【10/6】簗和生農相の国交省調査|2月に副大臣へ照会、交付金は最大54%減

【10/6】簗和生農相の国交省調査|2月に副大臣へ照会、交付金は最大54%減

簗和生(やな・かずお)農林水産相の「道路予算カット」発言をめぐり、国土交通省が2026年10月6日に調査結果を公表しました。簗氏が2月に当時の国交副大臣と官房長へ予算案について問い合わせていたこと、首長が簗氏を応援しなかった栃木県の2市町で道路整備の交付金が前年度より減っていたことが明らかになりました。

一方で国交省は、簗氏からの働きかけや圧力はなかったとの考えを示しています。地元の那須烏山市は「疑念はむしろ深まった」とコメントし、市長は全国から電話が殺到して業務に支障が出ていると声明を出しました。調査で分かったこと、報道で食い違う数字、まだ分かっていないことを順に整理します。

この記事でわかること

  • 国交省の調査結果:簗氏は2月、佐々木紀副大臣と黒田昌義官房長(いずれも当時)に今年度予算案について問い合わせていました。国交省は「働きかけや圧力はなかった」との考えです。
  • 交付金の減り方:国交省の公表では、那須烏山市が前年度比26.2%減、那珂川町が54.1%減。報道によっては約63〜65%減とする数字もあり、比べている範囲が違う可能性があります。
  • まだ分かっていないこと:照会が配分の決定にどう関わったのか、他の自治体との比べ方、国会での説明は、10月7日時点で固まっていません。
目次

簗和生氏をめぐる国交省の調査で分かったこと

簗氏が2月に国交省の幹部へ予算案を問い合わせ、4月以降に2市町の配分額の説明を受けていたことが分かりました。

時事通信によると、国交省は10月6日、簗氏の発言に関する調査結果を公表しました。中身は大きく3つです。1つ目は2月の問い合わせ、2つ目は4月の予算成立後の説明、3つ目は「働きかけや圧力はなかった」という同省の見方です。順に見ていきます。

2月に佐々木紀副大臣と黒田昌義官房長へ問い合わせ

簗氏は2月、当時の佐々木紀国交副大臣と黒田昌義官房長に、今年度予算案について問い合わせていました。

時事通信は、国交省の説明として「2月に簗氏から当時の佐々木紀国交副大臣と黒田昌義官房長に対し、今年度予算案に関する問い合わせがあった」と伝えています。2月は、栃木3区で簗氏と対立候補が争った衆院選(2月8日投開票)の直後にあたります。日刊スポーツは、簗氏が衆院選後に那須烏山市と那珂川町の予算配分額について照会していたと報じています。

那須烏山市は、この照会が「配分額決定前に2市町のみについて行われた」ことを問題にしています(時事通信)。照会の対象が、首長が簗氏を応援しなかった2つの自治体に絞られていた点が、今回の調査で新たに表に出た事実です。

4月の予算成立後、2市町の配分額を簗氏側へ説明

4月に予算が成立した後、佐々木氏が簗氏側に那須烏山市と那珂川町の交付金配分額を説明しました。

時事通信によると、国交省は「佐々木氏は4月の予算成立後、簗氏側に2市町の交付金配分額について説明した」としています。簗氏は10月2日の会見で「国土交通省に問い合わせをして箇所付けの結果を報告した」と述べていました(ANN)。箇所付けとは、どの事業にいくら配るかを決めることです。簗氏の説明と国交省の調査は、「問い合わせて、結果を聞いた」という点では食い違っていません。

国交省「働きかけや圧力はなかったと思う」

国交省は、簗氏による道路予算減額の働きかけや圧力はなかったとの考えを示しました。

日刊スポーツによると、黒田氏は国交省の聞き取りに「はっきりと覚えていないが、働きかけや圧力はなかったと思う」と説明しました。国交省は、交付金の配分額は工事の進み具合などに応じて決めており、適切に配分したとしています(時事通信)。前年度から5割以上減った自治体は、那珂川町のほかにもあったといいます。

(編集部分析)「覚えていないが、なかったと思う」という当事者の記憶に頼った結論は、圧力が無かったことの証明としては弱いと言わざるを得ません。照会を受けた側が属する役所が自ら調べた結果である点も、読者が割り引いて見る材料になります。予算を配る役所と、予算を求める政治家の距離が適切だったかは、記憶ではなく記録で示されるべきです。

では、2つの自治体の交付金は実際にどれだけ減ったのでしょうか。次の節で、報道ごとに違う数字を並べます。

那須烏山市・那珂川町の交付金はどれだけ減ったか

国交省の公表では那須烏山市が26.2%減、那珂川町が54.1%減です。ただし報道によって数字が違います。

数字が媒体ごとに違うのは、比べている範囲(交付金の総額か、その一部か)が違う可能性があるためです。この記事では数字を1つに寄せず、出どころごとに並べます。

国交省の公表は「最大54%減」

国交省が公表した交付金の配分額は、那須烏山市が前年度比26.2%減、那珂川町が54.1%減でした。

時事通信はこれを「道路関連予算が前年度比最大54%減額」と報じています。対象は、各自治体が道路整備に充てる交付金の配分額です。下の表は、各報道が伝えた数字を出どころ別に並べたものです。

自治体 2月衆院選での首長 国交省公表(時事通信) TBS「Nスタ」(日刊スポーツ) ANN(10月2日)
那須烏山市 対立候補を支援 26.2%減 交付金の一部が約65%減 約63%減
那珂川町 対立候補を支援 54.1%減 約54%減 約54%減
那須塩原市 簗氏を支持 (公表の数字は未確認) 約11%増 ―
那須町 簗氏を支持 (公表の数字は未確認) 約34%増 ―

那珂川町はどの報道でも約54%減でそろっていますが、那須烏山市は26.2%減と約63〜65%減で大きく開いています。

那須烏山市の数字が「26.2%」と「約65%」で違う理由

比べている交付金の範囲が違う可能性が高く、どちらかが誤りとは言えません。10月7日時点で内訳は示されていません。

TBSの「Nスタ」は「今年度の交付金の一部が前年比約65%減」と伝えており(日刊スポーツ)、交付金の全体ではなく一部を比べた数字だと読めます。ANNが10月2日に伝えた「約63%減」も、どの事業の額を比べたかは書かれていません。国交省の26.2%は、時事通信の記事では「交付金の配分額」全体の比較として紹介されています。

読者が数字を引用するときは、「国交省公表で26.2%減」「報道では一部の交付金が約65%減」と、出どころと範囲を添えるのが安全です。どちらの数字でも、那須烏山市の配分額が前年度より減ったこと自体は変わりません。

簗氏を支持した那須塩原市・那須町は増額と報道

TBSの報道では、首長が簗氏を支持した那須塩原市は約11%増、那須町は約34%増でした。

日刊スポーツが伝えたTBS「Nスタ」の内容によると、応援しなかった2市町が減り、応援した2市町が増えるという対照的な結果になっていました。サンケイスポーツも「簗和生農相応援の2市町は交付金予算増額」と見出しで伝えています。ただし国交省は、前年度から5割以上減った自治体は那珂川町以外にもあったとしており、増減の理由は工事の進み具合などだと説明しています。

(編集部分析)増えた町と減った町が、選挙で誰を応援したかと重なって見えること自体が、行政の公平さへの信頼を傷つけています。仮に配分が工事の進み具合だけで決まっていたとしても、その根拠を自治体ごとに数字で示さなければ、国民の疑いは晴れません。

ここまでが数字の整理です。次に、発言から撤回、調査公表までの流れを時系列で確かめます。

「道路予算を大幅にカットした」発言から撤回までの経緯

2月の衆院選、5月の会合での発言、9月の入閣、9月末の報道、10月5日の撤回、6日の国交省公表という順です。

時系列を図にまとめました。2月の照会と5月の発言の間に、4月の予算成立と配分額の説明がはさまっている点が今回の調査で分かった部分です。

2月8日
衆院選の投開票。栃木3区は保守分裂の選挙に
2月
簗氏が佐々木副大臣・黒田官房長に予算案を問い合わせ(国交省調査)
4月
予算成立。佐々木氏が簗氏側に2市町の配分額を説明(国交省調査)
5月24日
地元の党員懇親会で「道路予算を大幅にカットした」と発言(週刊女性PRIME)
9月30日
週刊誌報道を受け、木原官房長官が「関係省庁で調査中」
10月2日
簗氏が会見で「誤解を招く表現だった」と釈明
10月5日
発言を撤回して謝罪。辞任は否定
10月6日
国交省が調査結果を公表。那須烏山市が「疑念はむしろ深まった」、市長が声明

図のとおり、発言(5月)は配分額の説明(4月)の後でした。簗氏の「事後に聞いた結果を報告した」という説明は、この順番に沿ったものです。

5月の党員懇親会での発言

入閣前の5月24日、地元の党員懇親会で、2市町の道路予算を「大幅にカットした」と発言したと報じられました。

週刊女性PRIMEによると、発端は「デイリー新潮」と「文春オンライン」の報道です。簗氏は地元・栃木の有力者らを集めた会合で、総選挙で対立候補を支援した2つの自治体の道路予算を「大幅にカットした」と述べたとされます。ANNは、「私がこの選挙区からいなくなったら予算が完全に切られる」という発言もあったと報じられていると伝えています。発言を記録した音声も公開されました。

前回の会見までの経緯は「【10/2】簗和生農水相「誤解招いた」と会見|道路予算「大幅カット」音声で何が報じられたか」で詳しく整理しています。

10月5日、発言を撤回して謝罪

簗氏は10月5日、発言が自分のものだと認めて撤回し、「極めて不適切で不徳の致すところ」と謝罪しました。

週刊女性PRIMEによると、簗氏は同日、高市早苗首相と個別に面会し、首相から発言の撤回と謝罪を求められたといいます。そのうえで記者団に「撤回し、お詫びする」と述べました。時事通信は、首相が簗氏に職責を全うするよう指示したと伝えています。農水相については辞任を重ねて否定し、続投の考えを示しました(産経ニュース見出し)。

次の節では、撤回のあと簗氏がどう説明しているかを確かめます。

簗氏は何と説明しているか|「高揚感で誇張」と働きかけの否定

簗氏は、発言は高揚感から誇張したもので、国交省への働きかけはしていないと説明しています。

テレ朝NEWSと産経ニュースは、簗氏が「高揚感で誇張した」と釈明したと伝えています。日刊スポーツによると、簗氏は5日、国交省に問い合わせをしたことは認めましたが、予算カットの働きかけは「ない」と説明しました。

「発言案」に手を入れる姿が報じられた

参院本会議中に「簗和生大臣発言案」と書かれた紙に加筆する簗氏の写真を、産経新聞写真報道局が公開しました。

週刊女性PRIMEによると、国民民主党の玉木雄一郎代表はこの写真について「興味深い」と投稿しました。玉木氏によると、原案は担当省庁への働きかけの有無に触れていなかったのに、簗氏は働きかけそのものがなかったと書き加え、釈明でもはっきり否定しているといいます。玉木氏は、もし働きかけが事実なら、会見での発言は虚偽になると指摘しています。

(編集部分析)発言案のどこを直したかは、本人がどの点を譲れないと考えているかを映します。簗氏が最も強く否定しているのは「働きかけ」で、ここが今後の焦点になります。国交省の調査は働きかけを否定しましたが、その根拠が当事者の記憶である以上、国会で記録に基づく確認が求められるのは当然です。

なぜ「事後に聞いた話」が「カットした」になったのか

簗氏の説明では、国交省から事後に聞いた配分の結果を、会合で自分の成果のように話したことになります。

ANNによると、簗氏は10月2日の会見で「私の表現ぶりが一部、誤解を招くものであった」と述べ、「国土交通省に問い合わせをして箇所付けの結果を報告した」と説明しました。つまり簗氏の言い分は、予算を削らせたのではなく、決まった結果を聞いて報告しただけ、というものです。ただ、問い合わせが決定前の2月で、しかも2市町だけに絞られていたことが今回分かり、地元はこの説明に納得していません。

次の節で、名指しされた2市町の受け止めを見ます。

那須烏山市・那珂川町はどう受け止めたか

那須烏山市は「疑念はむしろ深まった」と説明を求め、那珂川町は「町民に不安を与えたのは事実で残念」としました。

時事通信によると、那須烏山市は国交省の公表を受けた6日夜、簗氏の問い合わせが配分額の決定前に2市町だけについて行われたことなどを挙げ、「疑念はむしろ深まった。改めて明確な説明責任を果たされたい」とコメントしました。那珂川町は「名指しした発言によって多くの町民・市民に不安を与えたことは事実で、大変残念だ」としています。

那須烏山市長「全国から電話が殺到し業務に支障」

那須烏山市の川俣純子市長は10月6日付で声明を出し、全国からの電話で日常業務に支障が出ていると明かしました。

日刊スポーツによると、声明は「全国の皆様への市長からのお願い」という題で、市のサイトに掲載されました。全国から「励ましの言葉」「お叱りの言葉」「ご質問」などの電話が殺到しているとして、「本市職員が本来の使命である市民サービスの提供を滞りなく行えるよう、静かに見守っていただけたら有難い」と呼びかけています。

(編集部分析)政治家の一言の後始末を、名指しされた小さな自治体の職員が背負わされている構図です。地元の住民サービスが止まるのは、どちらの立場から見ても望ましくありません。問い合わせは市役所ではなく、説明責任を負う側に向けられるべきです。

地元の外では、国会での追及に向けた動きが始まっています。

野党と与党の反応|国会での追及と首相の任命責任

野党は全省庁の調査を求め、臨時国会で首相の任命責任を問う構えです。与党内からも苦言が出ています。

サンケイスポーツは、野党が全省庁の調査を求めていると伝えています。日刊スポーツによると、TBSの番組でも「野党の一部からは全省庁を調査してほしいという声も聞かれる」と紹介されました。NEWSポストセブンは、消費税減税法案を審議する臨時国会が始まり、野党が簗氏の発言を追及し、高市首相の任命責任を問う構えだと報じています。テレ朝NEWSは「与党からも苦言」と伝えています。

批判の声と、その受け止め方

共産党の志位和夫議長はXで辞任か更迭を求め、TBSの井上貴博アナは番組で「恫喝に近い発言」と述べました。

週刊女性PRIMEによると、志位氏は「ただちに辞任するしかない。辞任しないなら首相が更迭せよ」と投稿しました。日刊スポーツによると、井上アナは6日の「Nスタ」で「実際に予算が減っている自治体がある。これは事実です。ではなぜその予算が減ったのか、合理的に説明していただかないと到底納得はできない」と述べています。

(編集部分析)辞任を求める声は、まず事実の確認から入るべきです。ただ、井上アナの「なぜ減ったのかを合理的に説明してほしい」という求めは、立場を問わず国民が共有できるものです。高市政権が掲げる責任ある政治を守るためにも、政権の側から配分の根拠を自ら示すことが、野党に政局の材料を与えない一番の近道だと考えます。

高市首相は続投を指示

高市首相は10月5日、簗氏に発言の撤回を求めたうえで、引き続き職責を全うするよう指示しました。

時事通信の見出しは「高市首相、職責全うを指示」です。週刊女性PRIMEによると、簗氏は首相から「引き続き農林水産行政の推進に向けて、全力で仕事をせよ」と指示があったと説明しています。簗氏は旧安倍派に所属し、政治資金の不記載で党の処分を受けており、9月の内閣改造で初入閣しました。入閣の経緯は「【9/17】第2次高市改造内閣の閣僚名簿」で整理しています。

次に、問題の土台になった栃木3区の事情を見ておきます。

背景|栃木3区の保守分裂選挙

2月の衆院選で栃木3区は、簗氏と自民党籍で無所属の渡辺真太朗氏が争う保守分裂の選挙でした。

時事通信によると、2市町の首長はこの選挙で渡辺氏を支援しました。朝日新聞は「『落下傘』簗和生氏と地元出身候補の『代理戦争』」という見出しで、栃木3区の確執を伝えています。保守同士が地元を二分した選挙のあとだったことが、「応援しなかった自治体の予算」という発言の背景にあります。

(編集部分析)保守分裂は地元の保守層にとっても痛みを伴う選挙でした。選挙が終われば、どちらを応援した町にも公平に向き合うのが議員の務めです。応援の有無で地元を分けて語ったことは、保守政治が大切にしてきた地域の結束そのものを損ねたと評価できます。

まだ分かっていないこと|これからの焦点

照会が配分の決定に影響したか、那須烏山市の数字の内訳、他の自治体との比べ方の3つが、まだ固まっていません。

国交省は圧力を否定しましたが、その根拠は当事者の記憶です。那須烏山市の減少率は、国交省公表と報道で大きく違ったままです。5割以上減った自治体が他にもあるという説明も、どの自治体でどの事業か具体的には示されていません。

国会で確かめられる点

2月の照会の記録、配分額を決めた根拠、増えた町と減った町の工事の進み具合の資料が、国会で確かめられる点です。

NEWSポストセブンによると、臨時国会では参院が与野党対決の舞台になるとみられています。野党が求める全省庁調査に政府がどう応じるかも焦点です。(編集部分析)記録が出せるなら、疑いは数字で晴らせます。出せないなら、記憶頼みの調査をやり直すべきだと考えます。

最後に、よく聞かれる疑問をまとめます。

簗和生氏の道路予算問題のよくある質問

検索で多い疑問に、10月7日時点で分かっている範囲で答えます。

Q. 道路整備の交付金は誰がどう配分を決めるのですか?

A. 国交省が各自治体への配分額を決めます。同省は今回、工事の進み具合などに応じて判断しており、適切に配分したと説明しています(時事通信)。

Q. 5割以上減った自治体は那珂川町のほかにどこですか?

A. 国交省は那珂川町以外にもあったとしていますが、10月7日時点で自治体名や事業の中身は報じられていません。

Q. 簗氏は辞任するのですか?

A. 10月7日時点で辞任は否定しています。10月5日に発言を撤回して謝罪し、高市首相からは職責を全うするよう指示されたと説明しています。

Q. 那須烏山市役所に意見を伝えてもよいですか?

A. 市長は、全国からの電話で日常業務に支障が出ているとして、静かに見守ってほしいと呼びかけています。市の業務に関わらない意見は控えるのが望ましいでしょう。

今の段階では、圧力があったともなかったとも断定できません。これからの国会審議では、①2月の照会の記録が出るか、②那須烏山市の減少率の内訳(26.2%と約65%の違い)が示されるか、③5割以上減った他の自治体の名前と理由が明かされるか、の3点を確かめてください。新しい事実が出たら、この記事でも追って整理します。

参考情報

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