【11/5】サイバー攻撃、10月は4億7500万件で過去最多|前年の2.5倍・AI自動化の影
国内企業のウェブサイトを中心に検知されたサイバー攻撃が、2026年10月だけで約4億7500万件に上り、過去最多を更新しました。前年同月の2.5倍で、これまで最多だった9月より約2100万件多い数字です。共同通信が11月5日に報じました。この記事では、数字を集計したのは誰か、何を数えた数字なのか、6月から急に増えた理由として何が指摘されているのか、同じ時期に起きた被害の実例、そして企業と個人がいま取れる対策を、報道と発表資料をもとに整理します。
この記事でわかること
- 件数と出所:10月は約4億7500万件で過去最多。民間のサイバーセキュリティクラウドが自社サービスで観測した不正通信の集計です。
- 増えた背景:6月に4億件台へ跳ね上がり、高性能AIによる攻撃の自動化が後押ししている可能性が指摘されています。
- 被害と対策:GMO・アルカディア・NTTグループで被害が相次ぎ、ブロッキングの法整備も論点になっています。
サイバー攻撃は10月に何件?約4億7500万件で過去最多
2026年10月に検知されたサイバー攻撃は約4億7500万件で、過去最多です。前年同月の2.5倍に当たります。
共同通信によると、これまで最も多かった2026年9月と比べても約2100万件増えました。計算すると、9月はおよそ4億5400万件だったことになります。1か月は31日なので、10月は1日あたり約1500万件、1秒あたりに直すと約177件の攻撃が検知された計算です。
主な数字を表にまとめます。
| 項目 | 数字 | 出所 |
|---|---|---|
| 2026年10月の検知数 | 約4億7500万件(過去最多) | 共同通信 |
| 前年同月比 | 2.5倍 | 共同通信 |
| 9月との差 | 約2100万件増 | 共同通信 |
| 9月の検知数 | 約4.5億回(前月比 約1.4倍) | サイバーセキュリティクラウド(10月6日発表) |
| 2026年7〜9月 | 前年同期の約1.8倍 | サイバーセキュリティクラウド(10月6日発表) |
9月の数字は、共同通信の「約2100万件増」から逆算した約4億5400万件と、会社が10月6日に出した「約4.5億回」がほぼ重なります。ただし後者は概数で、集計の締め方が同じかどうかは発表資料からは確かめられません。本記事では両方を並べて示します。
4億7500万件は誰が数えた数字?1社の観測データ
この件数は、東京のサイバーセキュリティクラウドが自社のサービス上で観測した不正通信を集計した数字です。
同社は、国内企業を中心に約2万のウェブサイトを不正アクセスから守るツールを提供しています。共同通信は「民間企業の調査で分かった」と伝えており、警察庁や国の機関が国内全体を数えた統計ではありません。
読むときは次の2点に気をつける必要があります。
- 数えている範囲:同社のサービス上で観測された不正通信です。日本全体の攻撃の総数ではありません。
- 「件数」の中身:不審な通信を検知した回数で、被害が出た件数ではありません。うち何件で実害が出たかは公表されていません。
集計の条件が期間を通して同じかどうかは、報道からは確かめられません。そのため、この数字は日本全体の実態そのものではなく、1社の観測で見えた「増え方の勢い」を示す材料として読むのが適切です。
サイバー攻撃はいつから増えた?6月に4億件台へ急増
検知数が跳ね上がったのは2026年6月です。それまで月1億〜2億件台だったのが、一気に4億件台になりました。
共同通信によると、2025年1月から2026年5月までは毎月1億〜2億件台で推移していました。6月に4億件台へ跳ね、7月以降も2億〜4億件台の高い水準が続いています。9月に約4.5億回、10月に約4億7500万件と、ここ数か月は勢いが加速しています。
流れを図にまとめます。
2025年1月〜2026年5月
毎月1億〜2億件台
2026年6〜8月
6月に4億件台へ
以降も2億〜4億件台
2026年9〜10月
9月 約4.5億回
10月 約4億7500万件(最多)
9月については、同社が10月6日の発表で「9月に入ってから週を追うごとに増え、最終週は前年同期の約3倍」と説明していました。10月の最多更新は、その流れが止まらなかったことを示しています。
なぜサイバー攻撃が増えた?AIによる自動化の可能性
増加の背景として、高性能な人工知能(AI)による攻撃の自動化が後押ししている可能性が指摘されています。
共同通信はこの点を「可能性がある」と伝えており、AIが原因だと確定したわけではありません。ただ、専門家の発言はこの見方と重なります。大分大学理工学部の池部実講師はOBS大分放送の取材に、これまで人が一つずつ調べていたアプリの通信の仕組みや攻撃の方法を、AIが分析するようになり、攻撃者のスピードが上がっていると説明しました。
ZDNET Japanが伝えたセミナーでは、情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所の井上大介研究所長が、生成AIの進化で「大脆弱性時代」が来ていると警鐘を鳴らしました。脆弱性(ぜいじゃくせい)とは、ソフトウェアに潜む欠陥のことです。マイクロソフトが毎月公表する脆弱性の数は、2024〜2025年には月50〜150件ほどでしたが、2026年10月には1400件を超えたと紹介されています。
欠陥が見つかる速さが上がれば、攻撃側がそれを突く速さも上がるおそれがあります。ただし、こうした動きが今回の検知数の急増にどれだけ影響したのかは、確認されていません。
攻撃側はAIをどう使っている?アプリの自動解析
NICTの井上氏は、スマートフォンのアプリをAIで自動解析し、裏側のサーバーの弱点を突いて個人情報を奪う手口を紹介しました。
ZDNET Japanが伝えた講演では、国内のGoogle Playから入手したAndroidアプリをAIで解析し、アプリがつながるサーバーの窓口(API)の欠陥を突く手口が挙げられました。池部講師が説明した「通信の仕組みをAIが分析する」という話と同じ流れです。ただし、今回の4億7500万件の中でこの手口がどれだけ使われたかは明らかにされていません。下調べの手間が減れば、狙われる企業の数が増えるおそれがあるという段階の話です。
守る側もAIを使い始めています。NTTのグループ各社は、AIを使った脆弱性の診断を強めていると説明しました。攻撃と防御の両方でAIの使い方の速さが勝負を分ける段階に入ったと言えます。
NTTも検知7倍、ほかの観測でも増えているのか
増えています。NTTは、10月に通信サービス関連で検知したサイバー攻撃が前年の7倍になったと明らかにしました。
CNET Japanによると、NTTの島田明社長が11月4日の決算会見で説明しました。主要な通信サービスや社会インフラのシステムに深刻な影響は出ておらず、「一応防衛している」と述べています。一方で、直近2か月にNTTグループと委託先で情報漏えいやその疑いがある事案が計12件(グループ内5件・委託先7件)起きたことも認めました。
攻撃の検知数とは別の指標として、個人情報の流出量の報道もあります。OBS大分放送は、サイバーセキュリティ会社の集計として、2026年に入って企業などから流出した個人情報が10月27日時点で3億2900万件あまりに上り、前年の約10倍に当たると伝えました。
攻撃の検知数と流出した情報の件数は、数えているものも対象も違うため、そのまま比べることはできません。言えるのは、別々の会社がそれぞれの物差しで、2026年の増加を報告しているということです。
被害はどこで出ている?GMO・アルカディア・NTTの事例
10月以降、GMOインターネットグループ、大阪のアルカディア、NTTグループ各社で被害が相次いで明らかになりました。
主な事例を表にまとめます。
| 企業 | 何が起きたか | 出所 |
|---|---|---|
| GMOインターネット | 10月21日に「お名前.com デスクトップクラウド」が不正アクセスで停止。攻撃者は約80億円を要求し、27日に顧客情報と称するデータを公開。グループでは顧客口座の不正操作も | CNET Japan・共同通信 |
| アルカディア(大阪・箕面市) | 防災情報配信などのサービスが攻撃を受け、メールアドレスなど300万件以上が流出したおそれ。11月2日に大阪府警へ調書を提出 | FNNプライムオンライン |
| NTTグループ | 直近2か月で漏えい等12件。コミックシーモアの会員情報、エコめがねの顧客情報など | CNET Japan |
アルカディアの件では、大分県内でも自治体の防災メールの登録者のアドレスが流出した可能性が明らかになりました(OBS大分放送)。1社の委託先が狙われると、そのサービスを使う多くの自治体や利用者に被害が広がる構図です。
委託先が狙われると被害はなぜ広がる?
委託先は多くの企業や自治体の情報をまとめて預かっているため、1社が破られるだけで被害が一気に広がります。
NICTの井上氏は、2022年2月にトヨタ自動車の国内全工場が止まった件を例に挙げました。直接狙われたのは部品の仕入れ先の小島プレス工業で、同社のVPN機器の欠陥が入り口でした(ZDNET Japan)。2025年のアサヒグループホールディングスのランサムウェア被害では、システムを作り直して元に戻すまでに数か月かかったと紹介されています。
NTTグループの12件のうち7件が委託先だったことも、同じ構図を示しています。自社の守りを固めても、情報を預けた先が弱ければ、そこから漏れます。
ダークウェブでの日本人の個人情報の売買については「ダークウェブで日本人の個人情報が1週間500万件超」で、国の機関が狙われた例は「外務省に不正アクセス、個人情報3600件漏えいか」で詳しく整理しています。
攻撃者サイトのブロッキングは?NTTは法整備を要望
攻撃者のサイトへの接続を遮断するブロッキングは、通信の秘密との兼ね合いがあり、NTTは法整備を求めています。
CNET Japanによると、GMOの件では、攻撃者のサイトへの接続を遮断するよう総務省が通信事業者に要請したと共同通信などが10月29日に報じました。藤井比早之総務相は10月30日の会見で、進行中の事案であることを理由に要請の有無への回答を控えました。NTTの島田社長も「ノーコメント」としたうえで、「利用者保護と通信の秘密の両方を成立させないといけない案件」と述べました。
ブロッキングとは?通信の秘密とぶつかる理由
ブロッキングは、通信事業者が特定のサイトへの接続を遮断する措置で、憲法が守る通信の秘密を侵すおそれがあります。
遮断するには、利用者がどのサイトにつなごうとしているかを事業者が見る必要があります。そのため憲法が保障する「通信の秘密」に触れるおそれがあり、慎重な判断が求められると CNET Japan は説明しています。漫画の海賊版サイトやオンラインカジノでも議論になりましたが、対応は難しいままです。
島田氏は、緊急避難としてブロッキングが認められているのは今は児童ポルノぐらいだと説明し、条件を前もって整理したガイドラインを作り、「究極的には法制化をしっかりしていくことが重要だ」と政府に働きかける考えを示しました。
(編集部分析)盗んだ情報を公開して身代金を迫る攻撃者のサイトに、国民が自由につながれる状態をどこまで許すのかは、国が自国の情報空間を守れるかという主権の問題です。通信の秘密は憲法が守る大切な権利ですが、だからこそ「その場の要請」に頼るのではなく、どんな条件で遮断できるのかを国会で決めておくべきだと評価できます。事業者に判断を押し付けたままでは、責任の所在があいまいになり、国民の情報も守りきれません。
国はどう備えている?能動的サイバー防御の体制づくり
国は、内閣官房に国家サイバー統括室を置き、攻撃を未然に防ぐ能動的サイバー防御の体制づくりを進めています。
2025年5月には、重要インフラへの攻撃の兆しをつかんで先手を打つ「能動的サイバー防御」を可能にする法律が成立しました。国家サイバー統括室は、政府全体のサイバー対策の司令塔の役割を担います。ただ、今回の数字が示すのは、主に民間企業のウェブサイトに届く攻撃です。国の新しい仕組みが中小企業のサイトや委託先まで守りきれるわけではありません。
(編集部分析)攻撃の件数が1年で2.5倍になる中で、守りを各社の努力だけに任せるのは限界があります。国が司令塔を持ったことは前進と評価できますが、問われるのは、国内のセキュリティ企業や技術者を育て、外国製の製品や海外の事業者に頼りきらない守りの力を国内に持てるかです。今回の数字を集めたのが国内の民間企業だったことも、国内に観測の目を持つ大切さを示しています。
企業と個人はいま何をすべき?今日できる5つの対策
企業は機器とソフトの更新と委託先の点検を急ぎ、個人はパスワードの使い回しをやめ、届くメールを疑うのが基本です。
専門家や各社が挙げている対策を、すぐ取りかかれる順に並べます。
- 更新を後回しにしない(企業):VPN機器やサーバーの修正プログラムを当てます。NICTの井上氏は、2022年のトヨタの全工場停止は取引先のVPN機器の欠陥が入り口だったと紹介しています。
- 委託先まで点検する(企業):NTTも委託先やクラウドを含めて点検する方針です。自社だけでなく、情報を預けている先の対策も確かめます。
- 止める条件を決めておく(企業):被害が出たときに誰に連絡し、どこでシステムを止めるかを前もって決めておくと、被害を小さくできます。
- パスワードを使い回さない(個人):1か所から漏れた情報で、ほかのサービスに入られるのを防ぎます。2段階認証も設定します。
- 「漏れている前提」で疑う(個人):大分大学の池部講師は、漏れている前提で対策をと呼びかけています。心当たりのないメールやSMSのリンクは開きません。
予防の点検とは別に、被害が疑われるときの相談先も決めておきます。サイバーセキュリティクラウドは10月6日から、情報漏えいやランサムウェアの被害について初動の相談と調査を無償で受ける「緊急セキュリティ相談窓口」を開いています。不正アクセスの被害そのものは、警察庁のオンライン受付窓口か都道府県警察へ届け出ます。
サイバー攻撃4億件超のよくある質問
検索で多い疑問を、11月5日時点で確認できた範囲でまとめます。
Q. 会社や自分が被害に遭ったら、どこに相談すればよいですか?
A. まず警察に相談します。警察庁にはサイバー事案の通報・相談のオンライン受付窓口があり、都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口も使えます。企業はIPA(情報処理推進機構)やJPCERT/CCにも相談できます。
Q. 自分の情報が漏れたか確かめる方法はありますか?
A. 使っているサービスの公式サイトのお知らせを見るのが確実です。対象者への知らせ方はメール・郵送・公式サイトでの公表など、事案ごとに異なります。偽の通知もあるので、メールのリンクではなく公式サイトから確かめてください。
Q. 11月の件数はいつ分かりますか?
A. 11月分の公表予定日は、確認できた資料では明らかになっていません。今回の10月分は11月5日に報じられました。新しい数字が出しだい、当サイトで続報をお伝えします。
攻撃の件数や被害の新しい発表があれば、この記事に追記します。
参考情報
- 共同通信(2026年11月5日)サイバー攻撃、10月は4億件超 検知数最多更新、被害深刻
- サイバーセキュリティクラウド(2026年10月6日)「緊急セキュリティ相談窓口」を開設
- CNET Japan(2026年11月4日)NTT社長「サイバー攻撃の検知数は前年の7倍」
- FNNプライムオンライン(2026年11月3日)「アルカディア」警察に調書を提出
- 国家サイバー統括室
- OBS大分放送(2026年11月5日)「個人情報の流出」前年の10倍に急増
- ZDNET Japan(2026年11月5日)迫る大脆弱性時代–「SBOM.JP」が目指す脆弱性対応の優先順位付け
