【10/1】国慶節の訪日中国人激減|56.7%減の理由と出国規定

中国の建国記念日「国慶節」の大型連休が2026年10月1日に始まりました。7日までの期間に中国国内で延べ21億3千万人が移動すると中国政府は予想していますが、昨年まで海外旅行先の人気1位だった日本は、今年はランキングの上位から外れています(共同通信)。日本政府観光局(JNTO)の統計では、2026年1〜8月の訪日中国人は290万4,600人で、前年同期より56.7%減りました。

この記事では、国慶節を前にした訪日中国人の激減を、JNTOの月次統計、中国の旅行会社と調査会社のランキング、2025年11月に中国政府が出した日本への渡航自粛の呼びかけ、9月15日に施行された中国の「出入国管理に関する国務院規定(第841号)」の4つから整理します。国慶節の7日間だけの訪日客数はJNTOの月次統計では出ないため、確定した数字と予測・調査の数字を分けて書きます。

この記事でわかること

  • 減り方:JNTOの推計で、2026年8月の訪日中国人は41万8,000人(前年同月比59.0%減)、1〜8月の累計は290万4,600人(同56.7%減)です。
  • 理由:JNTOは、中国政府が日本への渡航を避けるよう注意喚起したことと、航空便の減便を挙げています。発端は2025年11月の高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁です。
  • 第841号:9月15日施行の規定は、輸出管理違反などで産業・技術の安全を脅かす恐れがある人の出国禁止を明文化したものです。観光目的を理由に一律に出国を制限する条文は確認できません。
目次

国慶節前の訪日中国人はどれだけ減ったのか JNTOの最新統計

JNTOの統計で、2026年1〜8月の訪日中国人は290万4,600人、前年同期比56.7%減です。

前年同期の671万1,851人から約381万人減った計算です。

JNTOが9月16日に公表した「訪日外客数(2026年8月推計値)」の数字を、前年の実数と並べます。56.7%は1〜8月の累計、59.0%は8月の単月の減少率で、期間が違う数字です。

期間 2025年 2026年 増減率
8月(単月) 101万8,747人 41万8,000人(推計値) 59.0%減
1〜8月(累計) 671万1,851人 290万4,600人(推計値) 56.7%減
参考:訪日客全体の1〜8月 2,838万4,099人 2,762万6,300人(推計値) 2.7%減

表のとおり、訪日客全体は2.7%減にとどまる一方、中国だけが半分以下に落ち込んでいます。1〜8月の訪日客全体に占める中国の割合は、2025年の23.6%から2026年は10.5%に下がった計算になります(JNTOの数字から編集部で計算)。

8月の訪日中国人は59.0%減 夏休みでも戻らなかった

夏休みのある8月でも、訪日中国人は41万8,000人と前年の4割程度にとどまりました。

JNTOは8月の中国について「中国政府より日本への渡航を避けるよう注意喚起があった」と書き、スクールホリデー(夏休み)の影響はあったものの、航空便の減便などで前年同月を下回ったと説明しています。8月は韓国や台湾、香港が8月として過去最高を記録した月で、中国の落ち込みが目立つ形になりました。

国慶節の影響は11月中旬に出る10月の統計で確かめる

JNTOの統計は月ごとの集計のため、国慶節の7日間だけの人数は出ず、10月全体の数字で影響を確かめます。

比較の基準になる昨年の数字は、2025年10月の訪日中国人71万5,700人(前年同月比22.8%増)です。JNTOは当時、上海〜成田便などの増便に加え「国慶節と中秋節の連休等の影響」で前年を上回ったと説明していました。今年10月の数字がこの71万5,700人からどれだけ減るかが、国慶節の影響を測る物差しになります。

国慶節の旅行先ランキングで日本は何位か トップ10外と5位

今年の国慶節の人気旅行先で、日本は中国旅行大手・途牛のトップ10に入らず、調査会社インタセクトの調査では5位でした。

どちらも国慶節の前に出た予約データや意向調査で、実際に何人が日本へ来たかを示す数字ではありません。2つを分けて見ます。

途牛のランキング:日本は人気旅行先のトップ10外

途牛のデータでは、人気旅行先はインドネシア、トルコ、韓国などが上位で、日本はトップ10外です。

共同通信によると、このデータは中秋節連休(9月25〜27日)を含む期間の人気旅行先を示したものです。

同じ記事は、昨年までは国外の旅行先として日本が人気トップだったと伝えています。今年は中秋節(9月25〜27日)と国慶節(10月1〜7日)の間の平日に休みを取ると最大13連休になり、長い休みを使った遠方への旅行が増えていると、インバウンド業界のメディアも伝えています。

インタセクト調査:日本は5位の14.1%、1年前は1位の22.6%

インタセクト・コミュニケーションズの調査では、国慶節の海外旅行先として日本を挙げた人は14.1%で5位でした。

調査は2026年8月17〜20日に、北京・天津・上海など中国の10都市の住民にWeChatで行い、海外旅行を予定している2,412人の回答を集計したものです(9月24日発表)。順位の移り変わりを表にします。

時期 日本の順位 日本を選んだ割合 その時の1位
2025年国慶節 1位 22.6% 日本
2026年春節 3位 15.0% (同調査の春節版)
2026年国慶節 5位 14.1% 韓国(20.4%)

表のとおり、日本は1年で1位から5位に下がりました。ただ、春節から国慶節への下げ幅は0.9ポイントで、2026年国慶節の上位は韓国20.4%、ヨーロッパ17.7%、東南アジア17.2%、オーストラリア15.2%と、5位の日本との差は数ポイントです。

インタセクトの調査によると、国慶節に日本へ行く予定の人(341人)の62.8%は日本を訪れたことがある人で、日本旅行の決め手は「日本独自の文化・芸術への関心」が44.3%で最も多くなっています。

ランキングは「人気の傾向」を示すもので、実際に日本へ来た人数はJNTOの統計を待つことになります。次に、減った理由を時系列で確かめます。

訪日中国人が激減した理由は中国政府の渡航自粛の呼びかけ

訪日中国人が減った直接の理由として、JNTOは中国政府による日本への渡航の注意喚起と、航空便の減便を挙げています。

観光業界誌トラベルボイスによると、中国政府と在日中国大使館は2025年11月14日、両国関係の悪化を理由に、自国民へ日本への渡航を控えるよう呼びかけました。共同通信は、台湾有事が存立危機事態になり得るとした高市首相の2025年11月の国会答弁に中国当局が反発したことが、今年の日本人気の低下に影響したとみられると伝えています。流れを図にします。

2025年10月

国慶節と中秋節の連休などで、訪日中国人は71万5,700人(前年同月比22.8%増)

2025年11月

高市首相が台湾有事をめぐり国会で答弁。11月14日に中国政府が日本への渡航を控えるよう呼びかけ

2026年1〜8月

訪日中国人は290万4,600人(前年同期比56.7%減)。JNTOは注意喚起と航空便の減便を理由に挙げる

2026年9月15日

中国の「出入国管理に関する国務院規定(第841号)」が施行

2026年10月1日

国慶節の7連休が始まる。延べ21億3千万人の移動予想に対し、日本は人気先の上位外

図のとおり、減少は2025年11月の渡航自粛の呼びかけを境に始まり、1年近く続いています。2025年1〜9月の訪日中国人は約749万人で国・地域別の首位でしたが(トラベルボイス)、2026年8月は韓国・台湾に次ぐ3位です。

在日中国大使館が挙げた理由

中国側が挙げた理由は両国関係の悪化で、在日中国大使館は日本にいる自国民にも治安への注意を求めました。

トラベルボイスによると、大使館は中国国民に日本への渡航に注意を促すとともに、すでに日本に滞在している自国民に、現地の治安情勢に細心の注意を払い、安全防犯意識を高めるよう呼びかけています。日本の治安が急に悪化したことを示すデータは示されておらず、呼びかけは両国関係の悪化を理由にしたものです。

(編集部分析)JNTOの統計が示すのは、中国の人々の日本への関心が消えたのではなく、中国政府の呼びかけと減便という「政府の判断」が人の流れを止めたという構図です。自国民の旅行先を政府が外交上の不満に合わせて動かす手法は、観光を交渉のカードとして使うものと評価でき、日本が受け身で待つだけでは状況が戻る保証はありません。

出入国管理規定「第841号」は観光客の出国を止めるのか

第841号は技術流出などを理由にした出国禁止を明文化した規定で、観光目的を理由に一律に出国を止める規定とは確認できません。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、中国国務院は2026年7月22日に「出入国管理に関する国務院規定」を公布し、9月15日から施行しました。司法部・公安部・国家移民管理局の解説では、①中国国民の出国に伴う安全リスクの防止②外国人の入国管理の規範化③出入国仲介サービスの規範化、が重点とされています。主な中身を表にします。

項目 内容 出典
公布・施行 2026年7月22日公布、9月15日施行 ジェトロ
出国の禁止 輸出管理や技術の輸出入管理の規定に違反し、国家の産業・技術の安全を脅かす恐れがある中国国民について、商務部などが出国禁止を決められる ジェトロ
外国人の入国 ビザ申請や入国審査で虚偽の申告をした外国人を、1〜5年の入国禁止にできる ジェトロ
当事者への告知 国家安全に影響する恐れがある場合や刑事事件の捜査などの場合は、当事者への告知は不要 ジェトロ
観光客の扱い 観光目的であること自体を理由に出国を制限するとした記載は、ジェトロの解説には無い ジェトロ

表のとおり、規定が名指しするのは輸出管理違反などに関わる人です。ただしジェトロの解説によると、国家安全に影響する恐れがある場合や刑事事件の捜査などの場合は、当事者への告知が不要とされています。本人が理由を知らされないまま出国できない場面もあり得るため、観光客であれば必ず対象外とまでは言えません。観光目的であること自体を理由に一律に出国を制限する規定とは確認できない、というのが現時点の整理です。規定の中身と技術者の出国制限の詳しい説明は「中国が9月15日から出国制限強化|技術者だけ期限なしの怖さ」で整理しています。

「一般人のパスポート回収」はどこまで確認されているか

一般の会社員がパスポートを回収されたという話は、SNS上の声として報じられた段階で、公的な通達としては確認されていません。

プレジデントオンライン(9月24日)で中国事情に詳しいジャーナリストの中島恵氏は、規定の対象はAI・半導体・レアアースなどの先端企業の技術者や公務員、企業幹部、汚職で捜査中の人物で、留学や観光などの一般人の出入国は制限しないとされていると説明しています。そのうえで、SNSでは「上司にパスポートを取り上げられている」「空港で突然出国できないと告げられた」といった声が上がっていると伝えています。これらは個別の投稿で、規定の条文や当局の発表で裏付けられたものではありません。

(編集部分析)条文が観光客を名指ししていなくても、「出国できないかもしれない」という不安そのものが旅行を控えさせる効果を持ちえます。規定の運用が当局の裁量に委ねられている以上、日本の観光業が中国からの団体・個人客の回復を前提に計画を立てるのは、慎重であるべきだといえます。

訪日中国人の需要はゼロではない リピーターと他の市場

日本へ来たい中国の人は今も一定数いて、国慶節の訪日予定者の6割強はリピーターです。

NHKも9月30日に「日本行きは減少も一定需要か」と伝えています。JNTOの統計でも、2026年8月の訪日中国人41万8,000人は国・地域別で韓国、台湾に次ぐ3位の規模です。その一方で、他の市場は伸びています。8月の主な市場を表にします。

国・地域 2026年8月(推計値) 前年同月比 1〜8月累計の前年同期比
韓国 85万500人 28.7%増 21.2%増
台湾 66万6,000人 7.3%増 19.8%増
中国 41万8,000人 59.0%減 56.7%減
香港 24万7,300人 9.4%増 8.7%増

表のとおり、韓国と台湾の伸びが中国の減少の多くを埋め、訪日客全体の1〜8月は2.7%減で止まっています。JNTOによると、8月は14の市場で8月として過去最高を記録しました。

全体の数字が大きく崩れていない背景には、訪日客の出身地が分散してきたことがあります。この点を国益の観点から考えます。

(編集部分析)観光を外交カードにする中国共産党と日本の選び方

今回の激減は、中国国民の日本離れではなく、中国共産党政権の外交上の判断が人の流れを左右した例として見るべきです。

事実として、インタセクトの調査では国慶節の訪日予定者の62.8%がリピーターで、44.3%が日本の文化・芸術への関心を理由に挙げています。一方で、JNTOが減少理由に挙げたのは、中国政府の注意喚起と航空便の減便でした。

中国国民と中国共産党を分けて考える

日本を好んで訪れる中国の人々と、渡航自粛を呼びかけた中国政府の判断は、分けて受け止める必要があります。

(編集部分析)日本の文化に関心を持ち、繰り返し訪れる中国の人々は、日本の魅力を実際に評価している旅行者です。彼らの旅行を止めているのは、首相の国会答弁への反発を理由に渡航自粛を呼びかけた政府の側です。台湾有事は日本の安全保障に直結する問題であり、首相が国会で安全保障上の考え方を示したことへの対抗として、観光という民間の交流を止める手法は、経済的な威圧の一種と評価できます。日本が答弁の撤回に応じれば、次も同じ手法が使われる前例になりかねません。

中国側は9月にも、王毅外相が岩屋毅前外相との会談で台湾をめぐる発言の是正を求めています。経緯は「王毅外相が台湾発言の是正要求|岩屋前外相との会談で何を語ったか」で整理しています。

特定の国に頼らない観光へ

訪日客の出身地を韓国・台湾などへ広げてきたことが、今回の打撃を小さくしています。

(編集部分析)1〜8月の訪日客全体に占める中国の割合は23.6%から10.5%に下がりましたが、全体は2.7%減で持ちこたえています。一国の政府の判断で客足が半分以下になりうることを示した今回の経験は、観光でも特定国への依存が安全保障上の弱点になることを示したといえます。誰の都合で客足が止まるのかを見極め、韓国・台湾・欧米など価値観を共有する国・地域との往来を厚くする方向が、日本の主権と地域経済の双方を守る道だと考えます。

国慶節の影響はいつ数字で確かめられるか

国慶節の影響は、JNTOが11月中旬に公表する2026年10月の訪日外客数の推計値で確かめられます。

見るポイントは3つあります。1つ目は、中国の10月の数字が昨年10月の71万5,700人からどれだけ減るかです。2つ目は、1〜8月で56.7%減だった累計の減少率が、9月・10月分を加えてどう動くかです。3つ目は、JNTOが減少理由として挙げる「注意喚起」や「航空便の減便」の記述が変わるかどうかです。9月分の推計値は10月中旬に公表される見込みです。

中国政府が渡航自粛の呼びかけを取り下げたという発表は、10月1日時点で確認できていません。航空便や旅行会社の動きについても、新しい公式発表が出た段階で追記します。

国慶節と訪日中国人のよくある質問

本文で触れなかった国慶節の基本と、日本を選ぶ理由についての疑問をまとめます。

Q. 国慶節とは何の日ですか。

A. 中華人民共和国の建国記念日で、毎年10月1日です。2026年は建国77年にあたり、10月1日から7日までが大型連休になっています(共同通信)。

Q. 国慶節の連休初日には何人が移動する見込みですか。

A. 中国政府の予測では、ピークとなる連休初日の10月1日に延べ3億4千万人が移動します。連休全体では延べ21億3千万人です(共同通信)。

Q. 国慶節の中国国内の移動は何が中心ですか。

A. 乗用車での移動が9割以上を占める見込みです。連休中は乗用車の高速道路料金が無料になるためで、電気自動車向けの急速充電設備も1万カ所以上用意されたと報じられています(共同通信)。

Q. 日本を旅行先に選ぶ中国の人は、文化以外にどんな理由を挙げていますか。

A. インタセクトの調査では「以前の日本旅行が素晴らしかった」が27.6%、「円安による割安感」が16.4%でした。いずれも春節の調査時より増えたとされています。

数字の更新があれば、JNTOの公表にあわせて本文を見直します。出典は次のとおりです。

参考情報

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