は海兵隊軍楽隊の演奏の前から演奏中まで聞こえていたといいます。
晩さん会には、エヌビディアのジェンスン・ファン氏、アップルのティム・クック氏、メタのマーク・ザッカーバーグ氏、テスラのイーロン・マスク氏、アマゾンのジェフ・ベゾス氏ら米テック企業のトップが招かれました。FOXニュースは同じ記事で、マイク・ジョンソン下院議長が、禁錮20年の刑を受けたウイグル人の退職医師グルシャン・アッバス氏の釈放を求めたとも伝えています。
トランプ大統領の厚遇に、米国内ではどんな批判が出たのか
トランプ氏は空港まで出迎える異例の厚遇をしましたが、与党・共和党の上院軍事委員長ロジャー・ウィッカー氏が公然と批判しました。
英語版ウィキペディアのまとめによると、習氏夫妻は23日にアンドルーズ空軍基地に到着し、トランプ氏が自ら出迎えました。大統領が同基地で外国首脳を出迎えたのは、1962年にケネディ大統領が英国のマクミラン首相を迎えて以来とされています(Wikipedia)。日テレNEWSは、トランプ氏が大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」に習氏を乗せ、ホワイトハウスの中も案内したと伝えています(日テレNEWS)。
これに対し、ウィッカー氏は訪米前日の22日に上院本会議で演説し、習氏を「残忍で、選挙で選ばれていない抑圧的な独裁者」と呼びました。AP通信によると、ウィッカー氏はホワイトハウスから相談されていれば、豪華な歓迎はやめるよう助言したと述べています(AP通信(ABCニュース掲載)、ザ・ヒル)。AP通信は、ウィッカー氏をこれまでトランプ氏を擁護してきた伝統的な共和党議員だと紹介しています。
首脳会談の成果はあったのか
双方は友好を強調しましたが、ロイターは、AI・貿易・台湾・イランとの戦争といった懸案で目立った進展はなかったとみています。
日テレNEWSによると、トランプ氏は「素晴らしい会談だった」と評価しましたが、米側は会談内容を公表していません。中国国営メディアは、習氏が「アメリカが台湾問題を慎重に処理することを期待する」と述べたと報じました。英語版ウィキペディアのまとめでは、AI協力を責任ある形で進めることで一致したほか、習氏が5年間で米国の若者10万人を交流で受け入れると表明したとしています。
街頭の抗議が求めた人権問題が会談でどう扱われたかは、双方とも明らかにしていません。式典の華やかさと、外で続いた抗議の声の落差が、今回の訪米を象徴する構図になりました。
日本から見て、何に注目すべきか
日本に直接関わるのは、晩さん会で米中の首脳がそろって「日本の軍国主義と戦った同盟国」という歴史認識を打ち出したことです。
日テレNEWSによると、トランプ氏は第二次世界大戦で中国は「同盟国」だったと発言し、習氏は「ともに日本の軍国主義に戦った」と応じて、両国の絆を強調しました。抗議の現場で問われたのが中国の人権と少数民族政策だったのに対し、式典の場では日本を共通の過去の敵に置く言葉が交わされたことになります。
(編集部分析)この発言は、米中が歴史を持ち出して関係の近さを演出したものと評価できます。日本にとっては、同盟国である米国の大統領が中国の歴史認識に歩調を合わせた点を、外交の場でどう受け止めて説明するかが課題として残ります。また、少数民族に標準中国語を義務づける法律への抗議が米首都で公然と行われた一方、日米の首脳会談ではこうした人権問題が正面から取り上げられる場面は多くありません。今回の抗議で訴えられた論点は、日本の対中外交を考えるうえでも無関係ではないとみられます。
習氏の動静や中国指導部の内部については、「習近平に何が起きているか|動静異変と軍中枢の動揺を検証」で整理しています。
習近平訪米の抗議デモのよくある質問
抗議デモについて、検索でよく調べられている疑問に答えます。
Q. デモで逮捕者は出たのですか?
A. 編集部が本記事の出典とした報道を9月26日朝に確認した範囲では、逮捕者を伝えるものはありませんでした。もみ合いや警察の介入は報じられています。
Q. チベットの参加者が抗議した「民族団結法」とは何ですか?
A. 正式には「民族団結進歩促進法」で、2026年7月1日に施行されました。AFP通信によると、標準中国語の地位を強めて各民族に共通の国家意識を持たせる狙いで、国連人権高等弁務官やアムネスティ・インターナショナルが同化を進めるものだと懸念を示しています(AFPBB News)。
Q. 習氏とトランプ氏が次に会うのはいつですか?
A. 英語版ウィキペディアのまとめによると、11月のAPEC首脳会議(中国・深圳)と、12月のG20首脳会議(米マイアミ)で再び会う予定が確認されています。
抗議と式典の両方の動きは、以下の報道で確かめられます。
参考情報
- 米ワシントンで「習近平帰れ」と抗議デモ ホワイトハウス周辺で、中国政府に弾圧停止要求(時事通信、2026年9月25日)
- 「習近平主席は退陣を」抗議活動 米ワシントン、親中派と衝突(共同通信、2026年9月25日)
- 習主席の訪米に抗議デモ、ワシントンで国賓待遇の米中首脳会談(ロイター、2026年9月25日)
- 習氏の訪米に抗議デモ「人権や言論を軽視」 厳戒態勢も支持者は歓迎(朝日新聞、2026年9月25日)
- 【米中首脳会談】トランプ大統領「中国は“同盟国”だった」(日テレNEWS NNN、2026年9月25日)
- 中国、批判押し切り「民族団結法」を施行 少数民族の同化懸念(AFPBB News)
- 中国が少数民族への統制強化 民族団結法、7月施行(時事通信、2026年6月29日)
- 王丹發公開信向習近平喊話(新頭殻Newtalk、2026年9月24日)
- ‘Free Hong Kong’ chants disrupt Trump and Xi’s White House state dinner(FOX News)
- Protesters of Xi’s policies push for change in earshot of White House visit with Trump(AP/ABC News)
- Uyghur advocates in Washington rally against visit by Chinese President Xi Jinping(Radio Free Asia、2026年9月25日)
- PHOTOS: Protesters dress as ‘Winnie the Pooh’ in D.C. against Xi’s visit to White House(The National Desk)
- Protests as China’s President Xi Jinping attends state dinner at the White House(Honolulu Star-Advertiser、2026年9月24日)
- Trump is giving China’s Xi a warm welcome. But criticism is loud on Capitol Hill(AP/ABC News)
- Mississippi Sen. Roger Wicker blasts Xi ahead of summit with Trump in DC(The Hill)
- 2026 state visit by Xi Jinping to the United States(Wikipedia)
