【10/12】衆院定数31減とは|鈴木幹事長の「腹案」と45減の差

【10/12】衆院定数31減とは|鈴木幹事長の「腹案」と45減の差

衆院議員の定数削減をめぐり、自民党の鈴木俊一幹事長が10月5日の記者会見で口にした「31減」という数字が、国会の新しい論点になっています。鈴木氏はすぐに撤回しましたが、従来の「45減」との間の落としどころとして取り沙汰され、日本維新の会は反発を強めています。

この記事では、31減とは何だったのか、45減とどう違うのか、法案と協議がいまどこまで進んでいるのかを、2026年10月12日時点の報道をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 31減の中身:鈴木幹事長が人口減少を削減幅に反映させる案の例として示し、直後に撤回した数字です。
  • 45減との違い:45減は自民・維新の法案に書かれた比例代表の削減幅で、31減は計算方法も内訳も示されていません。
  • これからの日程:選挙制度協議会は10月末をめどに結論を出す努力をするとし、臨時国会の会期は12月12日までです。
目次

衆院定数「31減」とは何か

31減は、鈴木幹事長が人口減少を削減幅に反映させた場合の一例として示し、その後撤回した削減数です。

現在の衆院定数は465(小選挙区289、比例代表176)です。自民党と維新は連立政権の合意で「1割を目標に削減する」としており、議論の中心はずっと「45減」でした。31減はそこに初めて出てきた別の数字です。

鈴木幹事長は10月5日の会見で何と言ったのか

鈴木氏は、人口減少を削減幅に反映させる案に触れ、削減が31減になる例があると述べました。

共同通信の配信を受けた福井新聞(10月6日)と山陰中央新報(10月5日)がこの発言を伝えています。どの人口の数字を使い、465のどこから31を減らすのかという計算方法や内訳は、報道の範囲では示されていません。

なぜすぐに撤回したのか

鈴木氏は発言の直後に撤回しており、撤回の理由は報道の範囲では説明されていません。

西日本新聞(10月11日)によると、鈴木氏は「大枠のところで取っかかりを得ることができるかどうか」とも述べ、交渉材料として温めている案があることをにおわせました。同紙は、会見で触れたのが「失言」か「故意」かで見方が割れていると伝えています。

(編集部分析)撤回した数字が1週間たっても論点として残っているのは、45減だけでは国会がまとまらないと与党の中でも見られているからだと考えられます。数字そのものより、「45は動かせる」という合図として受け取られた点に重みがあります。

31減と45減は何が違うのか

45減は法案に書かれた比例代表の削減幅で、31減は計算方法も内訳も示されていない発言上の例です。

両者の違いを、いま分かっていることだけで並べると次のとおりです。

項目 45減 31減
出どころ 自民・維新が共同提出した法案 鈴木幹事長の10月5日の会見での例示
いまの扱い 衆院で継続審議中 発言の直後に撤回
どこを減らすか 比例代表176から45 示されていない
減らした後の定数 420(比例131) 465から31を引けば434(内訳は不明)
根拠 定数の「1割」という目標 人口減少の反映(計算方法は未公表)

表のとおり、31減は「何を基準にした数字か」がまだ外に出ていません。西日本新聞は、9月末に公表された2025年国勢調査の確定値に基づく試算が根拠だとささやかれていると伝えていますが、これは同紙が伝える見方の段階です。

45減の法案は何を定めているのか

法案は、与野党協議で1年以内に結論が出なければ、比例代表の定数を自動的に45減らす内容です。

西日本新聞によると、協議の場は衆院議長の下に設けられた与野党協議会で、法の施行から1年以内に結論が出ない場合に削減が発動します。今国会で成立すれば、次の衆院選で適用される公算が大きいとされています。法案の経緯は、7月の記事「比例定数45削減はなぜ危険か|新党・保守が育たない仕組みと審議強行の経緯」でも整理しています。

鈴木幹事長の「腹案」はなぜ波紋を広げているのか

撤回したはずの31減が、45減と野党の反対の間を取る「落としどころ」として受け取られたためです。

西日本新聞は、与野党協議に携わる自民議員の見方として、削減幅によっては野党の中にも賛成に回る党があると伝えています。一方で、高市早苗首相と維新を説得できるかが鍵だともしています。同紙はさらに、自民党内で「最後は45という数字を変えるしかない」との意見が根強いと報じています。

維新はどう反発しているのか

維新の幹部は31減を「あり得ない」と批判し、藤田文武共同代表は45削減で与党が一致していると述べました。

藤田氏の発言はNHK(10月7日)が伝えています。維新は「身を切る改革」を党是としており、45減に強くこだわってきました。西日本新聞によると、自民の中堅議員からは「維新の反発で『31減』は完全に消えた」という見方も出ています。

ただし維新の中も一枚岩ではありません。同紙によると、維新の青柳仁士元政調会長は10月4日、45減にこだわる必要はないと投稿し、一定の条件を満たせば野党案を受け入れることも「一つの道」だと訴えました。

(編集部分析)連立の看板政策で数字が揺れれば、維新は支持者に説明がつきません。31減への反発は、数字の正しさより「約束を守ったか」を問われる立場の表れといえます。ただし約束の中身が「1割」という目標だった以上、その根拠をどこに置くかは連立の内側でも詰め切れていないとみられます。

自民・維新の定数削減法案はいまどうなっているか

法案は先の国会で成立せず継続審議となり、10月5日に召集された臨時国会で扱いが焦点になっています。

6月から10月までの主な流れを並べると次のようになります。

6月4日
高市首相が比例45削減で党内をまとめるよう指示
先の国会
自民・維新が法案を共同提出、野党の抵抗で継続審議
9月30日
選挙制度協議会が「10月末めど」の報告書
10月5日
臨時国会召集、鈴木幹事長が31減に言及し撤回
10月7日
維新・藤田共同代表「45削減で与党は一致」

流れを見ると、法案の数字は45のまま動いておらず、動いているのは与党幹部の発言と協議会の期限の方です。

首相の指示は、6月4日に鈴木氏が党の政治制度改革本部の総会で明らかにしました(秋田魁新報・共同通信)。協議会の報告書は、現行制度の部分的な見直しについて、定数のあり方を含めて10月末をめどに結論を得るよう努力するとしています(秋田魁新報・共同通信 9月30日)。報告書の中身は9月の記事「衆院定数削減の「削減」が消えた|10月末結論で何が決まるか」で詳しく扱っています。

各党は衆院定数削減にどう向き合っているか

自民と維新は削減を進める立場で、野党は比例だけの削減に否定的か、削減そのものに反対しています。

西日本新聞が整理した各党の立場を並べると次のとおりです。

政党 定数削減への立場(報道ベース)
自民党 1割を目標に削減。法案は比例45減。党内には数字の見直し論も
日本維新の会 45減にこだわり、今国会での決着を求める
国民民主党 削減には根拠が要るとの立場で、人口減少に応じた削減案を示している(西日本新聞)
民主改革の会・公明党 比例だけを減らすことに否定的
共産党 定数削減そのものに反対
参政党 現行制度のままの削減には慎重。選挙制度の抜本見直しと一体で検討すべきと主張
チームみらい 中小政党に有利とされる「サンラグ式」の導入を含む改革案を提示

表で見ると、31減の「人口減少を反映する」という考え方は、西日本新聞が伝える国民民主党の主張と同じ方向を向いています。共同通信の配信を受けた福井新聞は10月12日朝、「国民民主に秋波?」と見出しを付けて31減案の波紋を伝えました。国民民主党の案の詳しい中身は、報道の範囲では確認できていません。

反対する側は何を問題にしているのか

反対する側は、比例だけを減らすと少数政党が国会に入りにくくなり、民意が切り捨てられると訴えています。

共同通信の論説を載せた佐賀新聞(10月12日)は、比例だけの削減は与党への影響が小さい一方で少数意見を排除しかねないと主張しました。同じ論説は、自民は小選挙区で圧勝したものの、比例代表の得票率は維新と合わせても50%を下回るとも指摘しています。

(編集部分析)この指摘は左右を問わず無視できません。比例の議席は、既存の大政党に属さない新しい保守系の政党が国会に足場を築く入り口でもあります。比例だけを狙い撃ちにすれば、得をするのは小選挙区で強い既存の大政党です。「身を切る改革」が、実際には新しい声を締め出す改革になっていないかを見極める必要があります。

定数削減は消費税減税の審議にどう響くか

与党が定数削減の採決を急げば、参院で野党が対抗し、消費税減税の法案審議に響くおそれがあると報じられています。

西日本新聞によると、衆院で3分の2を超える議席を持つ与党が採決を強行した場合、野党が多数を占める参院で対抗措置が取られる可能性があります。政府・与党が今国会で最も重視するのは、飲食料品の消費税率を引き下げる関連法案で、その審議に悪影響が出る筋書きもあると同紙は伝えています。

臨時国会は10月5日に召集され、会期は12月12日までの69日間です(熊本日日新聞・共同通信)。減税の法案と定数削減の法案が、同じ会期の中で順番を争う形になっています。

(編集部分析)国民の手取りに直結するのは定数削減ではなく減税です。議員の数を減らすことが国民の負担を直接軽くするわけではありません。定数の数字をめぐる与党内の駆け引きで、減税の成立が遅れることがあってはならないと考えます。31減が「取っかかり」として持ち出された背景に、減税審議を守りたい与党の計算があるとすれば、それは順番として理にかなっているといえます。

31減は人口減少で説明できるのか

人口減少を根拠にする考え方自体はありますが、31という数字がどう計算されたかは公表されていません。

総務省が9月29日に公表した2025年国勢調査の確定値では、日本の総人口は1億2297万2528人で、2020年の前回調査から317万3571人(2.5%)減りました(熊本日日新聞・共同通信)。人口が増えたのは東京都だけで、残る46道府県は減っています。

前回調査からの減少率2.5%を465議席にそのまま当てはめると約12議席で、31にはなりません(編集部の単純計算)。31減が何年分の人口変化を、どの議席に当てはめた数字なのかは、鈴木氏が計算方法を示さない限り外からは確かめられません。

(編集部分析)「1割」は切りのよさで決めた目標にすぎず、それに比べれば人口という物差しを持ち出したこと自体は筋が通っています。ただし物差しを示すなら、計算式も示すべきです。根拠の見えない数字が交渉の駒として行き来する限り、どの数字に落ち着いても「政党の都合で決めた」という疑いは消えません。

人口で減らすなら地方の議席はどうなるのか

人口の減少は東京以外の46道府県で起きているため、人口に合わせて減らすほど地方の議席が減りやすくなります。

国勢調査は衆院の定数配分や小選挙区の区割りの基礎データになります。どの議席を減らすかが示されていない31減では、地方がどれだけ影響を受けるかはまだ分かりません。ここは今後の協議で必ず確かめるべき点です。

10月末から12月12日までに何が決まるか

選挙制度協議会の10月末めどの結論と、臨時国会で法案を採決するかどうかが、次の焦点になります。

この先の日程を、報道で分かっている範囲で並べると次のとおりです。

時期 予定・焦点
10月5日 臨時国会召集(会期69日間)
10月末めど 選挙制度協議会が定数のあり方を含めて結論を得るよう努力
会期中 継続審議の定数削減法案を採決するか、削減幅を変えるか
12月12日 臨時国会の会期末

表の中で数字が動く可能性があるのは、10月末の協議会の結論と会期中の与党の判断です。西日本新聞は、今国会でどんな結論になるか予断を許さないと結んでいます。

読者として押さえておきたいのは、①削減幅が45から動くか、②減らすのが比例だけか小選挙区も含むか、③消費税減税の法案が先に通るか、の3点です。この3つが決まれば、次の衆院選で自分の選挙区と比例ブロックがどう変わるかが見えてきます。10月末に協議会の結論が出たら、削減幅と「比例だけか」の2点を確かめ、自分の住む地域の比例ブロックと選挙区の議員がこの法案にどう投票するかを見ておくと、次の投票先を決める材料になります。

衆院定数31減のよくある質問

本文で触れきれなかった周辺の疑問に答えます。

Q. 衆院の定数はこれまでにも減ったことがありますか?

A. あります。2017年の衆院選から、小選挙区6・比例代表4の計10議席が減り、定数は475から今の465になりました。

Q. 比例代表はいくつのブロックに分かれていますか?

A. 全国11ブロックです。北海道から九州までのブロックごとに176議席が割り振られており、比例を減らすとどのブロックが何議席減るかも今後の論点になります。

Q. 「サンラグ式」とは何ですか?

A. 比例代表で議席を割り振る計算方法の一つです。いまの衆院が使うドント式より中小政党が議席を得やすいとされ、チームみらいが導入を含む改革案を示しています。

続報が入りしだい、協議会の結論と法案の扱いを追記します。

参考情報

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