【11/4】北朝鮮が日本海へ飛翔体|1週間で発射3回、バイナンス窃取でFBI名指し・金与正氏「米と向き合わず」

【11/4】北朝鮮が日本海へ飛翔体|1週間で発射3回、バイナンス窃取でFBI名指し・金与正氏「米と向き合わず」

北朝鮮が11月4日午前、日本海に向けて飛翔体を発射したと、韓国軍合同参謀本部が発表しました。種類や飛行距離は分析中です。北朝鮮は10月29日に短距離弾道ミサイル十数発を撃っており、韓国軍が確認した発射はこの1週間で3回目です。間には北朝鮮メディアが伝えた兵器の試験も2回ありました。同じ週には、米連邦捜査局(FBI)が暗号資産取引所バイナンスからの60億ドル超の窃取を北朝鮮の犯行と名指しし、金与正(キム・ヨジョン)党総務部長が4日付の談話で「米国と向き合う必要はない」と反発しました。この記事では、4日の発射で分かっていること、1週間の動きの時系列、バイナンス事件の中身と北朝鮮の反論、日本への意味を、時事通信・東京新聞(共同通信)・CNN・NPR・CNBCの報道をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 11月4日の発射:韓国軍が午前に発表。種類・飛行距離は4日昼の時点で分析中
  • 1週間の動き:10月29日の短距離弾道ミサイル十数発から、黄海側への発射、クラスター弾の試験、巡航ミサイルまで続いた
  • バイナンス事件:FBIが10月31日、60億ドル超の窃取に北朝鮮が関わったと発表し、手口を「TraderTraitor(トレイダートレイター)」と呼んだ(北朝鮮は否定)
  • 金与正氏の反発:2日付の談話で関与を否定し、4日付の談話で「米国と向き合う必要はない」と表明
目次

北朝鮮の飛翔体、11月4日に何が分かっているのか?

韓国軍が4日午前に日本海への発射を発表しましたが、ミサイルかどうかも含め、種類と飛行距離は分析中です。

時事通信(ソウル発)によると、韓国軍合同参謀本部は4日、北朝鮮が日本海に向けて飛翔体を発射したと発表し、種類や飛行距離などを分析しています。東京新聞(共同通信)も、韓国軍が性能や飛行距離を分析中だと伝えました。4日昼の時点で、発射地点・発射数・落下地点を伝える報道は出ていません。

日本政府は何を発表しているのか

4日12時半の時点で、防衛省が落下地点などの推定を出したという報道は、編集部が調べた範囲では見当たりません。

北朝鮮が弾道ミサイルを撃った場合、防衛省は「北朝鮮のミサイル等関連情報」として、発射地点・飛行距離・最高高度・落下地点の推定を公表します。今回も、種類が弾道ミサイルと分かれば同じ形で発表が出るとみられます。被害の情報も、現時点では伝えられていません。

この1週間で北朝鮮は何をしてきたのか?

韓国軍が確認した発射が3回(10月29日・31日・11月4日)、北朝鮮メディアが伝えた試験が2回(11月1日・2日)続いています。

東京新聞(共同通信)によると、北朝鮮は10月29日に東部の元山(ウォンサン)から日本海に向けて短距離弾道ミサイル十数発を発射し、韓国軍は約250キロ飛んだとみています。31日には北西部の定州(チョンジュ)付近から黄海側へミサイルを発射したことを韓国軍が確認しました。北朝鮮メディアは11月1日、ミサイル総局がクラスター(集束)弾の試験を行ったと報じ、弾道ミサイルに積むことを想定しているとしています。2日には、広い範囲を攻撃する弾頭を積んだ巡航ミサイルを発射しました。日本テレビによると、この2日の巡航ミサイルの試験も北朝鮮メディアが明らかにしたものです。

日付ごとに並べると、次のようになります。

日付 北朝鮮の動き 確認・発表した側
10月29日 元山から日本海へ短距離弾道ミサイル十数発(約250キロ) 韓国軍
10月29日ごろ バイナンスから60億ドル超の暗号資産が流出 FBI(10月31日に北朝鮮の犯行と発表)
10月31日 定州付近から黄海側へミサイル発射 韓国軍
11月1日 クラスター(集束)弾の試験を報道 北朝鮮メディア
11月2日 広範囲攻撃用の弾頭を積んだ巡航ミサイルを発射/金与正氏が談話で窃取への関与を否定 北朝鮮メディア/朝鮮中央通信
11月4日 金与正氏が「米国と向き合う必要はない」と談話/日本海へ飛翔体を発射 朝鮮中央通信/韓国軍

表のとおり、ミサイルの発射と、暗号資産をめぐる米国との応酬が、同じ1週間に重なっています。

クラスター弾の試験が意味すること

1発のミサイルで広い範囲を攻撃する力を、短距離ミサイルに持たせようとしていることを示します。

クラスター弾は、1発の中に多数の小さな爆弾を詰め、広い範囲に散らばらせる兵器です。北朝鮮メディアは、この弾頭を弾道ミサイルに積むことを想定していると伝えました(東京新聞)。1発で広い範囲を攻撃できる弾頭を短距離ミサイルに組み合わせれば、韓国内の基地や部隊が集まる場所が狙いやすくなります。2日の巡航ミサイルも「広範囲攻撃用の弾頭」とされ、同じ方向の試験が続いている形です。

バイナンス事件とは?FBIは何を根拠に北朝鮮と判断したのか

60億ドル超の窃取について、FBIは北朝鮮の関与を発表しましたが、判断の詳しい根拠は公表されていません。

CNN(10月30日)によると、盗まれたのは60億ドル超(CNNの円換算で約9440億円)で、暗号資産の盗難としては過去最大です。バイナンスの初期調査では、技術者のノートパソコンを通じて侵入され、不正な出金の指示を送れる状態になったとみられています。FBIは10月31日の発表で、北朝鮮が窃取に関わったとし、この活動を「TraderTraitor(トレイダートレイター)」と呼んでいます(FBI・NPR)。発表は、盗まれた資産が主にイーサに換えられている様子を見ていると説明していますが、どの証拠で北朝鮮と結びつけたかは示していません。民間ではTRMラボが「ブロックチェーン内外の強力な情報」から北朝鮮の部隊の犯行と判断し(CNN)、エリプティックやチェイナリシスも資金の動きを北朝鮮系の集団と結びつけています(NPR・CNBC)。TraderTraitorは、2025年2月の暗号資産取引所バイビット(Bybit)からの約15億ドルの窃取にも関わったとされています。北朝鮮は関与を否定しています。

盗まれたお金はどこへ動いているのか

分析会社エリプティックの見積もりでは、64.3億ドルのうち約28.5億ドル(44%)が凍結・押収されました。

CNBC(11月3日)が伝えたエリプティックの推計では、残る約32.4億ドルは窃取に関わるアドレスに残り、多くがビットコインとイーサに換えられています。攻撃者側は最初の4日間で、11のブロックチェーンにまたがる約1万2000のウォレットを使い、4万回を超える取引をしたといいます。エリプティックは、残りを数か月かけてビットコインに換え、仲介業者などを通じて現金化を図るとみています。

窃取額と凍結の数字を、出どころごとに整理します。

項目 数字 出どころ
窃取額 60億ドル超(約9440億円) CNN(10月30日)
窃取額(分析会社の見積もり) 64.3億ドル エリプティック(CNBC)
凍結・押収 約28.5億ドル(44%) エリプティック(CNBC)
窃取に関わるアドレスに残る額(推計) 約32.4億ドル エリプティック(CNBC)
利用者への補填 影響額の約95% バイナンス(CNBC・11月3日)

窃取額は出どころによって60億〜64億ドル台と幅があり、確定した数字はまだありません。

トランプ大統領は「北朝鮮かは分からない」

トランプ大統領は、北朝鮮の犯行かどうかについて「分からない」と述べ、FBIとは温度差を見せています。

NPRによると、トランプ氏は「北朝鮮かどうかは分からない」と話しつつ、捜査で北朝鮮の犯行だと分かる可能性はあるとしました。バイナンス自身は、特定の国の犯行だとは言っていません。一方、韓国外務省は、北朝鮮の不正なサイバー活動は高まる脅威だとし、米国や国際社会と協力していると述べています(ABCニュース)。

金与正氏は何と反論したのか?

金与正氏は2日付の談話で関与を否定し、4日付の談話では、信頼できず敵対的な相手である米国と「向き合う必要はない」と表明しました。

時事通信によると、金与正氏は2日付の談話で、バイナンスからの資産流出への北朝鮮の関与を否定していました。CNBCは、金氏がFBIの発表を「重大な政治的挑発」と呼び、FBIが北朝鮮に「サイバー犯罪国家」の烙印を押そうとしていると非難したと伝えています。4日付の談話では、米国が流出を北朝鮮の関与とみなしている点を「敵視政策の延長線で捉えている」と述べ、米国と「向き合う必要はない」と主張しました(時事通信)。

対話の余地は残した

金氏は対話を全面的に拒んだわけではなく、米国が敵視政策を撤回すれば応じる余地を残しています。

東京新聞(共同通信)によると、金氏は「平和を守るための選択肢には対話が含まれている」とも述べました。北朝鮮はこれまで、関係改善の条件として非核化の要求をやめることや敵視政策の全面的な見直しを挙げてきました。トランプ大統領が金正恩総書記との会談に意欲を見せるなか、米国に圧力をかける狙いがあるとみられています(共同通信)。

ミサイルと暗号資産はどうつながるのか?

日米韓は、北朝鮮による暗号資産の窃取を、ミサイルや大量破壊兵器の開発資金になっているものとして扱っています。

警察庁などが公表した資料によると、日米韓の3か国は2025年1月14日に「北朝鮮による暗号資産窃取及び官民連携に関する共同声明」を出し、北朝鮮の違法な大量破壊兵器と弾道ミサイル計画のための不法な資金を断つことを最終的な目標に掲げました。この声明は、2024年に日本の取引所DMM Bitcoinから約3億800万ドルが盗まれた事件も北朝鮮の犯行と結論づけています。今回のバイナンス事件では、エリプティックの推計で、凍結された分を除いても約32.4億ドルが窃取に関わるアドレスに残っています(CNBC・11月3日)。

資金とミサイルの関係を、流れで示します。

暗号資産の窃取
バイナンスから60億ドル超(10月29日ごろ)
→
資金洗浄・現金化
約1万2000のウォレットで分散(エリプティック)
→
兵器開発の資金(警戒)
日米韓が警戒する行き先・今回の流用は未確認

図の最後の段は日米韓の位置づけで、今回の窃取額が実際にどの兵器に使われたかを示す公表資料はありません。

(編集部分析)盗まれた暗号資産は、日本に向けて撃たれるミサイルの財布になりうる、という視点を持つべきです。ミサイルの発射だけを数えて「また撃った」で終わらせると、その裏で兵器の資金が積み上がる流れが見えなくなります。日本の取引所もDMM Bitcoinの事件で実際に標的になりました。サイバー攻撃への備えと資金の凍結を、ミサイル防衛と同じ安全保障の問題として扱えるかが問われています。

日本にとっての意味は?

日本にとっては、日本海に向けた発射が続いていることと、北朝鮮の資金源への対策の両方が、自国の安全に直結する問題です。

北朝鮮は10月12日にも弾道ミサイル2発を撃っています。詳しくは「【10/12】北朝鮮ミサイル2発|2発目は910km超で変則軌道の可能性」で整理しました。10月19日には、金与正氏が韓国との軍事境界線付近への攻撃手段の増強を検討すると表明しており、その経緯は「【10/21】金与正氏が談話|境界線に攻撃手段の増強検討」にまとめています。

(編集部分析)米国の大統領が対話に前向きで、FBIとも温度差がある以上、米国の対北朝鮮政策は政権の判断によって変わる可能性があります。日本は同盟を生かしつつも、ミサイルの探知と迎撃、サイバー攻撃の監視を自前で強める必要があります。他国の判断を待つのではなく、自分の国は自分で守る備えを進めることが、主権国家としての基本だと言えます。

北朝鮮の飛翔体とバイナンス事件のよくある質問

Q. 「飛翔体」と「弾道ミサイル」は何が違うのですか?

A. 「飛翔体」は、種類がまだ分からない段階の呼び方です。分析で弾道ミサイルと分かれば、韓国軍や防衛省がその名前で発表し直します。

Q. バイナンスの利用者のお金は戻るのですか?

A. バイナンスは自社の資産と緊急準備基金で補填すると表明し、11月3日時点で影響額の約95%を補填したと説明しています(CNN・CNBC)。出金は段階的に再開している途中です。

Q. 金与正氏の肩書きは何ですか?

A. 朝鮮労働党の総務部長です。時事通信・共同通信は11月4日の報道でこの肩書きを使っています。金正恩総書記の妹です。

この記事は11月4日12時半時点の情報です。この先の動きは、次の3点で確かめてください。

  • 4日の飛翔体の種類・飛行距離・落下地点(防衛省のサイトの「北朝鮮のミサイル等関連情報」と、韓国合同参謀本部の発表)
  • 北朝鮮メディアが4日の発射を何の試験として伝えるか(翌5日の朝鮮中央通信の報道)
  • FBIがバイナンス事件で追加の発表を出すか(FBIの発表ページ)、凍結額がどこまで増えるか

参考情報

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