【11/3】AIデータセンターが米中間選挙の争点に|元トランプ支持者が怒る水と電気代

11月3日(日本時間4日)に投票日を迎える米中間選挙で、AIの開発競争を支える「データセンター」の建設が新たな争点に浮上しています。TBSの「news23」は11月3日、過去3回の大統領選でトランプ氏に投票してきたオハイオ州の女性が、データセンターの規制を求める署名活動を続け、「私は怒っています」と語る姿を伝えました。
この記事では、なぜデータセンターが選挙の争点になったのか、元トランプ支持者が何に怒っているのか、世論調査の数字、トランプ政権と共和党内の温度差、激戦州の候補者の立場、そして日本にとっての意味を、TBS NEWS DIG・大和総研・Newsweek・Business Insider Japanの報道や分析をもとに整理します。
この記事でわかること
- 何が起きているか:AI向けデータセンターの建設が全米で相次ぎ、水・農地・電気代への不安から、共和党の支持層の一部にも反発が広がっています。
- 世論:ギャラップの2026年3月の調査では、自分の住む地域への建設に反対する米国人が71%に上りました。
- 選挙への影響:テキサス・オハイオ・ミシガンなど上院の激戦州で、候補者が規制強化や税優遇の見直し、自治体の判断の尊重など、それぞれの対応を打ち出しています。
AIデータセンターが米中間選挙の争点になった理由
AIの開発競争で建設が急増し、水や電気代、農地への影響を心配する住民の反発が票に結びつき始めたためです。
TBS NEWS DIGによると、データセンターは建設中のものを含めて全米で5000以上あり、オハイオ州では農村部を中心に計画が急増しています。同州の施設数は257で、全米で5番目に多いとされます。
大和総研の山崎政昌主任研究員は8月31日のコラムで、米紙ニューヨーク・タイムズが8月下旬にデータセンター建設をめぐる論争を中間選挙の新たな争点として報じ、ほかの米メディアも同じ趣旨の記事を出していると紹介しました。Newsweekは、共和党上院の選挙対策組織(NRSC)が8月にまとめた内部メモで、データセンターと党の業界との近さが重荷になりつつあり、「選挙戦全体の隠れた争点になった」と警告していたと伝えています(メモは米Axiosが8月19日に最初に報道)。
元トランプ支持者が怒る理由:オハイオ州の現場
地元の土地と水が大企業の施設に使われ、自分たちの声が政権に軽く扱われていると感じているからです。
TBSが取材したオハイオ州は、かつて製造業で栄えた「ラストベルト」の一角で、2016年以降の大統領選ではトランプ氏が3回続けて勝ってきました。そのオハイオ州で、データセンターの規制を求める署名活動をしているのが68歳のジョディさんです。
ジョディさんは過去3回の大統領選でトランプ氏に投票してきました。しかしTBSによると、トランプ氏から反対する住民が「愚かで無知で時代遅れの田舎者」と呼ばれたと受け止めて落胆し、「私は怒っています」と話しています。週に3〜4回活動し、半年で1600人分の署名を集めました。署名した共和党の支持者は「できるだけ多くの土地を今のまま残してほしい」「今の子どもたちが大人になる頃には、森で遊べる場所がなくなってしまう」と語っています。
水と農業への不安
TBSが取材したオハイオ州の農家は、冷却用の水の大量使用による農業用水の不足と地下水の汚染を心配しています。
TBSによると、50年以上大豆畑を営む80歳のレズリーさん(民主党支持者)は、データセンターが農業用の水を使い果たし、汚染することを懸念しています。データセンターは冷却に大量の水を使い、その排水が農地に流れ出て地下水を汚すという訴えもあると伝えられています。田園地帯には、草刈りで「データセンターに土地は売らない」という文字が描かれていました。
電気代の上昇
TBSの取材では、データセンターの周辺で電気代が上がったという住民の証言が紹介されています。
TBSによると、データセンターは多くの電力を消費します。取材に応じたレズリーさんの友人は、自宅の電気代が約25%上がったと話しています。この友人は、ほかの地域では電気代が2倍になった例があり、バージニア州では3倍に跳ね上がった例もあると語りました。これらは取材先の証言で、州や電力会社の公式の統計ではなく、施設がどこまで値上がりの原因になったかは別に検証が必要です。
世論調査で見る建設反対の広がり
主な世論調査では、地元への建設に反対する人が6〜7割に上り、党派による差が小さいのが特徴です。
報道で確認できる主な調査をまとめると次のとおりです。
| 調査 | 時期・対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ギャラップ | 2026年3月・米国人 | 自分の住む地域にAIを支えるデータセンターができることに反対71%(大和総研) |
| ロイター/イプソス | 2026年6月 | 今の規模と速さでの建設に賛成しない64%(Newsweek) |
| NBCニュース | 2026年9月 | データセンターへの対応で信頼できる党は民主党32%、共和党20%(Newsweek) |
| NBCニュース(最新) | 登録有権者 | 地元への建設を支持する候補は支持しにくくなる64%(Newsweek) |
TBSも、共和党と民主党のどちらの支持者でも6割以上が地元での建設に反対していると伝えています。ただし、地元への建設への反対(ギャラップ)、建設の規模と速さへの不満(ロイター/イプソス)、党への信頼(NBC)、候補者の支持への影響(NBC)は、それぞれ別の指標です。質問の文言と対象が違うため、数字をそのまま比べたり、すべてを建設反対の割合として足し合わせたりすることはできません。
トランプ政権がデータセンター建設を推す理由
トランプ政権は、AI分野で中国との覇権争いに勝つにはデータセンターが欠かせないとして建設を後押ししています。
TBSによると、トランプ大統領は「オハイオに莫大な利益をもたらすのに、それを逃せば中国に流れてしまう」と述べています。Newsweekによれば、トランプ氏は8月、データセンターを受け入れない地域は「遅れて貧しくなる」とも語りました。Business Insider Japanは、トランプ氏がデータセンターを農村地域に恩恵をもたらす経済のプラスの力と位置づけていると伝えています。
(編集部分析)対中競争という目標そのものは、日米が共有できる安全保障上の課題だと評価できます。ただ、その負担を地元の水と電気代で背負うのが農村の住民で、利益の多くは巨大IT企業に向かうという構図があります。「誰が得をするのか」という問いに政権が答えきれていないことが、支持層の離反を招いた面は否めません。
共和党内にも広がる慎重論
共和党の州知事や選挙の専門家の間でも、建設を急ぐことへの慎重論が出ています。
大和総研のコラムによると、テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は8月4日、州内の新規データセンター・プロジェクトの承認を一時停止するよう命じました(ロイター8月5日付を出典)。民主党のペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事も8月18日、建設の規制を厳しくする知事令に署名しています。両知事とも、もともとは誘致に積極的でした。
Newsweekによると、共和党系コンサルタントのマイク・マドリッド氏は「共和党はデータセンターへの初期の支持から逃げ出している」と指摘しました。一方で共和党全国委員会(RNC)の報道官は、党は必要なAIの基盤を整えつつ、企業に費用を負担させて電気代と水を守っていると反論しています。
激戦州の候補はデータセンターにどう向き合うか
激戦州の候補は、規制強化、税優遇の見直し、自治体への判断の委ねなど、それぞれ異なる対応を打ち出しています。
Business Insider Japan(9月8日)とNewsweekの報道で確認できる各州の構図は次のとおりです。
| 州(上院選) | 共和党候補の立場 | 民主党候補の立場 |
|---|---|---|
| テキサス | パクストン氏:税の免除措置の廃止、農村部への立地制限、中国製技術の禁止を支持 | タラリコ氏:州の売上税優遇の廃止、連邦の最低基準、水を循環させる冷却方式の義務化 |
| ミシガン | ロジャース氏:連邦の全面禁止には反対、州内で1年間の一時停止を求める | エルサイード氏:包括的な土地利用の指針、自治体の拒否権、地域への還元協定 |
| オハイオ | ヒューステッド氏:立地は地方が決める問題と位置づけ | ブラウン氏:税の優遇を標的にし、相手を「データセンターの顔」と呼ぶ広告 |
Newsweekによると、クック・ポリティカル・リポートが接戦と見る上院の9選挙のうち8州で、少なくとも1つのデータセンターが計画されています(Cleanviewの集計)。同じ集計では、オハイオ州で計画中のデータセンターは155とされ、TBSが伝えた257とは数え方が異なります。テキサス州では300以上が計画されているといいます。ミシガン州の上院選の情勢は、エルサイード候補とミシガン上院選の記事で詳しく整理しています。
テキサス:タラリコ候補の献金と規制案
共和党の牙城テキサスでは、規制を前面に出す民主党のタラリコ候補が献金と世論調査で健闘しています。
TBSによると、タラリコ氏が4〜9月に集めた献金は上院選の候補として過去最高額で、相手候補の3倍以上でした。97%は1人100ドル未満の少額献金です。最新の世論調査では、タラリコ氏が共和党のパクストン候補を2.5ポイントリードしていると伝えられています。Newsweekによれば、タラリコ氏はCBSニュースのインタビューで、パクストン氏がデータセンター業界に関係する献金を50万ドル近く受け取ったと主張し、自分は業界関連の献金を受け取っていないと述べました。この金額はタラリコ氏の主張で、パクストン陣営の反論は報道で確認できていません。
(編集部分析)地方の土地利用を自治体が決めるのか、州や連邦がまとめて決めるのかという対立は、主権と自治の問題でもあります。外部の巨大資本が地域の水と土地を使う計画に、住民が拒否する手段を持てるかどうかが、党派を超えた争点になっていると評価できます。
日本から見たAIデータセンター問題
日本にとっても、電力と水の安定供給、そしてデータを国内で安全に守れるかが問われる問題です。
TBSの藤森祥平キャスターは、データセンターへの怒りや懸念は日本にも通じると指摘しました。日本では政府がデータセンターとクラウドの安全性を国が認証する制度を設ける方針で、その経緯はデータセンター安全認証の記事で整理しています。
(編集部分析)AIの計算基盤は、これからの国力を左右する重要インフラです。一方で、建設を急げば電力の需給と電気代、地域の水資源に負担が集まります。日本は米国の混乱を他山の石として、外国資本の施設に頼りすぎず、電力の安定供給と地域の合意を土台に、自国のデータを自国で守る形を整えることが求められていると考えられます。
投票の結果は日本時間4日以降に順次判明します。テキサス・オハイオ・ミシガンの上院選の勝敗は、AP通信などの開票速報で確認してください。データセンターの規制を掲げた候補がどこまで勝つかが、今後の米国のAI政策を読む手がかりになります。
AIデータセンターと米中間選挙のよくある質問
情勢では民主党が優勢とされ、金融市場は州・地方の規制を当面のリスクと見ています。
Q. 下院と上院の情勢はどうなっていますか?
A. TBSが紹介したリアル・クリア・ポリティクスの最新情勢では、下院は民主党227議席・共和党180議席、上院は民主党47議席・共和党45議席で、残りは接戦です。
Q. 金融市場はこの争点をどう見ていますか?
A. Business Insider Japanによると、モルガン・スタンレーは当面のリスクを連邦ではなく州・地方の政策と見ており、2028年の大統領選後にリスクが高まる可能性があるとしています。
開票の結果は、日本時間4日以降の続報で確認してください。
参考情報
- TBS NEWS DIG「【米中間選挙】『私は怒っている』元トランプ支持者から怒りの声『水や農業が…』“AIデータセンター”が選挙の行方を左右する新たな争点に【news23】」(2026年11月3日)
- 大和総研 山崎政昌「データセンター建設を巡る論争が米中間選挙の新たな争点に」(2026年8月31日)
- Newsweek「Where America’s revolt against data centers could shape key Senate races」(2026年9月)
- Business Insider Japan「AIとデータセンターブームへの影響を念頭に『中間選挙』を分析。モルガン・スタンレーが注視している争点とは?」(2026年9月8日)
