【10/16】ニデック役員責任調査委、永守氏ら9人に賠償責任|対象者と上場維持の日程

【10/16】ニデック役員責任調査委、永守氏ら9人に賠償責任|対象者と上場維持の日程

モーター大手のニデック(東証プライム・6594)は2026年10月16日、会計不正をめぐって設けた「役員責任調査委員会」から報告を受け、創業者の永守重信氏を含む新旧の役員ら9人に損害賠償責任が認められると結論づけられたと発表しました。ニデックは、損害賠償請求などの法的措置を検討し、速やかに対応するとしています。

報告書の本体は、営業秘密や個人のプライバシーにかかわる部分を伏せたうえで、10月20日をめどに開示される予定です。この記事では、ニデックの開示文書と報道をもとに、責任を認定された9人と根拠の条文、ここまでの経緯、上場維持をめぐるこれからの日程を整理します(2026年10月17日時点)。

この記事でわかること

  • 報告の結論:役員責任調査委員会は、永守重信氏ら8人に会社法423条1項、元CFO1人に民法などに基づく損害賠償責任があると結論づけました。
  • 8人と9人の違い:報道で人数が8人と9人に分かれるのは、取締役ら8人と、執行役員だった元CFO1人を分けて数えるかどうかの違いです。
  • これからの日程:10月20日めどに報告書を開示し、会社は法的措置を検討します。10月28日で特別注意銘柄の指定から1年となり、上場維持の審査も控えています。
目次

ニデック役員責任調査委員会は何を結論づけたか

ニデックの役員責任調査委員会は、永守重信氏ら新旧役員9人に、会社への損害賠償責任が認められると結論づけました。

ニデックが10月16日に出した開示文書「役員責任調査委員会からの調査報告について」によると、委員会は一連の会計不正について、現旧の取締役・監査役・執行役員の職務執行に法的責任があるかを調べ、報告と提言をまとめました。結論は「会社法に基づく損害賠償責任又は執行役員としての義務違反に基づく損害賠償責任が認められると考える」というものです。

ただし委員会は、損害の範囲については「寄与度に応じて判断されるべきである」とも付け加えています。9人が同じ額を負うのではなく、不正にどれだけ関わったかで負う範囲が変わるという意味です。具体的な金額は、開示文書には書かれていません。

ニデック自身はどう受け止めたか

ニデックは、複数の取締役らに法令違反の事実があったと認め、損害賠償請求などの法的措置を検討するとしました。

開示文書では、第三者委員会と役員責任調査委員会の調査、さらに社内の監査等委員会の監査の結果に基づき、「複数の取締役等において、その職務執行に関して法令に違反する事実があったものと認め」たと書いています。そのうえで、当該取締役らへの損害賠償請求などの「必要な法的措置を検討し、速やかに対応いたします」と結んでいます。調査委員会の意見を伝えるだけでなく、会社として違反の事実を認めた点が今回の発表の重みです。

出典:ニデック「役員責任調査委員会からの調査報告について」(2026年10月16日)
https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/1016-02/261016-02jp.pdf

損害賠償責任を認定された9人は誰か

責任を認定されたのは、永守重信氏ら取締役経験者8人と、執行役員だった元CFO1人の計9人です。

開示文書は、9人を根拠の条文ごとに3つのまとまりに分けて書いています。報道によると、この中には永守氏を含む歴代の社長5人が入っています。9月に社長を辞任した岸田光哉氏も含まれます。

次の表は、開示文書に書かれた名前と根拠の条文をそのまま並べたものです。

対象者 人数 根拠(開示文書の表記)
永守重信氏・小部博志氏・佐藤明氏・吉本浩之氏・関潤氏・岸田光哉氏 6人 会社法423条1項に基づく損害賠償責任
村上和也氏・落合裕之氏 2人 会社法423条1項に基づく損害賠償責任
旧執行役員1人(元CFO・在任2022年5月〜2026年3月) 1人 民法644条・415条1項又は執行役員規程に基づく損害賠償責任

取締役経験者の8人はすべて会社法423条1項が根拠で、元CFOだけが民法と社内規程を根拠にしている点が、表から読み取れる違いです。元CFOの名前は開示文書に書かれていません。

報道で8人と9人に分かれるのはなぜか

8人は会社法の対象になる取締役らだけを数えた人数で、元CFOを足すと9人になります。

ABCテレビは「永守重信氏や先月辞任した前社長・岸田光哉氏ら8人について、会社法に基づく損害賠償責任が認められる」と伝えました。一方、ロイターや読売テレビ、毎日新聞などは9人としています。開示文書を見ると、会社法423条1項の対象は8人で、元CFOは執行役員としての義務違反という別の根拠で扱われています。どちらの報道も間違いではなく、数え方の違いです。

会社法423条と民法644条・415条は何を定めているか

423条1項は役員の任務懈怠責任、644条は受任者の善管注意義務、415条1項は債務不履行による賠償を定めています。

会社法423条1項は、取締役や監査役などの役員が任務を怠って会社に損害を与えたとき、会社に賠償する責任を定めた条文です。

取締役や監査役は、会社から経営を任されている立場です。その任務を怠ったと認められると、会社に生じた損害を個人として賠償する責任を負います。今回、委員会は取締役経験者8人について、この責任が認められると判断しました。

元CFOだけ根拠が違う理由

執行役員は会社法上の役員ではないため、会社との委任契約などを根拠に責任を問う形になります。

民法644条は、仕事を任された人(受任者)が「善良な管理者の注意」をもって務めを果たす義務を定めています。民法415条1項は、約束した義務を果たさずに相手に損害を与えたときの賠償責任(債務不履行)を定めた条文です。開示文書は、元CFOについてこの2つの条文、または社内の執行役員規程のどちらかに基づく責任としています。どの根拠を使うかは、報告書の本体で詳しく示されるとみられます。

ニデックの会計不正はどう明らかになったか

不正は2025年に表面化し、2026年3月の第三者委員会報告で「最も責めを負うべき」は永守氏と指摘されました。

秋田魁新報(共同通信配信)によると、ニデックは2026年3月3日に第三者委員会の調査報告書を公表し、報告書は「多数の会計不正が発見された」と認定しました。経営陣の関与について報告書は「最も責めを負うべきなのは(創業者の)永守重信氏と言わざるを得ない」と指摘しています。

一方で、永守氏が不正を指示・主導した事実は見つからなかったとしたうえで、「一部の会計不正を容認したとの評価は免れない」としました。第三者委員会の平尾覚委員長は、永守氏が役員に業績目標の達成を強く迫っていたと述べています。永守氏はこの報告書の公表前に名誉会長を辞任し、役職から離れていました。

出典:秋田魁新報「ニデック不正会計、創業者に責任」(2026年3月3日)
https://www.sakigake.jp/news/article/20260303CO0112/

役員責任調査委員会はなぜ作られたか

第三者委員会の報告を受けて、退任者を含む役員の法的責任を調べるために設けられた委員会です。

第三者委員会の報告書公表の日、当時の岸田光哉社長は、退任した人を含めて役員の法的責任を調べると明らかにしていました。MBSニュースによると、ニデックは外部の有識者3人からなる役員責任調査委員会を設け、現役員だけでなくすでに辞任した役員も対象に調べてきました。読売テレビによると、調査の対象は2020年4月から2025年6月までの取締役・監査役・執行役員です。

ニデックの不正会計問題の時系列

特別注意銘柄の指定から責任認定までの約1年で、経営陣の顔ぶれと決算の数字が大きく変わりました。

報道と開示をもとに、主な出来事を順に並べると次のとおりです。

2025年10月28日
東京証券取引所が内部管理体制の改善が必要として特別注意銘柄に指定
2026年3月3日
第三者委員会が報告書を公表。「最も責めを負うべき」は永守氏と指摘。小部博志会長らが辞任
2026年9月29日
岸田光哉社長が辞任し、戒田理夫氏が社長に昇格
2026年9月30日
延期していた前年度決算を開示。減損損失6321億円、最終赤字5646億円
2026年10月16日
役員責任調査委員会の報告を受領。永守氏ら9人に損害賠償責任と公表
2026年10月20日ごろ
調査報告書の本体を一部伏せて開示する予定
2026年10月28日
特別注意銘柄の指定から1年。月末めどに内部管理体制確認書を提出する見込み

時系列で並べると、責任の認定、報告書の開示、上場維持の審査が10月下旬に重なっていることが分かります。

決算で何が分かったか

前年度決算では、減損損失が当初想定の2500億円規模を大きく上回る6321億円になりました。

読売テレビによると、ニデックは財務状況の精査のために延期していた前年度の決算を9月30日に開示しました。資産の評価を見直した結果、減損損失は6321億円となり、最終赤字は5646億円を計上しています。決算の精査の過程で「財務報告に関して適切とは言いかねる言動」が確認されたとして、岸田光哉氏が9月29日付で社長を辞任し、専務執行役員だった戒田理夫氏が社長に昇格しました。

出典:読売テレビ(日テレNEWS)「不正会計のニデック 役員責任調査委員会が創業者・永守氏ら歴代5社長を含む経営陣の法的責任を認定」(2026年10月16日)
https://news.ntv.co.jp/n/ytv/category/society/yt1ba3933dc18141558df14fcf833f36c7

監査をめぐっても、監査法人は2期連続で「意見不表明」としています。意見不表明で株価が急落した経緯と上場廃止の基準は、【10/1】ニデック意見不表明で株価急落|上場廃止の基準と今後の日程で整理しています。

ニデックはこの先上場廃止になるのか

現時点で上場廃止は決まっていません。10月28日で指定から1年となり、その後の東証の審査で判断されます。

東証は2025年10月28日付でニデックを特別注意銘柄に指定しました。日本取引所グループ(JPX)の説明では、特別注意銘柄に指定された会社は、原則として指定から1年たった後の審査までに内部管理体制を適切に整え、運用することが求められます。整備と運用が適切と認められれば指定は解除され、整備が不十分などと判断されれば上場廃止になります。整備はできていても運用が十分でなく改善の見込みがある場合は、指定が続くこともあります。指定の途中でも、改善の見込みがなくなったと東証が認めた場合は上場廃止になり得ます。

出典:日本取引所グループ「特別注意銘柄」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/measure/index.html

共同通信は10月7日、ニデックは今月末をめどに内部管理体制確認書を東証へ出す必要があり、審査結果が出るまでに2〜3か月ほどかかる見込みで、東証は年内にも上場維持の判断を出す見通しだと伝えました。指定が続いて再審査になった場合は確認書を出し直し、その期限は最長で2028年6月末になるとしています。

出典:共同通信「ニデック上場維持、年内判断か」(2026年10月7日・OANDA証券のマーケットニュース掲載)
https://www.oanda.jp/lab-education/?p=129962

読売テレビも、ニデックが上場を維持するには今月中にも改善の道筋を示す必要があり「正念場を迎えています」と伝えています。

(編集部分析)不正の原因を作った側に会社がきちんと責任を問えるかどうかは、投資家が「自浄作用があるか」を見るうえで分かりやすい物差しです。旧経営陣の法令違反を会社として認めたことは、ガバナンスの立て直しを説明する材料の一つになり得ます。ただし東証が審査するのは内部管理体制の整備と運用で、損害賠償請求が審査でどの程度評価されるかは分かっていません。

永守氏らへの損害賠償請求はこれからどう進むか

会社が誰にいくら請求するかを決めるのはこれからで、10月20日めどの報告書開示が次の節目です。

開示文書の段階では、責任の有無と根拠の条文までが示され、損害額や請求額は書かれていません。委員会は損害の範囲を「寄与度に応じて判断されるべき」としているため、会社は報告書の中身を踏まえて、一人ずつ請求の範囲を詰めることになるとみられます。朝日新聞は「ニデック、不正会計で永守氏に損害賠償求め提訴へ」という見出しで報じましたが、ニデックの開示文書の表現は「法的措置を検討」にとどまっています。

会社が請求しない場合はどうなるか

会社が役員の責任を追及しない場合、株主が代わりに訴える株主代表訴訟という仕組みがあります。

会社法847条では、6か月前から株式を持ち続けている株主が、会社に対して役員の責任を追及する訴えを起こすよう請求できます。会社が請求から60日以内に訴えを起こさなければ、株主が自ら会社のために訴えを起こせます。ロイターは同じ16日、投資会社オアシスの最高投資責任者がニデック株を買い増し、保有比率が9%を超えたと伝えており、株主側の動きにも注目が集まります。

(編集部分析)今回の結論は、カリスマ創業者が一代で築いた会社でも、創業者個人の責任を外部の委員会が条文に沿って認定したという点で、日本の企業統治にとって一つの前例になります。創業者の影響から脱することが再生の条件だと3月の第三者委員会も指摘しており、請求の実行まで見届ける必要があります。

ニデック役員責任調査委員会のよくある質問

Q. 第三者委員会と役員責任調査委員会はどう違うのですか

A. 第三者委員会は、不正の事実と原因を調べて2026年3月に報告しました。役員責任調査委員会は、その結果を受けて、誰が会社に対して賠償の法的責任を負うかを調べ、10月16日に報告しました。

Q. 永守氏は今もニデックの役職に就いているのですか

A. 就いていません。秋田魁新報によると、永守氏は2026年3月の第三者委員会報告の前に名誉会長を辞任し、役職がなくなりました。同じ3月に小部博志会長も辞任し、岸田光哉氏は9月29日付で社長を辞任しています。

Q. 報告書や会社の発表はどこで確認できますか

A. ニデック公式サイトのニュースリリースと、東証の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)に載ります。今回の10月16日の開示文書も、ニデック公式サイトにPDFで掲載されています。

まとめ|ニデックの責任認定で次に見るべき3点

次に見るべきは、10月20日めどの報告書開示、会社の請求の中身、東証の上場維持の判断の3点です。

  • 役員責任調査委員会は、永守重信氏ら取締役経験者8人に会社法423条1項、元CFO1人に民法644条・415条1項又は執行役員規程に基づく損害賠償責任があると結論づけました。
  • ニデックは法令違反の事実を認め、損害賠償請求などの法的措置を検討するとしています。損害の範囲は寄与度に応じて決まります。
  • 2025年10月28日の特別注意銘柄の指定から、10月28日で1年となります。内部管理体制が整ったと認められるかどうかが上場維持を左右し、東証は年内にも判断する見通しと報じられています。

株主や取引先が次に確認するのは、10月20日めどのニデックの報告書開示、10月末めどの内部管理体制確認書の提出、東証の審査結果の3つの公式発表です。新しい事実が出しだい、この記事も更新します。

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