【10/13】簗農水相「選管に確認」答弁、栃木県選管は「記録ない」|高市首相「本当にダサイ」違法性あれば「ちゅうちょしない」
簗和生(やな・かずお)農林水産相は10月13日の衆院予算委員会で、衆院選の出陣式で支持者をシャトルバスで無料送迎した件について「スタッフがバスを借り上げる前に選挙管理委員会に確認した」と答弁しました。ところが同じ日、栃木県選挙管理委員会は簗氏の陣営から照会を受けた「記録はない」と明らかにしています。
同じ予算委で高市早苗首相は、簗氏の道路予算「カット」発言を「本当にダサイ」と評し、「仮に違法性のあるようなことがあれば、その時には私はちゅうちょはしない」と更迭の可能性にも触れました。9日の参院本会議で更迭を強く否定したときから、言い方が変わっています。この記事では、13日の予算委で出た答弁と、栃木県選管の説明との食い違いを、報道と一次情報で確認できた範囲で整理します。
この記事でわかること
- 答弁と選管の食い違い:簗氏は「事前に選管へ確認した」と答弁し、栃木県選管は照会の「記録はない」と説明しています。
- 首相答弁の変化:9日は「人一倍働いてほしい」、13日は「本当にダサイ」「違法性あればちゅうちょしない」と進退に含みを持たせました。
- 次の焦点:14日の衆院予算委、16日・19日の参院予算委での説明と、野党の問責決議案の扱いです。
簗農水相の「選管に確認」答弁と栃木県選管の「記録ない」は何が食い違っているのか
食い違うのは、陣営がバスの手配前に選管へ問い合わせたかどうかです。簗氏は「確認した」、選管は「記録がない」と答えました。
どちらの説明が正しいかで、シャトルバスの無料送迎が「選管の了解を得たうえでの対応」だったのか、「事後に会場費として計上しただけ」なのかが変わります。違法かどうかの判断そのものではありませんが、簗氏がこれまで繰り返してきた「法令にのっとり適切に対処している」という説明の土台にあたる部分です。
簗氏の答弁:スタッフが事前に選管へ確認したと報告を受けた
簗氏は、スタッフが事前に選管へ確認し、会場費の一部として計上する回答を得たと報告を受けた、と答弁しました。
日刊スポーツによると、質問したのは会派「中道」の山岡達丸氏(民主改革の会)です。
山岡氏が「虚偽答弁ですか」とただすと、簗氏は「スタッフから選管に照会をかけたという話があったので、その旨を答弁した」という趣旨で答え、利益供与や寄付にあたらないかという観点で照会し、その回答に基づいて対応したと説明しました。時事通信も、簗氏が「利益供与や寄付にはあたらず、法令に従って適切に対応している」として、問題はないとの認識を示したと伝えています。
栃木県選管:簗氏陣営からの照会は「記録がない」
栃木県選管は13日、シャトルバスの無料提供について簗氏陣営から照会を受けた「記録はない」と明らかにしました。
共同通信が報じています。
山岡氏が予算委で紹介した選管側の説明では、担当者にも記憶がなく、事前に聞かれていれば判例集に基づいて「違反にあたる可能性がある」と答えたはずだ、とされています。また、起きてしまった後にどう計上すればよいかを聞かれたなら「会場費に含めるしかない」と答えるが、それは違反ではないという意味ではない、という説明だったとされています(日刊スポーツ)。
簗氏の答弁と選管側の説明を並べると、次のとおりです。
| 論点 | 簗氏の答弁(10/13) | 栃木県選管の説明(10/13) |
|---|---|---|
| 事前の照会 | スタッフがバスを借り上げる前に確認したと報告を受けた | 照会を受けた記録はない(共同) |
| 費用の扱い | 会場費の一部として計上した | 事後に聞かれれば会場費に含めるしかないと答えるが、違反でないという意味ではない(山岡氏の紹介) |
| 事前に聞かれた場合 | 利益供与・寄付にあたらないとの回答を得た | 判例集に基づき違反にあたる可能性があると答えたはず(山岡氏の紹介) |
表のとおり、事前の照会があったかどうかで両者の説明は正面から食い違っています。今後、照会の日時や相手を裏付ける資料が示されるかが注目されます。
高市首相は10月13日の予算委で簗氏の進退について何と答えたのか
首相は発言を「本当にダサイ」と批判し、違法性があれば「ちゅうちょはしない」と進退に含みを持たせました。
朝日新聞の詳報によると、13日の衆院予算委では簗氏をめぐる質問が与野党から相次ぎました。首相が答えた主な場面は次の3つです。
「本当にダサイ」:会派「中道」の中野洋昌氏への答弁
首相は道路予算をめぐる発言を「本当にダサイ」と評し、簗氏が行政運営を続けてよいかを考えると述べました。
質問したのは会派「中道」の中野洋昌氏(公明党)です。
中野氏は「円滑な農政の施行に支障になっていると思う。適切な適性を持った方に代わっていただくべきではないか」とただしました。首相は「大臣の任命責任は私にある」としたうえで、「選挙での支援だとかに関係なく、公平・公正に予算を配分するのは当たり前のこと」「簗氏の地元での発言が事実であるとしたら、本当に不適切なもの」と述べ、「本当にダサイ。その人が行政の運営をしていっていいのかどうか含め、私はしっかりと考えさせていただく」と答えています(朝日新聞)。
「違法性あればちゅうちょしない」:伊佐進一氏への答弁
首相は、法的な問題が確認されれば簗氏の交代をためらわないという考えを、13日の予算委で示しました。
質問したのは会派「中道」の伊佐進一氏(公明党)です。
首相は「この内閣をつくる時、とにかく一人ひとりの政策構築能力を最重視した」「スキャンダルが出て、追及を受けているからバッサリ切り捨てていいという状況にはない」と述べる一方、「仮に違法性のあるようなことがあれば、その時には私はちゅうちょはしない」と答弁しました。「本人も違法性は明確に否定している。もう少し説明責任を果たさせてやってほしい」とも語っています(朝日新聞・共同通信)。
「一対一で確認したい」:長妻昭氏への答弁
首相は、シャトルバスの件はまだ簗氏と一対一で話していないとして、本人に確認する機会を持ちたいと答えました。
質問したのは会派「中道」の長妻昭氏(民主改革の会)です。
首相は「新たにシャトルバスの話とか出てきた。公選法違反と断定できるのか、私には判断できていない。事実関係の全容を見なければいけない」と述べました。道路予算の件では「自民党を応援しないと予算が削られるということがあってはならないし、実際にはないこと。簗氏の問い合わせに、国土交通省は予算額の配分には影響していないと説明している」と答えています(朝日新聞)。
3つの答弁を並べると、首相は続投を前提にした説明から、事実関係しだいで判断するという説明へ軸足を移しています。
Q. 高市首相は13日に簗氏の更迭を決めたのですか?
A. 決めていません。13日時点の答弁は「違法性があればちゅうちょしない」「しっかりと考えさせていただく」で、更迭の判断は示していません。
では、9日の答弁と比べると何が変わったのかを確認します。
9日の参院本会議と13日の予算委で首相の答弁はどう変わったのか
9日は更迭を強く否定して続投を求め、13日は違法性があれば交代をためらわないと条件付きで含みを持たせた点が変わりました。
首相は8日の国会答弁で簗氏の発言を「不適切だと考え厳しく注意した」と説明し、9日の参院本会議(各党の代表質問)では「人一倍働いてほしい」と述べ、更迭を強く否定していました(朝日新聞)。違法性を問われた場面では「刑事責任は個別具体の事実関係に基づき、捜査などを通じて判断されるべきものだ」と答えるにとどめ、「まず本人が適切に説明することが重要だ。任命責任は私にある」とも述べています(共同通信)。
9日と13日の答弁を日付ごとに並べると、次のとおりです。
| 項目 | 10月9日 参院本会議 | 10月13日 衆院予算委 |
|---|---|---|
| 発言への評価 | 不適切で厳しく注意した(8日の答弁) | 事実なら本当に不適切、「本当にダサイ」 |
| 進退 | 更迭を否定、「人一倍働いてほしい」 | 行政の運営を続けてよいか含め「しっかりと考えさせていただく」 |
| 違法性 | 捜査などを通じて判断されるべき | 仮に違法性があれば「ちゅうちょはしない」 |
| 任命責任 | 任命責任は私にある | 大臣の任命責任は私にある |
任命責任の認め方は同じですが、進退と違法性の扱いは4日で明らかに動きました。9日は本会議での代表質問、13日は一問一答の予算委という場の違いもあり、同じ問いへの答えではない点は区別して読む必要があります。
簗農水相のシャトルバス無料送迎問題とはどんな問題か
衆院選公示日の出陣式で、陣営が手配したバスに支持者が無料で乗った件が、公選法に触れるかを問われています。
TBSの報道によると、2026年1月27日の衆院選公示日、栃木県大田原市にある簗氏の地元事務所前の広場で出陣式があり、臨時駐車場との間をシャトルバスが往復しました。支援者は「乗る人はタダだよ、みんな」と証言しています。選挙運動費用収支報告書には、シャトルバス代として2024年衆院選で18万4800円、2026年衆院選で23万5400円が記載されている、と同じ報道は伝えています(金額はTBSの報道によるもので、本記事では報告書の原本を確認できていません)。
週刊文春が2024年と2026年の衆院選での無料送迎を報じたのを受け、簗氏は7日に「法令に従い、適正に処理しております」と述べ、9日の閣議後会見では「事実関係を確認しており、整理次第、説明する」としていました。13日の予算委では、バスを用意したことを認めたうえで、集会の時間帯は公共交通機関が使えず高齢者も多かったとして「人道上の観点」からの対応だったと説明しています。800メートルの距離を高齢者や杖を使う人が歩くのは難しい、とも述べました(日刊スポーツ・北國新聞〈共同通信〉)。
シャトルバスの件の経緯と報道の中身は、当サイトの「簗和生農相のシャトルバス疑惑とは|出陣式の無料送迎と公選法」でも整理しています。
選挙の無料送迎は公職選挙法の買収にあたるのか
無料送迎は買収や利益供与にあたる可能性があるという見方が出ていますが、簗氏の件の違法性は確定していません。
予算委で山岡氏は「選挙関係実例判例集」を示し、個人演説会の聴衆にバスを提供することは公選法の利益供与にあたると記載されていると指摘しました(日刊スポーツ)。TBSの報道では、栃木県選管が一般論として、有権者を無料で演説会場まで乗せることは公選法221条の買収および利害誘導罪にあたる可能性があり、控えるよう回答したとされています。ただし、これは簗氏の件を名指しした判断ではありません。
元検事の若狭勝弁護士は、無料送迎は財産的利益の提供にあたり「買収という形になり得る可能性」があるとの見方を示しています(TBS)。一方、簗氏は「会場費の一部として認識し、会場運営上不可欠なもの」で、利益供与や寄付ではないと説明しています。総務省は予算委で、個別の案件だとして見解をほぼ差し控えました。
首相が「公選法違反と断定できるのか、私には判断できていない」と述べたとおり、違法かどうかの最終的な判断は捜査機関や司法に委ねられる性質のものです。本記事も違法と断定するものではありません。
Q. 費用を会場費として計上していれば問題ないのですか?
A. 計上したことと違法でないことは別の話です。山岡氏が紹介した選管側の説明では、事後に聞かれれば会場費に含めるしかないと答えるが、それは違反ではないという意味ではない、とされています。
バスの件と並んで問われ続けているのが、もともとの道路予算「カット」発言です。
道路予算「カット」発言の問題はどこまで来たのか
撤回・謝罪の後も照会の経緯やバス送迎の件が加わり、13日の予算委では与党からも事実関係をただされました。
簗氏は、衆院選で自身を支持しなかった首長がいる地元の那須烏山市と那珂川町について、道路予算を「大幅にカットした」と発言していたことが報じられ、10月5日に発言を撤回して謝罪しました。13日の予算委では、自民党の田村憲久元厚生労働相の質問に「予算の減額を求めた事実は一切ない。私の不徳を恥じ、おわびする」と陳謝しています(時事通信)。ここまでの流れを日付順に示します。
「大幅カット」発言の音声が報じられる
発言を撤回し謝罪
国交省への照会が判明、シャトルバス報道
首相が参院本会議で更迭を否定
予算委で首相「ダサイ」、選管「記録ない」
図のとおり、論点は発言そのものから、照会の経緯、選挙運動の費用の扱いへと広がってきました。13日に新たに加わったのが、選管への照会をめぐる答弁の食い違いです。
発言の中身は「簗和生農水相「誤解招いた」と会見|道路予算「大幅カット」音声で何が報じられたか」、国交省への照会は「簗和生農相の国交省調査|2月に副大臣へ照会、交付金は最大54%減」で詳しく扱っています。
千葉の豪雨被害の視察キャンセルで何が問われたのか
簗氏が千葉県の豪雨被害の視察を国会答弁の準備を理由に取りやめたことが取り上げられ、首相が「大変申し訳ない」と陳謝しました。
長妻氏が「昨日、千葉の豪雨で被害に遭った農業関係者を視察すると聞いていたが、ドタキャンしたと言われている。理由は何か」とただすと、簗氏は「この国会での質疑の対応を優先、準備させていただく考え方から、出張を取りやめさせていただいた」と答えました。今後は「近々、副大臣あるいは政務官を現地に赴かせ、現地視察をしっかりとさせていただきたい」としています(朝日新聞)。
首相は「大変申し訳ない」と陳謝し、簗氏に「外を出歩くよりも、自分で整理してもう少し包括的に私にも説明してほしい」と伝えていたと説明しました。発言をめぐる対応が、農政の現場の公務にまで影響した形です。
簗農水相の問題で今後の焦点はどこか
焦点は、14日の衆院予算委と16日・19日の参院予算委での説明、首相と簗氏の一対一の確認、野党の問責決議案の3つです。
共同通信によると、衆院予算委は13日・14日、参院予算委は16日・19日に開かれ、首相と全閣僚が出席します。参院では野党6党が簗氏への問責決議案の提出を視野に入れていると報じられています。13日夕には、国民民主党の玉木雄一郎代表が問責決議案への対応を簗氏の答弁を踏まえて判断する考えを示し、進退について「潔く判断する時」と述べたと日本経済新聞が伝えました。首相が13日に「確認の機会を持ちたい」と述べた一対一の確認の結果と、陣営が選管への照会を記録で示せるかどうかが、進退の判断材料になるとみられます。
(編集部分析)この問題の芯は、国民の税金で賄う予算の配分が「選挙で誰を応援したか」で左右されるかのように語られた点にあります。首相が「公平・公正に予算を配分するのは当たり前」と述べたのは正しい線引きで、保守政治が守るべきは、行政が特定の政治家の都合ではなく国民全体のために動くという信頼だと評価できます。首相が閣僚を政策能力で選んだという説明にも一理ありますが、選管への照会の有無という確かめられる事実で説明が食い違ったままでは、その能力を発揮する前提となる信頼が損なわれます。陣営が照会の日時・相手を記録で示すことが、続投を論じる前の最低限の条件と言えます。
(編集部分析)同時に、違法かどうかの判断は報道や国会の空気ではなく、事実と法に基づいて行うべきものです。首相が「公選法違反と断定できるのか判断できていない」として事実関係の全容を見るとした姿勢は、手続きを重んじる立場として筋が通っています。問われているのは、その「全容」をいつまでに、どの記録で示すかです。
簗農水相と栃木県選管をめぐるよくある質問
本文で触れきれなかった関連の疑問を3つまとめます。
Q. 質問に立った会派「中道」とはどんな会派ですか?
A. 13日に簗氏の件を質問した中野洋昌氏・伊佐進一氏は公明党、長妻昭氏・山岡達丸氏は民主改革の会の議員で、衆院では同じ会派「中道」として質問しています。
Q. 簗氏の地元と、予算「カット」発言の対象になった自治体はどこですか?
A. 簗氏の選挙区は衆院栃木3区で、地元事務所は大田原市にあります。発言の対象とされたのは、同じ選挙区の那須烏山市と那珂川町です。
Q. 参院で問責決議が可決されると簗氏は辞めなければならないのですか?
A. 辞める法的な義務はありません。問責決議は参院の意思表示で、衆院の内閣不信任決議と違い法的な拘束力はありませんが、政治的な圧力は強まります。
まずは14日の衆院予算委で、簗氏が選管への照会の日時と相手を記録で示すかどうかを確認してください。出典は次のとおりです。
参考情報
- 朝日新聞「簗農水相の更迭、高市首相が可能性に言及『違法性あれば躊躇しない』」(2026年10月13日・衆院予算委の詳報)https://www.asahi.com/articles/ASVBD2F2DVBDUTFK01KM.html
- 時事通信「簗和生農林水産相、無料バス疑惑『問題ない』 高市首相、ICC支持を表明―衆院予算委」(2026年10月13日)https://www.jiji.com/jc/article?k=2026101300229&g=pol
- 共同通信「栃木県管、簗氏陣営からの照会『記録ない』」(2026年10月13日・nippon.com掲載)https://www.nippon.com/ja/news/kd1482661046941581798/
- 北國新聞(共同通信)「簗農相、無料バス送迎を認める」(2026年10月13日)https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/2257245
- 熊本日日新聞(共同通信)「首相、農相更迭を重ねて否定 『簗氏は適切に説明を』」(2026年10月9日)https://kumanichi.com/articles/2044850
- 熊本日日新聞(共同通信)「国会、野党は簗農相を追及方針 消費減税、効果や財源が焦点」https://kumanichi.com/articles/2045568
- 日刊スポーツ(2026年10月13日・山岡達丸氏の質疑)、TBS NEWS DIG(2026年10月8日・シャトルバス代と支援者の証言)
